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『ジェニーとの思い出 』
小宮 雅春aa4756

 イマジナリーフレンドは、心の隙間にあらわれる。
 必要を十分で満たす想像の中の友達は決して雅春を裏切ることはなかった。
 そうイマジナリーフレンドは宿主を裏切ることはないのだ。想像主がイマジナリーフレンドを裏切ることはあっても。
 それは、かすれた記憶。今の今まで意識して思い出そうともしなかった記憶。
 それがなぜだろう今この瞬間蘇ってきた。
 潮風と砂の感触。よせては帰す水の音。記憶とは視覚よりも聴覚と嗅覚から蘇るとされる。
 雅春は今夕暮れに染まる海を眺めていた。隣には英雄が佇んでいる。
 日傘をさして一言もしゃべらずそこにいる彼女は本当にお人形みたいだ。
 そんな彼女に胸に思い出した物語を語るべきか、雅春はひどく迷った。
 
 その日雅春は彼女に連れられて海を見に行ったのだ。
 引かれる手、夏の日差し、涼やかな風。
 繋がれたその手の暖かさを雅春は確かに覚えている。
 家を出ると彼女は雅春に告げる。海まで長く歩くことになると。
「電車に乗って行けばいいよ」
 そう雅春が主張したが彼女は電車には乗れないと言ったので歩いていくことにした。
 遠い遠い道のりだった。
 朝に出てひたすらに南下した。
 住宅地を過ぎて。商店街の通りでお昼ご飯を二人分買う。
 そして地図も買った。海までどのルートで行けばいいのか彼女と話をしたのを覚えている。
 彼女は日傘をさしていた。その陰に隠れると少しひんやりしたのを覚えている。
 彼女は雅春を導くことはしなかった。けれど雅春があっちと指さすとその方向に向けて進んでくれる。
 雅春がいく方向を決めて、彼女がその手を引く。
 ただそれは今になって思うと誰かに手を引いてほしいともう願望だったのかもしれない。
 雅春はそうふと思った。
 夜も遅くなった頃、へとへとになって家に帰ると、いつの間にか彼女はいなかった。もう眠たかったから彼女を探すことはしなかった雅春は鞄の中身を片付けようとチャックを下ろした。
 そのかばんの隙間から顔をのぞかせたのはその日平らげたお弁当の残骸を、ポイ捨てするのはマナー違反と持ち帰った。
 鞄の中に二つのごみ。けれどそれも今思えば。
「自分で食べてたかもしれないんだよな」
 そう雅春は頭の後ろをかきながらそうひとりごちる。
 あの時は、その友達がいる説得力をどこかで出そうと無意識に二人人間がいないとつじつまが合わない行動をしていた気もする。
 しかしだ。もし本当にその場に友達がいたのだとしたら。
 それが幽霊でないとしたらいったいどんな存在なのだろう。
 雅春は思いかえす。
 愚神? 英雄?
 英雄になれなかった残留思念?
 雅春はその突飛な考えを首を振って胸にしまう。
 きっと自分は隣の女性にかつての友人の姿を重ねたいだけだ。
 そしてその根拠を、理由をさがしている。
 それが彼女のパーソナリティを否定する行為だと解っていながらそうしてしまう。
 雅春は苦笑いを浮かべた。
 その表情に気が付き、英雄が声をかけてくる。
 いつもの他愛ない世間話、それが今の雅春にはなんだか嬉しかった。



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『小宮 雅春(aa4756)』
ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 いつもお世話になっております、鳴海でございます。
 この度はOMCご注文ありがとうございました。
 今回ですと、過去の思い出が一つあれば便利かと書かせていただきました。
 気に入っていただければ幸いです。
 それではまたお逢いしましょう、鳴海でした。ありがとうございました。


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2018年11月28日

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