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『眠りの美少女のエピソード 』
ファルス・ティレイラ3733)&(登場しない)

★好奇心は危険のはじまり?
「わあっ……! スッゴク綺麗な所ね。それにとても強い魔力を感じるわ。うふふっ、情報は正しかったみたいね」
 ファルス・ティレイラ(3733)はクリスタルでできた洞窟の中ではしゃいでいた。
 事の起こりは数日前、街で知り合いの旅人と偶然出会い、この洞窟のことを聞いたのだ。
 山が数多く連なり、更にその奥の部分にある洞窟から、とてつもなく強い魔力を感じたらしい。けれどもしかしたら何かの罠かもしれないと思い、旅人は洞窟に入らなかった。
 だがティレイラは魔法を使えるので何かあっても大丈夫だろう、興味があったら行ってみると良い――と言われたのだ。
 そしてティレイラは早速、行くことにする。
 山に入ると周囲に誰もいないことを確認して、頭に角、背中に紫色の翼、体に尻尾が生えた姿となり、山の上を飛び始めた。
 旅人から貰った地図を頼りに飛んで行き、目的の洞窟を見つけると下りる。
「聞いていた通り、確かにこの洞窟の奥からは強い魔力を感じるわね。でも中は暗そう。火の魔法を使って、灯りにしようっと」
 片手に火の玉を作り出し、ティレイラは地面に下りて洞窟の中を歩き始めた。
「中はクリスタルでできているのね。神秘的だわ」
 ふと歩いているうちに、奥から水音が聞こえてくることに気付く。
「洞窟の奥に水場があるのかしら? だとしたら、その水が魔力を持っている可能性があるわね」
 そして洞窟の奥にたどり着いた時、ティレイラは幻想的な光景に驚いた。
「何て美しいのかしら……!」
 洞窟の奥は広くて大きく、巨大なクリスタルが何本も生えており、中心には丸い池がある。どうやら沸き水らしく、そこから溢れて出てくる魔力によって、この場は灯りが必要ないほど明るかった。
「……もしかしてこのクリスタルは、魔力を持つ水によって作られたものかな?」
 ティレイラはクリスタルでできた天井や床、壁を見て、腕を組んで考える。
 洞窟から溢れ出る魔力といい、水の魔力は思っていたより強いようだ。
「それなら嬉しいことね。早速持って帰ろうっと♪」
 持ってきた水筒の水をその場で全て飲み干すと、ティレイラは池に近付く。
 だが水に触れようとした時、池から黒く大きな光の塊が浮かび上がる。
「なっ何?」
『何?じゃなーいっ! 勝手にアタシの縄張りを荒らさないでよねっ!』
 黒い塊から、一人の少女が現われた。
 少女は頭に二本の角、背中には大きな黒いコウモリの翼、腰には細く長い尻尾が生えている。
 人間離れした容姿を持つ少女を見て、ティレイラは真剣な顔付きになった。
「あなた……魔族ねっ!」
『そうよ。そしてここはアタシのお昼寝の場所なの』
 魔族の少女は赤いミニドレスを着ており、長い金髪に赤い大きな眼をしている。一見は可愛らしい美少女だが、彼女の体から溢れ出る魔力はそこら辺にいる魔族よりも上だ。
「じゃあこの洞窟は、あなたが作ったの?」
『ええ。前はしょーにゅーどーってヤツだったけど何か陰気臭かったし、変えたのよ』
 少女は池の上に浮きながら大きく伸びをし、かったるそうに欠伸もする。
「……あっ、そう。まあ良いわ。この水、魔族が作り出したとはいえ、竜族の私には毒にもならないしね。ねぇ、この水を少し分けてくれないかな?」
『イヤよ』
 すかさずの即答に、ティレイラの笑みが引きつった。
『アンタ、何を聞いていたのよ? ここはアタシのお気に入りの場所なの! 作るのに苦労したんだから!』
 どうやら少女は自らの魔力を満たした空間で眠ることで、身も心も安らぐらしい。
 しかしティレイラはせっかく見つけた魔力の水を、このまま諦めるつもりはなかった。
「ほっほんの少しでいいの! この水筒に入るぐらいでいいからっ!」
