第2回リプレイ

クラス対抗模擬店大会Phase2(お昼の部)

 さて、時間も昼を回る。模擬店の周囲には幸いお客が途切れてはいなかった。
 むしろこれからが本番と言える。前半戦の戦いで体力を消耗した参加者達が、空腹を癒す為に集まり始めるのである。
 しかしここに強敵が現れた。それはイベント。フードファイト。グルメレース。
 タダ飯に心惹かれてふらふらとフードファイトに足を向けるお客達。
 ここは勝負の時! 客を逃がすな!!
 模擬店という名の合戦は半ばを迎えいよいよヒートアップしようとしていた。

 じゅわ〜ん。
 心を躍らせる音と、胸をときめかせる匂い。
「食欲をそそらせる調味料。そーすぅを使った焼きそばで勝負です!」
 大鉄板でじゅわじゅわと景気のいい音を立てさせる無月 幻十郎(ia0102)にうんと頷いてミリート・ファミリス(ga8694)も炭火を元気よく熾す。
「焼きおにぎり♪ ウナギのたれとウナギの強烈な匂いでお客を呼び込みましょう!」
「匂いでお客を寄せるのはいいアイデアです。私も少し匂いのある料理をやってみましょう」
「よーし。今度はこなもんで勝負だ。そのそーすもちょっと借りるぜ。お好み焼き、たこ焼き、たい焼きだ!_安いから買ってけ!!」
 Aグループの模擬店周辺には抵抗しがたい香りが徐々に徐々に広がっていく。
「ふわあ〜。いい匂いです。あれも! これも! それも! どれも食べるです。とにかくあるだけ持ってこいーです!」
「おお! いい喰いっぷりだねえ気に入った。ほら、おまけだもってけ!」
 志羽・翔流(ga8872)が八重・桜(ia0656)の皿にふたつ、たこ焼きを多く乗せた。
「うわ〜い。ありがとうです」
 桜の顔が花のように咲いた。
「明石焼き、いかがです、か?」
 上目づかいで見上げる紗々良(ia5542)の瞳とソースの香りに抵抗できるものはそう、多くはなかった。
 入口近辺は客寄せの香りが広がっているが、少し奥に入るとゆったりとした空間が広がっている。
「どうぞ奥で休んでいきませんか?」
 ふんわりもふもふの着ぐるみを来たスワンレイク(ia5416)がニッコリとほほ笑んだかと思えば、
「あの‥‥おじさま。良ければ私の店に寄って行って下さいませんか?」
 羊飼い(ib1762)がうるうるとした眼差しでお客を見つめる。
 ついでにゴスロリ姿の椎野 ひかり(gb2026)が
「きゃああ〜。ごめんなさい!!」
 と転がって縋りつけば中年男性はイチコロである。
 かくしてAグループは匂いと技のコンボで客を逃がさない作戦を成功させていた。

 その向かいのCグループはといえば
「何はなくとも、お客様が来なければ意味がありません」
 大がかりな客引き作戦に出た。
 入口の近辺で優雅なバイオリンを奏でるのは安原 小鳥(gc4826)。見事な調べで道行く人の耳を止めると
「ははははっ! どうだ、見ていかないか!」
 リック・オルコット(gc4548)のジャグリングがお客達の目を奪う。
 立ち止まった客達をすかさず
「可愛い子が揃ってますよー(多分)」
 柊 真樹(ia5023)が引き寄せる。可愛い巫女服の客引きにはどうやらたぶん、の声は聞こえなかったようである。
「え〜、こちらイエローマフラーのお悩み相談所。十字架の名のもとに皆さんのご相談に乗りましょう。でも腹が減っては何もできません。まずは美味しいものをいっぱい食べて英気を養ってくださいね」
 流 星之丞(ga1928)は入口でそんな客引きも行った。
 最高の笑顔を向けながら手を取った客をすべて店に連れ込むバーシャ(gc140)も含めやや強引と言える展開もあるにはあったが、客達に苦情が出ることは概ねなかった。
「餡饅頭や月餅はいかがですか? 〜小龍包や蒸し餃子も美味しいですよ〜」
 腕によりをかけた紗耶香・ソーヴィニオン(ia0454)をはじめとする腕自慢達の料理が待っていたからである。
「お昼は稼ぎ時ですからね。気合を入れて行きましょう!!」
 南 十星(gc1722)はスピード重視でしかも、決して味は落とさない。
「午前中遊んだ分、今はクラスのお手伝いをしなくては、ね」
 午前中に比べ減った人手を桂木 涼花(ec6207)のように残ったメンバー達が全力でサポートをする。
「食後のデザートはいかがですか? 旬の栗きんとんに柿のゼリー。さっぱりして美味しいですよ」
 シルヴィア・クロスロード(eb3671)の笑顔と甘味は客達にとってはさわやかなごちそうとなったようである。

