【幸せの刻】総攻撃 〜サッカノ外伝〜
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■ショートシナリオ
担当:天田洋介
対応レベル:11〜lv
難易度:難しい
成功報酬:10 G 85 C
参加人数:12人
サポート参加人数:1人
冒険期間:07月28日〜08月02日
リプレイ公開日:2007年08月06日
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●オープニング
瞬く星が次々と天から流れてゆく。
いくつも、いくつも数える事が叶わぬ程に。
「すべては堕ちていく‥‥。人が堕落する様を観ているが如く」
悪魔の騎士アビゴールがヘルホースと共に雲を掻き乱しながら夜空を飛翔する。少女コンスタンスもアビゴールの前でヘルホースに跨っていた。
高位デビルからアビゴールに命令が下った。
『パリを総攻撃する』と。
「パリが陥落したのなら、サッカノにまつわるすべてを、この手の中に握る事が出来よう。そしてこの地の人はすべてデビルの思うがまま‥‥」
「おじさま、エドガ様はどのようになさるおつもりなのです?」
「知っての通り、今は罰としての幽閉をしている状態。今一度忠誠を試す試練を与えようと考えておるのじゃが、コンスタンスは不満か? お前を殺そうとした張本人であるがゆえに」
「あの崖での一件、おじさまが近くで見守っていたのをわたくしは知ってましたわ。なので心配などするはずもなく。きっとエドガ様も知ってらっしゃったのでしょう」
アビゴールは見上げて顔を向ける少女コンスタンスの瞳を見つめた。無垢な笑顔で何という白々しい嘘をつくのだと思いながら。
エドガが少女コンスタンスに敵意を向けていたのは間違いない。少女コンスタンス自身もよく知っているはず。それなのにエドガをかばうような言動。
今までデビルの庇護の元、サッカノの末裔を見続けてきたアビゴールであったが、少女コンスタンスは特別に思える。
ヘルホースは山の中腹の迫りだした崖上に降り立つ。洞窟があり、グレムリンが警備にあたるアビゴールが用意した監獄であった。
ヘルホースを降りたアビゴールと少女コンスタンスは洞窟の奥へと向かう。
たいまつを持ったグレムリンが厚い扉を開くと、中には鎖で両手両足を繋がれたエドガ・アーレンスの姿があった。
着ていた服は破けて乾いた血でどす黒く染まっていた。露出している皮膚は裂かれてかさぶたが覆う。膿みが流れ出ている個所もあった。
グレムリンが木桶でエドガに頭から水をかけた。
「エドガよ。正気が残っているのなら返事をするがよい」
数分を待つアビゴールであったがエドガから言葉はなく、立ち去ろうとした。
「アビ‥‥ゴ‥ル‥‥」
エドガは呟いた。
「試練を与えようぞ。もし生き残れば再び我の足下に跪くのを許そう」
アビゴールは少女コンスタンスと一緒に監獄を立ち去った。
そのすぐ後でグレムリンの手によってエドガは、静かなる森の奥にある蔦に覆われる石造りの古き建物に運ばれる。そこでラヴェリテ教団の教徒の看護を受けるのだった。
ある日、冒険者ギルドに司祭ボルデとブランシュ騎士団黒分隊エフォール副長が現れた。
ギルドの個室で受付の女性は手紙を二通見せられる。一通は司祭ボルデが所属する教会に、もう一通は王宮内の黒分隊宛てであった。
同じ封蝋がされた手紙は悪魔の騎士アビゴールからのものであった。
「二通の手紙には『パリを全力を持って攻撃する。パリの北で待て』とある。あとはアビゴールのサインのみだ」
エフォール副長は説明をした。
「現在ブランシュ騎士団黒分隊は緊急の状態にある。すべてまかないきれない状況なのだ」
エフォール副長は腕を組んだ。
