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『 芽吹く黒 』
煤原 燃衣aa2271)&世良 杏奈aa3447)&宮ヶ匁 蛍丸aa2951)&大門寺 杏奈aa4314)&エミル・ハイドレンジアaa0425)&アイリスaa0124hero001)&阪須賀 槇aa4862)&一ノ瀬 春翔aa3715)&藤咲 仁菜aa3237)&楪 アルトaa4349
 プロローグ

 病室に針の音が響き渡る。
 刻一刻と過ぎ去る時間。時が過ぎるごとに痛みばかりが『月奏 鎖繰(NPC)』を襲っていた。
 彼女は何も告げない、自分の両手を眺めたままじっと、黙りこくっている。
 そんな場の空気に『一ノ瀬 春翔 (aa3715@WTZERO)』は言い知れない不安を感じた。
 妙に気分がすぐれない。
 嫌な予感というプレッシャーが常に付きまとう。
「月奏さん。お話があります」
 そう切り出したのは『黒金 蛍丸 (aa2951@WTZERO)』彼は隣に立つ『煤原 燃衣 (aa2271@WTZERO)』と鎖繰を交互に見て口を開いた。
「僕たちは招きに応じようと思います」 
 その言葉に鎖繰は弾かれたように顔をあげた。
「だめだそれは!」
 蛍丸と、燃衣の裾を引いて顔を下に向ける。
 二人の腕にずぅんと言う鈍い重みがつらなった。
「行ったら、殺されてしまう。みただろう? 戦っただろう? 私達だけでは無理だ。無力だ。無力なんだ」
 鎖繰は自分の体を抱きしめた。震えている。
「確かにラグ・ストーカーはとても強大で危険な奴らです。でも、だからといって放っておく訳にはいきません。私達は戦う為にここにいます!」
 そう明るく微笑んだのは『世良 杏奈 (aa3447@WTZERO)』
 その表情に鎖繰はあっけにとられてしまう。
「なんで、なんであなた達は戦えるんだ!」
「それはもう、失わないためです」
 燃衣が告げる。そして全員を見渡す。
 『大門寺 杏奈(aa4314@WTZERO )』は拳を握って燃衣の言葉を促して。『藤咲 仁菜 (aa3237@WTZERO)』は柔らかく微笑んだ。隣に佇む『エミル・ハイドレンジア(aa0425@WTZERO)』と『アイリス(aa0124hero001@WTZEROHERO)』は死地に赴くとは思えないほどのんきに構えていたし。
 それを前にしては『阪須賀 槇(aa4862@WTZERO)』のビビりようがギャグのようである。
「もう誰も同じ目に合わせないために。僕たちは行きます。大丈夫この仲間たちと一緒にロシアも戦って勝ちました。今度も勝ちます」
 振り返る燃衣。立ち去ろうとする燃衣。
 そんな燃衣を追いかけようと鎖繰が立ち上がる、弱った足腰では急な運動に耐え切れなかったらしく、ふらつく鎖繰。
 そんな彼女を燃衣は抱き留め囁いた。
「先で待ってます、きっとあなたも立ち上がれる。今は僕らを信じて待っていてください」
 顔を赤らめる鎖繰。そんな彼女たちを。
「隊長、フラグキタ――――――――」
 槇が茶化した。
 燃衣の顔面も真っ赤に染まる。
「こここ。これ、これ、これは、これは」
 燃衣は鎖繰の体を引きはがそうともがくが足がもつれうまくたてない鎖繰。
 その体が意外と柔らかかったり、髪の毛が揺れるたびにいい匂いがしたりといろいろてんやわんやになってしまう燃衣だったが。
 そんな燃衣を見て鎖繰は笑った。
「全く、緊張感に欠けるな」
「ホントにな! 隊長遊んでるなら置いてくぞ」
 そう『楪 アルト(aa4349@WTZERO)』にやつきを隠そうともせずアルトが告げるとメンバーたちは一室を次々と後にする。
「うわーー、待ってください!」
 ベットに鎖繰を腰掛けさせるとあわてて後を追う燃衣。
 その背後で最後尾となったエミルが鎖繰に視線を送った。
 名残惜しそうに彼女を見てそして、踵を返す。
「あ。蛍丸君」
 そう病室の外で蛍丸を呼びとめたのは『三船 春香()』
 彼女は布でくるまれた重たそうなそれを蛍丸に差し出すと告げる。
「H.O.P.E.に届いてたよ。遙華が持って行ってあげなさいって」
「ああ、実家に頼んでいた『鬼哭』『楯無』ですね……」
「すごい霊力だね。これをどうするの?」
「決まってます」
 布を解くと磨き上げられたその武装を撫でる。
「みんなを守るための力とします」
 決戦の日は近い。ラグストーカー本拠地。通称パンデモニウム。
 その侵攻作戦が開始されようとしていた。

第一章 対応策

 悪魔城は日本国内でも特に治安の悪い一体。その地下に存在する魔窟だ。
 城と言っても壁を構えた軍用拠点ではなく、地下開発の一環で作られた地下通路をさらに改築して戦略拠点としたものである。
 その最下層に奴はいる。
 『黒日向 清(NPC)』
 全ての元凶。悪の中の悪。
 奴を打つために暁戦闘部隊はその班を二つに分けた。
 先ず正面から囮として突入する防御力対応力の高い部隊。
 そして電光石火のごとく敵地に潜入して心臓部を叩く潜入部隊。
「私はみんなのバックアップ兼。もしもの時のために対応する係りになるよ」
 春香はそう告げると運び込んだ機材の中央に座って手を振った。
「みんな行ってらっしゃい」
 綿密に作戦をねり準備したうえでの侵攻。
 ただし、その作戦は読まれている。