 そして前半戦。バニー作戦で大きな注目を集めたDグループであったが午後は前半戦に比べるとやや、その集客効果を落す事となった。バニーはインパクトが勝負であったからだろう。
 だが、その辺は店主たちも心得ていた。
 前半で集めた客達を逃がさない為に今度は味とサービスでじっくりと客の心をくすぐる作戦に出たのである。
「はい。こちらはもふら屋です。ただ今、もふら飴をお買い上げの皆さんには、5分もふ放題。いかがですか?」
「こんな客寄せ、成立するのか?」
 まるごともふらの霧葉紫蓮(ia0982)は最初、そう首を捻っていたが、いざ始まってみると子供から大人まで何故か途切れることなく客の列が並んでいる。
「はいはい。押さないで〜。もふら飴買いながら待っててね〜。おかわりもありますよ〜」
玲璃(ia1114)が待っているお客にもふら飴を渡しながら誘導していく。
 子供がふわふわに首を埋めてにっこりするのはまあ可愛いものであるが、何故か顧客は老人や女性より青年から中年男性が多い。
「世の中には変わった趣味の人間が多いものだな」
 呟きながら紫蓮はそう言いながらも黙ってもふられていた。
 世の中可愛いものが好きなのは実は男性が多いようで、その点では子猫喫茶を開いた嘉雅土(gb2174)は客のニーズをよく掴んでいたと言える。
「かわいい子猫ちゃんに一緒に癒されましょう〜」
「みゃあー」
 そんな可愛い声と丸い瞳に促されて店に入れば、中にはたくさんの子猫たちと着ぐるみ猫が
「いらっしゃいませ〜」
「嬉しくて悶絶するかと思った」
 と某猫好き人物が言ったとか言わないとかその辺は定かではないが、安定した料理も功を奏し子猫喫茶にも客は途切れることは無かった。
「どうやら皆、疲れているみたいだやねえ〜」
 焼き鳥の屋台、その匂いで客を引きながら桐生 水面(gb0679)は癒し系店舗に引き寄せられるお客達を見て苦笑した。
「嬢ちゃん? どうしたい? ひょっとして疲れたかい?」
 ため息をついた少女にアカダマ(ib3150)は膝を付いて目線を合わせた。
「ちょっと、喉が渇いたの。おなかもすいたし‥‥」
「そうか。じゃあ、うちの店に来ないか? サービスするし」
 ある種の客寄せではあるが、少女は少し考えてうんと頷いた。
「よしっ!!」
 少女の頭をぐりぐりと撫でて、アカダマはその小さな体をひょいと抱き上げた。
「送迎サービスだ。送るよ」
 顔を赤くした少女はそれでも嬉しそうにうんと頷いてその耳元に小さく囁いた。
「ありがとう‥‥」
「割と楽しいもんだな。ガラじゃねえが」
 そう言って少女を店へと送っていくアカダマの小さな声は多分少女には届いてはいなかっただろう。

 蓋を開けてみれば、朝に比べると過激な客引きも減り、ある意味おだやかに模擬店は繰り広げられていた。メイド喫茶や執事喫茶の企画が多く各グループで趣向を凝らしていたのもその理由の一端であろうか。
 だが、そこにある店が恐ろしい一石を投じた。
「G様を崇めよ‥‥さすれば救われん」
「ぎゃあああ!!」
 その店を軽く覗いた人物は残らず悲鳴を上げた。
「G様露天を。全世界のG様を販売してますよー」
 飲食店の立ち並ぶ模擬店エリアにそれはまさに天敵という存在であった。
 首謀者たちは程なくしてGのような黒服をまとった男たちによって連行されていったが、そのとばっちりは同じBグループの店達に出る。
一時期Bグループのエリアには完璧な閑古鳥が鳴いた。
 落ち込むBグループの者達。だが、そこで誰も立ち止まってはいなかった。
「みんな! ここが正念場や! みんなでお客を引き戻すんや!!」
「そうですね。頑張りましょう!」
 かくしてBグループの面々は総力を挙げた客引き作戦に出たのである。
「さあさあ、そこの兄ちゃん。うちらの店に寄ってってなあ?」
 祭り姿にさらしの沢辺 麗奈(ga4489)が男性達を悩殺し、
「お嬢様。どうぞユリの花を。貴女は、花よりもお美しい‥‥」
クラーク・エアハルト(ga4961)の微笑が女性達の心を掬い取る。
シルフィードの仮装をしたティア・ユスティース(ib0353)の竪琴が優しい調べを奏で
「こういう服は苦手ですけど‥‥頑張ります!」
 踊り子の服を纏って星月 歩(gb9056)が舞を舞う。
 一人、また一人と足を止めはじめた客達に
「お客さんはお疲れですか? では、このお茶などはどうでしょう? 疲れが取れて温まりますよ」
 慣れないが、心を込めて无(ib1198)はお客に笑顔と、それぞれに合った品物を差し出していった。
 一度失った信用は努力と誠実でしか集められないことを彼らは知っている。
 だから、全力を尽くしたのだ。

 それでもフードファイトにお客は流れ、全体的に見るなら模擬店グループの売り上げと得点は大きく減少した。
 中には
「立ち食い上等。お蕎麦、お饂飩、バーガー等_手軽な食事で客の回転を上げ収益UPを狙いましょう。余り物は大食い会場に横流しで損失を補てんすればOK」
 というクリス・ラインハルト(ea2004)のようなちゃっかりものものいたのだが‥‥。
 けれど、顧客の満足度は決して下がってはいない。
 一人一人のお客が微笑む笑顔がそれを証明していた。

 祭りのラストスパート。
 模擬店を運営する者達の情熱は、まだまだ終わりを知らない。 

(執筆 : 夢村 円)


ここだけ修学旅行! ドキドキ温泉編!

 学園祭のさなか、いきなり敢行された2泊3日の修学旅行。
 しかも行き先は湯煙ただよう温泉である。
 今回のために事務方が必死こいて探してきた、大露天風呂と情緒あふれる日本旅館!
 ここに年頃の男女が200人近く押し寄せてだ、何も起こらないで終わるだろうか? いや、終わらない(反語)。
 というわけで。
 これから記すのは愛と嫉妬と青春を詰め合わせた、学生時代の貴重な1ページである‥‥

 
●リア充多すぎ爆発しろ
 参加者の名簿を見て、引率の教師は頭を抱えていた。
 なんと言うか、カップルでの行動を希望するものがとてつもなく多いのだ。
 いや別に、それ自体はさほど問題ではない。
 問題は、カップルを「リア充」と定義づけ、粛清をしようと考える生徒も少なからずいるということで。
 鶏が先か、卵が先か。リア充に自重を促すべきか、非モテに寛容を説いてまわるべきか。
 考えたあげく、教師は折衷案を採用した。
 すなわち温泉の一角を、リア充専用として用意したのだ!

