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『夢から覚めたら、また遊びに行きましょう 』
北里芽衣aa1416)&アリス・ドリームイーターaa1416hero001


オープニング 
 それは、『北里芽衣(aa1416)』が物心ついたばかりのころの話。
 空はずっと遠くて、大人はとっても大きくて。
 世界には知らないものが沢山あふれていて。
 そして怖いものしかなかった。

「やーい」
 
「やーい」

「おばけ」
 そう芽衣の伸ばしっぱなしの髪を引っ張り、引き倒す男子。
「幽霊!」
 誰も、誰も助けてくれなかった。
 だれも。
「こっちくんな、幽霊!」
 当然だろう。
 幼いころは変わっていることは悪いことで。
 みんなと同じじゃないものは虐げられて当然で。
 そして、それに言い返せない芽衣が全てが悪くて。
 そんなほの暗い日々を送っている中
 突然現れた自分と同い年の少女。それが『アリス・ドリームイーター(aa1416hero001) 』だった。

第一章 幽霊少女と悪夢の英雄
 
「そのころ、アリスは私と同じ背丈だったんですよ。でも私と違って、明るくて物おじしなくて。すこし憧れているところがあったかもしれません」
 そう芽衣は淡々と語り出した。 
 外は雨。雨粒が窓を強く叩く音が騒がしく、遠くでは雷が鳴る音も聞こえる。
 ここは養護施設。芽衣が幼い日を過ごした、あまり思い出したくない思いでが眠る場所。
「本当は、あまり思い出したくない記憶なんです、でも必要なんですよね? ならお話しします、全部、アリスとのこと」
 そう淡々と芽衣は語り出す、あの日この場所で起きたことを。
 芽衣は孤児だった。
 物心がついたときにはすでに児童養護施設に入れられており、全く馴染めないその空気のなか、彼女の肌の色髪の色は他の少年少女たちのストレスのはけ口に最適だった。
 いつも隅っこで泣いていた芽衣。
 しかし、彼女が耐えていられたのは、たった一人の友達がいるからだった。
「アリスは私の、たった一人の友達でした」
 友達になりましょう、そう差し出した半透明の手を握った時に、芽衣は温もりを感じたという。
アリスは私を見て笑いました、ずっと友達でいましょう? そう言ってくれました」 

 その日から芽衣は孤独ではなくなった。

「その時はアリスのこと、幽霊だとずっと思っていたんです。だって私以外の人がいる時には出てこなかったから、けどその時アリスは幻想蝶に入っていたんですね。H.O.P.E.に入ってから知りました」

 芽衣が一人でいる時はふらりと現れて、芽衣と沢山のことを分かち合った。
 絵本の内容や、花々の綺麗さや、夢で見た怖いこと。
 アリスになら何でも話すことができた。
 けれど、別れの日は唐突に訪れた。

 それはいつものように芽衣が、男子からいじめられている時。
 その時の記憶はとてもあいまいで、断片的だった。
 理由は頭を殴られたせいだと思っているが、定かではなかった。
 ただただ怖くて、ただただ悲しかったのを覚えている。
「お前がいるから! 俺たちまで不幸なんだよ!」
「幽霊! 消えろ!」
「ここからいなくなれ!」
「お前なんていなくても誰も困らない」
「死ね! 死ね!」
 そう何度も踏みつけられ、髪が千切れるくらいに引っ張られ。
 ぱたりと水音がした。
 その上に手をついて。赤く伸びた線を見て。
 額から血が出ていることを悟った。
 
