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『1人より2人がいいさと思ったビーチ 』
エリス・シュナイダー1178)&松山・華蓮(4016)&(登場しない)

作 MTS

1.混雑

太陽が容赦なく地面を照らす、ありふれた夏の日である。
それなりに高級な浜辺、高層ホテルが建ち並ぶビーチへ続く道だった。
二人連れの女性が、駅前からビーチへのバス乗り場に並んでいる。
松山・華蓮とエリス・シュナイダーの長身女性コンビだ。エリスも一般的な男性よりは高身長だが、華蓮に至っては190センチ近い上背があるから、大概の男性も見下ろされてしまう。
可愛いというよりは良い意味で凛々しいといった二人の顔つきとスタイルだが、それ以上に女性にしては高めの身長が、二人を目立たせていた。
太陽は容赦なく、二人の身体を照らしている。
体が大きい分だけ照らされる面積も広い事もあるのか、夏の日差しを容赦なく受けている二人の機嫌は良くないようだ。
「…うー、ビーチに着く前に、夜になるのは勘弁して欲しいなぁ?」
ツーポイントの眼鏡の下で、華蓮は不機嫌そうに目を細めた。
さすがにそんな事は無いだろうが、愚痴をこぼしたくなる位には、バス停は混んでいた。ビーチへのバスを待つ行列は、どこまでも続いている。
彼女達の目的は、もちろん、こうやって並ぶ事ではない。遥か遠くに見える海岸線、砂浜のビーチでくつろぐ事が、彼女達の目的なのだ。
だが、この分だと、ビーチの混雑も推して知るべきだろう。バス停が混んでれば、その先のビーチも混んでいるはずだ。
「バスの間隔は10分程のようです。
 行列は100メートル程続いていますから、多分、後1時間程は待つ事になるでしょう」
華蓮に比べれば、余程冷静なエリスが言うが、彼女も、内心は穏やかではない。
二人とも、夏の服装…普段よりも短め、膝まで届かないスカートを履いていたりするが、それでも暑いものは暑い。
「なぁ…やっぱり帰ろうか?」
華蓮は3分の1位は本気で言った。
それ位に暑い。バスを待つ行列は続いている。汗が流れる。
「それも、一つの案だと思います。
ですが別の案もあります」
エリスは淡々と華蓮に答える。メイド服を着ていない時でも、エリスの口調と仕草はメイドのそれに近い。その丁寧で、説得力がある彼女の言い回しには、奔放な華蓮でも耳を傾けてしまう。
「バスに乗らずに、歩いて行けば良いのです。
例えば、私達の歩幅が今の10倍あったとしたら、歩いて1時間かかる道も6分で歩けます。
もしも100倍あったとしたら、30秒程で歩く事が出来ます」
単純な算数の話をするエリス。
なるほど、もしも彼女たちが巨人ならば。少し遠い場所にだって簡単に歩いて行けるだろう。
「おお、いい考えやないか!」
華蓮は目を輝かせる。何故、今まで気がつかなかったのだろうか?
巨人になれば良いじゃないか。大きい事は良い事だ。
…いや、決して、二人は頭が可哀想な人というわけではない。
あらゆるものの大きさを自由に操る事が出来るエリスにとっては、別にどうという事ではないのだ。
それから、数秒後…
バスの行列に並んでいた者達は、暑さなんて吹っ飛ぶ位に背筋が寒くなる事になった。
ドーン!
何か大きな物が地面に落ちてきたような音を、彼らは背中で聞いた。
雷でも間近に落ちてきたかのような…いや、それ以上の轟音だ。
急に、辺りが暗くなった気がする。何か大きな物が太陽の光を遮っていた。おかげで、少し、涼しくなった。
驚いて振り返ると、そこには道を挟んで巨大な4本の柱が建っていた。
観光地のホテルにしては真っ黒で、大き過ぎる。何とも言えない威圧感があった。
黒い柱を支える土台はなめらかな曲線を描きながら、地面にめり込んでいた。
柱の余りの重さに、地面の方が耐えられないのだろう。
道路を挟んでいる空き地が、巨大な足の形に陥没していた。
…そう、足だ。黒い柱を支える土台は、人間の足…靴の形をしていた。
「おー、いい眺めや。
だけど、ちょっと足の踏み場に困ってしまうなぁ?」
遥か上の方から、若い女の声が響いてきた。
異常な大声だ。拡声器か何かを使って、耳元で怒鳴られているかのような音量である。
見上げれば、ツーポイントの眼鏡をかけた巨大な女の顔が見下ろしていた。
言葉とは裏腹に、あまり困った顔はしていない。
やっと、気づいた。
道を挟んでいる黒い巨大な柱は、巨人の足なのだ。空から見下ろして笑っている女巨人の黒いストッキングなのだ。
よく見ると、巨大な黒い柱はストッキングが途切れると共に色を変え、途中から肌色に変わっていた。太ももが露になるような巨大なミニスカートが、少し控え目に舞っていた。
10階建てのホテル程度なら、余裕で跨げそうな巨人だが、事態はさらに深刻だった。
女巨人は、1人ではないのだ。
「確かに、足元に居る方々を踏み潰さないようにするならば、わたくし達は足の踏み場に困ってしまいますね」
ツーポイントの眼鏡をかけた巨人とは別の、もう1人の巨人が口を開いた。
淡々とした口調と冷静な表情は、眼鏡をかけた方の巨人とは好対照ではあるが、エリスは表情を変えずに、足を上げながら言った。
「ですが、わたくし達が、足元に居る方々を踏み潰そうと思った場合には、
逆に足場に困らない事になりますね」
足を上げ、蟻のように小さな人間達に広大なサンダルの裏側を見せつけながら、エリスは微かに口元を緩ませた。
「こらこら、あんまり小人さんを怖がらせたら、だめやって」
クールな見かけよりはよっぽど悪戯好きな知り合いに、華蓮は苦笑した。
悪戯っぽく小人達を見下ろす女巨人達だが、他愛の無い悪戯をするには、彼女たちは余りにも大きすぎた。
もう、のんびりバスを待っている人間は誰も居なかった。
必死に逃げ出した。
小人達がバラバラに逃げ出したので、華蓮とエリスは、本当に足の踏み場に困る事になってしまった。

