来訪者 〜ツィーネ〜

■ショートシナリオ


担当:天田洋介

対応レベル:6〜10lv

難易度:やや易

成功報酬:3 G 16 C

参加人数:7人

サポート参加人数:3人

冒険期間:08月20日〜08月26日

リプレイ公開日:2007年08月28日

●オープニング

「ツィーネお姉ちゃん、ドアを叩く音がするよ。お客さんだよ」
 6歳の男の子テオカが女性冒険者ツィーネに声をかける。
 ツィーネとテオカは様々な経緯により、血は繋がらないが一緒に暮らしていた。ついこの間までは定宿に寝泊まりしていたのだが、パリに落ち着く事を決めたので、家を借りたばかりだ。
「誰だ?」
 ツィーネは戸を開けずに訊ねる。既に日は暮れて外は暗い。
「ハインツ・ベルツという者です。ツィーネさん。あなたがレイスにお詳しいと冒険者ギルドから聞き及び、お願いしたい事があります」
 とても若い声だと思いながら、ツィーネは慎重にドアを開けた。
 立っていたのは10代前半の少年である。身なりはかなり裕福な印象をツィーネは受けた。ランタンを持つ護衛の男を外に待たせて、ハインツが家に足を踏み入れる。
「適当に座ってくれ。話とはなんだ?」
 ツィーネは壁に背を預けてもたれる。ハインツがテーブルの椅子にゆっくりと座った。テオカがツィーネの頷きで隣りの部屋へと消える。
「まず、昔話から始めましょう。ノルマン建国のすぐ後、町や村を転々とする殺人鬼が現れたのです。殺人鬼は夜に民を殺めてゆくのですが、狙われながらも生き残る者がわずかながらにいた。殺人鬼は殺そうとする民に必ず問いかけをしたそうなんです」
「問いかけ?」
「問いかけの内容は『自分の命と引き替えに殺した奴はいるのか?』とかそんな感じらしい。殺人鬼は納得する答えをした者のみを殺さず、代わりに人の殺し方を伝授した。その後、生き残ったほとんどの者が恨んでいた相手を殺めようとしたそうです。問いかけに答えるように」
「その話とわたしとなんの関係がある?」
「焦らないで聞いて欲しい。その後、殺人鬼は憲兵に逮捕され、ウーバスという中年男性が正体だとわかる。処刑されるが一件落着とはいかず、ウーバスはレイスとなった。ただ、いち早くボクの父がレイスとなった事に気がつき、古代遺跡内に封じ込めた。何回か、古代遺跡内に人を送り込んだが、誰一人として戻って来なかった。退治を諦めて、そのまま古代遺跡を封印。ところが最近になって盗掘者が封印を開けてしまったのです」
「凶悪な殺人鬼だったレイスが、放たれてどこかに?」
「はい。盗掘者の‥‥死体が、ウーバスの残忍な殺し方にそっくりでした。おそらく盗掘者の一人に憑依し、その他全員を殺したのでしょう」
「とんでもない話だな」
「そこでです。すでに冒険者ギルドには依頼を出しました。ウーバスの愚行を止める内容です。ぜひ、ツィーネさんに入って頂きたいのです」
 ハインツは資料をテーブルに置く。
「父の遺言にウーバス退治への心残りが書いてあったのです。なんとか解決に導きたい。よろしくお願いします」
 ハインツは立ち上がると礼をし、家を立ち去った。
「裏がありそうな‥‥感じはするが」
 ツィーネが呟いている間にテオカが部屋に戻ってくる。
「冒険に出かけるの?」
「そうだ。テオカ、待ってておくれ」
 ツィーネは屈んでテオカの頭を撫でる。
 翌日、ツィーネは依頼の参加をする為に冒険者ギルドを訪れるのだった。

