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『雪の兎、一つの想い…… 』
リラ・サファト1879

「わぁ〜羽月さん、何か空から降って来ましたよ?」
「ん?ああ……雪だな」
 曇り空からチラリチラリと白い雪が降り始め、先程までの景色を白く白く染め上げて行く。冷え込みが厳しかったのだろうか?降り始めた雪は見る間に積もり始めていた。
「雪とは何ですか?」
「雨が降るだろう?今日の様な寒い日には、雨が結晶化し雪と言うものに成り降って来る。此方に来てからは、初めて見るな」
 何所か好奇の瞳を向けるリラ・サファトに、藤野 羽月はリラに着せるべき着物を用意していた。
 本日、元旦……新しき年の初めを、羽月の故郷の風習に則り迎えたいとリラが望み、羽月が応えた。故に二人は今、此処ソーンに構えた羽月の家に居る。
「どんどん白くなってますね?少し外に出て構いませんか?」
 興味津々、目をキラキラさせながら問うリラに羽月はちょっと苦笑い。
「風邪を引くといけない、少しなら良いだろう」
 その答えに、ニッコリと笑顔で縁側の窓を開け、履物を履く。
「きゃっ!?冷たい……」
「水が冷えて結晶化しているからな、冷たいのは道理だ」
 同じ様に履物に足を通した羽月が先に庭に降り、そっとリラに手を差す。その手を、微笑を浮かべリラが掴みそっと庭に降りた。
 キュッ……
 踏み締められた雪が、軽い音を立てるのを聞きリラが目を丸くし羽月を見詰める。
 キュッ……
 微笑み羽月もまた雪を鳴らす。
「不思議ですわ。音が鳴るなんて」
「確かに……だが、雪とはこう言う物だ」
 羽月がそっとリラの顔の前に手を差し出すと、掌に雪が乗り溶けて水に成る。リラもまたそっと手を差し出し、その上に雪を乗せれば同じ様に水に成る。
「本当に不思議ですわ。水がこんな形になって降って来るなんて」
「うむ……自然の成せる業だな」
 徐に羽月がリラの手を離し、雪を掴み丸め出す。何をしているのだろう?と不思議そうに見詰めるリラに微笑み、羽月は二つ雪玉が乗った物を差し出した。
「雪だるまと言う物の小さい奴だ」
 そっと受け取りしげしげ眺める。
「小さい物と言う事は、普通はもっと大きいのですか?」
「うむ、大きいな」
「どれ位でしょう?」
「リラさん位はあるかな?」
 えっ!?と息を呑み驚くリラだが、徐々に目が興味に染まって行く。
「羽月さん、作りましょう!」
「雪だるまか?」
「はい!」
 嬉々とした返事に、羽月は微笑み頷いた……

