【豚、ブタ、こぶた】放牧場 〜デュカス〜

■ショートシナリオ


担当:天田洋介

対応レベル:フリーlv

難易度:普通

成功報酬:0 G 78 C

参加人数:8人

サポート参加人数:1人

冒険期間:08月27日〜09月03日

リプレイ公開日:2007年09月03日

●オープニング

「まだ品不足しているみたいだな」
 青年デュカスは空になった荷馬車を見て呟く。一緒に来た青年ワンバは今頃、馬車で村へと帰る途中のはずだ。
 預言のせいで一時流通が止まったパリの市場では、あるだけの野菜を持ってきてもすぐに売れ切れてしまう。
 デュカスは馬車で二日の場所にあるエテルネル村の村長をしていた。村といっても発展途上なので、こうやって村長みずから行商に来ているのである。
 普段から村で穫れる作物や近くの森で得た薪をパリで販売してお金を得ていた。村での生活そのものは自給自足だが、まだ完全ではない。
「あちゃ〜。野菜、もう売り切れかい。それと今度来るときは野菜だけでなく肉も売ってくれると助かるんだけどね」
 カゴを持った主婦に訊ねられて、デュカスは肉は扱っていないと答える。主婦は残念そうに去っていった。
 デュカスは荷馬車を走らせながら考えた。
 パリ周辺の戦いが招いた物資不足はもうすぐ解消するだろうが、村の行く末を考えると畜産にも手を出した方がいい。ただ、種となる家畜を買うのが難しかった。買えない事はないが、それをすると村の貯蓄が底をつく。
 馬車は冒険者ギルド前を通り過ぎる。
「寄ってみるか」
 デュカスは宿屋に着くと荷馬車を預けて、ギルドまで徒歩で戻った。
「あの〜、デュカスさん‥‥です?」
 適当に依頼書を眺めていると、デュカスは小柄な受付嬢に声をかけられる。
「そうですけど、なにか?」
「よかったです〜。えっと、受付やっていますシーナといいますです。村を再建してると聞いたのですけど、少しお話していいですか?」
 突然の事にデュカスは驚くが、何度もギルド内で見かけた正真正銘の受付嬢である。デュカスはテーブルに座り、シーナの話しを聞いた。
 まとめれば次の内容だ。
 アデラというお茶会好きの女性が、伴侶の知り合いなどと豚の代理飼育してもらう計画を立てた。お茶会で出す食事用の美味しいお肉を確保する為だ。
 種豚を預けて増やしてもらい、その中から何匹かを飼育してもらった礼として譲る予定だという。
 その計画をアデラがギルドに持ち込んだ。たまたまいつもの受付がおらず、シーナが依頼を聞く。ところがあまりに長期の依頼で受け付けられない。シーナもアデラがギルドの上得意なのは知っている。無下に断る事も出来ず、あくまで個人的な好意で預かってくれる者を探すと約束をしたのだった。
 シーナが先輩のゾフィー嬢に相談すると、村の再建をしているデュカスの話題になったそうだ。デュカスならば豚を飼ってくれるかも知れないと。
「わかりました。豚の他に鶏も預からせて頂きます。ただ、何もない状態なので、準備をする時間が欲しいのですが」
「お金を出す人達もまだ豚の用意は出来てないのです〜。準備の時間は十分あるのですよ。あっ、シーナもお肉のために、少しだけ出資するのでよろしくです☆」
 デュカスとシーナ嬢の話し合いは成立する。
 デュカスは頭の中を整理してから森整備の依頼を出した。
 森の中で豚を飼う放牧場所を確保するので、力を冒険者に貸して欲しいとの内容である。危険動物がいないかを調べるのも依頼に含まれる。
 鶏小屋は弟のフェルナールに任せるので、問題は森の一部を囲う柵作りである。
 デュカスは柵作りを村人に知らせて準備をしてもらう為に一度村へと帰る。
 依頼初日の前日には再びパリに戻るつもりであった。

