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『メイドさんのミニチュア遊び 』
エリス・シュナイダー1178)&(登場しない)

作 MTS

1.ミニチュア遊び

あまり感情を表に出さないのは、淡々とした雑務を繰り返す事による慣れだろう。
メイドという仕事柄、屋敷内の様々な仕事を機械的にこなす多い為、時としてその表情まで機械的に見える事もある。
とはいえ、このメイド…エリス・シュナイダーに感情が無いわけではない。
楽しいことがあれば笑いもするし、気に入らないことがあれば怒りもする。
一日の仕事が終わった午後のひと時は、そんなエリスが笑う為の時間であった。
メイドの衣装を身に着けたまま、別邸にある自室に戻るエリス。ある意味では、これから行う『遊び』が、エリスの今日の最後の仕事とも言えた。
木製のドアノブを回し、部屋へと入る。
部屋に置いてあるテーブルや戸棚は、どれも使用人の部屋にしては豪華すぎた。
安っぽいプラスチック等は使っておらず、高価な木材を基調にして製作された逸品ばかりである。主人がエリスの事をどれだけ重用しているか、部屋を見ただけでわかるというものだ。
自室に入ったエリスは、戸棚を開ける。そこには、彼女の玩具…遊び道具が入っている。
様々な乗り物や、建物のミニチュアが、暗い戸棚にしまわれていた。
スポーツカーや大型バス等の車を初めとして、戦車や戦闘機、航空母艦等の兵器のミニチュアも並んでいる。
それらは全てエリスの手のひらに乗るサイズであったが、材質から装飾に至るまで、作り物とは思えない位に精巧であった。
「さあ…今日は何をして遊ぼうかしら?」
戸棚の中のミニチュアを見下ろして呟くと、エリスは右手の手のひらを開いて、そこに視線を注いだ。
すると、彼女の手のひらの上に、高さ10センチ程のビルのミニチュアが現れた。
「うふふ…高さが100メートルあるビルも、1000分の1サイズまで縮めてしまえば、わたくしの手のひらに乗ってしまいますわね」
何やら呟き、満足そうに微笑んでビルに視線を注ぐと、左手の指でビルの頂上付近を摘み、持ち上げた。
それから、右手の指をビルの底面付近に伸ばすと、しっかりと力を入れて摘んで、その感触を楽しむ。
だが、彼女は急に不機嫌そうな表情を浮かべた。
「あら、手抜き工事のようですね。随分と鉄骨が脆いですわよ?
 仕方ないから、処分して差し上げます」
エリスは自分の手のひらに現れたミニチュアの手触りが気に入らなかったのだ。
少し怒った表情を浮かべて指に力を入れると、ビルがみしみしと、軋むような悲鳴を上げ始めた。だが、彼女の指は構わずに、そのままビルのミニチュアを真っ二つにへし折ってしまった。
もしも、このミニチュアのビルの中に人が居たとしたら…
きっと彼らは、メイドの巨大な指先が自分達のビルを摘み上げ、まるで割り箸でも折るかのように、そのビルを鉄骨ごとへし折ってしまう光景を、ガラス窓越しに見物する事が出来ただろう。
アスファルトと鉄骨の残骸となった、かつてはビルだった物体を、エリスは危険物入れのゴミ箱へと捨てた。
「相変わらず…手抜き工事が多いですわね」
メイドの手によって、簡単にへし折られてしまうビルの脆さに、エリスは呆れた顔を浮かべる。
その日、とある街に存在するビルが、中の住人ごと消え去って行方不明になったというニュースが流れたのは、別の話である。
行方不明になったビルの形が、エリスが手のひらに呼び出したミニチュアのビルと全く同じ形だったという事も別の話である。
そういえば、冬の寒い日に、エリスが暖かく燃える星のミニチュアを手のひらに呼び出して暖房代わりにした時には、夜空の星が一つ消失した事が大ニュースにもなったが、きっと気のせいだろう。
確かな事は、エリスが玩具にして遊ぶ気になれば、どんな物でも彼女の手のひらサイズにされて、彼女の手のひらに載せられてしまう事である。
「今日は、新しいお車のミニチュアで遊ぼうかしら?」
戸棚の中のミニチュアを撫で回したり、戯れに力を込めて握ったりしながら、エリスは呟いた。
そのうち、彼女の力に耐え切れなくなった小さなミニチュアが壊れてしまう事もあるが、そんな時は新しいミニチュアを呼び出せば良いだけの話である。
玩具のミニチュアが壊れようとも、それはエリスにとっては大した事ではないのだ。
やがて、彼女の手のひらの上に新しいミニチュアが出現した。