2.ビーチへの道

これはこれで、面白い。
「なぁ、逃げるんだったら、まとまって逃げたほうがええよ?
見づらくて踏み潰しちゃうかもしれへんもん」
華蓮は足元で逃げ惑う小人達に声をかけた。
彼女が声をかけると、小人たちは、ますます慌てて逃げ惑う。
「華蓮こそ、そんな事を言ってはだめですよ?」
華蓮と同様、逃げ惑う小人の様子を楽しみながら声をかけたのはエリスだ。
実際、踏み潰さないようにするのに一苦労である。
「いやー、しかし、ほんとに小さいなぁ?」
ミニチュアと化した景色を見下ろすのが楽しい。
ここに来るまでに彼女達が乗ってきた電車も、今では玩具みたいだ。
華蓮は急に向きを変え、ビーチとは反対方向、駅の方へと歩き出した。
そちらへ逃げれば安全だと思っていた小人たちは、さらにパニックである。
気まぐれな巨人達が相手では、安全な場所など無いのだ。
華蓮は、そんな小人達には目もくれず、駅に止めてある電車に目をやった。
「あはは、うちらが乗ってきた電車も手のひらサイズやね、エリスさん」
「そうですね、玩具にするのに丁度良いサイズです」
エリスは淡々と答える。
巨人になった事で手にした、圧倒的な力。その気になれば、空に浮かぶ星さえ縮小して手のひらに乗せてしまえるエリスの力である。
はしゃぐ華蓮は、電車に手を伸ばした。
電車を鷲掴みに出来るほどには、今の華蓮の手のひらは大きい。
そのままパンタグラフを引きちぎり、10両編成の電車を持ち上げてしまった。
何百人もの人間を運ぶ事が出来る鉄の塊を持ち上げても、大して重さも感じない。
圧倒的な自分の力に酔いしれ、少しの間、華蓮は電車を眺めた。
それからビーチの道へと戻り、屈みこむと、自分達が乗るはずだったバスも手にとって持ち上げてみた。
…なんて小さいんやろ?
何故、こんなものに頼って、ビーチまで行こうとしたのだろうか、自分達は。
まるで玩具のミニカーじゃないか、こんな物。
自分の手のひらに、何台かまとめて乗ってしまいそうなバスを見て、華蓮は馬鹿馬鹿しくなってきた。
巨人の手のひらで掴まれ、金属製の車体がみしみしとゆがむ音は、地面に居る小人達へと響いていた。
パニックになり、逃げ惑う小人達。その大きさと力に、人々は圧倒されるしかなかった。
だが、中には、比較的賢い者も居た。
彼女達がその気になれば、どこへ逃げようとしても踏み潰されてしまう事だろう。
開き直って、華蓮とエリスの姿を眺める者が居た。
足元から巨人を見上げてみる。
健康的に肉が付いた巨大な足が、黒いストッキングを履いて身体を支えていた。
華蓮やエリスが履いているのは、ヒールが高くなった、ピンヒールのストラップサンダル。
バスや電車を持ち上げても、それは微動だにしない。
悠然と斜めに立つ、ヒールがついたサンダル。女巨人の踵を支えるヒールですら、自分達の背よりも遥かに高いのだ。
もしも、こんなヒールで体重をかけて踏まれたら…
目を奪われて、言葉も出ない。
そんな巨大なサンダルが高々と空へと上がり、轟音と共に地面を踏みしめながら歩いていくのだ。
まるで、世界そのものが、この巨人達の玩具になってしまったような錯覚を感じてしまう。
その頃、エリスは怒りが篭もるめで足元を見ていた。
その目は、道に並ぶ車の列に向けられていた。
「あら、車が捨ててあります。
とても勿体無いですね」
淡々としたエリスの声が響く。違法駐車の車の列を見ての言葉である。
こうした違法駐車がバスの運行を遅らせ、混雑を助長しているのだ。
次の瞬間、違法駐車の車は、空から降ってきた巨大な柱…エリスのサンダルのヒールによって潰されてしまった。
1台、2台と、違法駐車の車が、巨大なサンダルのヒールで踏み潰されていく。
…なるほど。彼女達のサンダルで踏まれると、こうなってしまうのか。
彼女達のサンダルのヒールと背比べをしていた男は、その壮観さに目を奪われた。
遠くのビーチに居た車の持ち主達は巨人に文句を言う事も出来ず、ただ、呆然とするのみだった。
華蓮とエリスは地響きを立てながらビーチへと歩く。
まだ、ビーチのパニックは終わらない。