「そこでラルフ黒分隊長はヴェルナー領が手薄になるのを覚悟して、兵士の一部をパリへと移動させた。もっともこれはエリファス・ブロリア領を陥落させたおかげでもあるのだが、蛇足であるな。そこで冒険者にはヴェルナー領兵士と合同でパリ北方の守りをお願いしたい。今までの貢献から指揮権は冒険者側に渡す」
エフォール副長は細かい資料を受付の女性に渡す。
「もしパリが襲撃されたのなら、大変な惨事となります。アビゴールを止めてください。よろしくお願いします」
司祭ボルデは教会から預かった依頼金を支払うのであった。
●リプレイ本文
●戦いの狭間
依頼一日目となる今日は28日。
去る26日にも様々な敵によるパリ侵攻はあった。デビルと悪魔崇拝者もその中で大きな勢力を持ってた。
激戦の末、王宮の軍勢とパリに攻め入る敵勢は互いに一旦退く形となる。
次の戦いは誰の目にも避けられない状況にあった。
冒険者12名とヴェルナー領の兵士30名はパリ北方の城壁外側に待機していた。
北方には他にもたくさんの味方兵力が存在するが、ここに集まったのは、悪魔の騎士アビゴールの配下であるグレムリン、ラヴェリテ教団に対抗する者達だ。
半日に渡る代表者同士の会議を終える。指揮の確認。空からの警戒。地上からの警戒。戦闘が始まった際の隊列。救護を行う拠点の確保。様々な事が決められて、すべてが動き出した。
シクル・ザーン(ea2350)はリカバーポーションを兵士一人ずつに配る。
「冒険者は矢です。敵の懐に飛び込み、その急所を突くのが役目です」
シクルは話しを続ける。
「皆さんは盾です。パリの街と人々の命を敵から守るのが役目です。盾が壊れれば、何も守れない。パリを守るためにも、ご自分の命を大事にしてください。悪魔の使い捨ての駒などと相打ちになってはなりません」
シクルは仲間との連携に合わせて兵士達を指揮する用意だ。
フランシア・ド・フルール(ea3047)は兵士に頼み、手に入るだけの発泡酒を用意してもらう。そしてルーアンにいる修道女エミリールの保護についても兵士の隊長を通じて嘆願した。
乱雪華(eb5818)は自らのスクロールに地図を写そうとしたが、是非使ってくれといわれて兵士からもらう。心ないしか兵士の顔が赤い。パリ北方の詳しい地図が手に入れば、乱がやろうとしている事にとても役に立つはずだ。
夜が訪れて、仲間でたき火を囲む。
「志士の水無月です。更なる混乱を食い止める為に馳せ参じました」
水無月冷華(ea8284)が改めて挨拶をする。
「夜十字信人‥‥異国から来た見習い騎士さ」
夜十字信人(ea3094)は刀を抱えながら、舞う火の粉を見つめた。
「わざわざ、手紙で予告‥‥か。デビルの中でも随分と異質な感を受ける奴だ」
「あたしもそう思ったよ。わざわざ予告かよって。雑魚を囮に何かしようって事も有得るっちゃ、有得る。警戒はしとこうぜ」
ナノック・リバーシブル(eb3979)とシャルウィード・ハミルトン(eb5413)は依頼までの経緯について疑問と憤慨を抱いていた。
「律儀に知らせをよこすとはデビルでもあっても武人ということでしょうか‥‥」
テッド・クラウス(ea8988)はアビゴールに武人の姿を感じたが、相手はデビルである。負けるわけにはいかないと心の中で誓う。
「この期に及んで悪足掻きとは往生際が悪いな」
ディグニス・ヘリオドール(eb0828)も会話に参加する。そして敵側の魔法使いによるクエイクに注意すべきだと説いた。
「アビゴールは冒険者達が危機に陥ったら、天使が光臨すると考えているはず」
レイムス・ドレイク(eb2277)は天使降臨を避けるため、最初からアビゴールは前線に立つ事はないだろうという。
「地上部隊と遣り合えばいいのかしらね。出来るだけ相手の数を減らせるように頑張るわ。それとオレはリョーカと呼んでちょうだい」