 というわけでリア充専用エリア。
 もう報告書を書くために潜入しているのが申し訳ないぐらい、ピンクで濃厚な雰囲気である。
 すなわち広い岩風呂で、カップルがそれぞれ等間隔で湯につかり、いちゃらぶしているのだ。

 例えば。
「オンセンというのも悪くないな、ルネ・クライン(ec4004)」
「ええ、ラルフェン(ec3546)とほっこりらぶらぶで幸せね♪」
 こんな夫婦がいたかと思えば

「須佐 武流(ga1461)さんと一緒にお風呂なんて、あたし‥‥らめぇ‥‥」
「いいじゃないかまつり(gz0334)‥‥」
 いやよくないよくない! と突っ込みたくなる傭兵カップルもいるし

「あなた‥‥幸せです‥‥」
「たまにはこういう事も良かろう」
 明王院 浄炎(ib0347) ・未楡(ib0349)の夫妻は、しっとりと愛をはぐくんでいたりする。

 湯はほんのり乳白色。
「ゼロ(iz0003) さん‥‥手つないでいいですか?」
「お、おう、もちろんだ、リーディア(ia9818)」
 そっと触れ合っても、見えることはない。 だからといって

「仁一郎、背中洗いっこしましょう?」
「わかった。バカップルは自重しないもんだよな!」
いやある程度は自重してくださいね。柄土 仁一郎(ia0058) さん、巫 神威(ia0633)さん。報告書公開できなくなりますからね。

 お邪魔している方がのぼせてしまいそうなのは、お分かりいただけただろうか。
 ちなみにここに書いたカップルが全てではない。ここにも、そこにも、あそこにもいる。心の目で見るのじゃ。
 しかしひどい格差社会である。
 なんつーか、もうちょっとこう‥‥

 「リア充爆発しろーーー!!」

   専用エリアの入り口で、突如鬨の声があがった。
 専用エリアを設けることで、非リア充の不満を逸らすことは、失敗に終わったようだ。
「修学旅行を抜け出し、デートをしているリア充を粛清だー、桃色は撲滅だー! しっと団参上!残念だったなここからはカオスの時間だ♪」
 白虎(ga9191)が扉を蹴破り、服のまま一気に露天風呂に乱入する。
 むろん彼1人ではない。
「風紀を守れ! 不純異性交遊は禁止だー!」
 正論には違いないが僻みにしか聞こえない主張を叫ぶ神撫(gb0167)
「そちらのような偽りの愛を謳歌する者には裁きを! くらえ、詐欺マン汁!」
 洗面器の水をぶちまける行為にきわどい必殺技名をかぶせた、詐欺マン(ia6851) らが続く。
 「ど、どうしよう‥‥」
 湯煙デートを楽しんでいた栄神・万輝(3480)、千影(3689)は、突然の闖入者におびえた目をむけた
「リア充共!!ここから先はさせねぇぞ!! あ、でも女の子には軽いもので!」
「きゃうんっ」
 ガル・ゼーガイア(gc1478) の水鉄砲攻撃を受けた鷹代 アヤ(gb3437)が可愛らしい悲鳴をあげた。
 ちなみにガル、男性には怒りをチャージした嫉妬パンチを容赦なく叩き込んでいたりするから、始末に悪い。
 このままリア充の楽園は、非リア充に蹂躙されてしまうのか?
 否。それじゃあ、面白くない。
「しっと団の皆様方、ようこそ。この素晴らしきリア充空間へ」
 毅然と立ち上がったのは仮染 勇輝(gb1239)。そして
「罪深き者よ、悔い改めなさい。私は愛を祝福する神父。邪魔する不埒な輩に鉄槌が下ります」
エルディン・バウアー(ib0066)だ。
「食らえ!神の裁き!」
バウアーは必殺技の名を叫んだ。どういう仕掛けかはわからないが、非リア充‥‥平たく言うとしっと団、の頭上に巨大なタライが出現、そして。
「あぢいいいいいいいいい!!」
 熱湯をぶちまけたのだ。問題はやや射程が広く
「いやあああああん!」
 いちゃらぶを楽しむカップルたちにも飛び火してしまった点だろうか。
「く、撤収するにゃー!」
 白虎の声で身を引くしっと団と、とばっちりを食らったカップルたち。
 カップル専用エリアに、つかの間の平和が戻った‥‥。

   そして誰もいなくなった、と思いきや。

「皆いなくなってしまったね、フェルル=グライフ(ia4572)」
「ええ統真さん(ia0893)、私幸せです…」

 こっそり残ってたりして。

 

●覗き多すぎ爆発しろ
 参加者の行動入力を見て、報告官は頭を抱えていた。
 なんと言うか、女湯の覗きをしたい者がとても多いのだ。
 いや別に、それ自体は問題ではない。個人的には大歓迎だ。
 問題は、男湯でまったりのんびりしたいという人が少ないということと、混浴を想定して水着で来てくれている人が多いということで。
 どうすればいいだろう。ここは女子には水着を着て安全に楽しんでもらうか。
 考えたあげく、報告官は内なる声に従うことにした。
 「水着不可の女風呂で!」

 というわけで女風呂。
 こちらもカップルに割り当てられたのと同様の岩風呂である。
 壁で囲まれた周辺には、白鐘剣一郎(ga0184)が用意した自動覗き迎撃システムが配備されている。
 当の白鐘氏は男湯でのんびりと疲れを癒していた。至近距離でDarkUnicorn(fa3622) が湯に神輿を浮かべてセクシーポーズをとっていたり、鬼島貫徹(ia0694) が胸筋をピクピクさせたりしているが、特に気にならないご様子だ。
 まぁそれはさておき。
 女の子たちはリラックスして温泉を楽しんでいた。
 「ふふふ、白藤(gb7879)だってお肌すべすべ♪」
 「鹿島 綾(gb4549)さん、めっちゃおっきーっ」
 お湯の中でバストの大きさをくらべっこしてみたり、
 「覗きは殺人おっぱいで撃退しちゃいます♪」
 むしろお願いしたいような必殺技を呟く雪ノ下 真沙羅(ia0224)がいたり
 巨乳貧乳ランキングを作るのに夢中な二条 更紗(gb1862)がいたりといった具合に。
 「‥‥巨乳には賛辞を。貧乳は哀れみを」
 彼女の格言とともに、何故かナチュラルに女湯に漬かってる『仙人』(ib0753)については、あえて触れないでおきたい。

 しかし迎撃システムがあるからといって、覗きの芽が根絶されたわけではもちろんなかった。
 「僕、ただのオサルだよ!」
 佐渡川ススム(fa3134)は完全獣化して猿になり堂々と温泉に浸かって覗きを試みた。勿論迎撃システムに追い回された挙句
「あら、覗きなんてオイタはダメよ! おしおき!」
 エルヴィア(fa0095) 先生のきっつーいおしおきを受けたのは言うまでもない。若干嬉しそうだったのはここだけのヒミツだ。
「覗きの汚名を着たっていい! 俺は雌雄学旅行を思い切り楽しみます! 必殺、女湯ダーイブ!」
 いやもう、それ覗きとかそういうレベルじゃないだろ。雪ノ下正和(ga0219)の男気には涙を禁じえない。
 一方葛切 カズラ(ia0725) はあくまでマイペース。触手結界を展開し、周りの女の子や覗き男子に手を伸ばし、あんなことやこんなことをやらかし始めた。詳しくねっとりみっちり書きたいのはやまやまだが、縛ったり弄んだりしたという以上の描写はできない。

