『白薔薇さまが見てる ―彼と私の復讐譚― 』

シャロン・S・グリーヴ（ka1260）＆シメオン・E・グリーヴ（ka1285）＆ジャック・J・グリーヴ（ka1305）＆アルバート・P・グリーヴ（ka1310）＆ロイ・Ｉ・グリーヴ（ka1819）

● Prologue.　-06/30-

　‥‥、――――‥‥――！！

　―き―――てば！！

　ねえ、起きなさいって！
　‥‥ああ。やっと目を覚ましたわね。私の名前は―――。
　あなたはどうしてこんな所に？

　‥‥ふぅん、そう。大変だったのね。

　何もかもを失ったあなたに、奇跡を一つ授けてあげる。
　このペンダントを持って、手紙に書いてある場所へ行きなさい。色々学べるはずよ。

　私の代わりに、ね‥‥‥‥




● Episode.1　−07/03-

　コンコン。
「おめざめですの？」
「‥‥ええ」
　乾いたノックの音と幼い声に気づき、私は手短な返事を返した。
　ぎぃ、と軋む音の向こう。少女は小さくお辞儀をしていた。
「おはようございます！ですのっ！　では、おしょくじにまいりましょう！」

　◇

「おはようございます、お嬢様。今日は雨季の中休みで、よいお天気ですよ」
「ええ。おはようロイさん」
　広い食堂に入ると、部屋の中にいたひとりが私に気づき、軽く会釈した。
　彼の名はロイ・Ｉ・グリーヴ（ka1819）。涼やかな風を思わせる声、騎士然とした佇まいの青年だ。
　私はロイへと遠慮がちに微笑みを返すが会話は続かず、それ以上に何を言っていいかわからなかった。
　すると、私の戸惑いを察したように
「ロイ兄様、黙ってたらお嬢様が困っちゃうでしょ。さぁ、朝のお茶をどうぞ。東方由来のものだよ」
　と、シメオン・E・グリーヴ（ka1285）が気遣ってくれる。
　はんなりとした暖かく美しいその瞳と、喉を流れ落ちるほろ苦く香り高いお茶が私の心を落ち着かせていった。


　ここは、郊外に佇むとあるお屋敷。
　白薔薇の庭と赤い屋根の調和が美しい、瀟洒な館。
　私は‥‥数日前から、ここのお嬢様『になった』。

　元々、私は商家の一人娘だ。
　何不自由なく幸せに育ってきたけれど、あの17の誕生日‥‥王国の動乱に便乗した下働きの男の謀によって、私は全てを喪った。
　家も、両親も、財産も、友達も。私の全てを、奪われたのだ。

　私は――逃げ出した。
　ママの断末魔が物音を消してくれている間に、着の身着のまま。
　お気にいりのリボンも、宝物だった香水も、何もかもを置き去りにして走った。
　『街の外は恐ろしい歪虚が居るから、決して出てはいけないよ』。
　そう何度も聞かされたパパの言葉も振り切って、私は宛もなく飛び出した。

　そして――。



「まーだ浸ってんのか、おまえ」
　数日前の惨劇に胸を痛めていると、不意に投げかけられた乱暴な言葉で現実に引き戻された。
　不躾な物言いに、私は声の主――ジャック・J・グリーヴ（ka1305）を睨めつける。
「しゃーねーだろ。確かにおまえの人生がクソッタレな下男にぶっ壊されたのは‥‥まぁ、同情すっけｄ《ごゎん》痛ッて」
「こーら愚弟。傷心のレディにそんな事を言う子に育てた覚えはないわよ」
　ジャックの頭上にお盆（縦）を振り下ろし、無駄のない所作で首を締め上げるのは、アルバート・P・グリーヴ（ka1310）。
　確か‥‥このグリーヴ一家の一番上のお兄さん。
「ごめんねぇレディ。『いぎっ！？』　の馬鹿ったら、『おい、てめ！』外の女性みると照れてツンツン『ぎぶぎぶぎぶ』　あらやだ兄の愛にまで照れ『はーなーせー！！』」