「ここからさきにはいかせないよ」

「無様に屍をさらすなんし」

 大フロアに響いた声。 
 もしくは巨大な円筒状の下水路に反響する声。
 たとえば燃衣は大フロア中心に佇む女性を見た。すらりと背が高く和調衣服に身を包んでいたがスリットや胸元が大きくはだけていてまるで娼婦のようにも見える。
 そして蛍丸は立ち込める周期の中で何かが爆ぜる音を聞く。ぱちぱちと瞬く光の中心には小柄で虎耳を装備した少女が立っていた。
「おい、お出ましだぞ」
 春翔が下水の流れに逆らいながら立ち。告げる。
「お前らはなんだ」
 春翔が問いかける、すると少女は口にする、その名を、関する称号を。
「うちの名前は青龍妃」
「あたしの名前は白虎姫」
『青龍妃(NPC)』そして『白虎姫(NPC)』は不敵に歩むとその力を解放する。
「「主より仰せつかった命により、抗うものには更なる絶望を!!」」

 戦いが始まった。

「え! いきなり」
 杏奈は突撃してくる青龍に対して武器を構える。
「単分子ブレードって知ってはる?」
 甘く囁くような声がフロアに響く。その言葉に対して答えをきかないうちに青龍は腕をふった。袖が大きく揺れ周囲に網のように何かが展開される。
 水色の、飴細工のような材質の。
「いけない! それに触れるな!」
 アイリスがはじかれたように叫んで、次の瞬間杏奈を盾で吹き飛ばしていた。
 一瞬遅れて何かが杏奈のいた場所を通過。見ればざっくり地面がえぐられていた。
 耳に届く風切り音。青龍の両手から鞭のような紐のようなものが伸びている。
「あなたは清君のなんなんですか!」
 燃衣が叫ぶ。
「てめぇらがラグなんちゃらって奴等か!」
 アルトが食らいつく。その問いに二人の女性はこう答えた。

「うちら四神。時に育む者」

「そして時に刈り取るものだ!」

 薄汚れた下水の壁を駆け上がり白虎が蛍丸の頭上をとった。
 そのままかかと落とし。だが蛍丸はそれを籠手で受け止める。
 その隙に。
「しゃらくせえええええ!」
 直後アルトはその全ての武装を解放した。空間から溶け出すように浮上するのは彼女の鎧とも相棒ともいえる。Pygmalion。
 そのPygmalionは数々の装備を内包している『グランブレード「NAGATO」』の他、『ドリルナックル』に『ヴァルカンナックル』『カチューシャ』『対戦車刺突爆雷』準備は万端。火力は呪分
 アルトの飽和攻撃。周囲の壁を砂糖菓子のように白虎もろとも爆破していく。
 その煙の向こうにシルエットが見えたかと思うと。
 瞬時に槇の前に移動。
「はやすぎるっ」
 お、をつける前に顔面を蹴り飛ばされる槇。その崩れゆく槇の両肩に足をかけて後ろに開店するように飛ぶと。エミルの刃を回避した。
「……む、背中に目でもあるの?」
 春翔が肉薄。
(身のこなしは一級品。けどよ。なんだこの違和感は。手加減? 少し違うな)
 斧を短くもって斬撃、その攻撃を回避した白虎姫へと手の中で柄を滑らせ刺突。鋼鉄すら両断できる勢いの刺突は触れてもいないのに、白虎姫の優美な衣装を切り裂いたが命中はしなかった。
 さらに柄の緒。石突あたりを握って振り回し最大リーチにて斬撃をみまうがこれも回避。懐に入られてしまう。
 ここでエミルとバトンタッチ。エミルの斬撃。それを白虎は飛んで回避した。
「なかなかだね」
 着地後すぐに白虎は反転。
 回し蹴りを放つもエミルは刃の腹でそれを弾く。続く斬撃をやすやすと回避した白虎はその柄に足をかけて飛ぶと天井に跳ね返りかかと落とし。
 バックステップでそれを回避したエミルは淡々と告げた。
「……ん、でもワタシの方が早い」
 エミルが飛んだ。
 その刃を水平に横へ。通路外壁を削りながら弧を描くように振るわれた刃。
 それを潜って回避するもエミルはそれを予測、剣から両手を離して掌底。
 ふきとんだ白虎は壁に叩きつけられ張り付いた。
「やるじゃねぇか、だったらあたしも……」
 その時、大フロアと下水道内に影が湧いた。黒い塊は形をなしでやがて、筋骨隆々の化け物へと姿を変える。
 それだけではない。白虎と青竜に霊力が集まりつつあるのだ。
 これはいけない。そうリンカーたちが止める間もなく。
 白虎は告げる。