 そうこうしているうちに、夕食の時間が迫ってきた。
 修学旅行というのは分刻みのスケジュールなのだ。
 残念ながら女湯のレポートは、そろそろ終わらなくてはならない。
「さて、全国1000万の温泉ファンの皆様。残念ながら時間の様です。続きはDVDで!」
 秋月 祐介(ga6378)がマイクに向って〆の言葉を喋り、カメラがぐうんと引いた。
 や、アンタいつからいたんだ。
 てか、DVDはどこにいけば買えるんでしょうか?



●やっぱ〆は枕投げ
 夕食も終わりレクリエーションも終わり、消灯までの短い自由時間。
 修学旅行の健全なお楽しみといえば、枕投げは外せない。
 だだっぴろい広間に敷き詰められた布団の上で、今宵最後のバトルが始まる。
 A&CチームとB&Dチームの混成で、戦いの火蓋は切っておとされた!

「覚悟しろよーー! 魔弾小豆舞!!」
 焔 龍牙(ia0904)が力任せに、枕を投げた。狙うはLetia Bar(ga6313)。
「小豆枕か‥‥くらえ! 羽枕鎮魂歌!」
中に放られた枕が、激しく激突する。小豆が音を立てて弾け、白い羽毛がぶわっと舞った。
あとで反省文モノである。
「レイード‥‥沈め!」
 熾火(gc4748)はアヤ(gb3437)と組んで、B組のレイード(gb8965)に集中攻撃。しかしB・Dチームも負けては居ない。
「くらえ! 両手に花じゃなくて枕!!」
 必殺技名とおり、両手に枕を持った夜刀(gb9204)がダイブする。いわゆるラリアート状態だ。彼の狙いはカップルでこの戦いに参加している、いわゆるリア充に他ならなかった。
「いつかリア充になるその日まで、俺は戦い続け‥‥」
 しかしその願いは、モユラ(ib1999)の大回転魔枕を食らうことで潰えた。戦士を1人屠ったモユラは、無邪気にほほえむ。
「枕で人は殺せるって、父上様が言ってた♪」
 いや、どうなんだそれは。
 戦いが進むにつれ、眠気も相まって皆グダグダになってきた。
「くらえ、枕乱舞ー!」
 散らばった枕をかきあつめ、敵味方かまわず投げる相澤 真夜(gb8203) 。
「A.T.F(AT布団)発動! 俺が防護壁だーっ」
「人生初の枕投げ……当たらないなら、負けない!AMM(対枕用枕)!」
 やたらかっこよさげな必殺技を繰り出す那月 ケイ(gc4469) 、そしてリヒト・ロメリア(gb3852)。
 もはや敵味方の区別さえ曖昧になり、ただ枕が、果ては布団までが舞う。
 敗者は倒れ、そのまま眠りにつき、勝者もまた疲れ果て、枕を抱えたまま寝落ちるのであった‥‥。

 彼らは知らない。
 翌日全員廊下に正座で、反省文を書かされる己の運命を。


 

 そんなこんなで。
 いきなりはじまった修学旅行は、〆もいきなりなのであった。
 学園祭はまだまだ終わらない!

(執筆 : クダモノネコ)

フードファイト〜グルメレース〜

 秋、それは食欲の秋。
 寒いからこそ、脂肪は燃焼され、腹が減る。
 そんな食欲と胃袋を満たすべく、こちらではフードファイトが開催される。

「優雅なテーブルマナーで観客を魅了いたしますわよ」
 まずはデモンストレーションとばかりに、土津(ib0080)が華麗なナイフとフォーク裁き、ワインに見立てたブドウジュースもしっかりテイスティングしてしまう。
 ゆっくり優雅に、むしろ料理は残すくらいの気持ちで嗜む彼女の姿に観客もいつしか見入ると、不思議と気分も高まってくる。
 こちらは、何故か猫耳タキシードのソウマ(gc0505)
 土津のように、見るものを魅了するような優雅な食事戦争‥‥を目指しているようだが、
 どれから食べようか品定めする度にぴこぴこ動く猫耳は、優雅というよりは寧ろ萌えだ。
 彼に備わるキョウ(強・凶)運。今日はどんなありえない事象を招きよせるのか。
「おーっほっほっほ!!ゲホゲホッ」
 招き寄せた。
 つい、高笑いすれば、むせてしまうのはお約束のような気もするが、
 そんな彼女の声を合図にするかのように、周りの机でも一斉に食事が始まった。

「これだけあると目移りしちゃいそうね♪_一口づつ食べていろんな味を楽しみたいわ♪」
 ‥‥が、ユリア・ヴァル(ia9996)は、一口づつ皆でわけていろんな味を楽しむわ、と、
 シュークリームやらバケツプリンやらに手をつけて行く。
 お姉さん、『ファイト』です。『ファイト』。だが一口感身を含むたびに、幸せそうに目を細めるユリアに、
 誰もそんなことは言えなかった。

 周太郎(ia2935)も意気揚々と腕をまくり気合いを入れるが、
「よっしゃ、久々にがっちり食べるとすっかね‥‥ってニムファ、勝手に食べ始めてっけど‥‥審査の人、良いのか?」
 相棒である、ミヅチのニムファがお皿の肉をハクハクと食べ始めてしまう。
 これはもちろんノーカン。これが通ればもふら様や龍に食べさせるのもアリだ。
 と、言う訳で、涙目で訴える相棒を下に座らせてから、仕切り直しである。

「いよっしゃー、食って食って食いまくるっぜ!」
 こちらは別テーブルの武蔵(iz0134)
「食い放題はいいな。普段食えないものも食える!__お前のも美味そうだな。ちょっとくれよ」
 食欲の赴くがまま、手を伸ばした先には、天元 征四郎(iz0001)の皿。
 征四郎はちら、と武蔵の手を追うが、視線を自分の更に戻し、無言でとにかく食べ続ける。