　私がアルバートの教育的指導（物理）に呆気をとられていると、じゃれつく猫のように上機嫌な笑い声が背後から聞こえた。
「うふふ。アルにーさまとジャックにーさま、きょうもなかよしでなによりですの！」
「シャロンもおはよう。朝のお勤めはちゃんとできたようだね」
　もちろんですわ、とロイの声にシャロン・S・グリーヴ（ka1260）は小さな胸を張る。
　恐らく10歳ほどだろうか。素直で純真、蝶よ花よと愛でられ、真っ直ぐに育てられたのだろう。
　真っ白で、無垢で――眩しい。
「これから、あさはわたくしがおよびにまいりますから、よろしくおねがいしますの！　‥‥あっ、そうですわ！　これからは『おねーさま』とよんでもよろしいかしら？」
　差し出された手。疑いなく細まる瞳。
　数日前までの私も、こんなに輝いていたのだろうか。


　◆ Which is your choice？――
　[>　冗談じゃないわ！
　　　 よろしく、シャロン！
　　　 じゃあシャロンは私だけの妹ね
――――――――――――――

　パンッ‥‥

　私は、衝動的にその小さな白い手を払った。
　例え形だけでも、純真無垢なシャロンと姉妹として横に並ぶことが、惨めなことに思えたからだ。
「冗談じゃ‥‥ないわ。あんたなんかと――！！！」





「‥‥‥ふぇっ‥‥‥」


　シャロンの瞳が、涙で潤む。
　途端――部屋の温度が、5度は下がったように感じた。

「あぁ。あなたは、もういらないね」
「私の可愛い白薔薇姫に‥‥」
「我が妹を侮辱するならば――」
「覚悟は出来てんだろうなぁ、あぁ゛！？」


「えっ、何？　みんな怖、いやああああああっ！！！」


　バキッ　ドカッ

　あたしはフルボッコで追い出された。
　スイーツ（笑）






《天使を泣かせる奴は世の敵END》


＞＞リセット！！＜＜




● Episode.2　-08/27-

「ねぇシメオン、東方の話を聞かせて？」
　薔薇園を臨む書斎に、燦々と夏の日差しが降り注ぐ。
　まばゆい日差しを受けて、お嬢様の首にさがるペンダントの光暈がキラリと僕の瞳を貫いた。
「そうですね、それじゃあ――東方の美しい四季の話をしましょう。　長きに渡る歪虚の侵攻で荒れてしまったそうですが、東方の風景は王国周辺とは違った美しさがありますよ」
　そう言って僕はいつもの笑顔のまま、エトファリカの鮮やかな風景と句が綴られた詩篇の頁を開いた。


　6月の末にこの館へやってきたお嬢様は、あれからずっと、僕達の授業を受けている。
　僕達グリーヴ家は、成り上がり貴族の例に漏れず、家庭教師として紳士淑女を世に送り出す事を生業としていた。
　ただ、他の家庭教師と違うのは――僕達の館へ生徒となる子供が住み込む、ということ。


「まぁ、美しい夜景！　えっと‥‥　の、せど‥‥？　シメオン、このポエトリーは何を歌っているの？」
　ぱらり。頁を捲った先に現れたのは、星空とのコントラストが美しい、燃えるような紅葉を描いた風景画。
　これぞ東方諸国といった情緒ある色彩で、僕もお気に入りの一枚だった。
「『射干玉の 夜に濡らせど 天津星　天の隨に 思ひいざなむ』――。　貴方を思い私は毎晩涙で袖を濡らしていますが、貴方は星のように高貴で眩い。どうか星の導きで私の思いが貴方に届きますように、と。　いじらしい恋の歌ですね」
「‥‥っ。そ、そう」

　少し上ずったような、熱を帯びた声。どこかさまよう視線。
　紅葉のようにみるみる朱に染まる柔らかな頬。
　まだ僕たちに慣れず緊張しているのでしょうか？
　僕は努めて穏やかに「どうかしましたか、お嬢様？」と、伺うように微笑みかけた。