「邪神共鳴」

 短く告げると白虎の周囲に光が集まった。激しく荒々しく爆ぜるそれは電気だと一瞬でわかる。問題はその電力が白虎から湧き出していることだった。
「スピードをあげてくぜぇ! クソ野郎ども」
 直後動き出す化け物ども。そして白虎。
 そんな軍隊へと牽制で槇とアルトが弾丸をみまう。だが信じられない光景が目に映った。
 それは瞬間移動。まるで外殻から内殻へと移動する電子のような動き。
 それにて一瞬でアルトへと距離を詰めるが。蛍丸はそれを予測。白虎の格闘攻撃を全て捌く。
「まだ、兄さんの動きに比べたら。威力が足りませんね」
 直後アルトからの攻撃。唸りをあげるドリルによるブロー。
 その巨体と場所故に逃げる場所は直上にしか存在しなかったはずだが。白虎はその包囲網を難なく潜り抜けた。そして。
「肉弾戦があたしの火力じゃないからね!」
 直後湯気があがった。足元の水分が急速に蒸発し。そして。
 雷光が下水道を覆った。
 五人の悲鳴が聞こえる。
「電子移動、帯電察知。放電籠絡。感電守護。それだけがあたしの能力じゃねえぞ!」
「このクソ野郎!!」
「ん、斬る」
 NAGATOによる唐竹わり。エミルによる斬撃。
 きわめて驚異的な放電攻撃だったがこれで膝をつくほど軟なリンカーたちではない。
 ただそれも、白虎にとって想定の範囲内。
 白虎はその斬撃がちょうど当たらない微妙な位置に体をずらした。予備動作なく、それこそ瞬間移動のように。
 次いで白虎姫は左手を振るう。するとアルトの纏っていたPygmalionが下水の中に引き寄せられ、特大の水しぶきをあげて沈んでいった。
「なにが起こってるんですか」
 混乱する蛍丸はアルトを心配して下水の中へ。
 対するエミルが動く前に。
「雷牙咆哮。食らいやがれ」
 白虎が放つ極大の雷撃にてエミルは吹き飛んだ。
「あはははははは! この程度かよ! つまんねぇな!」
 同じ攻撃を下水の中にいる蛍丸、アルトへ何度も放つ。
「にしても偽極姫シリーズの一角がこんなところにあるなんて。負の遺産だけど回収しておこうかな、なんだかおもしろいね。お姉ちゃん?」
 そう小首を傾げて告げた白虎姫。その言葉にアルトが切れた。
「おい、お前。知ってんのか?」
 直後特大の水しぶきが上がってアルトが浮かび上がる。ブースターを吹かせ空に浮いている。
「偽極姫は私達のだ、お前にゃわたさねぇ」
「へぇ、あんたの意見なんか聞いてないのに随分な口をきいたね。殺すよ。お姉ちゃんなんかいらないしね!!」
 下水の下には巨大な鉄の塊が沈んでいた。Pygmalionの体を磁石にしてそれに吸着、動きを封じたのだろう。リンカーであれば窒息はしないがあのまま身動きできずサンドバックになっていたなら死んでいただろう。
 だがそこはアルトである。体が動かないなら動けるように自由を封じている鉄の塊をバラバラにしてしまえばいい。
 自分もろごとあたり一帯を吹き飛ばし、拘束を逃れたというわけだ。
「逆にお前等を伸して、アタシの聞きたいことに答えさせてやる。何でピグを知ってんだ。偽極姫シリーズってなんだ!」
 アルトの爆炎が白虎姫のシルエットをつつみこんだ。
 対して、槇と春翔は。群がる従魔に遊ばれていた。
 こいつら最初は二体だったのだが、斬れば砕けば分裂し、まとまり、再生し。倒れない。むしろ数が増えていく。
「なんなんだお! こいつら!」
 槇が的確にヘッドショットを決める。筋肉で覆われた体に弾丸の通りが悪かった。
 幸い動きが緩慢で攻撃力重視な存在のため頭を射抜くことは簡単だ。
 しかし。その影は無限に再生する。
「くっそ!」
 倒しても倒しても歩み寄ってくる化物達。
 それを一人で抑えている槇の戦場管理能力にも驚愕だが、それも限界がやがて来る。
 従魔のブローにて槇は壁に叩きつけられた。
「多勢に無勢だ!」
 春翔が槍の斧で白虎の蹴りを受け止めると槇へと叫ぶ。
「撤退するぞ! 敵が悪すぎる」
 偵察としては十分だ。敵の実力が知れた。これは対策なしには勝てない敵だ。規格外すぎる。
 春翔は敵の実力を瞬時に見抜いていた。
 けれど。
「もう遅いよ。お兄ちゃん」 
 いつの間にか白虎が春翔の背に張り付いていた。両手を沿えるように春翔の背に。
 見様によってはロマンチックな光景だろう。だが、白虎の表情は獰猛に歪んでいた。
「雷牙咆哮!」
 直後特大の雷撃が春翔を襲う、その雷撃の牙は檻となって春翔を閉じ込める。
 苦痛を与え続ける。
「がああああああああああ!」
「放電籠絡、ふふふ、お兄ちゃんはもうアタシのもの」
「苦痛を与え続けるなんて、ひどいことを……」
 槇が呻く。その言葉を耳に挟んだのか従魔たちをどけさせると白虎は槇に歩み寄った。
「人の趣味にケチつけないでよ。お兄ちゃん。アタシの数少ない楽しみなのよ?」
 そう白虎姫は頬に手を当てて恍惚とした表情になって告げる。
「いいよ、いい。苦痛に満ちた表情も。快感に身悶える表情もすごくいい。私のコレクションにしてあげる。死んでも形を変えないように。ずっと体は生かしてあげる。あはははは」
 そうくるくると踊る少女。
「そんなこと、許されるはずがないお! 誰だって痛いのは嫌だし、そんな標本見たいに一生を終えるのだってごめんだお!」
「え〜? そうなの? でも美少女なら許されるんでしょ?」
 迫る蛍丸の攻撃を回避。一瞬で元の位置に戻って蛍丸の腕を掴んで腹部に一撃叩きいれた。
 そのまま雷撃をみまう。
「がっぁ」
 空中に雷牙咆哮。その範囲の広大さにアルトは回避しきれず落ちることになる。
「あはははははは、コレクションが増える! 今までのコレクション飽きてたんだ! もうイケないから捨てて今晩からお兄ちゃん、お姉ちゃんたちで楽しむことにするね! あははははは」
「……うるさい」
 その時である。鋭い金属音が水路に響き、白虎姫の笑い声を遮った。
 エミルが愛刀を支えにその場に立ち上がろうとしている。
「ん、アイツラを思い出すね、その悪趣味加減」
「は?」
 白虎の眉が釣り上がった。
 次の瞬間エミルは単身走りだし春翔を捕えている電気の檻へと体を滑り込ませた。
 春翔は地面に転がる。
「バカだね! この世で最も辛い苦痛の中に飛び込んだのよ! 時期に理性も蒸発する……」
 だがエミルはそれに対して反応をみせない。
「あんたまさか」
「ん……、さぁ、ね……?」
 直後背後から銃弾が浴びせられた。その攻撃に反応し白虎は槇の目の前に瞬時に移動する。
 そしてその髪の毛をつかんで顔をあげさせた。
「お兄ちゃん、死にたいのかな?」
「お前、萌えないんだお」
 槇は痛みに顔をしかめながら告げる。
「なに?」
「全然可愛くないんだ。萌えをなめてから幼女キャラをやるお。中途半端でなえ……」
 次いで白虎は槇の頭を壁に叩きつける。
「あたしキャラなんじゃなくて、可愛い可愛い女の子何だけど?」
「三十路前半の匂いがプンプンするお。例えば化粧の……」
「お前はここで殺す!!」
 次の瞬間斬りかかってきた春翔、その刃を回避して天井に足をつけた白虎は体をばねのように縮ませる。
 そして槇めがけて突撃した。
「内蔵引きずり出してそこらへんにぶちまけてやる」
 両手に雷撃を集約させる、それを解き放とうとした瞬間蛍丸が目の前に出た。
「もろともだ!」
「させません!」
 放たれた雷撃、だがそれは蛍丸を避けてあたりに飛び散る、雷撃が壁や空気中の塵を焼く
「な?」
「電位差です。僕はあなたの攻撃を三回死ねるほどにうけました。なのでぼくの防具はあなたと同じ電位になっています。電子は常に電位の低い方に移動する。だから僕の勝ちです」
「それぐらいで勝った気になるな! まだあんたらはあたしの電子移動を破れてねぇ!」
「それな……」
 春翔が静かに告げる。 
 煙草を下水に投げ捨てて斧をかまえる、その髪が徐々に白く変わっていく。
「この狭い空間で逃げ切れないほどの攻撃ならどうだ? 当たるんじゃないか?」
 見れば薄暗い闇に浮かび上がる白。白、白……。
 銀色の刃が鈍く白虎を狙っている。その数二百。
 大小さまざまな刃は飽和攻撃を実現し、敵を圧倒する。味方もろとも。悪の根源を打ち破るだろう。
「消えろ!」
 打ち出された銀雨は嵐のごとく。伝説の夜の再現にも等しい圧倒的火力で白虎を襲った。
「あああああああああああ!」
 なるほど、確かに回避可能な攻撃であれば白虎は必ず回避できるのだろう。
 だがそもそも回避が不可能な状況であれば。その強みは生かされない。
 白虎は攻撃をよけきれない。
 そしてその銀色の刃の嵐の中に、一人の少年が立っていた。無差別攻撃から逃れるために大体のメンバーは春翔の周りに固まっている。
 だが蛍丸だけは違った。
 この一撃では詰め切れない。そして好機はおそらくこの一瞬しか訪れない。なら。
 この拳にかけるしかない。
「七花……」
 込める力は解体するという意思。全てをバラバラに五臓六腑を切り開く。
「……八裂・改!!」
 白虎は目を見開いた。
 渾身の一撃を受けて下水道が崩壊する。
 
