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『夢見る結婚式は大騒動! 』
リィムナ・ピサレット(ib5201)

●怪しい依頼?

「コレがリングガールの衣装かぁ。スッゴク可愛くてステキ♪ まあ体にスクール水着の日焼け跡が残っているけど季節は夏だし、ご愛嬌だよね。こういう依頼だったら、いつでも引き受けたいなぁ」
 とある教会の控え室で、リィムナは背中に小さな天使の羽がついた白いドレスを身に付け、頭には白い造花の冠をかぶり、結婚式の開始時間を一人で待っていた。
 数日前、開拓者ギルドに仕事をもらいに行ったところ、受付職員からリィムナ向けの依頼があると紹介されたのが、今日の仕事だ。
 見た目年齢十歳前後の女の子に、教会で行う結婚式でリングガールをしてほしいとのこと。
 どうやら最初に決まっていた女の子が体調を崩してしまったらしく、緊急の依頼でしかも募集人数は一人だけ。
 通常の募集人数は一人以上であることが多い為に、なかなか人が決まらなくて困っているらしい。
 ちょうど結婚式当日はリィムナのスケジュールが空いていた為、引き受けることにしたのだ。
「ええっと。確かリングガールの役目は、二つのリングをのせたリングピローを持って、新婦の前を歩くんだよね。それで祭壇まで運べばOKだったかな?」
 すでにリングピローは準備されており、後は時間になって呼ばれたらコレを持って、バージンロードを歩くことになっている。
「でも急ぎの仕事だったから、まだ新郎と新婦に会っていないんだよね。まあ顔を知らなくても、衣装で分かるからいいけど」
 実はリィムナ、この教会には指定された時刻に裏口から入ったのだが、そこで一人のシスターと会っただけ。三十代ぐらいの美しいシスターはリィムナを歓迎してくれて、この控え室で衣装に着替えるのも手伝ってくれた。そして一通り仕事の説明をしてくれた後、やることがあるからと控え室を出て行ってしまったのだが……。
「式がはじまるまではバタバタするから、部屋から出ないでほしいって言われたんだよね。この部屋には洗面所があるし、飲み物やお菓子も置かれてあるから、外に出なくても不自由はないけどさ」
 扉一枚向こうでは、確かに複数の気配が慌ただしく動いているのが分かる。
「他のことをお手伝いしたい気があるんだけど……下手に動かない方が、良さそうだね」
 リィムナが部屋から出ている間にシスターが来たら、今日の仕事は台無しになってしまう。
 大人しく待つことにしたリィムナはイスに座り、用意されていたオレンジジュースを飲む。
 少しの間の後、扉がノックされて、先程のシスターが開けて入ってきた。準備が全て整ったらしく、リィムナに来てほしいと言う。
「よしっ! 人生最高の舞台の結婚式だし、張り切って頑張ろう!」
 決意を固めたリィムナは、テーブルの上に置かれたリングピローをそっと持ち上げた。
 シスターの案内で、リィムナは会場の扉の前まで案内される。そこにはすでに、ウエディングドレスを身につけた女性が立っていた。
「おっお待たせしちゃったかな?」
 少し早足で駆け寄ると、ウエディングベールの下から見えた口がニコッと笑みを形作る。どうやら気にしないで良い――と言っているようだ。
 女性は白いロンググローブの手を上げ、自分の前を指差す。
「あっ、花嫁さんの前を歩かなきゃだね」
 慌てて女性の前に立ち、その時を待つ。
 すると次の瞬間、オルガンの音が高く響き、扉が静かに開いていく。
(ん? ……参加者の人達、みんな顔を隠している)
 会場に入るなり、リィムナは異変を感じた。
 参加者達は立派なスーツやドレスを身につけているものの、何故か女性は帽子についているベール、男性は大きめの帽子で顔がちゃんと見えないようになっている。
(もしかして、こういうやり方をするのが当たり前の人達なのかな?)
 リィムナが住む土地には、様々な人種が存在していた。なのでリィムナが知らないやり方で結婚式をする人がいても、何も不思議ではない。
(新郎は祭壇の所に立っているけど、振り向かないから顔が見えないな。まっ、いっか)
 とりあえずリィムナはリングガールとして、役目に集中することにした。
 オルガンの曲に合わせてゆっくりと歩き、リングピローを祭壇の上に置く。そして静かに横にそれて、壁際に移動した。
(ふう……。一応これで仕事は完了)
 リィムナは急遽参加した為に親戚ではなくスタッフ扱いになっており、後は壁際に立ちながら式を見るだけになる。
(それにしてもあのドレス、ステキだなぁ。蝶蝶の刺繍がしてあって、花嫁さんの黒髪によく似合っている。あたしもいつか恋人と結婚式を……なんて、いやぁん!)
 妄想を振り払うかのように軽く頭を振った後、リィムナは今が仕事中であることを思い出し、冷静に戻った。
(いけないいけない。今はちゃんと、式を見守らなくちゃ)
 顔を上げたリィムナの眼に映ったのは、ちょうど新郎が新婦のベールを上げるところだ。
(あっ、これから誓いのキスを……って、んん? 何かあの顔、見たことあるような……)
 ベールの下から現れた顔は最近、厄介な敵として有名になりつつある女アヤカシのものだった。
「……へっ!? まさか妖志乃っ!」
「くくくっ。今更気付いたか」
 その声はまさしく妖志乃のもの。いつもは和服姿だったので気付かなかったが、よく見ればウエディングドレスの蝶蝶の刺繍は、普段、妖志乃が着ている着物の柄と同じだ。
「じゃあこの会場にいる人達は!」
 リィムナが参加者達に厳しい視線を向けると、彼らは一斉に帽子を外す。すると現れたのは、アヤカシの顔だった。そして振り返った新郎の顔もまた、アヤカシである。
「……もしかして妖志乃、自分の結婚をあたしに祝ってもらいたかったの?」
「たわけっ! 罠に決まっておろうがっ!」
 妖志乃がリィムナに向けて指をさすと、参加者のアヤカシ達が一気に襲いかかってくる。
「まっ、だよね」
 リィムナはヒョイヒョイっとアヤカシ達をかわし、オルガンのイスに飛び座る。そして【魂よ原初に還れ】を演奏した。
「……雑魚アヤカシはこのスキルで倒せるんだけど、流石に上級アヤカシまでは無理っぽいね」
 演奏を終えた後、会場に残っているのはリィムナと妖志乃だけである。
「ふむ、なかなか良い演奏であったぞ」
 パチパチと妖志乃に拍手をされて、リィムナは不機嫌にぷく〜っと頬を膨らます。
「そら、褒美じゃ! 受け取れ!」
 妖志乃は一歩後ろに下がると、シャンパンタワーからグラスを一つ手に取り、リィムナに向けて投げた。

