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『+ 駆ける夜は独りと二人―前編― + 』
ルド・ヴァーシュ3364)&ザド・ローエングリン(3742)&ドルガルド・ヴァレッテ(2461)&(登場しない)



「っ、る、ルド、っ」


 自分の先を走るザドが息を切らし振り返る。
 俺は相手に対し首を振った後唇に指先を乗せた。閉口を促され不安を宿した赤い瞳が俺の姿を映しこむ。その虚像は緊張のため吊りあがり眉間に皺を寄せていた。
 俺の言葉を聞いてザドは身体を元に戻し走り続ける。綺麗に結んでやった赤いリボンが解けそうになっても今は文句一つ言わずただ前へ。


 ―― 先刻自分達に追っ手が迫っている、という知らせを受けた。


 賞金首であるザドを追って来ている何者かの姿が確認出来たと、そう連絡が入ったのだ。情報源は自分の持てる限りの中でも特に頼れるもので疑う余地はない。泊まっていた宿を後にし、夜間出航する船に乗るため俺達は駆ける。
 船の出航までの時間が無かったためザドに事態を細かく説明してやる暇は無かった。
 恐れに揺れる瞳が何度も俺を貫く。


「ッ――ザド、止まれっ」


 あと一歩で船に乗り込めるというところで俺はザドの腕を引き抱き込む形で角へと身を隠す。
 煉瓦で組まれた壁に背を寄せ目的地である港を見遣れば見覚えのある姿が其処には在った。チッと思わず舌打ちをすれば腕の中でザドが震える。触れた肌から其れを感じた俺は片膝を折りザドの両肩に手を乗せた。


「追っ手が其処に居るんだ。分かるか。お前を追いかけている連中だ。……しかも今までお前が出逢った奴らの中でも特別タチが悪い男がいる」
「おって?」
「良いか、俺が今から言う事を良く聞いて行動してくれ。あそこに船が一隻停まっているだろう。あれはエルザードという場所に向かう船でもうすぐこの港を出航する。俺が追っ手連中の気を引き付けるからお前はあの船になんとかして乗り込むんだ。そして乗り込んだら誰にも見つからないよう隠れてろ」
「ルドは、ルドは、どうするの?」
「俺は後から追いかける」
「や、やあっ!」
「ザド、言う事を聞くんだ」
「や、だ、って、だって、ルド、」
「俺はこの翼で飛んで追いかけるから」


 背中の翼を指差しぐずるザドをなんとか説得する。相手が涙を零しそうになれば目尻に指を寄せ拭った。
 立ち上がりザドの背中を叩き別ルートを取らせるためその身体を押し出す。行け、とまるで睨む強さでザドを見送ればその小さな身体は再び走り出した。


 一度目を伏せる。
 再び俺の黒い瞳が夜の海を映し出したと同時に追っ手である男――ドルガルドを睨め付けた。


 ドルガルド。
 現在は素性が怪しくとも実力登用が認められる、異質な第十三騎士団、通称暗黒騎士団に在籍している男。因縁が深く幾度と出会いそしてその度に敵対してきた。お互いに実力は互角で決着をつけられずに今の今まで過ごしてきたがこんなところで出逢うとは……。
 いや遅かれ早かれ奴が出てくることは分かっていた。予測していたはずだ。


 ザドを逃がすため俺は姿を現す。
 正々堂々と姿を現した俺に相手は一瞬目を顰めるも次の瞬間には鋭い眼光を放つ。威圧感のあるがっしりした長身は変わらない。そしてその何か企んでいるような微笑も。
 思ったより追っ手の人数は少ない。翼を持つ者や明らかに戦闘に長けた屈強な男を率いているところを見ると少数精鋭で来たのだろう。
 俺が対空攻撃が苦手だと知って飛び道具を得意とした部下を多く揃える辺りからそう窺える。


「よぉ、ルド。久しぶりじゃねェか、やっぱ死んじゃいなかったか」
「ああ、ドルガルド。お前も相変わらず元気そうだな。……生憎と俺も元気にやってるよ」
「おまえがそう簡単に死ぬワケ無ェ。賞金稼ぎの連中は情報を頼りに他所へ行ったみたいだが、俺は嗅ぎ回ったり、労力使うのは嫌いでね。で、この場所で待ってたわけ。おまえなら海路を使うと思ってな。しかし……なんで賞金首を連れて逃げてんだ? 俺にはそれがわからねェ」


 大げさなまでに首を大きく振り両手を顔の横まで持ち上げて笑う。
 奴の後ろでは部下達が既に戦闘態勢に入り始めた。持っていた剣や弓を構え、何かあれば攻撃に転じれるように体勢を整えている。
 キリ……、と矢を引き絞る音が耳に届く。


「……お前に話すことは無い」


 返答と共に飛び放たれる矢。
 その狙撃をかわし俺は懐から銃を取り出し足元を狙い撃った。辺りに響く発砲音に幾人か振り向く。一般人まで巻き込むことはないと信じたいが相手が相手だ。最悪の事態を考え極力人の居なさそうな倉庫の方へと駆ける。暗闇に消えた俺を追ってくる足音と羽音。そして空気を裂く攻撃、逃げた先の壁に矢が打ち込まれ穴が空く。一瞬でも足を止めたら確実に射られるだろう。


 俺の目的は奴と戦う事ではない。あくまでザドを逃がす事、そして奴らを撤退させる事だ。
 反撃は最低限に控え銃を構える。夜、碌に視界が利かない中での戦闘では俺の方が確実に上手だ。ドルガルドとの実戦経験がそれを物語る。奴の部下に甘んじる連中が俺を射止められるわけが無い。
 武器を掴む手元を狙い銃弾を撃ち続ける。
 ……夜で良かったと心底思う。飛び散る液体、その赤色をはっきりと見ずに済んだのだから。


 隙を見て翼を大きく広げ地を蹴り、一気に矢の届かない空へ浮上する。
 高く高く飛び上がった俺を見てドルガルドは己が得意とする剣を仕舞い部下が持っていた鉄製の大型槍を奪う。筋肉に血管の筋が浮き上がるほど力を込め地が揺らぐほど強く踏みしめ身体を捻る。


「うぉぉおおおおおお!!」
「――っ、くッ、この、やろ……っ!」


 叫び声を轟かせながら彼は槍を俺へと投げ放つ。
 半魔人である奴の筋力は通常の人間の領域を越える。俺は炎のデザインが刻み込まれた銃を構えそして強く念を込めて銃弾を放った。
 空中でぶつかり合った其れらは砕け散り眩い光と共に煙をあげる。


「畜生ッ! 上手く逃げやがったッ!」


 海へと逃げる俺の元へ奴の舌打ちの音は聞こえない。


 俺が追いかけるべきは一つ。
 ただ、海の先へ。




 …… to be continue →




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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【3364 / ルド・ヴァーシュ / 男性 / 26歳(実年齢82歳) / 賞金稼ぎ / 異界人】
【3742 / ザド・ローエングリン / 中性 / 16歳(実年齢6歳) / 焔法師 / レプリス】
【2461 / ドルガルド・ヴァレッテ / 男性 / 30歳(実年齢38歳)/ 暗黒騎士 / 半魔人】
PCシチュエーションノベル(グループ3) -
蒼木裕 クリエイターズルームへ
聖獣界ソーン
2009年07月06日

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