●今回の参加者

 eb0339 ヤード・ロック(25歳・♂・ウィザード・ハーフエルフ・ノルマン王国)
 eb1875 エイジ・シドリ(28歳・♂・レンジャー・人間・神聖ローマ帝国)
 eb2435 ヴァレリア・ロスフィールド(31歳・♀・神聖騎士・人間・イギリス王国)
 eb7358 ブリード・クロス(30歳・♂・神聖騎士・ハーフエルフ・フランク王国)
 eb8896 猫 小雪(21歳・♀・武道家・ハーフエルフ・華仙教大国)
 ec1713 リスティア・バルテス(31歳・♀・クレリック・ハーフエルフ・ノルマン王国)
 ec2838 ブリジット・ラ・フォンテーヌ(25歳・♀・クレリック・人間・ノルマン王国)

●サポート参加者

リリー・ストーム(ea9927)/ レア・クラウス(eb8226)/ ミケヌ(ec1942

●リプレイ本文

●二日目
「みなさん、到着しました」
 ヴァレリア・ロスフィールド(eb2435)は御者台から仲間に声をかける。
 馬車が停まったのは宿屋前であった。ブリズ町に滞在する間は、この宿屋が拠点となる。途中、ヴァレリアとブリジット・ラ・フォンテーヌ(ec2838)は交代で御者を務めてきた。帰りはブリード・クロス(eb7358)がしてくれるという。
「宿代と少々の調査費用は依頼人から預かっている」
 ツィーネが宿の主人に宿代を前払いをした。シャオこと猫小雪(eb8896)は別行動なので、パリ出発前にたいまつを用意して渡してある。
 冒険者達はさっそく行動を開始するのだった。

「女性の嫌いなことをするのは好きじゃないが‥‥まあしょうがない。容疑者でなければ後で謝ってくさ、と」
 ヤード・ロック(eb0339)は酒場へと足を踏み入れる。言葉とは裏腹に機嫌のいいヤードはさっそくカウンター内でそれらしき女性を見つけた。
(「エルフだな、と。見かけは25歳前後かな」)
 資料には女性の名前のみで詳しくは書いてなかった。ヤードは依頼人がエルフだとツィーネから聞いていた。エルフ絡みが多いと感じながら、パリで借りてきた商人風の姿で女性に近づく。
「よう、姉ちゃん。一緒にお酒でも飲まないかね?」
「あら、見かけないお客さんね。旅の方かしら?」
「今日、このブリズ町に着いたばかりなんだ。商売を始めるつもりなんだけど、景気はどうなんだ?」
 ヤードは会話の中で名前を聞きだす。確かに目的の女性『ユセタ』だ。ヴァレリアから質問を預かってきたが、さすがにいきなり訊くのも不躾だ。決して下心はないと自分に言い聞かせながら、夕方まで酒場に入り浸るヤードであった。

「三人とも革に関係する商人だったのか」
 エイジ・シドリ(eb1875)、ヴァレリア、ブリジットは道ばたで相談をする。
 三人で調べた所によれば、レイスに殺された者達は『革職人を束ねる商人』『馬具を扱う商人』『なめし革を扱う商人』であった。
「ヤードさんには酒場のユセタさんを任せました。わたくしたちがこれから調べるユセタさんの評判とヤードさんの印象を比べれば、何か糸口が見つかるかも知れません。他にも三人の商人以外にちょっかいを出している者がいないかを調べましょう」
「町そのものの情報が欲しいな。殺害現場や、当時の状況などにも興味がある」
「私もそれらを調べるべきだと思います。他に事件の後に様子がおかしくなった別の商人などはいないかどうかが気になります」
 エイジ、ヴァレリア、ブリジットは互いの意見を出し合う。殺人現場までの調査まではエイジとブリジットは一緒だが、最後には三人とも分かれて調査を行った。革に関係するかどうか留意しながら、三人の調査は町全体に及んだ。
 ヴァレリアは調べの中で、三人の殺された商人が評判の悪かった事を知る。ただそれは素行の悪さであって、誠実とまではいかないものの、商売に関しては真っ当であった。
 エイジは事件当時を聞いて回った。レイスが飛び去るのを目撃した近隣の住民は何人かいる。誰もが遠巻きで見かけていて、レイスの容姿まではわからない。
 ブリジットは最近様子がおかしくなった商人がいないかどうか調べたが、特にそれらしい人物は発見できなかった。商人以外にもそのような人物の噂は耳に入る事はなかった。