 そしてその時、
「アリス?」
「遊んでるの?」
 屈託のない笑顔でアリスは言った。
「仲間にいれて?」

 そのあとは嵐のようだった。遊びと称してアリスは人を物のように扱った。
「楽しいの? アリスにもやらせてっ」
 そう男の子の髪を掴んで引き倒して、引きずり、別の子へは芽衣にしていたように殴りつける。
 歯が折れて転がり、壁に顔面を叩きつけると。白い壁に血がにじむ。
 痛いと呻く少年を床に転がして踏みつけ。
 逃げようとしていた別の少年は首を絞められ意識を失った。
「なにこれ、楽しいわ、楽しいわ。こんなに楽しいなら芽衣にしたくなるのもなっとくね」
「アリス、やめて、やめてよっ」 
 気が付けば芽衣はアリスに縋り付いていた。
「なにをやめたらいいのかしら。アリスはあそんでるのよ? お友達と」
「違うよ、アリス、それは違うの」
「この子たちは芽衣と遊んでたんじゃないの?」
「違う、違うの」
「だったら、このこたちと芽衣は何をしてたの?」
 言葉を失う芽衣。それを納得したと捉えたアリスはまた子供たちを攻撃し始めた
「だーかーら、なにをやめればいいのよー?」
 アリスがつかんでいた子供を壁に放り捨てた。その子供は呻いて体を丸める。
 傷付いた子供達の呻き声や泣き声の中心にアリスがいた
 血の香りと、胃液のすえた臭い。
 そんな地獄絵図のなか、アリスは芽衣を見据えている。
 あのいつもと変わらない笑顔で自分を見つめている。
「芽衣、どうしたの? 芽衣こわいかおしてるよ?」
「アリス、それはね、やっちゃダメなことなのよ」
「やっちゃダメなことを、この子たちは芽衣にしていたの」
 その時だった、アリスはおもむろに足を振り上げ、足元に転がっていた少年の頭に振り下ろす。
 身を竦めたくなるような鈍い音ともにばきっとはっきり。骨のひび割れる音が聞こえた。
「アリスは芽衣とお話してるの、静かにして」
「だめ、お願い。やめてよ、やめてよぉ、アリス」
 そう芽衣はもう、泣くしかなかった、自分では止められない。
 英雄という存在は、少女には重たすぎるのだ。

「その直後でした。H.O.P.E.が助けに来てくれたのは」

 突如開け放たれる扉、そして武装した大人たちが突入してきてアリスを取り囲んだ。
「愚神一名発見」
 リンカーがそう告げる、するとリーダーらしき男が前に出てきて、銃口を遮った。
「愚神? お前らの目は節穴か? こいつは英雄だ」
「では誰が能力者なんですか?」
「この嬢ちゃんだよ」

 その後アリスは捉えられ、芽衣から引き離されてしまう。
「いや! いやよ! 芽衣! 助けて、めい!」
 そう恐怖のあまり泣き叫ぶアリスを見つめながら、芽衣は気を失った。

第二章 夢の際

 その後芽衣は、責任能力もなく、保護者もいないことからH.O.P.E.直下の養護施設にうつされた。
 そこには同じような境遇の子供たちが沢山いた。
 心に傷を追ったり、社会からはじかれたりしたものも大勢いた。
 だから、前のような危険な目にあうこともなくなった。
 だが、代わりに解ったのはアリスの異常性だった。
 純粋すぎるまでの無垢。彼女には善悪の区別がない。
 区別が『できない』のではない『ない』のだ。
 そのことから、貴重な能力者と契約できている英雄であっても、殺処分とすることが、半ば決定していた。
 それに猛烈に反対をしたのは当然、芽衣。
 制約の解除を、H.O.P.E.職員から求められ続けていたが芽衣はずっと拒否し続けていた。

「《ずっと友達でいること》それが、私とあの子の約束。私はその時、失うことが怖かったんです。アリスを失うことも怖かった」

 そして芽衣はやっとの思いで、アリスと話をする機会を得た。
 
「私は幼心ながらに、わかっていたんだと思います。もう私たちに明日がないこと」

 アリスは痛々しい姿で鎖に繋がれていた、幻想蝶に入ることを拒んで、芽衣の名前を呼び続けたらしい。
 何を言ってもきかなかった。そう芽衣は担当のリンカーから聞いた。
「芽衣! 芽衣! 怖いの、みんなアリスにいじわるするのよ、芽衣に合せないって、芽衣どこに行ってたの?」
「アリス、お願い、みんなの言うことを聞いて」
「嫌よ、アリス、芽衣に会いたいんだもん。ずっと一緒にいたいんだもん!」
「でも、このままだったらアリス、二度と私に会えなくなっちゃうよ。それでもいいの?」
 芽衣は鉄格子の向こう側のアリスに向かって叫ぶ。
「お願い!! アリス言うことを聞いて。じゃないとアリス、私と一緒にいられないのよ」
「なんでよ、アリス何も悪いことしてないのに!!」
 泣きながら、アリスは手を伸ばした。
 鎖がじゃらりと音を立てる。
「なんで、泣いてるの芽衣?」
「アリス、お願い、今だけお願い。いつかきっとまた二人で遊べる時が来るわ。だから……」
 腕を伸ばす、芽衣。
「本当? 本当ね? 約束してくれる? アリスと芽衣のお約束」
「うん、絶対迎えに来るよ、だから」