3.浜辺

道路のパニックに比べれば、多少、ビーチは平穏だった。
巨人達は特に人々に危害を加えて回る様子でも無かったので、距離を取って海水浴を続けようとする勇敢な者さえ居た。
華蓮とエリスは、程なくビーチへと着いた。
広大な砂浜が、巨人達を出迎える。
「なんや、意外と空いとるな?」
少し意外そうに、人気が無いビーチを見渡す華蓮。
「私達の姿を見て、皆さん逃げてしまったのでしょう。
こんなに可愛い私達を見て逃げ出すとは、失礼な話ですね」
大して怒った様子も無く、エリスは言った。微かに膨らました頬は、確かにその大きさを別にすれば可愛らしい仕草だ。
だが、こんな風に人が居ない事は彼女達にとっては好都合である。
人が居ないなら、このまま水着に着替えてしまおう。
まあ、人が居たとしても大して問題ではない。。
一体、誰が、人間の身長よりも高いヒールのサンダルを履いた巨大な娘達に悪戯などする事が出来るだろうか?
女巨人達は靴を脱ぎ、持ち物を詰めた鞄を道路へと放り出す。それらは道を塞いで、逃げようとする小人や、面白半分に見物に来ようとする小人の邪魔をした。
外したアクセサリーや脱いだ服は、地面に置いてしまっては汚れてしまうので、その辺に建ち並んでいる高層ホテルにかけておいた。
黒いストッキングが高層ホテルの屋上から地面まで垂れ下がり、窓を塞いでしまう。
そうして、しなやかで健康的な裸体を晒しながら、水着へと着替える二人の女巨人。
彼女達が着替えるだけでも小人達にとっては非常に迷惑な事だが、華蓮もエリスも別に気にしない。
道も、ビーチに並ぶ高層ホテルも、彼女達にとっては単なる荷物置きに過ぎなかった。
彼女達が脱いだ服の重みで、高層ホテルが倒れそうになっても、華蓮とエリスは面白そうに見物するだけである。
着替えすらも、遊びだった。
そんな風に水着に着替えた後、いよいよ華蓮とエリスは海へと乗り出した。
25メートルプールの水よりも大量の水を一気に手のひらですくって、お互いにかけあう。
巨人となった華蓮やエリスにとっても、海は広大だった。
それでも、ぱしゃぱしゃと、彼女達が波と戯れると、膝の辺り…数十メートルの高さまで水しぶきが上がる。
その余波は、彼女達が思った以上だった。
ビーチの観測記録を越える大波が、浜辺へと押し寄せた。
距離を取って、水遊びをする女巨人を見物していた者や、かろうじてビーチで海水浴を続けていた者も、高さ数十メートルの波には困ってしまった。
華蓮とエリスが起こした小さな波と、彼らは必死に格闘した。
そんな小人達の様子を眺めつつ、邪魔する者が居ないビーチで、華蓮とエリスは思う存分に遊んだ。
唯一の誤算は、彼女達が起こした大波が高層ホテルを襲い、そこに立てかけてあった衣類を濡らしてしまった事だった。
帰り道、塩水でベトベトになった服を着て、とぼとぼと二人は帰る事になるのだが、華蓮もエリスも、まだその運命には気づいていなかった…

(完)

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(ライター通信もどき)

毎度ありがとうございます、MTSです。

普通に道を歩いて、着替えて、水遊びをするだけでも、
巨大娘がやると大変な事になりますよね。

しかも1人じゃなくて2人とは…

ともかく、お買い上げありがとうございました。
また機会があったら、よろしくお願いします。

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PCシチュエーションノベル(ツイン) -
MTS クリエイターズルームへ
東京怪談
2009年04月16日

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