「容姿はどうだったのでしょうか?」
「はっきりとは目撃されていないのでそこは不明だ」
 ブリードは町の治安を守る自警団に出向いていた。依頼書にあった通り、レイスが犯人と思われる三件の殺人事件で町には不安が広がっているそうだ。
「問いかけがあったのは‥‥わかりませんでしょうか?」
「わからないね。なんだい、その問いかけというのは? こちらこそ聞かせて欲しいのだが」
 ブリードは殺人鬼レイス『ウーバス』について知っている事を自警団の者に教えた。
「なるほど。よく似た事件が大昔にあったのか‥‥。ちょっと散らかっていてね。明日また来てくれるか? 三人が殺された時の資料を見つけておこう」
 ブリードは約束をして自警団の建物を後にする。そして夕方まで酒場などで聞き込みを続けるのだった。

「そうですか。一緒にお祈りしましょう」
 リスティア・バルテス(ec1713)は情報収集をしながら、不安を抱える町の人々を宥めようとしていた。ツィーネはリスティアの護衛として付き添う。
「あれは‥‥」
 街角でリスティアが祈りを捧げている時、ツィーネは見かけた。建物同士の狭い隙間に何者かが立っているのを。
 光の加減のせいかも知れないが青白く輝いているようにも見える。
「ティア、変だぞ」
 ツィーネは祈りの途中であったリスティアに声をかけた。
「あれ、レイスかも!」
 リスティアが僧侶として身につけた知識で判断する。ツィーネは駆け寄りながら、念の為に魔剣を抜いた。
 ツィーネが辿り着く前に人影が空に浮かぶ。
「やはり、レイスか!」
 ツィーネとリスティアは太陽の光に紛れながら遠ざかるレイスを見上げた。
「中年の男性、ぽかったよね」
 リスティアはツィーネに確認する。
「その通りだ。ウーバスとは限らないが」
 ツィーネは魔剣を収めて唇の端を噛んだ。

 太陽が沈み、他の仲間が町の宿で情報をつき合わせた頃、シャオは古代遺跡の近くで野営をしていた。
 広々とした草原の中に入り口だけが存在した。古代遺跡は地下にあった。
「すっかり暗くなったね。調査は明日にしよう〜。ね、トラ」
 シャオは保存食を口にする。膝の上にはペットの猫トラが寝ていた。長く背中の袋の中で揺れたので疲れた様子だ。
「明日、なにか見つからないかなー?」
 シャオは多めの薪をたき火にくべると、テントに入って早めに寝るのであった。

●三日目
「ボクにかかればこれぐらい‥‥」
 シャオは崩れた入り口の隙間をまるで猫のように潜ってゆく。
 古代遺跡内に入ると、シャオはもらったたいまつを点ける。自分で持ってきた分もあるので、余程の事がない限り足りなくなる事はないだろう。
「天井は低いね。ここがハインツさんのお父さんがウーバスを封じたっていう遺跡なんだ」
 シャオは揺れる炎で周囲を照らす。特に目立った装飾はなく、ただの地下空間といった印象だ。ただ、石の組み方には感心する。見事なほど隙間がない。
「もうレイスはいないよね‥‥」
 シャオは恐がりながらも、どんどんと奥に向かう。なだらかな坂道になっていて、わずかに差し込んでいた太陽光も見えなくなった。
「これなんだろ‥‥」
 シャオは小部屋の一室に入って石壁を見つめた。たくさんの文字が刻まれていた。
 文字だとはわかるが、まったく読めない。シャオはイギリス語と華国語が理解できるがどちらでもない。ノルマン王国の公用語であるゲルマン語はわからないが、どうやら違うように感じる。
「教会で見たようなんだけど‥‥」
 シャオは考えるのを止めて周囲を探した。持って帰れそうな文字が書かれた石の欠片を見つけると懐にしまうのであった。

