▼作品詳細検索▼  →クリエイター検索


『光の袂へ 後編 』
北里芽衣aa1416


 カラスがしゃべった、その衝撃で『北里芽衣(aa1416) 』も『小鳥遊 健吾(NPC)』も動けなくなってしまった。
 二人は茫然とそのカラスを見つめる。
 するとそのカラスは首を左右に振って、仕方ないと言いたげに口を開いた。
「いやはや、リンカーを連れてくるのはあれほどやめてほしいと頼んでおいたのに、全く健吾君、君という人は……」
「うわ、こうも開き直られると戸惑う」
 そしてやっと、健吾は言葉を口にした。いつもの軽口風ではあるが動揺を隠し切れていなかった。
「なんだよ、ファズ、喋れたのか……」
「喋れないのに、頼んでおいたってどういうことです?」
 芽衣はわけのわからない状況に目を白黒させる。
「いや、こいつ施設のリンカーが近づくとめちゃくちゃ嫌がるから、あんまり近くに寄せないようにしてたんだよ」
 それを聞くやいなや、芽衣の頭の中で沢山の質問が爆発的に増殖し始める。例えば。
「なんで消えてないんですか」
 通常英雄はこの世界に顕現してもすぐに消えてしまう、契約し霊力の供給が無ければ存在を保てないのだ。
 なのにこのファズは安定してこの世界に存在している、それはなぜか。
「それはすでにこいつと契約を結んでいるからさ」
 ファズは言った。
「なんのだよ」
 心当たりがない様子の健吾。
「私を養うという制約を」
「このっ……」
 ファズがどさくさに紛れて一方的に結んだ誓約なのだろう。健吾はファズの翼を両手でつかみあげるとぶらぶらと揺らし始めた。
「いたたたたた!」
「やめてあげてくださーい」
 痛がるファズ、それを止めようと芽衣は手を伸ばすが。
 その時、ファズが笑った。
「なんてな」
 するとカラスの姿は空気に溶け、気が付けばまた巣の上にカラスが鎮座していた。
「英雄は人間の姿となる。私も例外ではなく本体は人間の姿だ、これはあくまでも映像でね」
「ふぁ。なんだかすごい英雄さんですね」
「知るか」
 そう健吾は苛立った様子でそっぽを向いた。
「じゃあお前、俺の話全部わかって聞いてたのかよ」
「ご明察」
 近くにあった石を健吾は投げつける。
 その石はファズを素通りして地面を転がった。
「健吾君、乱暴なことしたらダメですよ」
「うるさい芽衣、俺のイライラも考えてくれ」
 そう言うと健吾は自分の苛立ちを抑えるように腕を組む、そしてファズに行った。
「なんで正体を隠していた」
「お前が戦い出す可能性があったからだ、だが消えるのは嫌だった」
「どういうことですか?」
「つまり、こいつはこういいたいんだよ、英雄の力を使って暴れさせないために、自分が英雄だってことを言わなかったって」
 そしてそれが当たっているだけに腹が立つと、健吾は言った。
「でもこれで俺はH.O.P.E.で戦えるな?」
 青ざめる芽衣。
「違いない、しかし私はそれを拒絶する」
「契約なんて無しにしてやってもいいんだぞ」
「君ならしかねないな、それを盾に取られると私は君と戦わざるを得ない」
「だめです!!」
 芽衣が叫ぶ。
 その声に二人はぎょっと芽衣を見つめた。
「だめです、だめです、健吾君は戦っちゃだめです」
「なんでだよ、愚神は父さんと母さんを殺したんだ。だったら」
 芽衣は息をのんだ、一緒だったから、健吾は自分と同じで両親を失っているのだ、愚神によって殺されて。
 でも、だからこそ。芽衣は思った、自分と同じ苦しみを健吾が味わうかもしれない。
 それは絶対嫌だった。
「健吾君、戦ってもお父さんとお母さんは帰ってきません」
「知ってるよ」
「戦うのは痛いです」
「それも知ってる」
「だったら、何でリンカーになりたいんですか?」
「収まらないからだよ」
 健吾は言う。目を見開いて震える手を抑えて言う。
「俺は、俺は愚神を許せないし愚神を倒したい、殺したい。その力があるなら、俺は、俺をこんな目にあわせたあいつらを!!」
 やっぱりだ、そう芽衣は思った。
 同時に芽衣は考える、このまま戦えば健吾は絶対不幸になる。
 自分と同じ苦しみを背負うことになる。
「やっぱり、健吾君は、リンカーになっちゃだめです、絶対後悔します」
 そう芽衣は健吾の手を取って言った。目を真っ向から見据えて、そして告げた。
「夜な夜なうなされるようになります、愚神はみんな嫌な人たちばかりで、いつかきっと心をえぐられるような思いをします」
 愚神に尊厳を汚され消えて行った騎士。人の心をもてあそぶ水晶の歌姫。自分の両親を幻影として見せた愚神。
 芽衣の心を引っ掻き回すような敵は数多くいた。
「だから、だからだめです」
 芽衣は健吾の腕を引っ張って懸命にとめる。気が付けば頬を涙が濡らしていた、それを健吾がぬぐう。
「お前、リンカーになったこと後悔してるのか?」
 その言葉に芽衣は唖然と口を開く。
「ちが……」
「俺が傷つくと思ってるってことは、お前が、リンカーになって傷ついたってことじゃないのかよ……」
 そう絞り出すように告げた健吾、次の瞬間芽衣は森の中へと駆けだした。
「おい! 芽衣!」
 どこかへ向かいたいわけではない、ただ彼から逃げたかった。
 どこかに消えてしまいたかった。
「私は、リンカーになったこと、後悔してません。だって私は、誰も泣かない世界を作らないといけないんですから!」
 そう芽衣は自分だけに聞こえる声でつぶやき、森を駆けた。
 だが、そんな乙女を追いかけてくる影がある。
 ファズだ。黒いカラスは低いところを飛びながら芽衣に並ぶ。
「まぁ、そう逃げないでやってくれ、彼と話がしたいんだろう?」
「話す? 話すって何をですか」
「君がなぜ、リンカーとして戦うのに反対なのかをだよ。話さないと伝わらないんじゃないかな」
「……」
「君は、話せばみんなわかってくれると言っていたじゃないか。それを健吾は信じたいんだよ」
 芽衣は止まった、樹に手をついて上がった息を整える。
「健吾君……」
「彼は、両親を愚神に殺された後。アメリカの貧民街でホームレスとして生きていた」
 そうファズは唐突に芽衣に健吾の身の上話を始める。
「そこで家畜同然の扱いをされ。生きていた。そんな彼が今、破壊以外のを理由になぜ戦える?」
「だったら、戦わなければいいだけです」
「そんな彼が救われるには、破壊するしかない」
「それは何でですか?」
 矛盾だ。そう芽衣は感じた
「仕方ないのだ、彼は暴力しかコミュニケーション手段を知らない、親にいろいろ教えてもらったのかもしれんが、色濃い暴力の記憶に塗りつぶされて、他にどんな方法で他人と関わればいいのかわからないんだ」
 その時唐突にカラスの姿が消える、代わりに樹の隙間から現れたのは一人の男。
「だからこそ、誰かが教える必要がある、自分の気持ちと向き合う方法は、他人と向き合う方法は、暴力だけではないのだと」
 芽衣の前に現れた男は、タキシードを身に纏った一見すると紳士と言っても差し支えないほど上品な男だった。
 しかし、彼が体を動かすと、その部分に靄がかかる。
 黒い霧を身に纏った男だ田。
「それは……」
「今から私はひどいことを言うぞ、彼のために犠牲になってくれないか」
「…………」
 芽衣はファズを真っ向から見据える。
「彼は今後、人と話すたびに、接するたびにああやって人を傷つけるだろう。そのたびに普通の人間であれば嫌になり逃げだそうとするだろう、だがそれではいつまでたっても彼は治らない。根気強く付き合ってくれる人間が必要だ」
「それを私に?」
 ファズは頷いた。
「でも、私たった今逃げました……」
「だから逃げないでほしいと言っている」
「……」
 どう答えたらいいか分からない芽衣。ファズと自分の手元を交互に見つめた
「頼めないだろうか……」