　◆

　――がたんっ！
　声をかけると同時お嬢様は立ち上がり、
「な、なんでもないの‥‥っ！　あの、ごめんなさい！」
　ばつが悪そうな顔で書斎を飛び出していった。

　＊　＊　＊

（バレた、のかしら）
　急激に熱くなる頬を抑え、私は光り差す庭を走っていた。
　優しくて穏やかなシメオン。『あの日』の記憶に囚われ泣いていた私に暖かく接してくれたシメオン。
　貴方が居なかったら私は今も悲しみに暮れたまま――。

『どうかしましたか、お嬢様？』

　私の気持ちを見透かしたような、試しているような、あの甘やかな微笑み。
（『私の思いが届きますように』‥‥）
　でも届いていたら、見ぬかれているとしたら。わざとあの歌の意味を聞いたと思われたら。どうしよう、恥ずかしすぎる。
　ガゼボの柱にすがりつき、私はへたり込んでしまった。
「あぁっ、死んでしまいたい‥‥！」


「えっ、おねえさま死んじゃうんですの‥‥？」


　がしゃん、と音を立ててティーカップが四散する。
「シャロン！？　どうしてこんなところに――」
「おねえさま‥‥！　シメオンにーさまが『まだ勉強がたりない』ってゆってたせいですの！？
　ああ、それともジャックにーさまが『商家の娘のくせに金銭感覚がない』って‥‥あっ、それともアルにーさまが‥‥」
「ちょっ、なにそれ本当に死にたいわ！？」
　ひとしきり兄たちからの評価を述べたのち、少女はうわぁんと大声を上げながら、言った。

「おねえさまが死んじゃうのならっ‥‥、わたくしも‥‥もごっ！」
「シャロン。それ以上は冗談でも言っちゃダメだよ」
　シャロンの背後から優しく伸びた手が、彼女の口をそっと塞ぐ。
　そして――これまでにはなかった、冷えきった笑みで私を、見た。
「お嬢様。先ほどは随分東方の文化に熱心でいらっしゃったようですし、どうぞ東方へ見聞を広めに行かれるのはいかがでしょう？　ああ、ご心配なく。お荷物はすぐに準備して差し上げますから――ね」
「し、シメオン！　ちがうの、話せばわか、‥‥ッアー！！」







《誤解って時に甘酸っぱく時に残酷だよね！END》


＞＞リセット！！＜＜






● Episode.3　-11/30-

　凛と輝く月が、天窓越しに武道場の床を白く染めている。
　ひゅん、と刀が鳴き、ほんの刹那、暗闇に残光が走った。
　静かな夜の鍛錬はいい。無駄な音がないぶん、拍動の一つ、髪の一房まで、躰の動きを感じる事ができる。
（前の『お嬢様』は武芸は嫌いだったな）
　そう思い出しつつ、俺は鍛錬用のレイピアを正面へとつきだした。


　4月から当家で学んでいた『お嬢様』は、それは自由人だった。
　振る舞いは奔放で我儘。あのアルバート兄さんですら困らせたほどだったが、彼女は6月の末の日、『冒険者になりたい』と言ってここを飛び出していった。
　まぁ、当家の家庭教師から逃げる者は少なくない。その時も俺は「またか」としか感じなかった。
　が、その翌日。生徒の証である首飾りを持って、一人の少女が訪れた。


　――しゃんっ。
「独りで鍛錬なんてつれないのね、ロイ？」
　暗闇の中から銀の閃きが、俺の突きを弾いた。からん、と音を響かせて遠くに転がるレイピア。
　顔を見ずともその剣筋は見紛う事もない。俺と同じそれ。
「‥‥すっかり武人になられましたね」
「ふふ、そうね。私には一番必要な技能だから」
　そういって、お嬢様は自嘲した。
　月光に浮かぶ節くれだった細い指は、この半年を剣技に費やしてきた証。
　俺は復讐を肯定できない。しかし、彼女の鬼気迫るほどの熱を否定することもできなかった。