「鞍‥‥」
 夕方、冒険者達は新たに手に入れた情報で話し合っていた。
 ブリードが自警団から手に入れた情報の中に、殺された商人が砂地に書いた言葉があった。『鞍の事は忘れろ』である。
 昨日リスティアとツィーネが見かけたレイスだが、ウーバスではないと多くの冒険者は考えた。
 酒場の女性ユセタはエルフなので、関わった人物はかなりの年月に渡る。ユセタに取り憑かれたような変化はないようだ。
 殺人現場は町中、商人の家、馬小屋とバラバラである。
 既にヤードは自分がレイス退治に来た冒険者なのをユセタへ打ち明けていた。今夜、仲間を連れて自宅を訪ねる約束をしていたので、鞍を扱う店を調べる前にユセタに訊いてみる事となった。

 夜、ユセタの家に招かれた冒険者達はテーブルにつくと、まず鞍の事を訊ねる。
「鞍ですか? ‥‥思い当たる物があります。少し待って下さい」
 ユセタの言葉に冒険者達が顔を見合わせた。しばらく待つと大きな物が運ばれてくる。
「すごい‥‥」
 ユセタが奥から持ってきた鞍はとても豪華な逸品であった。玉がいくつも填められ、革の深い艶といい素人目にもいいものだとわかる。
「これをもらった、というより、無理矢理、預からされたのです。三十年程前、近所に住んでいた鞍職人が持ってきたのです。それ以来、会ってないのですが‥‥」
 ユセタの話しは続く。
「後で知った噂によれば、職人はどこかの貴族に頼まれてこの鞍を作ったものの、あまりの出来映えの良さに持ち逃げしたそうです。いつか取りに来るだろうと思っていましたが、最近まで忘れてました。まさか、わたしが商人殺しの疑いをかけられた原因が、この鞍に関係するのですか?」
 ユセタは真剣な瞳でヤードを見つめた。
「あっ、ちょっと用を足したいな、と」
 緊迫した雰囲気の中、ヤードが発した言葉に全員が肩すかしを受けた。ヤードは頭をかきながら庭へと消えてゆく。
「もしかして殺された三人は、ユセタさんに鞍を譲って欲しいと頼んだのではないのですか?」
「そういわれれば、どこで調べたのかは知りませんが、三人に訊かれた事があるような‥‥」
 ヴァレリアはユセタの答えに確信する。
「みなさん、ヤードさんが危ない! 殺されたのはユセタさんに声をかけ、そして鞍の事を知っている人物ばかりです!」
 ヴァレリアの言葉に全員がテーブルから立ち上がる。そして庭へと飛びだした。
 夜空に青白い炎が漂っていた。
「一人の時に、こんなタイミングを襲われるなんて!」
 ヤードは全力疾走でレイスから逃げ回っていた。
 リスティアが目の前に立つブリジットにレジストデビルをかける。
 ツィーネが魔剣を抜き、ブリードがレジストデビルを自らにかけて槍を手にヤードへと駆け寄る。
 ヴァレリアとブリジットは漂うレイスに向けてコアギュレイトを放つが、動きの速さに捉えきれなかった。
 エイジは簡易縄ひょうを手にユセタの護衛に回った。
「なぜ、鞍を欲しがる者を狙う!」
 ツィーネが叫んでもレイスは訳の分からない奇声を叫ぶだけだった。
 レイスはヤードに取り憑こうと飛来する。ツィーネとブリードが寄せ付けないよう攻撃を仕掛けた。
「攻め入る瞬間、奴は動きを止める‥‥」
 エイジがシルバーナイフを構え、じっと機会を待ち、そして放った。
 ナイフが刺さりレイスが悲鳴をあげる。
「捉えました!」
 ブリジットのコアギュレイトがレイスにかかって落下する。すかさずブリードの槍とツィーネの魔剣がレイスにダメージを与えた。
「これで‥‥」
 ヴァレリアはピュアリファイを唱える。最後にレイスは『鞍の中』と叫んで浄化されていった。
 リスティアはヤードをリカバーで治療する。
「たとえ悪霊であったとしても‥‥」
「その魂が二度と迷うことなく、大いなる神の元へと召されますように」
 ブリードとヴァレリア、ツィーネ、そして何名かの冒険者は消えたレイスに祈りを捧げるのであった。