第二章 捨て身の炎

 大きな揺れを感じて仁菜は足を止めた。
 防御不能の一撃を回避するために足を止めるな、そう言われていたのだがこの揺れではまともに動けない。
「よそ見をしているひまなんてありんす?」
 水で生成された刃が地面を走る。
 そんな仁菜の体を大門寺が突き飛ばす。
「みなさん。絶対に逢の攻撃は受けないようにしてください」
 燃衣は告げる、荒い息をつきながら。
「防御は不可能。触れれば切り裂かれる絶対の刃です」
 したたり落ちる血を止めるために傷口を握った。
「けど! それじゃ隊長を治療できません」
「僕の事は気にせず! 戦って!」
 燃衣は切断された左腕を脇に抱えて叫んだ。傷口から溢れる血が止まらない。心臓が高鳴り、生存を訴えるほどに出血量は多くなっていく。
 そんな燃衣は自分の切り落とされた左腕を噛んで保持すると群がる従魔たちに向き直った。
 世良と背中合わせに有象無象の注意を引きつつ青龍の攻撃を避ける。
 戦況は開始直後から動いていなかった。あまりに高すぎる殺傷能力にこちらは防戦一方まったく攻撃に出られない。
「そうかい? ならお言葉に甘えよう」
 アイリスが走る。翼をはためかせ光による幻惑。攻撃を回避。
 青龍による斬撃は確かに脅威だが青龍の手元の動きに連動している、それを見極めることができれば回避はたやすい。
「はあ!」
 だから青龍の懐には飛び込みやすい。アイリスはその盾を前に構えて突撃、その脇腹に衝撃を伝える。
 だがその体はバラバラにひも解かれ、水となってあたりに散る。 
 そしてそれが戻ってまた体となった。
「ふむ、誰かさんを思い出すね」
 アイリスは舞う。盾の舞。時には自信を中心に回転。チェーンソウのように削り。時には盾を鈍器のように叩きつける。
 思った通り近距離には対応しづらいようだったが。アイリスの攻撃も通っている気配がない。だが今はそれでいいのだ。
 考える時間が欲しかった。この敵を攻略する方法を考える時間。
「ふぅむ。あんさんらなかなか戦いなれてはるようで。ならこれなら」
 直後青龍は全身を水としてあたりにぶちまけた。一瞬視界を奪われるアイリス。
 そして青龍はアイリスから離れた場所にて体を再構成。
「これにはどう、対応しはります?」
 口元を抑えて微笑む青龍。
 次いで吹き上げたのは水流。青龍の足元から沸いた水は太く、龍のようにうねって大門寺に突撃する。
 その一撃は鋼の塊で殴られたように重たい。
「一撃が重い……だけど、あの時に比べれば!」
 思い出すのは鋼の竜神あの気高さに笑われない砦となると心に誓った。
「だから、私は倒れない」
 脇に転がり水龍に流されるのさける。
 だがその大門寺を別の攻撃が襲った。
 それは先ほどの水龍とにた水の柱、ただそれは上から下にふり落ちる無数の雨。
 しかしその一粒一粒が金のような重さ。そして刀のような鋭利さである。
「あああああああ!」
 大門寺は盾をかさにしてそれに耐える。だが庇いきれなかった体の端々にダメージを負う。それは銃弾以上に体を貫きヤスリのように削っていく。大門寺の体が傷だらけになっていく。
「そこまでよ!」
 世良がその水を発生させている雨雲を吹き飛ばした。
 水は青龍の元に戻って周囲に浮かぶ。
「銀麟雨。水龍葬。そして蒼裂鞭。どれも一撃必殺、二度見る者はいない技なんやけどあんさんら、運がいいなぁ」
 殺傷能力の高い無限に持つ続く連撃。列車の突撃にも似た衝撃。そして切れぬものはない一閃。どれもまさに必殺だが、その程度であればリンカーたちは見飽きるほどに見ている。
「やったらうちのとっておき、みせたるわ」
 告げた青龍が両手を空に掲げると、燃衣たちに付きまとっていた従魔たちが泡となって消える。
(コントロールは彼女がしているのか?)
 アイリスは瞬時に状況を分析する。
(だとすれば、従魔たちを操るために使用していた霊力や集中力すら必要となる本気の一撃)
 青竜からあふれ出す殺気を全員が感じていた。
 レイディアントシェルの輝きをその身に宿したアイリス。そして大門寺が飛ぶ。
 それをやらせるわけにはいかない。そう青龍に殴り掛かる。
 だが、やや遅かった。
「昇魂涙……」
 青竜の目の前に作り出されたのは両手に収まるほどの水、普通の水より青々しく膨大な霊力を内包しているのがわかる。
 そしてその涙を青龍は霧として大門寺に吹きかけた。
「これは……」
 大門寺は盾を構えて立ち止まる、その肌がざわりと泡立った。
 まるで皮膚が何かに包まれて撫でられているような感覚。だがその感覚はすぐに強い刺激に変わる。
 次いで大門寺の肌が赤く変色し始めた。まるで熟れた果実のように膨らみ内側から破裂して血をあたりにまき散らす。
「これは!」
 とっさに大門寺は目を閉じた。
 これは酸だ。しかもこの世界どこにもない位に協力な酸。
 このままでは分子レベルにまで分解される。
「杏奈ちゃん!」
「私を信じて! 私は倒れない、だから」
 叫びながらも敵へとにじり寄る大門寺。
 そんな彼女の言葉で仁菜はすべてを察する。自分が友達に対してできること。
 それは肩を並べて誰かを守ることではなく。
 彼女という砦を信じて、皆を癒すこと。
「命の水よ!」
 仁菜が両手を広げると癒しの雨が降る。
「藤咲さん!」
 その時燃衣が叫んだ。
「ボクを集中的に回復させてください」
 仁菜は燃衣の表情を見る。
「い……いやです」
 仁菜は強張った笑みを浮かべて首を振った。
「お願いします」
 燃衣は切断された腕の断面と断面を合わせる。すると腕はすんなりつながった。