 そんな征四郎の皿に近づく、矢神小雪(gb3650)
 彼女はサンドイッチを口にくわえながら、相手の皿にサルミアッキを混ぜるという妨害工作にいそしんでいた。
 サルミアッキとは、北欧のくそまz…げふん。
 黒く、独特な味で有名な、塩化アンモニウムとリコリスの花で作られた飴である。
 塩化アンモニウム味と言われてもピンとこないかもしれないが、私もよくわからない。
「全力全壊で頑張りますっ」
 そして、当たりの更に飛び散る、無数のサルミアッキ。
 征四郎は器用に皿に落ちてきたその飴をつまみ、‥‥‥かなりの時間黙考した後、ことり、と脇に放った。
 残念、彼の目には、サルミアッキは『食べられないもの』と認識されたようだ。

「きゃっほー! 勝ち負け気にせずとにかく食べますよー!」
 こちらも、食べる事を楽しみにやってきた斑鳩(ia1002)
 今日はまだ何も食べていないという全力ハイペースで次々に空けた天津の蒸籠を積み重ねてゆく。
 そしてだんだん胃袋の許容を迎えてくると繰り出された、彼女の必殺、ほほぶくろ。
 かわいらしくもきゅもきゅと口に詰め込むその姿に、隣のテーブルの対戦相手はしばし釘づけになっていたが、
 はすむかいのテーブルでは、「これだけでご飯10杯はいけるぜ‥!」と、ある意味逆効果だったようだ。

 対してこちらもかわいらしいフードファイーター。
 最上 憐 (gb0002)が、本能の赴くままに食べ物へ突貫していた。
「‥‥ん。小技は。いらない。正面から。飲み込むだけ」
 狙うは主にカレー。だがいつもよりはなりふり構わず食べているようにも見える。
 だがきゅうりだけは器用に避けている当たり、これもまた本能のようだ。

 隣のテーブルでは、ケロリーナ(ib2037)がつぶらなおめめをキラキラさせて、
 鼻歌でも歌いだしそうな上機嫌で次々とテーブルのものに手をつけて行く。
「お食事くれるですのね☆けろけろ魔法☆でつぎつぎとたいらげるのですの。おかわり〜♪」
 可愛い見た目とは裏腹に、物凄い握力で炒飯やおでんを飴玉大に圧縮し、それをぺろりと平らげていく。
 そんな彼女の腕に、いつの間にかかぶりついている、憐。
 何事かと慌て目をパチクリさせているケロリーナに、
「‥‥ん。これも。食物連鎖。自然の。摂理」
 野生に還った少女には、もはやこの世の全てが食べ物、なのかもしれない。


 そんな和やか(?)なテーブルから、カメラをこちらに向けてみよう。
 すると、とても熱い男(??)達の戦いが繰り広げられている。
「刮目せよ!!これが我が喰い意地なり!!」
 漸 王零(ga2930)が無我夢中、目を血走らせる程に食べ物を口へ詰め込んでいく。
 こちらも、食べ物は極力小さくされている。普通サイズのお団子が、実は5個ぐらい圧縮されていたりするのはこのテーブルではよくある話だ。
 食べる事だけに専念し、手は休めない。
 そしてその隣では、絶斗(ga9337)が次々に繰り出される食べ物を、もはやフードファイトの正攻法なのか、
 なりふり構わずぐもっと圧縮しては、かぶりついてゆく。
「俺は貧乏なんだああああああああ!」
 気合いと共に繰り出される悲痛の叫び。
 そんな悲しみをバネにして、彼は今日も、ご飯を食べる。

 並ぶように、細越(ia2522)も超スピードで料理を口に運‥‥ぶのかと思いきや、いったん手を止めて、息を整える。
「あの技を使う時がきたようだ‥‥美食的脂肪肝!!」
 ルビはきっと、 ガストロノーム・フォア・グラ!! に違いない。
 説明しよう。
 美食的脂肪肝とは、自分の皿の料理を相手の口に超スピードで押し込み相手に二倍の量を食べさせると共に自分の料理も減らす、
 対戦相手妨害用の必殺技なのだ。
 ‥‥だが、
「出された物は残さず頂くのが礼儀ですっ! 」
 秋霜夜(ia0979)は、馬手にスプーン。弓手にフォークを握り、勇猛果敢にまだまだ崩れない食材の山へと挑んでゆく。
 そして、細越に『出された』以上、それに敢えて立ち向かっていく。
 秋霜夜は、摂取した食物を体内の異空間に格納する大技‥‥を持つらしいが、果たして、異空間、どこまで持つだろうか。


「おいしいから、いくらでもイケる」
 美麗な容姿で黙々と、確実に量をこなしてゆくのは ギアス(ia6918)だ。
 主にチーズケーキが多いようにも見えるが、美味しいものならなんでも、寧ろここには美味しいものしか無いハズだ。
 腹ごなしはどうしようかと考えながら、何十個目かの皿を平らげるのだった。

「余り口に含まず、細かく食べましょ〜う。熱いものを食べるときは火傷に注意しましょ〜う」
 ツァディ・クラモト(ga6649)がマイペースに説きながら、スラリと懐からナイフを抜くではないか。
 びくっ、とウェイターも周囲の者も反応してしまう。実力行使は反則だぞっ。
 だが、彼が切り刻むのは人ではなく、目の前の、ローストビーフ。
(普段レーションばっかだったからなぁ‥‥)
 SES付きナイフの切れ味はこれほどまでの物か。
 食べるのが目的な参加者が、良い感じの切り分けっぷりに、おすそ分けを求めてふらふらと漂ってきたりした。


 対して、釣られないのは繊月 朔(ib3416)
 なぜなら、彼女は山のような食べ物の中から好物を察知して食べているのだ。
 それは―――油揚げ。お稲荷さん。他には目もくれていない。
 その艶やかな照り、口に含んだ時に滲み広がる甘み。
 神威人の超感覚とはこれほどまでのものなのか(注:非公式です)
 きゅぴーん、と狙いを定めては、幸せそうに両手で抱えるのだった。