 ビシャッ!

「んなっ!? 人にシャンパンをかけることの、どこがご褒美なんだよ! ……って、いない!?」
 少しの間、眼をはなした隙に、妖志乃は逃げてしまったらしい。会場の中をいくら見回しても、妖志乃の姿はもうどこにもなかった。
 一人残ったリィムナは濡れてしまった衣装を見て、重いため息を吐く。
 グラスはリィムナの胸元に当たり、中身はそのまま下半身にかかったのだ。
「あ〜あ、せっかくの衣装が台無し。……アレ? おかしいな。何でこのシャンパン、生暖かいの?」
 シャンパンならば冷えていることが当たり前なのに、下半身の濡れは生暖かい。しかもグラスに入っていた以上の量の液体が、自身を濡らしていた。
「んんっ? 何か視界がぼやけて……」



●夢から覚めて、悪夢のような状態に

「あーーっ! ……やっちゃった」
 飛び起きたリィムナは、すぐに自分の身に起きたことを理解する。
 リィムナは布団の中で眠っていて、今までの出来事は全て夢であった。しかし悪いクセになっているおねしょをしてしまい、それによって眼が覚めたのだ。
「まっまだ早朝みたいだから、今のうちに外に干せば……はっ!? 殺気!」
 冷たく鋭い殺気を感じて振り返ると、背後にはリィムナがこの世で立ち向かうことが許されない存在である姉が、雷を含んだ暗雲を背負いながら立っていた。


 その後、リィムナの敷布団は庭の物干し台に干された。
 そしてリィムナ自身は強制的に水浴びをさせられ、白いキャミソールに着替えた後、姉からいつものお仕置きを受けることになる。
「きゃいんっ! ごめんなさい! もうおねしょしません! 許してぇ〜!」
 パシンパシンと家の中に、姉がリィムナのお尻を叩く音が響き渡った。
 お尻が真っ赤になるほど叩かれた後に、ようやく解放される。
「ううっ……! ヒドイ目にあったよ。……でも何であたしの夢の中に、妖志乃が出てきたのかな?」
 真っ赤な顔で涙ぐむリィムナは、それでも夢の内容をハッキリと覚えていた。
 不思議に思いながらもお尻をさすり、起き上がる。


 リィムナの家の前の道では、一人の美しい少女が通りかかった。少女は干されている布団を見て、嫌な笑みを浮かべる。
 しかしすぐに無表情になり、その場から去った。

 ――その顔は、リィムナの夢に出てきた花嫁と同じ顔であった。


<終わり>


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
【ib5201/リィムナ・ピサレット/女/外見年齢10歳/シノビ】
【iz0265/妖志乃/女/外見年齢17歳/アヤカシ】・NPC

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
 お待たせして、すみませんでした(ペコリ)。
 今回は私のNPCの妖志乃とのストーリーということで、パラレルワールドという世界で二人にはめいっぱい活躍してもらいました。
 楽しんで読んでいただければ、幸いです。
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舵天照 -DTS-
2014年07月14日

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