●今回の参加者

 ea2756 李 雷龍(30歳・♂・武道家・人間・華仙教大国)
 ea3852 マート・セレスティア(46歳・♂・レンジャー・パラ・ノルマン王国)
 ea7256 ヘラクレイオス・ニケフォロス(40歳・♂・ナイト・ドワーフ・ビザンチン帝国)
 eb8113 スズカ・アークライト(29歳・♀・志士・ハーフエルフ・イギリス王国)
 eb9782 レシーア・アルティアス(28歳・♀・ジプシー・エルフ・ノルマン王国)
 ec0037 柊 冬霞(32歳・♀・クレリック・人間・ジャパン)
 ec2418 アイシャ・オルテンシア(24歳・♀・志士・ハーフエルフ・イギリス王国)
 ec2838 ブリジット・ラ・フォンテーヌ(25歳・♀・クレリック・人間・ノルマン王国)

●サポート参加者

玄間 北斗(eb2905

●リプレイ本文

●道中
 太陽が照りつける日中、パリを出発した馬車と荷馬車は目的のエテルネル村に向かっていた。車輪が石を踏んで大量の藁が大きく揺れる。藁は縄をなう為に用意されたものだ。
 村長デュカスが御者をする馬車には、柊冬霞(ec0037)とアイシャ・オルテンシア(ec2418)が乗っていた。馬車後方内は藁で埋め尽くされている。
 青年ワンバが御者をする荷馬車にはヘラクレイオス・ニケフォロス(ea7256)と李雷龍(ea2756)が積まれた藁の上に座る。
 他の冒険者達は大空を飛翔する道具で村へと先行していた。

「ふむ。なかなか難しいものじゃな」
「そうですね‥‥均一な太さにするのは結構大変だ」
 荷馬車に乗るヘラクレイオスと雷龍は揺られながら縄をなう。本人達がいう程、縄の出来は悪くない。ちゃんと太くて丈夫な縄がなわれていた。
「いやいや、お二人ともこんな短い時間でこんなに縄をなうなんて。お見逸れ致しやした。もっと藁を積んでくればよかったと後悔しきりですわ」
 出発前になえ方を教えた青年ワンバが御者台から振り向く。
「これ以上藁を積んだら、霞がかかる山の天辺に登るようなものじゃ」
「もしかしたら藁に溺れるかもしれないな」
「ごもっともですな」
 三人は一緒に大きく口を開けて笑った。

「残念だね。調子悪かったのかな」
 御者台のデュカスが空を見上げて、来られなかった冒険者の事を呟いた。気を取り直して後ろを振り向く。
「あまり上手ではありませんが、ジャパンでも稲藁で縄をなったものです」
 今回は縄の事もあり、冬霞の姿は馬車内にあった。強い日差しも体調を崩す原因になりかねないからだ。
「どうですか? 奥さんと仲良くやってますか?」
 アイシャは一緒に縄をなう冬霞と、デュカスの背中を順番に眺める。
 冬霞が顔を真っ赤にし、デュカスは軽やかに笑った。二人はうまくいっているようだ。
 デュカスが銀のバックルをつけていて少し嬉しいアイシャである。村の近況を訊ねると、デュカスは順調だと答える。特に今回の豚飼育がうまくいけば、エテルネル村内でほとんどの食料がまかなえるという。
「達成出来れば、村は次の段階を迎える事ができるんだ。まだまだ前の焼け残った土地も残っているけど、そこにも手をつけられる」
 デュカスは村の未来について二人に語るのであった。