「お嬢様らしくない？」
　ひゅっ、とお嬢様の細剣が空気を裂き、俺は体をひねってそれから逃れた。
「っ、そんな」
「でも私感謝してる。あの人がここへ導いてくれた事！」
　次いで横薙ぎ。バックステップでこれを躱す。ビッと衣服を掠めていく鋒。床に転がっていたレイピアを拾い、俺は後背から振りぬく強撃を返す。刃の交錯。劈くような音。幾重にも反響したそれで、足音が消えた。前へ、2歩。互いの鍔がぶつかり、そのまま膂力で床へと倒しこむ。細い体に跨がり自由を奪ったのち、俺の剣が彼女の首筋へ触れた。
　――制した。
　俺はぜいぜいと息を吐きながら、そこで初めて彼女の顔を見た。

　◆

「剣を‥‥貴方に剣を教わることができたから」

　浮かんだ汗が月白を浴びて輝き、まるで絵画の如き美しさで。
　しかし、今にも泣きそうな――武人になってなお儚い微笑みは、俺の心を抉るようでもあった。


　＊　＊　＊


「まぁ！　きょうもあざだらけですわ」
「ふふ、そうね」
　ぷぅっと頬を膨らませながら、シャロンは私に手当をしてくれる。
　半年前、ここで剣技の一点を磨きあげることを選んでからは毎日こんな感じだ。
「もうっ！　おねーさまってば、きずだらけなのにたのしそうですのよ」
「あらシャロン、楽しいし嬉しいのよ？　だって最近、ロイがやっと手加減しなくなったんだもの」
「ロイにーさまが‥‥？」
　手加減がないのは上達と信頼の証左。あの実直なロイが、認めてくれたのだから。

　ロイとともに磨き上げたこの想い《力》で、私はやがて想い《復讐》を遂げるだろう。
　そこに何が残るかはわからない。命すらも。
　だから言えなかった。『ロイに逢えて嬉しかった』とは。

「‥‥おねーさま、おねーさまっ！　おねーさまのおきもちは、ちゃんとロイにーさまにとどいてますの」
　シャロンの鈴のような声で、私ははっとした。
　届いてる――か。
　私達は剣で語る。それだけでいいんだ。
「ありがとう。ありがとう‥‥シャロン」
　私はシャロンをぎゅっと抱き、何度もありがとうと呟いた。
　だからシャロンが何故かばつの悪そうな顔をしていたことには、気付かなかったのだった――。
（‥‥ロイにーさまとは、とってもいい『せんゆう』ですわ、っていいそびれてしまいましたわ‥‥）







《シャロンの機嫌はよかったけど友情まっしぐら！END》


＞＞リセット！！＜＜






● Episode.4　-03/20-

「7・2・3、8・2・3、1・2・はい、コントラ・チェック。　フレッカール――2・3、5・2・3、6・2・3‥‥」
　珠のような汗をにじませ、レディは細い足を必死に動かしている。
　社交界といえばダンス。特に、殿方に誘われやすいウインナーワルツの重要性は何を差し置いても上だわ。
　身を翻せば軽々とはためくサテンは、いわば妖精の羽根。
　春の陽のように柔らかな微笑みでダンスホールを舞い踊れば、皆を魅了する魔法のひとひら。
　そう、誰もが――。


　――グリーヴ家の家庭教師は、きっかり1年。
　通常何年もかけて学ぶ教養や作法を1年で習得し、同年代の誰よりも早く社交界へと羽ばたくの。
　でも、彼女の目的は復讐――。
　そのために社交界で戦っていけるための教養を、と。そう言った彼女の強い瞳は今も忘れない。


　そう。女の子は可憐で情熱的なワルツでオトコを惑わし、心も体も懐に忍び込む事ができる。
　復讐にはうってつけ、なのよ。
「もう、レディったら目が怖いわよ。私を見て。いい？　ワルツは相手に恋をするように踊るの。‥‥相手に恋させるように踊るの」
「っ、これはちが」
「――口答えは禁止だ。さぁお嬢様、私に恋してみせなさい」
　少し声を低めて囁くように。そしてレディの顔を覗き込むと、林檎の様に頬が赤くなっていた。

　ダンスホールに音楽が流れ出す。
「レディ」
「なぁに？」
「本当にいいの？」
「‥‥」
「選ぶのは貴女次第だけれども――」
　『希望せよ』と謳った、あの復讐譚の様に。彼女にも救いある未来はあるのだろうか。
「アルバート」
「何かしら」
　ステップを踏みながら、彼女は決意したように私を見上げたわ――。