 グルメレースが中盤に差し掛かろうとした時、
「酒が無ぇとどうも締まらねぇな……そこそこ喰ったんで呑んでくらぁ」
 と、荊信(gc3542)が美味しそうで高級な料理を一通り堪能してから、ゆっくりと席を立ち始めた。
 それに続く様に、数分前まで「え?これ食べて良いの。ラッキー♪」と目を輝かせていた、ゴールドラッシュ(ga3170)も、
 腹八分目になったら「一食もうけたー」と、機嫌良くその場を後にしてしまった。



 そして、食の神を冒涜しかねない、カオスが始まる‥‥。



「ふ、若い頃なら無茶な食べ方もできたんだけど‥‥」
 苦笑しながらじっくり食べつつ、鷹之宮 左京(gc3245)がきゅぴんと目を光らせると、いきなりぼそぼそと何かを呟き始める。
「実は大食いって凄ぉぉぉく健康に悪いんだよね唾液に含まれている『アミラーゼ』という消化酵素は、主にデンプン・炭水化物に働いて『麦芽糖』という糖の一種に分解してくれる役割を持つから例えばご飯類や穀物類を消化する第一段階として欠かせないんだけどよく噛まないってことは唾液が分泌されないイコール麦芽糖に分解されないってことで胃では蛋白質を分解するけど胃の働きが弱いとこれも不十分ということになって糖質も蛋白質も膵液で若干の消化がなされた後一気に腸に負担をかけることになるから完全にブドウ糖アミノ酸になる前に腸に到達するって事で柔毛からの栄養吸収が妨げられて結果消化不良を起こすことになるんだよね呟々‥‥」
 これぞ必殺、医学的見地から大食いの危険性をぼそぼそと唱える攻撃。
 耳に入れた隣の対戦相手は元より、料理を運んできたメイドさんにまで「今日のご飯は、ゆっくり食べよう」と誓わせた事は言うまでもない
 ちなみに、よい子の皆は良く噛んで食べるんだ、おじさんとの約束だぞ! と、ご本人様よりメッセージを頂いておりますので、
 モニターの前の皆、気をつけようね!

 向かいのテーブルでは、草薙 慎(ia8588)が何やらラーメンを運んできた人と、異質にして厳かな空気を流しているのが伺える。
「――にんにく、いれますか?」
「野菜マシで」
 何やら決まっているかのようなやり取りをする慎。
 野菜タップリのラーメンがごとりと置かれると、ラーメンの麺と具をひっくり返し、スープが野菜に染みわたるようにする。
 これぞ必殺、天地返し。
 そして黙々と、どちらかメインかわからない量の野菜と、麺を食べ終えると、
 スープ飲みきって机を拭く。
 食べ終えた後は、二度と行くか!と思ってしまうが、一月ほど経つと、また食べたくなる。
 そんなお店の一幕を再現したかのような、フードファイトだった。

 同じラーメンが、隣の机の紅 天華(ea0926)の元に届けられるのだが、
「火が強い。40点」
「塩気が多い。20点」
「くさい。10点」
 等と、片っ端から出てくる料理にダメ出しをしては、それを感触してく。
「生半可な味と両では私は満足できんぞ?」
 ロングのチャイナドレスの脚を組みかえて、挑発的にびしっとウェイターに言い放つ天華。
 彼女の舌に適う料理は、果たしてレース中に現れるのだろうか。

 別のテーブルでは、フィアリス・クリスト(fa1526)が何やらこそこそと机の下でやっている。
 これ、実は罠の作成。美味しそうな匂いのパンを隣のテーブルに仕込むが、
 中身はこの世のものとは思えない味なのだという。
「見た目に騙されたらダメよ」
 誰が引っかかるかと視線を送り、ついにその罠パンが一口齧られる時が‥‥来た、が、何も起きない。
「あれ?」
 いいにおいの謎料理を、いとも簡単に黙々と口に入れて行くのは、和奏(ia8807)
 基本は美味しいものを少しづつ‥‥という方針だが、実は何でも美味しい幸せな人なのだ。
「おいしいものがたくさん‥‥幸せ☆」
 玉露も出涸らしも美味しく頂ける味音痴なほっこり笑顔の和奏に、かくんと首を傾げるフィアリスだった。

「大食いは得意です♪特にスイーツっ もぐもぐ‥‥」
 食休めか、デザート感覚か、ここにきてスイーツに手を出し始めたのはショルト・グリッサンド(ib0443)だ。
 だがここに来て、スイーツを食べたいという欲に眩んだか、限界が来たようだ。
「あれれ?兄上が河の向こうから手を振って‥‥」
 しっかりしろ、ショルト・グリッサンド。君の兄上は今でも生きて絶賛彼女募集中のはずだろう。
 兜の穴という穴から光が漏れ散る必殺技(?)を発動し、ラストスパートをかける横では、負けじと龍深城・我斬(ga8283)
 焼き芋に栗ご飯に茸汁‥‥秋の味覚を選んで満喫していた彼にも、そろそろ余裕が無くなってくる。
「よっしゃ、ここは食い溜めのチャンスDA、ZE!」
 大根を齧って胃の調子を上げると、何とポキポキと顎の骨を外して大口を開け、北京ダックにかぶりつく。
 それは龍じゃなくて蛇だ、というツッコミがどこかから入るが、勝てば官軍と言うものかもしれない。



 終盤に差し掛かると、やはり脱落者が目立ってきていた。
 御哉義 尚衛(ib4201)が、
「他の皆さんの食べ終わったお皿を片付けます!」
 忙しなく動いて、食べ終わったお皿を瞬時に片付けていく。
 しかし、ぷちモンブランを見つければ瞬時に手にとり、もぐもぐ。
 フルーツタルトを捕捉すれば、もきゅもきゅ。
 お手伝いの分、これぐらいは許してもらえるだおう。

 そんな彼女が手を伸ばしたテーブルにいた、藤乃宮千尋(ib0764)
 美容にいい物あるかしら? と、デザートのみ食べていたお腹が満腹になると、
 いきなりすっくと立ち上がり、チームメイトの方を向いて呼びかける。
「立って腰を振るのです、お腹は別腹の温床ですわ」
 これぞ彼女の必殺技、別腹ふぃーるど。
 神風恩寵という回復技も用いて、荒れた胃を活性化させ別腹を作る‥‥というのだが、
 神風恩寵がそのように効いたかどうかは、概ねプラシーボかも知れない。


