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『夏の思い出〜お祭り〜 』
雪代 蛍(gb3625)

茹だるような暑い夏の日。
体力も気力も奪いそうな暑い日々が続くけれど、
嫌な事ばかりではない。

「‥‥夏祭り、か」

7月になる前から色んな場所に貼られた『夏祭り』の案内広告。
今日は夏祭りの当日であり、街を歩く人達もどこか浮かれているように見える。

「行ってみようかな」

視点→雪代 蛍

「‥‥お祭り、かぁ」
 雪代 蛍は鏡に映った自分の姿を見ながらぽつりと呟く。
 今の彼女が着ているのは、普段着ている制服ではなく、薄桃色の可愛らしい浴衣。お祭りに行こうと蛍の彼氏、七海 鉄太から誘われた時にもらった浴衣だった。

「蛍にすっごく似合うと思うよ、これ着てお祭りに行こう!」

 いつものような子供っぽい笑顔で言いながら浴衣を渡してきた鉄太に、蛍は少しだけドキッと胸が高鳴るのを感じていた。
(‥‥何か、昔とはずいぶん違ってきた感じ‥‥)
 そっと鏡に手を当てながら蛍は心の中で呟く。鉄太と出会い、付き合うようになってから随分と時間が経ったような気がするし、そうでもないような気もする。
 だけど最初に出会った時とは明らかに自分の姿は変わっていた。
(胸も大きくなってきたし‥‥女らしくなってきた――って言うのかな。これも恋してるおかげ‥‥つまり、鉄太のおかげなのかな?)
 ふふ、と小さく微笑みながら蛍は時計に視線を向ける。鉄太と待ち合わせの時間はもうそこまで迫っていて、蛍は慌てて身支度を整えて、鉄太との待ち合わせ場所まで向かった。

 夏という事で、色んな場所でお祭りをしているけれど、今日2人が向かうのはラストホープでしているお祭りではなく、鉄太の故郷で行われているお祭りだった。
 規模も小さく、賑やかではないけれど鉄太がどうしても蛍と一緒に行きたいと言って、2人は少し遠出をする事になった。
「あ、蛍! やっぱりすっげぇ似合う!」
 まるで犬のしっぽのように手を何度も振りながら大きな声で蛍を呼び、浴衣姿を褒める。
「‥‥もう! 鉄太ってば‥‥あんまり大きな声で言わないでよ‥‥他の人、みんな見てるじゃない」
 鉄太があまりにも大きな声で叫ぶものだから、周りの大人たちからは「あらあら、可愛いわねぇ」とからかうような視線が向けられている。
「‥‥でも、ありがと。この浴衣、高くなかったの‥‥?」
 恥ずかしげに俯きながら蛍が言うと「いーんだよ。俺が蛍に似合うだろうなって思って買ったんだから! おもちゃの飛行機とどっちがいいかすっごく悩んだんだけどな!」と鉄太が言葉を返す。
(‥‥おもちゃの飛行機と浴衣、悩まないでよ‥‥)
 蛍は心の中で呟き、はぁ、とため息を吐きながら「とりあえず、何か食べよっか」と鉄太と手を繋いで、お祭りの中を歩いていく。
 だけど、お祭りの雰囲気とは逆に鉄太は真剣な表情でお祭りの様子を見ていた。
「‥‥鉄太? どうしたの‥‥? 何か、変だよ」
 鉄太の様子がおかしい事に気づき、蛍が問いかけると「‥‥うん」と鉄太はしょんぼりとした表情で曖昧に言葉を返してくる。
「昔のこと、思い出してた‥‥」
「昔の、こと‥‥?」
 蛍が問いかけると、鉄太は蛍の手を引いて人気の少ない公園へと移動していく。
 そこで鉄太はブランコに乗って「‥‥昔って言っても、俺にとってはまだそんなに昔のことじゃないんだ‥‥」と言葉を紡ぎ始める。
 鉄太の言葉とブランコの軋む音がやけに寂しく聞こえて、蛍は少しだけ悲しそうに表情を歪める。
「まだ、お父さんもお母さんも一緒だったころ‥‥こうやってお祭りに連れてきてもらって‥‥とうもろこしとかイカ焼きとか、りんご飴とか‥‥こんな時しか食べられないから、すごく嬉しくて、いっぱい買ってって強請ったりして‥‥」
「‥‥鉄太‥‥」
「あの頃、お父さんもお母さんもいなくなるなんて考えたことなくて‥‥気がついたら、俺‥‥18歳になってるし、お父さんもお母さんもいなくて1人ぼっちだし‥‥」
「‥‥1人ぼっちじゃないよ、鉄太」
 蛍がポツリと呟く。
「鉄太は、あたしがいるじゃない‥‥1人ぼっちなんて、悲しい事言わないでよ‥‥」
 寂しそうに泣く事を我慢する鉄太が痛々しくて見ていられなくなり、蛍はこれ以上ここにいるより、帰った方がいいかもしれないと判断してラストホープの鉄太の部屋へと帰って来ていた。
「鉄太、我慢しないで泣いてもいいんだよ? あたしだってたくさん泣いて受け入れたんだから‥‥」
 蛍が鉄太をあやすように頭を撫でながら呟くと、鉄太は蛍の腕を引いて強く抱きしめる。
「ちょ、て、鉄太‥‥っ!?」
 突然の鉄太の行動に蛍が驚いていると「うっ‥‥ぇ‥‥」と鉄太は蛍を強く抱きしめながら小さく嗚咽を漏らしていた。
(‥‥鉄太‥‥)
 いつもは元気にふるまっていても、ふとした事で家族への想いがあふれてしまう事があるのだろう。
「蛍はずっと俺と一緒にいてくれる? 俺の前からいなくなったりしない? 俺を置いて死んだりしない‥‥?」
 まるで捨てられた子犬のような視線を蛍に向けながら鉄太が問いかける。
「‥‥いなくなったりしないよ、鉄太を置いてどこにも行かないし、死んだりしない」
「うん‥‥ありがとう‥‥」
 そっと鉄太の唇が蛍の唇に触れ、そのままベッドの上に押し倒されてしまう。
「‥‥ちょ、て、鉄太っ!? な、何して‥‥」
「あれ? 俺、何か間違ってる?? 本にはこういう風に書いてたんだけど‥‥」
(な、何の本を読んでるの!?)
「まっ‥‥」
 待って、と言いたかったけどその言葉を言うたびに鉄太の瞳が震えている事に気づき、蛍は小さくため息を吐く。
(こんなんじゃ『待って』なんて言えないよ‥‥)
 流されるように、というわけではないけど蛍は抵抗するのをやめて、そのまま身を任せる事にする。

「‥‥ん」
 気が付くとすでに朝になっていて、目の前に鉄太の顔があり、蛍は驚いて慌てて起き上がる。
(そうだ‥‥あたし‥‥)
 昨晩の事を思い出して、蛍は顔を赤く染めながら「バカ鉄太」と小さく呟く。
 そして、眠る鉄太に「もう2人とも、子供じゃいられなくなっちゃったね‥‥」と呟き、鉄太の頬にキスをしたのだった。


END



―― 登場人物 ――

gb3625/雪代 蛍/14歳/女性/ハーモナー

gz0263/七海 鉄太/18歳/男性/ふぇんさー

――――――――――

雪代 蛍様>

こんにちは、いつもお世話になっています。
今回はご発注いただき、ありがとうございました!
内容の方はいかがだったでしょうか‥‥?
気に入っていただける内容に仕上がっていれば良いのですが‥‥!

それでは、今回も書かせていただきありがとうございましたっ!


2011/8/25
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2011年08月25日

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