2.無限の手のひら

車の運転手は戸惑っていた。
…ここはどこだろう?
アスファルトとも土とも違う白い大地が、どこまでも続いていた。
少し暖かく、弾力を感じる感触は、まるで人肌のようだった。
…いや、人肌そのものだと思えた。
「わたくしの手のひらの上に、ようこそ。車のミニチュアさん」
運転手は恐ろしく大きな、女の声を聞いた。
車から身を乗り出して空を見上げると、巨大な顔が車を見下ろしていた。
メイド用のカチューシャを頭に飾った、巨大で無表情な女の顔は、エリス・シュナイダーのそれと同じだった。
空から見下ろす巨人は、彼に語りかける。
「貴方は今から、わたくしの玩具です。
 壊れてしまうまで可愛がって差し上げますから、一緒に遊びましょうね」
無表情に言葉を紡ぐ、女巨人の唇。
運転手は、あわててアクセルを踏み、車を走らせた。
このどこまでも続く大地は、女の手のひらの上だというのか?
手のひらの上では、逃げ場などあるはずも無い。
だが、それでも運転手は車を走らせた。
どこまでも続く巨人の女の手のひらの上を、1万分の1程に縮小された車は走る。
…うふふ、全く、不思議ですわね。
新しく呼び出したミニチュア、特に、乗り物のミニチュアの場合には、こうした事がよくあるのだ。
戦車や戦闘機を呼び出すと、エリスに攻撃らしき行動を加えてくる事もあった。もちろん、彼女を包むメイド服には傷一つさえ、付けられないが…
一般車のミニチュアを呼び出した場合には、こういう風に走り出すことが多いのだ。
そんな時、エリスがする事は決まっている。
「うふふ、お逃げになる事は許しません。
 わたくしの手のひらからは、どこへも逃げる事なんて出来ないですわよ?」
少し微笑みながら、声をかける。
それから、さらに車のミニチュアを縮小してやるのだ。
数千分の1から、数万分の1へ。
もう、見る事すら出来なくなってしまうが、やがて、車はエリスの手のひらの上の微かな溝にはまって動けなくなってしまう。
何者も、彼女の手の上から逃れる事など出来ない。
彼女のミニチュアは、彼女の玩具になるしかないのだ。
自分の手のひらの上を這いずって逃げ回るミニチュアの車を思い浮かべて、エリスは恍惚の表情を浮かべる。
それから、しばらくの後…
…ここはどこだろう?
車の運転手は戸惑っていた。
気が付けば、どこまでも続く木製の大地の上に居た。
まるで、建物の床のような場所だ。
巨人の手のひらの上で、しわの間に挟まって動かなくなってしまった事までは覚えている。
もう、車は動かなくなっていた。
「わたくしの思い通りにならない不良品の玩具は、処分して差し上げますわね」
そして、また、運転手は女の大声を聞いた。
車を降りて、周りを見渡すと、巨大な黒い土台に支えられた黒い柱が二本、そびえたっているのが見えた。
それは紺色の布の塊…メイド服を纏った巨大な女の体を支える柱、彼女の足だった。
巨大な黒いローファーが大地を踏みしめ、黒いストッキングを履いた足が、柱のようにそびえ立っている。
紺色のメイド服を着た女巨人が、車を見下ろしているのだ。
その全長は200メートル近くあるように見えた。
やがて、全長が200メートルもある女巨人が足を上げると、運転手は黒いローファーの靴裏が、まるで夜の闇のようだと思った。
それから、エリスは100分の1サイズにしたミニチュアの車の上に、ためらう事なく足を降ろした。
ぐしゃ!
エリスのローファー越しに、勢いをつけて体重をかけられたミニチュアは、ひとたまりもなく潰されてしまった。
取るに足らない、遊びである。
ミニチュアが壊れてしまっても、新しいミニチュアを呼び出して遊べば良いのだ。
彼女は自分の足の下で廃車となったミニチュアの車を、メイドらしく手馴れた手つきでゴミとして処分した後、新しいミニチュアの車を呼び出した。
欲しいと思えば、いくらでも代わりは手に入るのである。
新しい玩具が、次々に彼女の手のひらの上に現れる。
それを、彼女は手に取り、気が済むまで玩具にし続けるのだ。
彼女が望む限り、彼女は全てをミニチュアの玩具に出来るのだから…

(完)


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(ライター通信もどき)

お買い上げありがとうございます、MTSです。

今回もサイズフェティッシュ系かなと思ったので、
そのように書かせて頂きました。

また、ミニチュアが壊れても惜しくないという事なので、
エリスさんは、ぼの系じゃなくて残酷系かと思いましたので、
そういう風に書いております。

ともかく、お買い上げありがとうございました。
また機会があったら、よろしくお願いします。

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PCシチュエーションノベル(シングル) -
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東京怪談
2008年12月15日

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