●四日目
 レイスを倒した翌日、冒険者達は再びユセタの家を訪ねた。
 連れてきた町の革職人に問題の鞍を分解してもらおうとする。鞍を手にした革職人は一枚の羊皮紙を取りだした。分解するまでもなく隠しポケットがあったのだ。
 羊皮紙の文を信じるなら、鞍職人は異常者であった。鞍を恋人のように扱っていた。暗喩ではなく、文章から本気の程が感じられた。
 夜道で襲われたが問いかけに答えたら殺されずに済んだという一文もある。すでに鞍職人は鞍の為に何人かを殺していた。そのまま殺人鬼に答えると、新たな殺人の方法を教えてくれたそうだ。
 ユセタに触れた部分もあった。彼女が乗馬に使っていた鞍は先々代が作ったものだという。ここまで大切に使ってくれる者ならば、大切な鞍を預けても安心だと思ったようだ。
 冒険者達は鞍に関してはこれ以上触れずにユセタに返す。
 鞍職人はどこかで朽ち果てて鞍を守る意識だけが残り、レイスとなった。冒険者達はそう考えた。

●五日目 パリへ
 朝早くシャオが合流し、冒険者達は馬車に乗ってブリズ町を後にした。
 帰りの主な御者はブリードがしてくれた。御者台へと繋がる窓を開け放ち、全員で話題にしたのは鞍職人がウーバスと接触した可能性についてだ。
 すぐに大きな矛盾に気がつく。
 ウーバスと、鞍職人が生きていた頃は時代が違いすぎる。レイスとなったウーバスが革職人に接触したとすれば、今度は依頼人の説明がおかしい事になる。ウーバスが古代遺跡から逃げたのは最近のはずなので、革職人が鞍をユセタに渡そうとしていた三十年前には、まだ閉じこめられていたはずだ。
「これを古代遺跡の中で見つけたよ〜」
 シャオが石の欠片を仲間に見せた。古い文体ではあるがラテン語で書かれてある。リスティアが訳した所、魔法使いが牢に閉じこめられた不満を書き連ねたものであった。推測すると、あの古代遺跡には特別な力が働いていて、用意された出入り口以外は通れない構造になっているようだ。

●六日目
 まだ暮れなずむ頃、馬車はパリに到着した。
 訪れた冒険者ギルドで出迎えたのは依頼人のハインツであった。
 報告を受けて満足したハインツは追加の礼金を冒険者達に渡し、すぐに立ち去った。まるで冒険者の質問から逃げるように。

「ツィーネ、またね〜」
 リスティアはもしもツィーネがウーバスの問いかけられたのなら、どう答えるのか知りたかったが訊くのを止めておいた。
「うまくいってよかったです」
 ブリードは初めて依頼を一緒にしたツィーネに祈りを捧げた。
「神に仕える者としては亡者の存在は許し難いものです。自然ならざるものをあるべき姿に戻して差し上げることこそが神の慈悲でしょう」
 ヴァレリアはツィーネを前に強く頷いた。
「約束どおり手伝いに来たら大変な目に遭ったぞ、と」
 そういいながらもヤードは微笑んでツィーネと握手する。
「ハインツとはどういう人物なんだろうな。‥‥どうでも良い事か」
 エイジは無愛想にツィーネへ声をかけた。
「あんなに古代遺跡が遠くだったとは思わなかったよ〜」
 シャオは仲間に通訳してもらい、ツィーネに別れの挨拶をする。
「これをテオカ君のお土産にどうぞ」
 ブリジットは袋をツィーネに渡す。中にはテオカの好物であるチーズが入っていた。ブリジットはブリズ町で買っておいたのだ。
「謎も残ってしまったが、依頼そのものは成功のようだ。よかったらこれからも手伝って欲しい。あのハインツが何者かが少し気になるんだ」
 ツィーネはそういって仲間と別れるのだった。