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『 安らかな眠り 』
北里芽衣aa1416


プロローグ

 世界は役目を終えていた、太陽が沈むように死に近づく世界。
 月が世界を冷やすように、悲しみが世界を覆っていた。
 泣き声が町の至る場所から聞こえ。怯えを孕んだ怒気が夜にこだまする。

 苦痛に解放を。
 悲哀に安息を。
 絶望に終焉を。
 それがこの世界に捧げる、最後の鎮魂歌。
 
 それは死の行進。廃墟と化した世界に住まう。希望失われた人類に捧ぐ挽歌。

 苦痛に解放を。
 悲哀に安息を。
 絶望に終焉を。
 それがこの世界に捧げる、最後の鎮魂歌。

 列の人々は蝋燭を持つ長く、空に突き立つような火が夜の闇を切り裂いて進む。
 その行列はさながら、現代のヴァイドパイパーである。
 ただ一つ違うのは先導する少女が、可愛らしい、幼い少女であることで。
 その悲しきも儚い姿の少女は、濁った瞳で。世界を終焉に導く歌を歌う。

 苦痛に解放を。
 悲哀に安息を。
 絶望に終焉を。
 それがこの世界に捧げる、最後の鎮魂歌。

 行列は続く、人々は顔を出す。その様子を見守る。
 彼らの言葉を聞く、彼女らの意思を聞く。そして。

「さぁ。救いましょう。愚かなる神に嬲り殺されないように」
 直後少女の指示で、行列の者達は小さな円筒状のものを周囲に投げ捨てた。そしてガスマスクをかぶり、火を消す。
「穏やかなままにいけるように」
 直後スモッグが廃墟群からあふれ出す。マスクをかぶった一団を白い闇で覆いつくし、そしてすべては永遠の夢の中。
 
「私は約束したんです、誰も泣かない世界を作ると」
 そのガスの向こうで少女はマスクを取った。
 振り乱す髪は月の光を受けて銀色に輝いて。
「ね、ガルマさん」
 そう、空へとつぶやいた。その言葉が正しいことを証明するように。
 確かに嘆きは消えていた。

   *   *

 荒廃した灰色の世界、世界を滅ぼすための炎を空に住まう愚神に使い、結果両陣営は再起不能なまでに疲弊した。
 それ以上に痩せ衰えたのは大地、今や滅びを待つだけの世界、その中で。
 偽りの希望を掲げるあの組織は邪魔だった。
 だから『北里芽衣(aa1416)』は行動する、もう誰も悲しまなくていい世界を作り上げるため、ひたすらに前に進む。
 そのための重要作戦が今日、行われようとしていた。
「もうすでにこの世界は死んでいて、それなのにまだ大丈夫、生きられる、そう扇動するH.O.P.E.が悪でなくて何なのでしょう」
 そう告げて芽衣は黒マントのレクイエムメンバーを率いて屋上に上る。
 今日は愚神への反攻作戦、その説明が民衆向けになされる日。
 うまくいけばまた生活圏を取り戻せる、それは人類にとって最後の希望とも言っていい作戦だった。
 だが芽衣は知っている、それは無謀極まる突撃だと。
 人類はすでにつんでいるのだと。
 だから芽衣は……唱える、諦め地に伏せ。眠ってしまった方が楽なのだと説く。
「A班、B班配置についてください」
 殺すことにした、H.O.P.E.の最高司令官。実質日本だけとなってしまった人類の生存権を守るその人物。
 彼は今日衆目に姿をさらし、自分も一緒に戦うことを宣言するという。
 だから、その最高司令官も、その場に集まるH.O.P.E.職員も、民衆も全員を救済する予定でいた。
「来ましたね」
 そう芽衣は覚めた目で壇上を見下ろす。
 インカム越しに次々と聞こえる、ターゲット補足の報告。
 奴が現れた、その顔に笑みをたたえ、民衆に安心を与えようとする彼。
 だが芽衣は違うと首を振る。一番必要なのは安寧だと。
 「初めてください」
 その瞬間、響く銃声、しかし、その銃声は仲間が放った弾丸ではないとわかった。
 直後インカム越しに発されたのは悲鳴。 

――なんだ、あいつは。
――赤髪の女?
――とんでもなく強いぞ、体勢を立て直せ。
――隊長には近づけるな。
――これでやっと、休める。

 部隊はわずか五分の間に壊滅、それどころか、班員たちの悲鳴がこちらに近づいている。
 別に彼らが悲鳴をあげながらこちらへ走っているわけではない。
 前衛部隊、狙撃部隊、後方支援部隊。それらの班が続々と襲撃されているのだ。
 そして。その暗殺者は本陣まで迫る。
 軋む鉄の音。
 芽衣に影が落ちる。振り返る芽衣。見上げれば給水塔の上に彼女がいた。
「やはり先生なんですね」
 たなびくマント、獰猛な笑み。そしてパイルバンカーとライフルを持ち。彼女は芽衣を見下ろしていた。
「ばかな教え子だ」
 その声に憂いなど無い、代わりにあざけりもない。無感情に、無表情に仕事だから敵を殺す。
 そう言う目をして『先生(NPC)』は芽衣を見下ろしている。
 反射的に動こうとしたレクイエムの隊員たちを打ち殺して、芽衣に銃口を向けた。
「先生、私は、謝りませんよ」
「わかってる。だったらせめて君の望む死を上げよう。僕はこんなものが救いだとは思わないけどね」
 直後、乾いた音が空に響き、薬莢が太陽に煌いて。そして。
 
 その時、芽衣の目が覚めた。脂汗が頬を伝う。時計の音が夜に響く。
 芽衣は心臓を抑える。まるで打ち抜かれた心臓がまだ体に血を送りだそうともがいているような錯覚を受けた。 
 手のひらを見つめる。そこに血はこびりついていなかったが夜の闇が落ちていて、全く何も見えない。
 そんな少女は夜の闇に眼が慣れないうちに、恐る恐る、ベッドの周囲に指を走らせた。
 指先に当たるものがあった。
 それは、銃、そして杖。
 寝る前にはなかったはずのそれ。
「向こうのアリスが、教えてくれたのかな……」
そう二つの武器を手に取ると声が聞こえた、傍らで眠る少女の、でもきっとこの少女とは違う。
芽衣は銃と杖に、Requiemの文字を刻む、すると銃と杖から光が立ち上り、それは幻想蝶となって空に舞い上がった。
「行くんですね」
 その幻想蝶はわずかに迷うようなしぐさを見せて。やがて窓の向こうへ飛び去っていく。
「……あなた達のことも、忘れないから。おやすみなさい、どうか安らかに……」
 そう芽衣は夜空を見上げた。



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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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『北里芽衣(aa1416)』
『先生(NPC)』


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 いつもお世話になっております、鳴海です。
 遅くなってしまい申し訳ありませんでした。
 今回は芽衣さんが救われるお話し? ですかね。
 先生についてもなるべく正確に書かせていただこうと頑張りました。
 今後芽衣さんが救われるのかどうか気になるところではありますが。
 今後とも芽衣さんの物語にお供させていただければ幸いです。
 それではまたの機会にお会いしましょう、鳴海でした、ありがとうございました。


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2017年05月02日

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