 約束しましょう。また会えること。二人で楽しく笑いあえる未来を。

「それからの数年は、私にとってはあっと言うまでした」

 たくさんのことをH.O.P.E.から学んだ、英雄がどういう存在で、自分たちはどう接していくべきなのか。
 それを教えてくれたのは、アリスへの攻撃を止めてくれた、リンカーのオジサンだった。
「英雄にゃ何も知らねぇ奴もいる、凶暴な奴もな。ガキのお前にそいつを何とかしろってのも無理な話だ」
 芽衣は彼のことを良く覚えている。
 優しく教えてくれたから、今でも恩人として覚えている。
「だが力を持っちまったら言い訳は意味ねぇんだ。お前らの間違い一つで人が死ぬ」
 そう頭を撫でて飴をくれた。
 厳しく、凛とした人だったけど、芽衣を傷つけるようなことは言わなかった。
「誓約を解除しねぇなら、それを忘れんな。今日傷付けた奴らを忘れんな。
英雄と生きるってのは甘くねぇ。
あいつはお前だ、あの凶暴な嬢ちゃんを捨てたくねぇなら、ガキだろうと覚悟決めな」
 そして最後の授業の日。彼はもう会うこともないだろう、そう言って去っていった。
 アリスの幻想蝶を手渡して。
「じゃあな。てめぇで選んだ道だ、責任持てよ、ガキ」

「はい、おじさん……」


第三章 そして再会へ 

 そしてお話は現代に戻る。
 孤児院の窓の向こうには夜が広がっており、机の上には幻想蝶
 二人の出会いから五年後が経過していた。
 あれから芽衣は声だけでアリスと沢山向き合った。根気よく会話を繰り返し、常識を覚え。また芽衣自身も沢山のことを身につけ覚えた。
 これでもう、かつての過ちは起きないだろう、そう判断された芽衣の幻想蝶から封印の札がはがされる。
 アリスはまだそのことを知らない。
 外に出ていいのだということを知らない。

「アリス。一緒に遊びましょう」

 そう芽衣が幻想蝶に語りかけると、光の粒が空を舞い。
 アリスの形を成していく。 
 ああ、その少女はかつて別れた時と同じ姿をしていた。
 目を瞑ったまま、芽衣の隣に降り立つアリスの身長は自分よりずっと下になっていたし、なんだかその表情が可愛いとすら思える。
「アリス……」
「芽衣!」
 そう、芽衣に抱き着くアリスは、昔と変わらない屈託のない表情を芽衣に向けてくれた。
「会いたかったのよ! 芽衣」
「私もよ、アリス」
 長く時間はかかってしまったけど、こうして二人は再会できた
「アリス、人は傷付けちゃダメだよ? 怒っててもダメ、絶対ダメだからね」
「わかってるわー!もう言わないでー!」
 
 二人はまだ、完全に信用されたわけではない。日常生活の定期的な報告、抜き打ちの監査などはある。
 だが、それでも二人一緒にいられることがうれしくて。
「アリス、これからは私達二人だけで生きていくのよ」
 里親の決まらない芽衣は、覚悟を決めろと言われた事を思い出し、働きながら、アリスと共にエージェントとして生きていくことを心に決めた。 
 そのために孤児院に、戸籍や資料を取りに来たのだ。
 そしてかつて傷つけてしまった少年たちの様子も見に。
 彼らもこの数年の間に新たな場所に巣立っていったとのことだ。
 幸せそうに。
「楽しみね、芽衣。私達ずっと友達よ?」
「うん、アリス。友達でいようね」
 そう結ばれた手を引いて、二人はどこまでもかけていくことだろう。

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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『アリス・ドリームイーター(aa1416hero001) 』
『北里芽衣(aa1416)』


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 この度はOMCご注文いただきましてありがとうございます。
 鳴海です。お世話になっております!
 今回お二人の始まりの物語をお任せいただけるということで気合を入れて書かせていただきました。
 思えばお二人との出会いは、ガルマさんの、例の一件以来なので、リンクブレイブ最初期からのおつきあいですね。
 あの時からお二人のプレイイングは繊細で綺麗だったので、記憶に残っておりました。
 今回は時間を意識させる構成にしてみましたがいかがでしょうか。
 気に行っていただければ幸いです。
 それでは、次は本編で、アルスマギカのお話ですね。
 その時もまた気合を入れて書かせていただきますので、よろしくお願いします!
 それでは鳴海でした。 ありがとうございました。
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2016年07月07日

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