   残るテーブルは、もはやひと桁。
 以外にも、最初の方でペースを上げて喰らい続けたチームは次々とダウンし、
 静かに淡々と減らしていったチームが残っているようにも見えた。

 高雅 聖(ia7344)は、始終ぼーっと食べていた。
 ぼーっとぼーっと。気が付くと大量の更に埋もれていたようだ。
 ひっそりこっそり、着々と逃げで貢献していたが、
 もうチームメイトで箸を進めている者はいない。
 このペースだと、惜しくも追い抜かれてしまうだろう。


 と、一生懸命健気に食べ進めていたチョココ(ia7499)が、突如固まってしまう。
「ピーマン食べたくない‥‥」
 聞こえてくる声。
 どうしよう、ここまで来て‥とおろおろ慌てる者の、もはやチームメイトに生き残りはいない。
 苦し紛れに食べるフリをしてみる。でも量は減らない。
 なくなく、彼女はここでギブアップとなってしまった。

 
 そして、レース終了のゴングが、大鍋を鳴らした乱暴な音で告げられる。

 総合的に、一番得点を取ったのは、Aチームだった。
 意地であのペースを保ち続けた漸 王零が、よろよろになって机に突っ伏したまま拳を高くあげる。

 が、この会場で一番の量を平らげたのは、black hole-stomach、最上 憐だった。

 
 食欲の秋、いや、秋である事はもはや関係無いのだろう。
 同じ皿の食べ物を、同じ卓で囲む仲間は、
 いつの時期だろうと食欲を沸かせてくれる、最高の調味料なのだ。

(執筆 : 墨上 古流人)


障害物競走(超人用

●Aさん、Cさん、ここは戦場ですか?
「ふ‥‥私が障害物だ。ここは通さぬ!魔凱殲騎魔獣殻武装っ!」
「巨大な障害物だと、ふん甘い。私も本気を出すとしよう‥‥」
 天刃・零音・ルナフィール・AX(mr0902)が立ちはだかれば対抗してA:ファヴラズォルヘグ・G・アトラハヌヴ(mr0451)が空間縮小を解除する。
 全長50mって巨大過ぎて、ああコースが無くなったっ。
「あんた達、いくら何でもそれは邪魔過ぎるのよ」
 進路確保ミッション、遂行する。
 淡々とした表情で爆薬を担いだ神楽 菖蒲(gb8448)。
 こんな事もあろうかとコース上に爆薬をセットしていた。
「避難しなさい。近くに居たら全員爆破するからね」
 その恐ろしい言葉に敵味方陣営、一度は走り出したものの蜘蛛の子を散らすごとく散開する。
 レース?何それ。命、大事です。
「ちょっと待て。よ、避けるからっ」
「ええい、問答無用」
 ポチッ。ちゅっどーんっ!!
「うわああああああっ」
 我こそは障害物と待機していた者達が弧を描いて吹き飛ぶ。
「あ、危ないですわ‥‥敵味方関係なしですか?」
 ステアリングを切って急加速で難を逃れたソフィリア・エクセル(gb4220)。
 安心するのは早い。あっスカスクの接地が。
「きゃっ!回る回る〜っ!?」
 制御不能になりながら、何処かへすっ飛んで行った。
「はは、様子見していて良かったよ」
 KVに乗り込み、まだスタート地点で様子見をしていたエイミ・シーン(gb9420)。
「さてと踏まないように進むかね」
「待った行かせんぞ。ここは父さん!否、通さんっ!」
 後ろからガシっと羽交い絞めにしたシラヌイ、操縦するのは紫電(gb9545)。
 KVはKV同士じゃれている間にさあ、競技は始まっている。
「心の罠を張ったのよ。さあ夢の中でゴールしなさいな、うふふっ」
 スタートの音をトリガーにしたはずだったのだが。
 ルューニア・N=F・インファネス(mr0517)の罠はしかし発動しなかった!
「何よこの騒ぎ。誰もスタートのピストルの音なんて聞こえてないじゃないのっ」
「眠れ〜眠れ〜♪」
 シェアト・レフロージュ(ea3869)のとろりとした歌声がまだこの場に居残る者達に眠気を誘う。
「そ、そんな‥‥」
 がくりと膝を折ったルューニアの上にバタリバタリと人が積み重なってゆく。
「ん、何か踏みましたぁ?」
 とてとてと超マイペースで歩くラルフィリア・ラドリィ(eb5357)。
 小さなエルフの体重は軽く、眠りに落ちた者はそのくらいでは目覚めないようだ。
 問答無用で倒れた者達の上を踏み越えてゆく。進路を変える気など全くないらしい。
「すごい事になってるね。屍を、踏み越えゆこう、我が進路。うんいまいち」
 適当な一句を読みつつ俳沢折々(ia0401)もムギュムギュと人を踏みつつ呑気に歩く。

「何とかパンに辿り着きましたよっ!ああっん、届かない〜」
 ちょっと背が低いだけじゃない。何で届かないの。
 パンが食べたい食べたい食べたいっ。食欲の塊と化している千羽夜(ia7831)。
「ちょっと背が高い人はもっと高いとこの奴食べてくれなきゃ。ずるいわっ!」
 というかそれ食べなくても進めるんですよ。
 無視してる人も居るが、視界にはパンしか映っていないので気が付いていない。
 必死の甲斐あってパンをゲット!幸せそうにパクついていた。

「紐なんて切れば何とかなりますわ」
 マリー・プラウム(ib0476)は斬撃符を飛ばし、ケーキの籠を狙う。
「お菓子、お菓子だ、美味しいな〜。あれ?」
 既に籠の上でケーキに至福の表情で顔を埋めていた碧色の髪のシフール、ユーリユーラス・リグリット(ea3071)。
「ああ〜、既に食べられてましたとは!?」
「金タライだろうが何でもござれ。はっはっはっ」
 オーラを身に纏い、回避何それと走るハト(ib2191)。颯爽と駆けるその先には落とし穴。
 はい、落ちた〜。