●森
「上手く行けば村の特産品になるかもしれないし。その前の森の調査を頑張りましょ」
 スズカ・アークライト(eb8113)はベゾムを片手に持って仲間に声をかける。
 一日目の夕方に村へ到着し、一晩を過ごして今は二日目の朝だ。
「危険な動物がいないかの他に、放牧場の候補となりそうな場所を見つけられるといいのですけど。マートさんもそう思いませんか?」
 ブリジット・ラ・フォンテーヌ(ec2838)が声をかけても、マート・セレスティア(ea3852)に反応はない。
「豚は子豚でも美味しいんだよね。丸焼きにしてかぶりついたりさ」
 マーちゃんは指を口にくわえて心ここにあらずだ。遠火でじっくりと焼かれ、油が滴ってさらに煙で燻されるこぶたの丸焼きが脳裏に浮かんでいた。
 ゴクリと生唾をのんでマーちゃんは我に返った。しかし建築中の鶏小屋が視界に入る。
「鶏も丸焼きにすると美味しいんだよね‥‥」
 今度はにわとりの丸焼きがマーちゃんの脳裏に浮かぶ。
 マーちゃんが元に戻るのを待って、三人は調べる森の分担を決めた。かなり広いので、ただ見回るだけでも時間がかかる。
「よろしくお願いしますね〜」
 金槌を持つ鶏小屋を作る少年フェルナールが飛んでゆく三人に声をかけた。
「フェルナール君もがんばってね」
 スズカは青空に円を描いて見せるのだった。

●到着
 二日目の夕方に馬車と荷馬車の二両が村に到着した。
 水車が回り、小屋の中から規則的な音がする。収穫された麦の脱穀も順調に進んでいた。
 村の家屋も増えていて余裕があった。冒険者は男性と女性で二軒に分かれる。
「なるほど。空から見るとはっきりとわかるものなんですね」
 デュカスはブリジット、スズカ、マートから森調査の報告を受けた。
 まず一番肝心な危険動物については発見されなかった。見かけられたのは、うさぎなどの小動物である。
 地形についてだが、森の外縁部近くに適所があるという。東西に崖とはいえない程度の盛り上がった段差が平行に近い形で存在する。その間は約500メートル。
 その段差を利用し、南北それぞれに東西の段差を繋げるように柵を作れば放牧場が出来上がるはずだ。
 スズカとブリジットは木の実がなるオークの木などがあるかを気にしていた。マーちゃんに訊ねるとオークの木がたくさん生えているそうだ。どれか教えてもらったところ、確かに同じような木があちらこちらに自生していた。二人は大丈夫だと確信する。
「いくつかの候補を考えていたのですが、そこに決めたいと思います。村からも近い場所ですし」
 デュカスは先行した三人に感謝した。
 冒険者達は用水路に作られた水浴び場で汗を流し、夕食を頂くと早めに就寝する。
「明日から大変だと思いますから、今日はゆっくり休んで下さいね」
 冬霞はデュカスに声をかけてからベットに入る。全員が明日からの作業に備えるのであった。