「ほら、動いては駄目だ」
「ですけど……クシュン!」
 思わず出たくしゃみに体がビクリと動き、着付けをしていた羽月の手を止める。
「少々長く居すぎたか?寒いか?」
「いえ、そう言う訳では有りませんので、どうかご心配無く」
 心配気に見詰める羽月に、笑みで返すリラの姿は艶やかな振袖に包まれている。最後の仕上げの帯なのだが、やはり慣れないと苦しい物であるのだろう、もぞもぞとリラが動いてしまう為なかなか終わらない。ちょっとずつ調整しながら、何とか羽月が帯び締めを完了し、リラ振袖姿完成である。
「これが、羽月さんの国での正装ですのね♪綺麗ですわ♪」
 そう言うと、くるりとその場で一回転。袖がフワリと広がり華やかな空気を齎す。鮮やかな桃色に染められた地色に、草花の柄が美しく映える……正にリラにぴったりの振袖である。
「うむ」
 その姿を見て微笑む羽月の姿もまた、黒紋付羽織袴の礼装である。
「ニャ〜」
「あっ茶虎♪おいで♪」
 トテトテとやって来た飼い猫の茶虎を抱え、リラが縁側へと歩を向ける。とは言え、慣れない着物の為当然だがバランスを崩す。
「きゃっ!?」
 短い悲鳴の後、前のめりに倒れそうに成るのを羽月が後ろから支える。
「慣れぬ物を着ているのだ、余り急に動くは控えた方が良い」
「ごめんなさい……」
 真っ赤になり俯くリラに、羽月も頬を染めリラの手を取り縁側へ。外の景色は、未だ降っている雪の為白一色。
「綺麗ですわ……」
「うむ……」
 そっと縁側に腰を下ろし、二人並んでその景色を見詰める。庭には大きな雪だるま……庭にある葉を使い、目や鼻を付けた。作っている最中に、土台が余りにも大きくなりすぎてしまい、頭がちょっぴりちっちゃいのが不恰好と言えば不恰好だが、それはそれで良いかも知れない。
『明日には、もう少し頭を大きくして上げますわ』
 内心思いながら、リラはちょっぴり不恰好な雪だるまを微笑みながら見詰めた。
 二人で雪合戦もした。リラがはしゃぎすぎて足を滑らしこけた所に、羽月の雪玉がヒットしふてくされたり、反撃にと沢山の雪玉を投げたが一発も当たらなかったり、逆に反撃を食らったりと兎に角楽しんだ。
 そんな跡は、今や降り続ける雪に消されているが、二人の心にはしっかりと残っている。
『明日はかまくらが作れるかもな』
 羽月がそんな事を思っていると、そっと肩に触れるものがある。目をやればリラがその頭を寄せていた。
「明日は何をして遊びましょう?」
「かまくら……作ってみるか?」
 微笑む羽月を見上げ、「はい」と微笑むリラ。そのリラの頭を、羽月は優しく撫でる。
「雪国で良く作られる物で、雪の家……と言えば良いのか?雪だるまを作るより少々大変だが……」
「大丈夫ですわ、羽月さんと一緒に作るんですから」
 羽月の手をそっと取り自分の頬に当て、リラは目を閉じる。「そうか」と呟いた羽月は頬を染めながら微笑んでいた。そんなリラの膝の上には、茶虎が気持ち良さそうに目を閉じ、寝息を立てていた。
 静かな時間が流れて行く、それはかけがえの無い平穏な時……ソーンと言う見も知らぬ世界にやって来て、久しく味わう事の出来なかった幸福な時……互いの温もりと鼓動が心地良く二人を包み、互いに寄り添い降り行く雪を見続ける。そんな二人の傍らには、御盆に乗った雪兎が二匹、寄り添う様に置かれていた。
 一つは大きく、そして一つは少し小さい……リラと羽月それぞれが作りそれぞれをイメージしたのかも知れない。そんな雪兎の中に、二人は贈り物を隠した。
 リラは、羽月に初めて贈った檸檬飴……あの頃贈った物よりずっとずっと想いを込めて作った。
 羽月は、鈴蘭の花を模した指輪……濡れない様にと小さな木箱に入れて、想いを込めて……寄り添う兎は、二人の想いの証である様に……
 そっと遠慮がちにリラの腕が羽月の腕に絡まるのを感じ、羽月はリラを見詰めた。頬を染め、気恥ずかしそうに羽月を見詰めるリラは、ゆっくりと口を開く。
「明けまして、おめでとう御座います。羽月さん」
「……ああ。明けまして、おめでとう。リラさん」
 微笑み返す羽月を見詰めた瞳がゆっくりと閉じて行く。羽月の顔が自然とリラに近付いて行く……そして、柔らかな口付け……
『『今年一年が、あなたと共に過ごせる良い年であります様に』』
 二人の想いが重なり行く中、平穏で幸せな時間は続いて行く。
 外は雪……チラチラと、静穏な時を刻んでいた……





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┏┫■■■■■■■■■登場人物表■■■■■■■■■┣┓
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┗━┛★あけましておめでとうPCパーティノベル★┗━┛゜

【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

1879 / リラ・サファト / 女 / 15歳 / 不明

1989 / 藤野 羽月 / 男 / 15歳 / 傀儡師

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■         ライター通信          ■
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 この度は、あけましておめでとうパーティノベル・2005発注頂き誠に有難う御座います。(深礼)
 担当させて頂きました、凪 蒼真と言うへっぽこライターで御座います。

 納品が遅れてしまって誠に申し訳ありません。深く深くお詫び申し上げます。(深礼)
 もっと早く書ける様に精進致して行く所存ですので、また機会がありましたら、どうか宜しくお願い致します。
 
 御二人の雰囲気を壊さぬ様、留意し書いたつもりではありますが……もし、イメージを壊してしまったら申し訳ありません。(汗)
 久しぶりのほのぼの発注でしたので、色々考えて書かせて頂きました。この話が、御二人の心を和ませる事が出来たらとても嬉しいです。
 また機会がありましたら、お会いしたいですね♪
 
 それでは、今回は本当に有難う御座いました。
あけましておめでとうパーティノベル・2005 -
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聖獣界ソーン
2005年01月24日

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