 切断面が綺麗すぎたのだ。だから細胞が生きているうちなら繋がる。
 ケアレインの影響もあって多少の運動なら問題ない位にはつながった。
「お願いします。少し体力が足りない」
「いやです!!」
「ああああああ!」
 だがその回復すら追いつかない速度で大門寺の腕が足が。赤くただれていく。
 皮膚が溶け、血管が裂け、酸や水滴、諸々と溶けだして流れる。杏奈の足元がピンク色に染まった。
 ぬめる足場。摩擦係数が低くなれば踏ん張ることもままならない。
「そんな……全身を耐えられへんような痛みがおそってはるはず……」
「私が倒れたら、誰が暁を守るんですか」
 大門寺は悟る。もはや肉体はあてにならない。
 では精神で対抗するしかない。
 霊力を網のように体に張り巡らせ一枚の盾とする。
「ああああああ!」
 杏奈は激痛を気合でごまかすために叫び声をあげた。だがその喉にすら酸は入り込んで喉を焼く。仁菜の回復が無ければとっくに骨となっているだろう、そんな痛みと恐怖に大門寺は耐える。
 そしてついに、杏奈は青龍に触れることができる距離までたどり着いた。
「あははははは、醜く溶けて消ゆるがいい」
 大門寺は血の涙を流しながらその声の方向へ顔を向ける。次いで彼女の輝きが増した。
 輝きの砦は穢れを払う。そして砦がそびえたつその場所までの安全を確保する。
 大門寺は地面に盾を突き立てた。衝撃で石畳が割れ吹き飛び、その酸を周囲に霧散させる。
「な?」
 その酸が薄くなった杏奈の背後から。アイリスが飛び込んだ。
「く! せやったら……あんさんはすりつぶしたるわ」
 数十トンの水を圧縮、鈍器としてアイリスに放つ青龍。
 だが。
「それは遠慮させてもらおう」
 真っ向からアイリスはその水の塊を受ける。
 その衝撃は受け止められ反射。
 反射した水の塊は青龍に命中。青竜の体が吹き飛んだ。
「がっ……は」
「見たところ、先ほど水になった技は回避技ではなく移動技。瞬時に距離を稼げる反面。咄嗟の場面では使えないのではないかな?」
「それがわかったところでどうされるおつもりですぅ?」
 告げる青龍はその腕にて水を操る、絶対切断の水の鞭がアイリスに向けられた。
 だがその時。
 直後、横っ面にサンダーランスが叩きつけられた。吹き飛ぶ青龍。
 見れば血まみれの杏奈が片手でネクロノミコンを開き、獰猛な笑みで笑っていた。
「がっ。この! 忌々しい!」
 起き上がる青龍。その時青龍は全身に熱さを感じた。そして部屋全体が明るい。
 当然だろう。燃えているのだ燃衣が。
 魂の一滴まで燃やし尽くし。この部屋から水分を排除しようと
「んふふふ、十トンの水を瞬時に蒸発させるやなんて。なんて熱量」
 その時青龍は何かに気が付いて動きを止めた。
「あんさん、まさか! 例のあの……」
「みっともなく死ね、無様に転がれよ! 火乃銛!!」
 次いで燃衣の四肢から放たれたのは全方位への大火焔。
 仁菜は世良の前に盾を張り。アイリスは大門寺を引き寄せてその熱波から身を守る。
 だが直撃を受けた青龍は、まず衣が焼け始め彼女が操っていた水が蒸発を始める。
「ああああああああ!」
 髪の毛に火がつき、衝撃波で青龍は壁に叩きつけられた。
 鉄板のように温度が上がっていた石の壁は彼女の肌を溶かすとはりつけ。
 やがて皮膚が黒く焦げ付いていく。
「防御や回避策の一つでも持っておくべきでしたね!!」
 次いで燃衣は地面を蹴って飛びかかった。鋼鉄すら気化させる熱を持つ拳。
 それを叩きつけようとかぶり振る。
「うちの体の中にも、水はあるんやよ!」
 次いで青龍の体内から生成されたのは昇魂涙。それも先ほどの量の比ではない。
 霧とならなくとも燃衣を全方向から包みこめるほどに生成された腐蝕の水。
 ただそれは。
「はあああああ!」
 燃衣の左手によって粉砕される。
 自身の拳すら砕けるほどの爆発。
 それにて雲散霧消した酸の壁。
 燃衣はその爆発力を回転力に変換。
 高速で回転しながらも燃衣は、右手を青龍に叩きつけた。
「ぎゃああああああああ!」
 直後青龍は魍魎のような断末魔をあげて霧散。
 直後、核でも爆発したのかという衝撃がフロアを襲った。天井が砕け壁も崩れる。
 崩落の瓦礫を撃ち砕きながらアイリスは燃衣の姿を追った。
「ははは、無茶が過ぎるね」
「行ってください」
 大門寺は見えなくなったしまった両目のままにアイリスへと告げる。
「私は大丈夫です」
「君たちは少し自分の身を案じることを覚えた方が良い」
 告げながらアイリスは跳躍、燃衣に降り注ぐ瓦礫を砕くとアイリスは燃衣をキャッチ。そして瓦礫の少ない場所へと着地する。
「倒したのかな?」
 いや、そんなことはなかった。
 青龍は次の瞬間、部屋の中央に青龍はワープする、すると青龍はその口から血をしたたらせて四つん這いに倒れた。
 肌や髪の焦げるにおいが周囲に漂う。
「あんさん、まさか燃衣はん? いやぁ、これは失礼を……うちてっきり落陽の居残りの方々やと思ってしまって」
 息も絶え絶えにそう青龍はつぶやくとふらりと立ち上がり優美な笑みを作る。
「せやったら、主様がおよびやわ。最初から言ってくれはったらもっと手厚い歓迎慕ったのに、ほんまいけずやなぁ」
 告げると青龍は背後にある大扉を指を鳴らすことで開く。
「まぁ、もう声は聞こえてへんかもしれんけどね」
 扉の向こうには幅が広めの通路が続いていた、だが。次の瞬間その通路が下から突き上げられるように爆発した。
 瓦礫に紛れて吹き飛んでくるのは白虎。そして無数の斧。
「煤原!」
 その濛々とたちこめる粉塵。
 その向こうに立つシルエットは白く、巨大な斧を担いでいた。