レオンスート・ヴィルジナ(ea2206)は用意されていた発泡酒を呑んでゆく。かなり呑んでいるはずだが、なぜかシラフだ。
デュランダル・アウローラ(ea8820)が立ち上がり、暗いパリの城壁を見上げた。仲間も視線をデュランダルに向ける。
「背後には守るべき者達が。目の前には倒すべき敵が。騎士ならばこれ以上求めるものはあるまい」
デュランダルの言葉を自らに置き換えて、頷く仲間は多くいた。アビゴールとの戦いのみでなく、パリを護る一角となる。負けられない気持ちを冒険者達は強く持った。
●大激突
29日は何事もなく終わる。
さらに一晩が過ぎ去り、30日の朝が訪れる。
乱はダウジングペンデュラムで大まかに行き先を決めた後で、空飛ぶ木臼に乗って確認しに行く。
馬車群と騎馬隊、空にはグレムリンの群れ。掲げられている軍旗はラヴェリテ教団のものだ。
「今の速さだと昼には到着するはずです」
乱は最高速で戻り、仲間に知らせる。
作戦は決まっていた。ぎりぎりまで引きつけて地の利を利用した上で、城壁に控える弓兵にも手伝ってもらう。弓はすべて魔力を矢に込められるものでデビルにも対応出来る。
冒険者は大雑把にいえば二手に別れた。地上で戦う者と、空中で戦う者だ。
敵の姿が揺れる地平線から現れ、形をはっきりと成してゆく。
射程距離に入った刹那、城壁の弓兵達が弦を弾くのだった。
青空に矢の雲が現れて大地に降り注ごうとする。いくつかのウォーターボム、ファイヤーボムが空中に現れて矢の軌道を乱すが、すべてとはいかない。空のグレムリンや地上の教徒に突き刺さるが怯む事はなかった。
ラヴェリテ教団の若き指導者、エドガ・アーレンスは騎乗していた。頬は痩けて土気色の肌をしていたが、瞳はギラギラと輝く。
第二段、第三段と矢は降り注ぐが、被害は最初以外にはない。すべて魔法を使える教徒により除去される。
「突入せよ!」
エドガの叫びに合わせて笛が響く。
前衛の盾を持つ教徒が前進し、射程距離に進入する。その後ろで教徒が魔法を詠唱した。
パリ護衛側からも魔法による攻撃がなされ、激しく周囲の空気を震わせる。
しばらく魔法による攻防が続く。時期を見計らい、騎士達を先頭にして教徒が駆ける。大空からグレムリンもパリに目がけて飛んでいった。
「敵殲滅!」
シクルの号令の元、陸上戦の冒険者、ヴェルナー領兵士は陣形を取って前進をする。
互いの尖兵が激突し、近接戦闘が始まった。
「カゲ、マオ、遅れずに付いて来いよ!」
シャルウィードはペットの犬、虎と共に敵と激突した。集中的に三位一体となって雑兵を叩きつぶす。目の色を変えて向かってくる敵を鞭で絡めて、刀で斬りつけた。マオは背後から攻撃し、一人に大した時間もかからずに潰してゆく。
カゲはシャルウィードの背後に近寄る敵と対峙する。混戦になると背後がおろそかになるのを護ってくれていた。
敵騎馬が近づくと、シャルウィードは鞭を絡めて地面に引きずり降ろして、大地に口づけをさせ、仲間に任せる。
「昼間に堂々と襲うとは‥‥」
シクルは夜襲されると考えていた。預言の一文にあったせいもあるが、ここまで正面切って戦端が開かれるとは思っていなかった。だからといって対策を怠った訳ではないのだが。
何匹かのグレムリンは地上の者に攻撃を仕掛けてくる。シクルはミミクリーで腕を伸ばし、スマッシュと掛け合わせたソードボンバーを放つ。
空中に逃げられるのを防ぐ為、攻撃魔法が使える兵士と連携する。シクルの攻撃に逃げだそうとした所を三日月型の刃が切り裂いた。そして地面に落ちた所で止めを刺してゆく。
「‥‥屍山血河の夜十字だ。別に覚えんでも良いがな」
夜十字は自らが破壊太刀と呼ぶ合成技で敵を防御ごと吹き飛ばした。
