▼作品詳細検索▼  →クリエイター検索


『+ ララ香辛料店隊商護衛―アルフォランス村― + 』
ルド・ヴァーシュ3364)&ザド・ローエングリン(3742)&マーディー・ララ(3755)&(登場しない)



 隊商は森を抜け更に先へと進む。
 警備は変らずルドが前方を、ザドが後方を担当していた。
 目的地であるアルフォランス村へはあと少しだとマーディーは言う。


「順調に行けば今日中には着けるよ。そしたら休憩にしよう。皆それまで頑張っておくれ!」
「「「おー!」」」


 マーディーの声に励まされ皆片手を持ち上げる。
 休憩を多く取っているとはいえ数日間野宿状態で過ごしてきた隊商は疲労の色が見え始めていた。だが「もうすぐ村」という言葉に持ち上げられ沈みがちだった空気に活気が戻る。
 ザドも手をあげて大きな声で返答した。商人達ともすっかり馴染んだその様子にルドは人知れず口端を持ち上げ微笑む。


「あれ? なにかちがう。うーん、なにがちがうんだろう。でもさっきまでの景色となにかちがう」
「なんだいなんだい。何か変なものでも見つけたのかい?」


 違和感を覚え辺りを見渡したのはザド。
 その何気ない声に応えたのはマーディーだった。首を捻りながら考えるザドの姿を見て僅かに目を細める。どれだけ隊商に馴染もうがザドの役目が「護衛」であることには変わりない。そのザドが何か変化を感じ取っている――それが商人達にぴりっとした空気を流した。
 だが次の瞬間。


「分かった! 木がちがうんだ! さっきまでのは、緑ばっかりだったのに、ここは赤とかある! あとなんだか小さい植物が多いかんじ!」


 ザドが導き出した答えは「景色の変化」だった。
 先程まで居た場所とは違い平面に対して小さく根を張り、樹木であっても草並みの低さで生息するものが多い。多くの植物がその地域の気候や環境に合わせて変化してきたように、この高山でも同様に植物達はその地域にあわせた生態系を取っていた。
 獣の襲来でも、盗賊の登場でもないという事がわかると一同はほっと緊張を解く。それは先頭に居たルドも同じ。マーディーに至っては口元に手を当ててくすくす笑っている。


「もう高山地帯に入ったんだね。私達は何度か見た景色だけれど、そうかそうか。ザドは珍しい景色になるんだね」
「うん! めずらしい植物!」
「高山地帯で咲く花は厳しい環境に適応出来るよう珍しい生え方や花の咲かせ方をするのさ。中にはかなり大きな花を咲かせるものもいるとかね。街じゃまだ暖かいけれど、こっちの山の方はかなり涼しい地域に入る。だから葉っぱも赤く染まり始めているんだろうね」
「ん! たしかに涼しい。息をたくさん吸うと、むねがすぅーってするかんじ!」


 言うと同時にザドはその場で深呼吸を始める。
 冷えた空気が肺の中に入ると身体全体が冷える感覚が心地良くて楽しかった。


 一行は足を止めずまだ先に進む。
 高山地帯に入ったこともあり道程は緩やかなものが多いとはいえ坂が多く、僅かながら速度が遅くなり始めた。だがそこは旅に慣れた隊商。適度に馬を休め、時に障害を避けながら順調にアルフォランスまでの道程を辿った。


 『ソーン東部山岳地帯、アルフォランス村』


 その場所に辿り着いたのは日の光が大地に飲み込まれ始めた頃。
 村の姿を最初に見つけたのは持ち前の翼で空から隊商を見守っていたルドだった。彼が示した指先には小さな村が存在している。
 村には大きな建物は一つも無く、また木々が少ない地域のため土壁作りの平たい建築物が多い。周囲には観光地や遺跡なども無いため静かに暮らす事を望んだ人々が身を寄せ合っている――そんな印象の村だった。


 商人が――マーディーが香辛料を買い付けに来る場所なのだから人の往来が全く無いと言う訳ではない。
 だが今までルド達が通ってきた道程を思えば僻地ということをひしひし感じさせられた。


 村に隊商が辿り着けば村の方からも数名駆け寄ってくる。
 その中の若者に自分達が香辛料の買い付けに来た「ララ香辛料店隊商」である事を告げた。すると村の長だと名乗る年老いた男が前に進み出て片手を差し出した。マーディーも女性特有の細い手先を差し出し握手をする。
 何度か買い付けに来ているのだから彼らは顔なじみだ。事は順調に運び、隊商は村の端へと案内された。
 村には宿は多くなく、顔馴染みの客人であるなら村民の家々に宿泊させる事が基本だ。
 だが隊商の人数に対応出来るほど大きい宿は残念ながら存在していない。村の一角でテントを張ると申し出たのはマーディーだ。
 ベッドで眠れる事を期待していた商人達の中には哀れにも脱力する人間も出たがこれはあくまで仕事。すぐに心を切り替えててきぱきとキャンプの準備をしていた。


「マーディー、ちょっといいか」


 ルドはザドと共に指示を下すマーディーへと声を掛ける。彼女は話していた男に手を振って二人の元へと足を進めた。


「聞いておきたいんだが此処までくればモンスターはともかく盗賊なんかがやってくる危険性は少ないと考えても構わないか?」
「ああ。村にも警護班くらいは存在しているしね。此処に居る間は私達は『客人』扱いされるから少しくらい二人も気を抜いても良いよ。なんなら明日一日くらいは観光してきたらどうだい」
「今までのルートと村の規模を考えると『観光地』ではないようだが?」
「まあね。こんな場所に来るのは植物学者や迷い込んだ連中くらいなもんさ。この場所までこの規模の隊商がやって来るなんて、まず無い。うちくらいだね。まとめて買うからありがたがられるし、こっちは稀少な材料を山ほど手に入れられるから、得になる。需要と供給のバランスが良いんだよ。お互い納得して気持ちよく売買できる。ほらあれを見てごらん」