第三章 目覚めと喪失。
 
 声が聞えた。煙の中か暁メンバーが駆け寄ってくる。
 青龍の脇を抜けて走り去っていく春翔たちを、青龍は見送った。
 代わりに眉根をひそめて土煙の向こう側を見ている。
「あんさん、なにしてはるの?」
「兄さん!」
 蛍丸がアイリスから燃衣の体を受け取って、抱き留めた。
「そんな、兄さん息を……」
 蛍丸と仁菜が総出で回復に当る。
 そんな中仁菜は泣きじゃくりながら告げた。
「私、止めたんです、絶対ダメだって。でも、隊長聞いてくれなくて」
 燃衣は気が付いていたのだ。
 相手の攻撃能力が高すぎてこちらは一切攻撃に出られない。防戦一方のままだと削りきられて死ぬ。
 ならば誰かが、決死の覚悟で突破口を開かなくてはならないと。
「あんさん、ぼろぼろやんか。恥ずかしくないん?」
「青竜ちゃんも、口くさいよ? 腐った内臓が爆発して匂いが漏れてるじゃん、死にかけ?」
 そう悠々と話す四神の二人。二人にはまだ余力があるように見えた。
「兄さんが自滅覚悟で放った技でも、倒せなかったんですか?」
 その蛍丸の言葉で場に絶望が溢れる。 
 その直後だった。
「さて、もう十分楽しんだよね?」
「ふふふ、そやな……もう十分や。燃衣はんはまぁあとでいくらでも生き返すとして。他の人らは不要やし」
「じゃあさ、男の子はアタシに頂戴? 快楽と苦痛を与え続けて肉人形にして遊ぶから」
「せやったら可憐な女の子は全部うちにおくれやす。花が溶けて醜く変わる様は何度見てもあきひんのよ」
 次の瞬間二人は獰猛な笑みを浮かべて霊力を解放した。