「芽衣!」

 その時、背後から声が響く、健吾が追い付いてきたのだ。
 そして同時にファズは霧となって消えてしまった。
「健吾君……」
「ごめん、芽衣、俺きっと何か芽衣の気に障ることいったよな」
「違います、あれは健吾君が悪いわけじゃないんです」
 芽衣は告げる、自分の素直な気持ちを告げる。
「ただ、私は自分がわからなくなってしまって、私はリンカーになったことは後悔していないんです、今だってやめたいと思っているわけじゃないんです、けど、その仕事を誰かがやると思うとつらいんです。だって戦うってことはひどい目にあうってことだから」
 震えながら芽衣は言葉を紡ぐ、自分の手を固く握り、上目づかいで健吾を見つめた。
「健吾君、リンカーにならないで。お願い」
「そうか、ありがとう、芽衣の考えてること伝えてくれて、でも無理だ。いやだね、俺は愚神を殺す」
「だめです、そんなこと辛くなるだけです、むなしくなるだけです。いつか心の中がごめんなさいって気持ちでいっぱいになってしまいます。大切な人ですら平気で殺せるようになっちゃいます」
「私みたいに!」
「ならねぇよ!」
 健吾が叫んだ。
「え?」
「お前はそんな奴にならない。なってない、大丈夫だ、そんな気がするだけだ」
「え? 健吾君」
 そして健吾は歩み寄って芽衣の手を取る。
「俺もそんな風にならない、芽衣がいる限りそんな風に絶対ならない」

「俺が信じるから、芽衣はそんなことしないって信じてる、だから芽衣も信じてくれ」

「おれ、芽衣の言う通り盗みもやめる、まっとうな人間になるから。だから俺も芽衣と一緒に戦わせてくれ!」
「健吾君……」
 そう芽衣を見つめる健吾の瞳には強い意志が宿っていた。
 こうして半ば芽衣が折れる形となって、健吾はH.O.P.E.に所属することになる、芽衣と健吾の物語はまだ始まったばかりで、いろいろな出会いや別れ、苦悩や楽しさがあるが、それはまた、別のお話。


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
『北里芽衣(aa1416) 』
『小鳥遊 健吾(NPC)』
『ファズ(NPC)』

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
 いつもお世話になっております、鳴海です! 
 この度は芽衣さんと健吾君の物語第三弾ということだったんですが。
 話は広がるばかりで綺麗に完結はしませんでした。
 なぜなら今から二人の物語が始まるからです。
 だから二人の問題は表に出ただけでなにも解決していなかったりします。
 それはおいおい本編でということになるかなぁと思ったり。
 では長くなってしまったので、このあたりで。
 鳴海でした、ありがとうございました。
WTシングルノベル この商品を注文する
鳴海 クリエイターズルームへ
リンクブレイブ
2016年08月29日

投票はログイン後にできます。

ログインはこちら












©Frontier Works Inc. All Rights Reserved.