●柵作り
「これはすごいのお」
 三日目、ヘラクレイオスは愛用の槌を肩に担ぎながら、積み上がった杭の山を見上げる。すでに村人の手によって用意されていたものだ。
「まだありますよってに。順次、運んで来ますわ」
 ワンバはヘラクレイオスから愛馬を借りていた。荷馬車の他に少々小さめの荷車にも載せて必要な物を運ぶ用意だ。
「村の衆。近くに川原なり石の採れる処があらば、拾ってきてくれぬかの?」
 ヘラクレイオスは柵を頑丈にする為に石の用意を村人に指示した。杭の根本に埋めるととても頑丈になるそうだ。
「これを預かってきました。鶏小屋作りの参考にして下さい」
 雷龍は玄間から預かった鶏小屋の防護対策が書かれたものをフェルナールに渡した。過去の経験を記したものである。
「さて、ここはがんばりましょう」
 雷龍も村で用意された槌を手に持つ。
 ヘラクレイオスが南側、雷龍が北側の杭打ちを担当した。村人が運んで支える杭に向かって槌が勢いよく落とされる。
 ブリジットとマーちゃんは南側で、スズカとアイシャは北側で三メートル間隔に打たれた杭を繋げるように細めの丸太三本を水平に取り付けてゆく。それぞれにの村人二人がついてフォローしてくれる。
「こっちは打ったわ」
「こちらも大丈夫です。この間隔ならコブタも出られてないですよね?」
 スズカとアイシャは杭に丸太を釘で打ち付けてから、さらに縄で固定する。南側ではブリジットとマーちゃんも同じようにしている事だろう。
 今日を含めて実質的な作業は三日である。アイシャはデュカス達村人の笑顔を思いだして、額に汗をかく。
 東西の段差部分も完全ではなく一部崩れている個所があるので、土を盛り直すか、その部分のみ柵を用意するかしなくてはならない。それらはデュカスがやってくれるようだが、任されたからには行き届いた仕上がりをしたい、と冒険者のほとんどが思っていた。
「お昼をお持ちしました」
 冬霞が村の子供達と一緒に作業場へ現れた。食事を荷車に載せて持ってきたのである。
 真っ先に冷たい水を飲み、そしてパンにかじりついたのはマーちゃんだ。よそってもらったスープもすぐに平らげておかわりをした。
「豪快とはこの事じゃのう」
 ヘラクレイオスがマーちゃんの姿を見て愉快に笑う。
「みんな、いい子ですね。これはお礼です」
 ブリジットは食事を運んで来てくれた子供達にクッキーを渡した。子供達は大はしゃぎだ。食事が終わると、これからの作業の為に首に巻くスカーフを濡らしたりして準備を怠らないブリジットである。
「それでは北側の皆様にもお渡ししてきます。食器などはこちらに置いて頂ければ、後で持ち帰りますので。それと何か不自由がありましたら、遠慮せずに仰って下さいね」
 冬霞は子供達と一緒に北側の作業場に向かった。
「新しい村人達も大分慣れて来たみたいだし、村に活気があるのは良い事よね」
「その通りです。あ、昨日調査の時に獲ってきて頂いた獣肉は好評でした」
 スズカは食事を運んできた子供達を眺めながら冬霞に呟く。
「あの子達が辛い思いをしないように私達も頑張らないと‥‥」
 スズカは村の今後に関して危惧があった。エテルネル村の前身の村は盗賊によって滅ぼされた。今もそのまま、焼け跡が残っている場所もある。
 今までは大して価値もなかったが、活気が出るのに比例して悪党に狙われる可能性が高まる。早い時期に対処すべきとスズカは考えていた。
「やっぱり、ワンバに訊くしかないようね‥‥」
 スズカはため息をついた。
 冬霞がスズカの元を離れて岩に座る雷龍にパンを渡す。
「こうやって柵が出来てゆくと、村の再建がされる実感が湧きます。デュカスさんも、きっとそう思っているのでしょうね」
「その通りだと思います。すでに旦那様の夢になっていますので。皆様が来ているときは村が特に元気な気がして私も嬉しいです」
 冬霞が雷龍に微笑む。
「このパン美味しいです。収穫したばかりの麦で作られたパンはこんなにいい香りがするのですね」
 アイシャが笑顔で食事を食べ終わる。冬霞はコクリと笑顔で頷いた。
「さーて‥午後も皆さん、がんばりましょうね!」
 アイシャが先頭に立って作業を再開する。
「帰ったらまず洗濯物を取り込まないと」
 冬霞は使い終わった食器を荷車に載せると子供達と一緒に村に戻るのであった。

●不安
 三日目の順調は四日目にも続き、日が暮れて体を休める時間となった。
 スズカはワンバを呼びだす。目の前の水車が水を捉えてゆっくりと回る。
「そう‥‥なるほどね」
 スズカは元盗賊のワンバから村を襲う時の手段を訊ねた。
 まずは村人を誘拐するか、それとも誰かが潜入するかして、村の情報を手に入れる。可能なら内部から手引きして、侵入口を用意させて攻め入るのが盗賊の常套手段だ。
「柵や警戒も、無力化していくのが盗賊の手段でさあ。村全部を囲う程の柵も用意されておらんし、エテルネル村はそれ以前の状態や」
 ワンバはスズカに背中を向けながら話す。
「ごめんね、でも私も知っておきたくて」
「いやいや、ちゃんと段階を踏んで村を大きくせんと、途中でとんでもない目に遭うかも知れんのんや。もう少し村人増やさんと何もでけへんな。おいらも注意するけど、デュカスに力貸してやってや。出来るならデュカスの夢ってやつを見てみたいんや」
 スズカはワンバにお礼をいってみんなの元に戻るのであった。