一瞬、影が落ちて夜十字は見上げる。仲間に仕掛けようとするグレムリンを目の端で知り、構える。自らが重剣圧と呼ぶ合成技での衝撃波が空のグレムリンを捉えた。
千切れた黒い翼をまき散らしながら、グレムリンが落下してゆく。地上に落ちたのなら味方兵士でも片づけられるはずだ。
「悪魔とかなら、そーんなに手加減する必要もないわよね」
レオンスートは愛馬ミルマスカラスに騎乗して剣を振るう。狙うは騎乗の元ティラン騎士団だ。刃を交えてみると、それなりの実力者なのがわかる。
互いの馬が激しく動き、周囲に土煙がたつ。
劣勢に敵騎士が敗走した。レオンスートは愛馬で追いついて背後から止めを刺した。
「背中を向けるなんて、倒してくださいっていってるようなものじゃない。さあ、次は‥‥」
レオンスートは不利な展開の味方兵士に加勢するのだった。
「敵にも指揮系統はあるはず‥‥」
水無月は乱のストーンゴーレム、ラジャスと共に混乱の中を進んでいた。戦いを挑んでくる敵には刀で対処するが、目的は他にある。
「水無月さんの右前8メートルに小隊長らしき者がいる!」
乱が空飛ぶ木臼が急降下してすれ違いながら水無月に敵の位置を教える。
「氷雪よ、唸れ!」
振り向いた水無月がアイスブリザードを放つ。吹雪が敵教徒達を巻き込んでゆく。味方兵士からもらった実をかじり補給しながら、敵小隊長を中心に攻撃した。
ゴーレムが水無月を襲おうとする敵の前に立ち壁となる。おかげで水無月は安心して魔法攻撃を行えた。
「ここが防衛ラインになります。みなさん踏ん張って!」
テッドが叫ぶ。テッドとディグニスは味方兵士と一緒に強固な盾部隊となって敵教徒達の猛攻を受けていた。可能な限り引きつけて自分達以外の味方から離れるように。
いくら強固な装備をまとっていても、攻撃しなければ勝ちはない。テッドもディグニスも、それはわかっていた。
「散開!」
ディグニスの号令と共に盾部隊は散った。城壁上で隠れていた弓兵達が姿を現し、敵教徒に矢を射る。敵教徒が折り重なるように倒れてゆく。
「無理はなさらぬよう」
フランシアが傷ついた盾部隊に近づいてホーリーフィールドを張った。そして味方の衛生兵による治療が行われる。
「乱さんからもう少しで味方の有利に均衡が破れると聞きました。踏ん張りどころです」
「そろそろ、盾部隊も攻勢に転じようではないか。叩き伏せてやるのだ」
テッドとディグニスを含む盾部隊は治療が終わるとすぐに戦線に復帰した。
フランシアは元の位置に戻りながら、デビルを探るために色水を指先で周囲に弾く。兵士達にも同じように色水を持たせてある。途中、大量の矢が刺さった樽があった。先程、樽の発泡酒に集まったグレムリンに向かって一斉に矢が放たれたのだ。デビルは死ぬと遺体がなくなるので、矢が刺さった樽だけが残った次第である。作戦を考えたのはフランシアだ。
空中ではヒポグリフのミストラルに跨るデュランダルと、ペガサスのアイギスに跨るナノックがグレムリンと戦っていた。
ナノックはチャージングでグレムリンを倒した後、石の中の蝶を注意しながら周囲を飛び回る。近くにデビルはいない。城壁の弓兵はデビルの進入を防ぐ為にナノックと同じ石の中の蝶を持つ者もいる。この戦線からデビルがパリに進入した形跡はない。
デュランダルは、アビゴールを狙う予定であったが、グレムリンの猛攻を見てナノックに今まで手を貸していた。その枷が外れた今、狙うはアビゴールであった。
「ついにアビゴールが戦線に参加し始めました!」
乱が空飛ぶ石臼で空中の二人に報告をする。デュランダルとナノックは乱を先頭にしてアビゴールの元に向かう。