 爪が僅かに伸びたマーディの指先が指し示した先に在るのは何かの栽培地。
 広さは村の端まで続いているが、全体は目で確認出来る程。だが今は日も落ちた事もあり色味などは分からない。ザドはそれでも良く見ようとつま先を伸ばしてみるが見える範囲は大して変らない。


「お花みたいなのがみえるー」
「そう。今はあんまり綺麗に見えないがアレが私たちが求める『アルフォランス』の栽培地だよ」
「ここの名前といっしょだよ?」
「村の由来があの花なんだ。あの花が咲く地域だから『アルフォランス村』、ってね。あれはオレンジがかった一輪の花を咲かせる草本さ。綺麗な花だよ。そしてとても美味しくて万能」
「ばんのー?」
「アルフォランスはね、花の部分は料理、茶、薬に使用するんだ。葉や茎は料理には使えないけれど茶や薬に出来る。薬効も抜群なんだ。だがアルフォランスはこの村周辺の地理気候にのみ適応した植物で、他の場所じゃ育たない。それに気付いてからこの村の特産品として栽培されるようになったのさ。それが僅か数年前の話」


 説明を一通り聞き終えた頃、村の男から声が掛かった。
 歓迎の宴を開くので村の中央に来てくれとの事だ。マーディーは先に身を翻しその男と共に他の仲間の元へと戻る。宴の件を皆に伝えると「よっしゃー!!」と気合の入った声が何処からか聞こえた。



■■■■



「疲れたか?」
「ううん、ルドこそ大丈夫? 昨日、ぼくより長くおきてたでしょう」
「お前より体力には自信があるからな。平気だ」
「えへへ、よかった!」


 宴は村の特産品であるアルフォランスを使った地域料理が振舞われた。
 「今年取れたものもまた美味しくてね。どうぞ味わっていってください」と穏やかに微笑みかける村長の声に有り難く皆料理を口にする。
 ルドもその恩恵に加わる。ザドに至っては最初は全料理を僅かずつ口にし、味を比べると気に入った料理を後程大量に皿に取り分けるという手段に出た。
 アルフォランスの茶も口通りが良くさっぱりしており後味が良い。長旅の疲れを癒してくれそうだ。
 村の娘たちが歓迎の踊りを披露し、それを楽しむ。街のパレードの様に派手なものではないが、ザドの興味を引くには充分だ。


 だが宴の最中ザドの隣に座っていたはずのルドがいつの間にか姿を消していた。
 すぐそれに気付くとザドも立ち上がりそっと輪から外れる。ルドがいなくなった理由を『仕事』であると推測すると自分もまた任務をこなそうと動いたのだ。
 そしてルドはすぐに見つかった。今は物静かな村の端で彼はアルフォランスの栽培地を見ていたのだ。


「ルド」
「ん? 料理は口に合わなかったのか」
「ううん、とてもおいしい! でも、見回りのお仕事しなきゃ」
「へえ覚えていたのか」
「忘れないよ! だって護衛はルドだけのおしごとじゃないよ。ぼくのおしごとでもあるんだよ」
「ああ、そうだな」


 自然光だけが辺りを照らす。
 見上げる夜空は全面に星が煌いていて今にも降ってきそう。
 両手を握り拳にして『仕事』を主張するザドと向き合いルドは下ろしていた手をすっと上げた。その掌は慣れた仕草でザドの頭の上へと乗り上から下へとゆっくり撫で下ろす。
 優しげな動きは一度ではなく、二度、三度と、繰り返して。


「思ったより長旅だったが、頑張ったな」
「っ……、ん!」


 労いの言葉。
 そして触れてくれる温度が嬉しくて、頑張って塞き止めていたものが溢れ出そうになる。目頭が熱くなるも零れる事はない。
 もっととねだるように頭を押し付ける。それに応える様にルドは頭だけではなく頬にも触れた。


 村へは順調に予定通り到着する事が出来た。
 後は交渉と街への帰路。それさえ終えればこの仕事は完遂した事になる。まだ完全には気を抜く事は出来ないけれど、片道だけでも終える事が出来てザドは心から嬉しい。


「あのね、ぼくね。これからももっとがんばるよ」


 空気は冷たく、けれど心は暖かく。


 どちらからともなく手を差し出し繋ぐ。
 やがて宴の音を聞きながら二人は皆の安全を護る為静かに歩き出した。







□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□

【3364 / ルド・ヴァーシュ / 男性 / 26歳(実年齢82歳) / 賞金稼ぎ / 異界人】
【3742 / ザド・ローエングリン / 中性 / 16歳(実年齢6歳) / 焔法師 / レプリス】
【3755 / マーディー・ララ / 女性 / 25歳(実年齢25歳) / 冒険商人 / 人間】

□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■         ライター通信          ■
□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□

 こんにちは、発注有難う御座います。
 村へ到着です! 少しずつザド様が仕事に対しての意識を強め、ルド様がそれを見守り、マーディー様達を護る。
 でもザド様の無邪気な雰囲気にライターもこっそり癒されてます(笑)
PCシチュエーションノベル(グループ3) -
蒼木裕 クリエイターズルームへ
聖獣界ソーン
2009年09月24日

投票はログイン後にできます。

ログインはこちら












©Frontier Works Inc. All Rights Reserved.