●完成
 五日目は最後の追い込みに冒険者全員と、そして手が空いた村人達によって次々と柵が作られてゆく。
「ここが踏ん張りどころです!」
 互いに声を掛け合って汗と泥にまみれる。それでもためらう事なく作業は続いた。
 放牧場となる場所は、自然の木をそのままにしておくので手は掛からないが、前もって杭を用意した箇所には切り株が残されている。杭に使う木なので、大木という程の太さもなく、なるべく間引くように伐られていたので切り株は自然に任せる事にした。
 宵の口に柵は完成する。
 南北に簡素ながら門が用意された約500メートル四方の豚放牧場である。オークの木を始めとする木の実がなる土地なので、豚の飼育には適しているはずだ。
 麦を脱穀する際に出るフスマも豚と鶏の飼料として考えられていた。最初の内は少ない頭数なので、大分余裕があるだろう。
 鶏小屋の方もフェルナールの手によって出来上がる。出入り口の立て付けが少し悪かったが、ヘラクレイオスが手を入れるとピタリと枠に扉がはまる。
「さて、道具の手入れも終わったことじゃし。働いた後のワインは格別じゃぞ。一緒に村長殿も如何かの?」
 手際の良さに驚くデュカスとフェルナールの肩にヘラクレイオスは手を置いた。

●パリで待つ者
 冒険者達はそれぞれの方法で帰路につく。
 道具を使い、空を飛んで帰る者。愛馬で帰る者。デュカスが御者をする馬車で帰る者。長距離に適した道具で帰る者。
 ヘラクレイオスがハーフエルフを嫌っているのは出発時にわかっていたので、互いに不可侵の立場をとった事も関係するのかも知れない。
 それでもパリの冒険者ギルドに報告する時間は合わせていた。七日目の夕刻に全員が集まる。デュカスの姿もあった。
「みなさん、ご苦労様なのです☆」
 受付嬢シーナが冒険者からの報告を聞いた。
「これで、アデラねえちゃんのお茶会でおいらが食べる子豚が‥‥ゴクリ」
 マーちゃんは再び美味しそうな丸焼きを想像する。
「アデラ殿の趣味もここまでくれば大したものじゃよ」
 ヘラクレイオスもマーちゃんと同じくこれから先を楽しみにしていた。
「お肉の好きなギルドの受け付けさんよね? 頑張ってきたからきっとよく育つ環境になるわよ」
 スズカは笑顔でシーナから依頼金を受け取る。
「お久しぶりです。ゾフィー様と仲良くやっておられますか?」
 冬霞は以前、シーナの出した依頼に参加した事があった。
「初めまして。お噂はかねがね‥‥」
 アイシャは友人からシーナの事を聞いていた。とてもユニークな人物のようだ。
「これで豚の放牧場は用意できました。出資者の方が豚を運んで来るのを心待ちにしています」
「わかりましたです。必ず伝えておくのです〜」
 シーナはデュカスと握手をする。
 報告が終わり、冒険者達はギルドの外に出た。
「以前からエテルネル村の雰囲気をすっかり気にいっています」
 ブリジットはそうデュカスに別れの言葉を残して去っていった。
「豚を上手く誘導するのにはボーダーコリーを飼うのが有効かもしれません。検討してみたらいいと思います」
 帰りに思いついた事を雷龍はデュカスに話した。
 冒険者達はパリでの寝床へと帰ってゆく。
 デュカスは明日の市場で持ってきた食材を売り切ってからエテルネル村に帰る予定であった。