「「皆殺しだ」」
 
 直後放たれた雷撃。そして数十トンの水を束ねた龍。
 それら二つを。
 黒いサンダーランスが迎え撃つ。
「はあああああああああ!」
 世良が前に出て魔導書から常にイカヅチを生み出していた。
「世良さん!」
 蛍丸が叫ぶ。その声に世良は一瞬振り帰り。そして小さく微笑む。
 命を燃やした一撃、燃衣ができるのであれば自分もできるはずだ。
 そう、魔導書に魂を売り渡すつもりで雷を放ち続ける。
「貴方達には殺せないわよ。うちのみんなは、とっても強いんだから」
 黒色の雷は敵の攻撃を巻き上げそらし、それらは天上に突き刺さった。更なる崩落。天井に穴が開く。
 月が見えた。
「そうです。僕らはこの程度では終わらない」
 燃衣が目を覚ました。全員の生死もきかずに立ち上がる。
「その先に清君がいるんですね?」
 燃衣の霊力が膨れ上がる。
「兄さんだめです! これ以上は死んでしまう!」
 蛍丸が燃衣の腕をつかむ。
「いいえ、僕は死にません」
 振り返る燃衣。だがその瞳は狂気に歪んでいた。
「僕はだって、こいつらを皆殺しにしないといけないんですから」
「あははははは! チョーシノンなよ雑魚どもが!!」
 叫んだのは白虎。
「せやったらうちらのとっておきで、全員すりつぶしたるわ」
 青竜が告げると、青龍は自身の周囲に水を張った。
 その表面を白虎の電気が這う。あれは何をしているのか。
「電気分解? 酸素と水素濃度が急上昇だよ!」
 そんな天上の大穴から春香が下りてきた。
 メディカルアイテムが詰まったザックを投げ捨てると敵とリンカーの間に立つ。
「ここは私が食い止めるからみんな撤退しよう。上の穴から逃げて」
「逃がさないよ! お兄ちゃん、お姉ちゃん」
「偽称・鳳来凰呼砲……あんひとの技をまねただけやけど。範囲、攻撃力共に優秀なんよ」
 青龍が告げると、リンカーたちを囲うように火が走る。大量に霊力を含んだ炎。
 それは不死鳥の形をかたどり舞い上がると夜空を背景に佇んだ。
「わーーーーー逃げ道が塞がれたよ!」
「やるしかありませんね」
 燃衣が立ち上がる。
 その隣に大門寺が立った。
「お供します」
 少女の目は仁菜の手によって治療されていた。今は同じ方向を向ける。
 燃衣と同じ方向を。
「私は隊長たちが走り続けるなら、いつでも盾になります。隊長が迷わなければ私も恐れなく盾になります。だから」
 槇はそんな二人に苦笑いを向ける。
「だあああああ! こうなったらやるしかねぇお」
「やれることなんか、ないでしょ!! お兄ちゃん! しね!!」
 直後堕ちる炎の翼。それはその場にいるリンカー十一人を巻き込んで大爆発した。
 石畳も綺麗に溶け堕ちてマグマとなっている。
「これ、死体も溶けちゃったんじゃない? 青龍ちゃん」
「ん〜。あ〜。どないしよう?」
 そう不用意にマグマの海に近づいた四神の二人。
 だがその直後、奇妙な輝きをマグマの中に見つける。
 それは光、金色の光。
 数千度にもなる溶けた石を、光の翼がかき分けていた。
 アイリスと大門寺。
 二人の盾が全員を守っている。
「最後の最後で炎に頼るなんて、バカをしましたね」
 燃衣の声が聞えた。
 見ればその翼の背後で燃衣が熱をその身に取り込んでいるではないか。
 その体にはピアノ線が巻き付いていて。その先は槇に繋がっている。
「ぬおおおお、霊力演算ってどうやってやるんだお。っていうか何で俺できてるんだお? おおおおお」
 もともと電子機器をハックするために持ってきたPCにて槇は敵攻撃を分析、霊力の流れを計算して春香のピアノ線を神経として燃衣に接続。
 感覚が強大に膨らんだ燃衣はその炎への適性を持って不死鳥をねじ伏せその身に取り込んでいた。
「あ。忘れてた、その人の英雄って。あの人の」
「アルトちゃん! パス!」
「任せとけ!」
 燃衣を中枢の回路。CPUとして設定し、燃衣の制御で膨大な魔力は砲塔であるアルトに送られる。
 火力運用は彼女の専売特許。
「全部持ってけ! 武装展開」
「させへん」
「させない!」
 飛びかかる青龍と白虎。
 だがアイリスと春翔が眼前に控えている。
「サークルリコイル」
 アイリスは青龍の水の塊を盾で一時的に受け止め回転力を持って盾と同化する。
 鉛のように重たい水を連ねたまま青龍のどてっぱらに叩き込んだ。
「が!」
 対して春翔は。
「またお兄ちゃんなの?」
「御前が、お忍ちゃんって呼ぶんじゃねぇ」
 左手に赤い斧。右手には白い斧。
 春翔の体の色が二分される。
「それ、まさか英雄二人との同時共鳴?」
「堕ちろ!」
 白い斧が無数に展開される。それは必死に攻撃を避ける白虎を囲うように牢となり。
 動くスペースのなくなった白虎へと赤い斧が突き刺さる。
「かはっ」
「ブラストビート」
 アイリスの羽が幾重にも展開される、それは全てスピーカーの役割をはたし彼女の歌で、青龍、白虎の分子が震える。
「そんじゃ、まとめて粉々だ!」
 放たれるアルトの全火力。
 それこそ大フロアを跡形もなく吹き飛ばす大火力。
 霊力の飽和攻撃に二人は吹き飛び、通路奥の扉に当って、この扉を吹き飛ばした。
 部屋の奥の暗がりに二人は消える。
「た、倒したんですか?」
 蛍丸が告げると、エミルがその前に立った。
「ゆだん……しないで」
 エミルは視線を燃衣に向ける。
「撤退はありえません、このまま進みます」
 その言葉にエミルは淡々と答える。
「ん。了解」
 暗がりの奥に進むと、まずは臓物が腐ったような腐臭が漂う、その中心の玉座に男は座っていた。
 そして男は燃衣に向かって拍手を送る。
「すごい、すごいよ。燃衣。俺の千里眼だと万に一つも勝ち目はなかった」
「清君……」
 男の名前は『黒日向 清』ラグストーカーのトップである。
「けれどお前たちはピンチを力に変えたんだ、うらやましいよ。そんなお前がうらやましくて。ずっと殺したかったんだよぉ」
 次いで清の目の前に躍り出たのは春翔と春香そしてエミル。
 エミルの先制攻撃。その一撃を清は片手で受ける。
 何か防御策があるのだろう。そう考えたエミルだったが自分の目を疑った。
 清は何の防御もなしに刃を受け。そしておびただしい量の血があたりに散らばった。
 次の瞬間闇の中から無数の矢が発せられる。
 その攻撃に対して春翔がローズペタルを複製、百を超える矢を全て捌き切り。
 反撃の春香の音色によって壁に吹き飛ばされてずるずると体制を崩した。
 あっけなさすぎる。そう誰もが思った矢先、春香も、エミルも、春翔も、胸を押さえてうずくまる。
「そうだね、目に見える攻撃それは防げるだろう。だが。目に見えない攻撃はどうかな」
 次の瞬間、三人の肌の上を霊力の光が走ったそして。
「お前たちの処遇はお前たちの罪業にゆだねる」
 そう清が空をかくようなしぐさをすると。
 春翔の肋骨の隙間から刃が突き出た。
「な……っ」
 口から湧き出す熱い液体。
 対して春香は太ももの裏が切り裂かれ地面を転がる。
「ああああ!」
 エミルはその四肢の末端から凍りついていく。
「これは?」
 エミルの問いかけに清は無関心をみせた。
「仲間たちに一体何をしたって言うんです」
「罪の具現化だよ。自傷、破壊衝動。そして無感覚。それぞれの罪がお前たちを内側から食い尽くす」
「な?」
「たとえば燃衣、お前の煮えたぎる憎悪。それを増幅させお前を焼き尽くす炎としたならそれはそれで楽しいんじゃないか?」
「やらせません……」
 そう歩み寄る清の前に立ったのは蛍丸。満身創痍の体に鞭打って盾となった。
「お前……なぜそうあれる」
 清が引きつった笑みを浮かべた。
「お前のような人間がいてたまるか。染まれ。黒く染まれ!」
 その直後である。蛍丸の足元から炎が噴出した。
「そんなほた……」
 手を伸ばす燃衣。そんな燃衣に向かって微笑みかけた。
「チッ、朱雀か……余計なことを」
 そんな蛍丸、そして蛍丸の元へぼろぼろの足で必死に歩み寄ろうとする燃衣を清は一別。踵を返して歩き出す。先ほども姿を見せた従魔が白虎と青龍を運び出していく。
「収穫にはまだ早い、今は見逃すよ。新しいおもちゃも出来上がった。それでしばらく遊びたい。それに偽極姫に白虎の電流が効かない少女。面白い。面白いからな。今日は許してやる」
 暗闇の中に通路がるようだその向こうへ清はあるいていく。
 それを追いかけようとは誰も思わなかった。
 満身創痍の部隊、歩ける人数の方が少なく、生き残ったことが奇跡的。
 回復手段も使い切り、そして肝心のメディックの一人が虫の息。
「そんな、まさか優先して僕たちの回復を」
 震える燃衣の声、そんな燃衣の頬に蛍丸は手を伸ばす。
「行かないで、兄さん」
「僕はここにいます、ここに」
「一人で闇の中に、行かないで」
「僕は、僕はどこにもいきません、ここにいます、みんなの場所に」
 しかしその言葉に蛍丸は首を振る。
「貴方の罪を決めるのは貴方じゃない。前を向いて。お天道様に恥ずかしくないように。兄さん」
 その瞬間、春香が短くつぶやいた。
「心臓の音が止まった」
「蛍丸!!」
 燃衣の嗚咽が冷たい部屋にこだました。