　◆

「あなたが、好き‥‥」
　思わず、ホールドした左手に力が入る。
　彼女は真剣だ。
「――‥‥っ。それは‥‥そう、ワルツの間は‥‥勿論、喜んで」
　きゅっと引き結ばれた口元。眉根を寄せて堪える目元。「そう」と呟いた唇は震えている。
　ごめんなさい。わかってる。そういうことじゃない。
　だけど、私は――。


　＊　＊　＊


「おねーさま？　まぁっ！　どうなされましたの、おめめがまっかですのよ！」
「しゃろぉぉん‥‥もう私ダメ‥‥」
　朝は無慈悲に訪れる。
　数々の死亡フラグをくぐり抜け、ようやく辿り着いた舞踏会当日。今日は復讐が成される日。私にとっては、晴れの日。
　だのに、私の心は深く沈んだままだった。

　昨日はずっと緊張で顔がこわばってて、彼と一緒に踊るだけで体がぎくしゃくしていて。
　踊れば否応なく感じる、アルバートの仄甘い香水の匂いだけで目眩を覚えるほど、好きだったから。
　だが、意を決しての告白は、暗に断られる形で幕を閉じた。
「シャロン、アルバートって‥‥恋人や許嫁がいるの‥‥？」
　アルバートは私が真剣に告白した事に気づいた上で、ワルツの間だけという返事を絞り出したのだ。
　彼はもう、貴族としては婚姻の話があってしかるべき年齢。だから、もしかしたら――。

「いいえ、アルにーさまにはそういうおはなしはありませんのっ」
（じゃあ、どうして‥‥！）
　ぴとん、と音をたて、琥珀のティーカップに涙が溶けていく。
「‥‥だって、『みじっそう』なんですもの！」

















「は？」







「‥‥え、何て？　ごめん、もう一回」
「みじっそう！　なんですの。ですから、アルにーさまに『そういうおはなしはありません』のよ？」
　呆然とする私をよそに、シャロンは話を続ける。
　‥‥あれ、ってかテキストが強制スクロール！？
　シャロンの目から光が消えてるんだけど！！？　これってレイ（検閲）


「しなりおがまにあわなかったそうですの。
　『ここ』にいらっしゃったということは、おねーさまとアルにーさまはすごくなかよしですのよ。
　きっとなんども『りせっと』して、こいびとになろうとがんばったのですわね‥‥ざんねんですわ」


　こんなセリフを仕込んでいるヒマがあったら一字一句でもいいからアルバートの恋人END書きなさいよ！
　と悪態をつきたいが、指先ひとつ動かせないまま、私の意識は徐々に暗転していった。


「だから、ごめんなさいですの。ここで、おわかれですわ‥‥」



　数々のバッドエンドを乗り越えた私といえど、こんな、理不尽なことって――！！













「あっ、でもねおねーさま！　『あぺんどでぃすく』をかっていただければつづきをたのしめますわっ！！」















●Epilogue -REAL-

「っつぅ手法で『げぇむ』を出せば芋づる式に儲へぶっ「買うかあああああああああぁぁぁ！！！」


　真っすぐ行ってぶんなぐる。右ストレートでぶんなぐる。

　ロイの拳は顎を正確に捉え、ジャックの体は虚空に弧を描いたのちぐしゃりと地に崩れ落ちた。
「わぁ、今の飛燕じゃないですかロイ兄さん全力だなぁ（棒読み）」
「ほんっっっっっとうに、くだらない事しか考えないわねこの愚弟は！　私達まで二次元にしようだなんて‥‥」
　ぜいぜいと肩で息するロイの背後ではシメオンとアルバートが深い溜息をついた。
　リアルブルーの友人から『ぎゃるげぇ』の女性向け版、『おとめげぇ』があるという話を聞き、商人の勘が働いた――否、それにしたって。