『だからイヤ。一口だって、あ・げ・な・い』
 最後にアッカンベーまでされて、ティレイラの作った笑顔はとうとう崩れる。
「……人がせっかくここまで丁寧に頼んでいるというのに。流石は魔族ね! 性格が悪いわ!」
『ふーんだっ! 勝手にアタシのお昼寝場所にずかずか入り込んできた厚かましい女に、何言われたって痛くも痒くもないもん!』
「なっ何ですってー! そんなに大事な場所なら、入口に扉でもつけておきなさいよ!」
 言い終えると同時に、ティレイラは手に持っていた火の玉を少女に向かって投げた。
『きゃあっ!』
 少女がギリギリに避けたので、火の玉は壁にぶつかって消滅する。
『いきなり何するのよ!』
 怒った少女が片手を上げると池の水が浮かび上がり、複数の手のひらサイズの水の球となって、ティレイラの上から降り注ぐ。
「ふんっ! こんな水の球、こうしてやる!」
 ティレイラは水の球と同じ大きさの火の球を作り出して放つ。
 空中で水と火の球がぶつかり合い、水蒸気爆発が起こる。
「熱っ……! 今の攻撃は互角ってところね」
 水蒸気を全身に浴びながら、ティレイラは白く染まった視界が落ち着くのを待つ。
 だがその間、少女は口元にイヤな笑みを浮かべていた。
 そして視界が開かれると同時に、攻撃は再開される。ティレイラは得意の火の魔法を使い、少女は洞窟の水を使って攻撃をしていく。
 しかし徐々に池の水は減っていき、少女の攻撃も弱まってくる。
「随分、水をかぶっちゃったわね。でも勝機は見えてきたわ!」
 ずぶ濡れになりながら、ティレイラは得意げな顔をした。
 戦いの最中、少女の顔は無表情になっていたが、不意に不気味な微笑みを浮かべる。
『――ねぇ、体、大丈夫?』
「疲れてはいるけどね。魔力がこもった水を浴びているおかげで、魔法はまだまだ使える……わ、よ?」
 ティレイラは言われて気付く。体が硬直し始めていることに。
「まさかっ!」
 慌てて翼を動かそうとするも、まるで金縛りにあったかのように指一本動かせなくなっていた。それどころか、足元から体がクリスタル化していく。
「いつの間にこんな魔法をっ……いえ、違う。この洞窟と同じことになっているんだわ!」
『アーハハハッ! ようやく気付いたぁ?』
 少女は高笑いをして、クリスタルの床に降り立つ。
「くぅっ!」
 ティレイラは赤い瞳に涙を浮かべながら、悔しそうに少女を睨み付ける。
 この洞窟はそもそも、魔族である少女の魔力を含んだ水によって、鍾乳洞からクリスタルへと変化したもの。つまりあの水に触れてしまえば、洞窟と同じようにクリスタル化してしまうのだ。
 そのことに気づかず、ティレイラは水をたっぷりと浴びてしまっていた。
『ああ、でも安心して。殺しはしないから。生きたまま封印したほうが、その姿を美しく保存できるのよ。竜族の女なら、このぐらいは平気よね?』
 少女は楽しそうにはしゃぎながら、ティレイラに近付いて来る。
『ここ最近、ただお昼寝するのも飽きちゃっていたところだったしね。しばらくは一緒にここにいましょう』
「いっ……イヤァーーーッ!」
 ティレイラは絶叫するも、すぐに全身がクリスタル化してしまった。
『うふふっ。これだから、ここが一番のお気に入りなのよね。魔力を込めた池を作るのは苦労するけど、それに惹かれてやってくる者達をクリスタル化するのはたまらなく面白いんだもの。さて、池が空っぽになっちゃったことだし、しばらくはまたここでお昼寝しよーっと。……この竜族の女と一緒に、ね』
 ニヤっと笑うと、少女は片手を上げる。
 すると洞窟の入口が土の壁に覆われ、中は隠されて見えなくなってしまった。
PCシチュエーションノベル(シングル) -
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東京怪談
2013年11月11日

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