 上空のKVから降り注ぐ、トリモチとうなぎ。
「ちょ、ちょっと服の中に入ったらどうしてくれるの」
 そんな事よりスライムキメラを用意したから奴らへゴーと指令を掛けたL45・ヴィネ(ga7285)。
「敵はあっちよ。な!?ち、違う、私は‥‥んぁぁぁぁ!?」
 自分がやられてますよ。
 木の上からスナイプする周防 誠(ga7131)の弾丸でコースは戦場と化し。
 その辺の金タライを盾に、落とし穴を塹壕に。出走者はある物を最大限に活かす。
 ゴール直前にて先頭を走っていた赤崎羽矢子(gb2140)の後頭部にレインウォーカー(gc2524)が蹴ったタライが命中。
 タッチの差で御神村 茉織(ia5355)がテープを切った。Aチームの勝利!
「いやあ、喉が渇いたねぇ‥‥ってしまった、これ下剤を仕込んでおいた奴だ。ト、トイレは何処だ!?」
 フランツィスカ・L(gc3985)が最後、誰よりも速く何処かへと駆けていった。

●Bさん、Dさん、完璧なる自爆合戦
 スタートからKVの飛行形態で加速するみつき(gb7893)とセリム=リンドブルグ(gc1371)。
 これは有利か、いやそんな事はない。
「おまえら、何でもありを舐めちゃいけないわ。こちらにも手があるのよ」
 武装の安全装置を解除。空中へ上がったルナフィリア・天剣(ga8313)がパピルサグからミサイルをぶっ放す。
「ボクは‥‥そのぐらいでは落ちない」
 回避行動を取り、旋回したセリムが反撃。同チームのみつきも連携を取って応戦する。
 上空で始まったKV戦。 互いの射撃により、飛ぶうちに戦場は遥か彼方で。
 ええと、終わるまで好きにやっててください。思わぬ空中実戦ショーに観客は喜んでいますから。

「わははははっ、力で押し切るのだ!」
 笑いながら四足歩行で爆走するロウザ(ia1065)。
「わしがその走り、止めてくれるわぁっ」
 目前でポージングを決める超ごついおっさん、小野坂源太郎(gb6063)にも笑顔のまま突っ込んでゆく。
 どふっ。もろとも倒れる。
「やるな、お前。このわしと合い討ちとは‥‥名を‥‥聞こう」
「ろうざの名前はろうざなのだっ」
「女ながら素晴らしい筋肉だ。美しい」
 手を取り紳士的に助け起こす源太郎。ひたすら筋肉を褒め称え、よく判ってないロウザは素直に喜んでいるようだ。
 よし一緒に行こうと爽やかに、二人で敵味方並んで走り出した。
「どのチームも頑張れ〜。走り続けて〜♪」
 鷹の羽根をばさりばさりと羽ばたかせベス(fa0877)が応援歌を熱唱。

「完璧な罠を仕掛けたわ。さあ、引っ掛かりなさいな!」
「ああ、網が絡まって‥‥外れへんどすなぁ」
 自信満々にバナナの皮を避けようとした御巫 雫(ga8942)によろめいた雲母坂 芽依華(ia0879)が飛び込んでくる。
 必死に外そうと試みながら走ってたら服が脱げてしまいそうで、そっちに気をとられていた。
「走りながら危ないわね」
 華麗に回避――したその脚の先には自分が仕掛けたバナナの皮があった。
「えっ!?」
 滑った先にはバケツが用意されていて水を引っ被り。
 立ち上がればビー玉。顔の高さにパイが飛び、用意されていた階段を転げおちた先にはタライがいい音を奏でる。
 巻き込まれた芽依華もろともひどい状態。
「そんなはずは‥‥でもさすが私、パーフェクトね」
 がくり。
 後ろから来た朱麓(ia8390)が味方の肩を借りて、それを飛び越えて行った。
「みんな、そこ滑るから注意だよっ!」

「よし、そろそろフレア弾を発動する頃合だな」
 腕組みしてコースの脇から状況を伺っていたタルト・ローズレッド(gb1537)。
「威力から計算して、埋め込んだ深度は問題ない。誰も怪我をさせず、綺麗に足元だけが吹き飛ぶはずだ」
 今はその辺りを味方の集団が走っている。その直後の起動がよかろう。
「追い抜かせはしない」
 脇に用意したボタンに手を伸ばそうとしたその時。
「これは何かしら?」
 押してくださいと言わんばかりにあったそれを。脇に居た美麗なエルフの吟遊詩人が、すらりとした指でポチリ。
「こら、まだ早いっ!?」
「あらまぁ‥‥こんな仕掛けだったのですか。よく出来ていますわ」
 味方が吹き飛ぶ様にも動じず、なるほどと納得して微笑むニミュエ・ユーノ(ea2446)。
「あ、あのな‥‥」
 何処かからやたら火の玉を連打している者が居るので、コースでは頭上のラインは危険地帯。
「ユエに当たったら困る‥‥あ、もっと肉食べる?‥‥ちゃんと飛ばずに走るんだよ」
 餌付けで龍を奮起させて馬代わりに走らせる董玄郎(ib3660)。
「その肉はうちが戴く」
 薙刀をしゅぱーんと振るい、隠岐 浬(ib5114)が籠ごと奪取。
「これも戦い。そのままでは食えんな、後で焼いて戴こう」

「後ろから来た者が漁夫の利を得るのですよ」
 わざとゆっくり待っていたレイド・ベルキャット(gb7773)が走り始める。
 でもそろそろ他の人ゴールしますけど。
「褌なら‥‥褌なら僕は何も怖くはありません」
 最後の一踏ん張り、吹っ切れた相川・勝一(ia0675)が何もかも、羞恥も脱ぎ捨てて疾走する。
「援護はお任せください」
 月神陽子(ga5549)と伊佐美 希明(ga0214)が張るゴムの弾幕。避けても落ちた弾に転ぶ敵陣営。
「このパイを〜、くらってくださ〜い!」
 ゴールで待ち受けていた和泉譜琶(gc1967)が投げた白い塊をまともに顔面に受けても、勝一はテープを切った。
 そして倒れ込む。
「ふむ。紙一重で負けたが味方だしまぁいいか。一着二着とも貰ったぞ」
 ニヤリと笑う雲母(ia6295)が懐から煙管を取り出して口元へ。Dチーム圧勝に満足げ。
「そのまま寝ていると、可愛い坊や好きに襲われるぞ」
「そ、それは嫌ですっ!」

(執筆 : 白河 ゆう)