「そんな不誠実な商売があるか！　グリーヴ家の名を汚す真似をするなら兄といえど‥‥いや弟として、引導を渡してやるのが情け‥‥！」
「てめぇだってシャロンに『買ってｖ』って言われたら買うだろ！？買っちゃうだろ！？　いやちょっ、オイ剣しまえ洒落にならねぇからぁ！」
「当然よ白薔薇姫は天使ですもの！（即答）」
「ところでこの物語はジャック兄様が？　‥‥すごいなぁ、僕、兄様の新しい才能（）を見た気がするよ」
「ふっ！　パーフェクトスペック俺様にかかりゃ朝飯前だぜ（どやぁ」
（だめだわこの子早くなんとかしないと）
「ときにジャック兄さん、自分の物語は？」
「なっ‥‥、（書けるか）ボケぇ！　俺様と女（の甘酸っぱいシーンを書く）なんて（恥ずかして無理だ）ありえねーよボケぇ！　この‥‥ボケぇ！」
「ジャック兄様、語彙力」
「あら、狼狽えるってことは想像はしたのね」
「『自分と女性（のカップル）なんてありえない』とは、貴様そこまで‥‥」
「ちげぇからぁ！？」


　ぎゃあぎゃあと男4人が喧々囂々している中、
「ジャックにーさまっ！　とってもたのしかったわ！　つづきがたのしみですのよ！」
　と、兄たちに遅れて読み終えたシャロンがジャックにぎゅうと抱きついた。
　殺伐とした屋敷に颯爽と天使降臨！！
　一気に兄弟達が黙って安心する軽率王ジャック。
「おう！　そうだろそうだろ！？」
　上機嫌なシャロンの前で醜い諍いは御法度。ロイがやむなく剣を収め――ようとした、その時。
　シャロンがこてんと首をかしげた。


「でも‥‥『レイ（検閲）』って、どういういみですの？？　『げぇむ』のわたくし、どこかぐあいでもわるいんでしょうか‥‥」



　間。のち、ジャックに集まる視線。
（あ、俺様終わった）


「――シャロンっ！　そこは気にしなくていいのよ！」
「れい‥‥れい‥‥そ、そう、『レイン』！　シャロンも雨の日は憂鬱になるでしょ、だから具合悪そうなんだよ！！」
「まあ！　なるほどですの！　わたくし、すこしかしこくなりましたわシメオンにーさま！」
「この愚兄‥‥ッ！　そこになおりなさい！！（再抜刀）」
「誤魔化せたからせーｆ「黙らっしゃい！」だよなァ！　知ってた！！」



　斯くして、ジャックの乙女ゲーで丸儲け計画は廃棄となり――

　残ったものは1本のシナリオとシャロンの誤解、
　そして教育的指導された上で、1ヶ月の『ぎゃるげぇ』禁止令をだされたジャックであった。


　めでたしめでたし？









━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
　 ka1310／アルバート・P・グリーヴ／男性／25歳／魔術師
　 ka1305／ジャック・J・グリーヴ／男性／21歳／闘狩人
　 ka1819／ロイ・Ｉ・グリーヴ／男性／18歳／疾影士
　 ka1285／シメオン・E・グリーヴ／男性／15歳／聖導士
[> ka1260／シャロン・S・グリーヴ／女性／10歳／猟撃士

　　and　ヒロインNPC『復讐のお嬢様』、導入NPC『脱走のお嬢様』

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛

やっぱり字数足りなすぎィ！　こんにちは由貴です。

非常に濃い設定を頂き、一体どう消化したものかと頭を悩ませましたが、
時間と文字数さえ許せば1年分書きたいくらいネタが詰まった物語で、とても楽しく書かせて頂きました。
兄妹の掛け合いが楽しく、いくらでも続けたくなるのは巧妙な罠ですね（笑）

商品的にはエピローグがジャックパートぶんの描写のつもりで書きました。
真面目に書いたら、ジャック君が乙女なゲームになるのではという危険を察知してしまったので……！
いじりたい、この笑顔。


EDが実装済みの方も未実装の方もお楽しみいただければ幸いです。
ご発注ありがとうございました！

白銀のパーティノベル

由貴 珪花

ファナティックブラッド

2016年08月30日