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『女の子としての苦労?』
cloverla0874

 clover(la0874)は、中性的な容姿をしているがれっきとした男性である。
 ――男性?
 否。正確に言えば、『ついこの間までは男性だった』という方が正しいか。
 ヴァルキュリアは人工知能という性質上、ボディもまた同様に人工物である。
 彼もまた、普段は男性の形をしたボディに収まっているのであるが――人工物というのは悲しいかな、時々『メンテナンス』という事態に面することがある。
 人間でいうところの長期休暇と言えば聞こえはいいのかもしれないが、cloverの場合はちょっとばかり事情が違っていた。

 ボディがメンテナンスに出される……つまり、その間に動けなくなることを防止する為に代替えのボディに一時的に人工知能を移すのであるが、cloverは何故か、その代替えが女性型なのである。
 ――何故こういった事態になっているのか。その辺りの事情については、深くツッコまないで戴きたい。
 人には言いたくないこととか、言えないことの1つや2つや3つくらいあるものだ。
「そんなにはない!! というか、どうするかな……これ」
 どこかに向かってツッコミを繰り出したclover。
 鏡を見て深々とため息をつく。
 ――本当に、どうしたものか。
 女性型のボディに移し替えられたことはこれが初めてではない。
 が、こんなに長い期間この身体に入っていることの方が稀だったのだ。
 短時間であれば気にならなかったことも、長時間ともなると……若干、困ることが出て来た。
 そう。インナー。下着である。
 服であれば、ある程度普段着ている物で間に合わせることが可能だが、インナー類についてはそうはいかない。
 男性と女性では、その形や役割においても大きな差があるからだ。
 特筆すべきは胸。そう、おっぱい。これが問題である。
 丸くて、柔らかそうで……見ている分には目の保養だと思っていたのだが、実際自分についてみると、これが実に邪魔なんである。
 まず動くと揺れる。
 しかも痛いと来ている。なんなんだふざけんな。
「大体だ! 人工物のボディなんだからここまで忠実に再現しなくてもいいんじゃないか!!」
 ――などと叫んでみても、事態は一向に好転しないのである。
 そう。このおっぱいを何とかしたいのならば、行動に移さねばならない。
 cloverは意を決すると……勇気を出して、その一歩を踏み出したのだ。
「何か偉そうなこと言ってるけど、俺が向かうの下着屋さんだからな!!!?」


 ――向かった先は、異世界だった。
 いや、別に女性のランジェリーショップと言えばこういうものなのかもしれないけれど。
 少なくともcloverにとっては、足を始めて踏み入れた地であり、馴染みがないにも程がある場所だった。
 大体普段のボディのままでこんな場所に入ろうものなら物凄い目で見られるに決まっているし、そもそも用がないから来ることもなかったのだ。
 何だろう、このキラキラでふわふわしたものは。
 いや、これらが全て下着なのだということは知識もあるし理解している。
 ……ただ、透けていたり、やたらと布の面積が小さいものもあって、『これ本当に下着として役に立つのか?』と思うようなものもあった為、cloverの困惑は最高潮だった。
 ――彼の名誉のために行っておくと、わざわざそういった下着を見に行った訳ではなく、たまたま目に入っただけである。
 別におっぱいが強調されたデザインだったからとか、決してそんなことはないのだ。多分。
「お客様、身体の線がお綺麗ですね〜」
「あ、ありがとう……?」
「お客様のお胸のサイズは……Cの65ですね」
「Cカップ……何か色々惜しい……っ」
「惜しい……?」
「いえいえ、こっちの話で……!」
 cloverの身体にメジャーを当てたままキョトンとする店員に、彼はアハハハと乾いた笑いを返す。
 そうだ。下着を買いに来たのであって、今は自分の好みの話をしている場合ではないのだ。
 ――おっぱいって見てるぶんには幸せいっぱいおっぱいだけど、実際つけてると面倒おっぱいなんだな。
 彼の思考が大分バグって来ている間にも、店員は次々と下着を運んでくる。
 目の前に広がる極彩色に、cloverの目が点になった。
「えっ。ちょっ……これ、ちょっと派手なんじゃ……」
「いえいえ! お客様お若くて綺麗でいらっしゃいますし、これくらい冒険して大丈夫ですよ! えーと、そうですね。こちらが割とオーソドックスな形で……こちらが今流行の形になります」
 ちょっと待って。今流行の形って何だ。ブラジャーに流行とかそうじゃないとかあるのか。
 正直どれも同じに見えるんだけど。
 しかもどれも意外と高い!!
 布だよ? ちょっとおっぱい覆うだけの布! 何でこんなに高いの!!
 下着を開発した人が聞いたらガチギレされそうなことを考えるclover。
 仕方ない。馴染みがない人は皆こう考えるものだ。しかも今彼、超テンパってるし。
 cloverがそんなことをぐるぐる考えている間にも、店員は様々な下着を運んでくる。
 ヤバイ。これは絶対埒が明かないやつだ……!
 彼は愛想笑いを浮かべると、口を開いた。
「えっと……。こういうところに来て買うの初めてなんで、良く分からないんだけど……お姉さんのおススメを教えて貰える?」
「かしこまりました。こちらなどいかがでしょう」
 満面の笑みでブルーのブラジャーを差し出して来る店員。
 機能性がどうとか、胸のホールド性が云々と言っているがハッキリ言って良く分からない。
 デザインが微妙に派手なのが気になるが、とにかくここから早く出たい気持ちでいっぱいだった。
「んー……。何かちょっと恥ずかしい気もするけど……とりあえずそれでっ!」


 ――かくして、cloverの『メンテナンス用のボディに合った下着を入手する』というミッションは無事に完遂された。
 依頼とはまた違う疲労感に襲われて、彼は深々とため息をつく。
「……おっぱいは意外と大変……あ、違う。女の人って意外と大変なんだな」
 しみじみとそんなことを呟いて、cloverは帰路についたのだった。

━あとがき━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
お世話になっております。猫又です。

お届けまでお時間頂戴してしまい、申し訳ありませんでした。
cloverさんの苦労話、いかがでしたでしょうか。
一体何回『おっぱい』って書いたのか数えてないんですが、少しでもお楽しみ戴けましたら幸いです。
話し方、内容等気になる点がございましたらお気軽にリテイクをお申し付け下さい。

ご依頼戴きありがとうございました。
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グロリアスドライヴ
2020年04月07日

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