アビゴールは元ティラン騎士団の手練れ3騎と連携を組み、味方を圧していた。二人は空中からアビゴールのいる地上へと何度も移動して攻撃を繰り返す。アビゴールを空へと誘きだす作戦だが、なかなかのってこない。敵教徒が時折、空中へ攻撃魔法を放って牽制する。
そうこうしている内にアビゴールを含む4騎は味方兵士達を倒してゆく。騎乗のレオンスートがシャルウィードの援護の元で戦い始めたが、それでも不利は否めない。
デュランダルとナノックは地上に降りて仲間二人に参戦する。元ティラン騎士団の手練れを倒せば、アビゴールが空中戦をせざるを得ないと踏んだのだ。
その頃、乱はある人物を捜していた。
ラヴェリテ教団が敵であり、アビゴールがいるのなら、エドガもいるはずである。
探す前に改めてダウジングペンジュラムで調べたが、大まかな範囲で役に立たなかった。そこでくまなく空からエドガを捜す乱である。
「いました‥‥」
騎乗するエドガを発見した乱だが、周囲には二人の教徒の姿がある。その佇まいは以前、崖でクエイクを使った教徒だ。確証はないが、エドガがよく用いる作戦から考えても間違いないだろう。
乱は急降下して飛び降り、敵教徒の後ろからスタンアタックを仕掛けた。敵教徒が慌てたおかげで、二人目の教徒もスタンアタックが決まる。乱は騎乗するエドガと二人になった。
乱は戦いを挑む。わざと隙がある攻撃をし、エドガの油断を引き出す。そのつもりであった。
「えっ‥‥?」
見事に攻撃が当たり、エドガが落馬した。立とうとするエドガであったが、その弱々しさに乱は驚いてしまった。すでに怪我をしているようだ。
(「このまま、エドガを倒すことができる?」)
乱が考えた時間はわずかであったが、その時、地面から一人の教徒が現れた。アースダイブで潜っていた教徒はすぐさまエドガが入らない範囲でクエイクを唱える。
まずいと思った乱は近くにあった空飛ぶ石臼に掴まる。乱が飛び立った時、入れ替わるように地面に降りる者がいた。フライングブルームに跨った少女コンスタンスだ。
少女コンスタンスが巨大なファイヤーボムを唱える。間一髪で乱は巻き込まれずに逃げおおせる。
一方の戦いでは、元ティラン騎士団一人とレオンスートが仲間の援護の元で戦っていた。
「この国は既に滅亡を乗り越えている。お前達が捻じ曲げた預言などに負けはしない」
ナノックはアビゴールの長槍を剣で受ける。
空中では飛ばざるを得なくなったアビゴールがデュランダルとナノックを相手に戦っていた。
遠くに巨大なファイヤーボムを目にしたアビゴールは反転して飛び去ろうとする。
「逃げるのかアビゴール!」
デュランダルが叫んだ。ナノックも一緒にアビゴールを追いかける。
空飛ぶ石臼に跨る乱とアビゴールがすれ違う。そして仲間の二人とも。
「危ない! あのボムはコンスタンスが!」
乱が仲間二人に叫んだ。すぐさま第二段のファイヤーボムが空中で弾け、追いかける二人の前に障害を作りだす。
ファイヤーボムが収まる頃、すでにアビゴールの姿はなかった。地上にいたはずの少女コンスタンスとエドガの姿も一緒に。
指揮を失ったラヴェリテ教団の残りも瓦解する。先に殲滅したグレムリン共を含め、ほぼ全滅させた事になる。
しかし、過去にラヴェリテ教団が復活した経緯を知る冒険者もいて、先の未来はわからないと考える者が多かった。
●パリ
パリは護られた。冒険者と王宮の力によって。
他の場所で展開されていた戦いも収まる。怪我をした者の治療が優先的に行われ、一晩が過ぎ去った。
四日目、五日目と何事も起こらずに、依頼期間は終了した。
「しかし‥‥黒分隊長さんは結構、長く見ないな。ホントに忙しいだけか?」
ギルドでの報告の別れ際、シャルウィードがなにげに呟いた。後にラルフ黒分隊長から手紙とお礼の品が冒険者には届けられる。
冒険者達が見上げると、あれだけ夜空を支配していた流星はほとんどなくなっていた。