エピローグ
 心電図の鳴らす音が定期的にリズムを刻む。それにほっとして仁菜はベットに額を押し付ける。
 その別途には蛍丸が横たわっていた。
 意識だけ帰ってこない蛍丸が。
「私はまだまだ弱い……」
 泣きはらしたのか兎のように目が赤い仁菜。
 蛍丸の状況が安定するまでかわりばんこで病室にいようと言い出したのは彼女で、言いだしっぺ、最初のねずの番である。
「力の源か……」
 春翔は言っていた。奴らの強大な力と自分たちの力それをわける線とはなんなのだろう。
 そう考えるのも当然だ。仁菜は思う。彼らが本気を出してたらきっと皆助からなかっただろうと。
「強くなりたい……」
 噛みしめるように仁菜は告げる、メディックの先輩である彼がいない間。自分が暁のメディックだ。だからなおさら。
「もう誰も……。誰もいなくなってほしくない」
 どんな悪からも仲間を守れるように。
 守り手であり、癒し手である少女はそう願う。
 そんな病室の外で燃衣は壁を背にして座り込んだ。蛍丸の病室に入る勇気が湧かない。
「ねぇ、燃衣さん」
 春香が告げる。その手には切り花。心は下向き。いつも明るい彼女が今は笑ってない。
「あの人が蛍丸君を怖がった理由って何なのかな?」
「怖がった?」
 燃衣は眉をひそめた、少なくとも燃衣にはそのように見えなかった。
「四神ってあと一人いるんでしょ? 朱雀もあんなに強いのかな」
「恐らくそうでしょう。そして配下はその四人だけではない気がします」
 燃衣は天上を見あげてため息をついた。
 何も、何も思いつかなかった。四神の圧倒的な力の前にそして清の『原因不明の力』の前に燃衣はもうお手上げだった。
「もう、無理ですかね」
 そんな言葉を吐きそうになったその瞬間。声がした。
「諦めるのは早いよ。燃衣」
 その声に燃衣は顔を上げる。
「先で待ってるんじゃなかったの? 燃衣」
 鎖繰が包帯をなびかせて燃衣の前に立っている。
「希望をくれたお前たち自身が諦めてどうするのよ」
「けどもう、対抗手段が」
「そんなことはない、特異性には特異性で対抗するんだ。仲間をフルに使えばいいの」

「あなたの、命を燃焼させる力。高度な機械制御能力。偽極姫、同時共鳴、輝きの砦。あなた達は自分の力をまだ知らないだけ。自分のルーツを探しなさい。それが清の力を打ち破る鍵になる」

 そう差し伸べた鎖繰の手を燃衣がとる。まだ。まだ終わるわけにはいかない。
 そう燃衣は再び顔をあげた。


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
『煤原 燃衣 (aa2271@WTZERO)』
『黒金 蛍丸 (aa2951@WTZERO)』
『大門寺 杏奈(aa4314@WTZERO )』
『エミル・ハイドレンジア(aa0425@WTZERO)』
『アイリス(aa0124hero001@WTZEROHERO)』
『阪須賀 槇(aa4862@WTZERO)』
『一ノ瀬 春翔 (aa3715@WTZERO)』
『藤咲 仁菜 (aa3237@WTZERO)』
『世良 杏奈 (aa3447@WTZERO)』
『楪 アルト(aa4349@WTZERO)』
『三船 春香()』
『月奏 鎖繰(NPC)』
『青龍妃(NPC)』
『白虎姫(NPC)』
『黒日向 清(NPC)』



ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
 遅くなってしまいすみません。鳴海でございます。
 皆さんいつもお世話になっております。
 今回はですね、ガッツリ戦闘です。前回は戦う楽しさを意識して書いたつもりですが、今回は厳しさですかね?
 あとはノベルでしかできないことをと思って。通常のリンブレではありえない展開だとか能力だとか見せています。
 この本来ゲームでは再現できない、能力者たちの個性が今後ラグストーカーを打ち破るための切り札となるでしょう。
 あとはラグストーカー構成員の戦力分析など。暁の皆さんはお得意かと思いますので。その方面から攻めていけば勝利できるんじゃないかなぁなんて夢想しておりました。
 アドリブ部分も多かったので提出するとなると緊張の極みですが気に入っていただけると幸いです。
 それではまたお会いしましょう。
 鳴海でした。

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2017年10月17日

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