ちびっ子ブランシュ騎士団のキノコ狩り

■ショートシナリオ


担当:天田洋介

対応レベル:フリーlv

難易度:やや易

成功報酬:0 G 41 C

参加人数:6人

サポート参加人数:1人

冒険期間:09月27日〜10月01日

リプレイ公開日:2007年10月03日

●オープニング

「お〜い!」
「なんだ。おそいぞ」
 空き地に駆けてきたのはちびブラ団の黒分隊長こと少年ベリムートであった。他の仲間三人はすでに集まっていた。
 今日は橙分隊長こと少女コリルの家をみんなでお手伝いの日である。
 ちびブラ団は一週間に一度、誰かの家の手伝いをしていた。冒険者に鍛えられたので、大抵のことはそつなくこなせるちびブラ団だ。
「いや、お父ちゃんの知り合いで山に住んでいる人がいてさ。すっごいキノコが生えているところを知ってるんだって。セップ茸っていったかな。それを毎年、市場で売るらしいんだけど、今年は人手が足りなくて冒険者ギルドに依頼を出したようなんだ」
「美味しいよねぇ〜。あのキノコ。お肉といっしょだと特においしいよ。あたし、だ〜いすき」
「あれ、うめぇ〜よな。俺様も好物だぞ。あ、思いだしたら口の中が〜」
「ぼくも好きだよ。毎年楽しみにしてるんだ。‥‥それでそのキノコがどうしたの?」
 灰分隊長こと少年アウストがベリムートに訊ねる。
「知り合いの人がガハハッと笑いながら、俺にも来いって。それに友だち連れてっていいっていってたんだ。少しでも人がたくさんいた方がいいし、それに楽しもうって」
 ベリムートの説明に三人の顔がより明るくなる。
「それいいな! 冒険者もいるしなんか楽しそうだぞ!」
 藍分隊長ことクヌットは特に張り切った様子だ。
「あ、とにかく橙分隊長のとこ、行ってお手伝いしようよ。まだ出発まで日数あるし、あとでいろいろと相談しよ〜」
 アウストの提案にみんな頷く。
 ちびブラ団の四人はコリルの家まで走って向かうのだった。

●今回の参加者

 ea1999 クリミナ・ロッソ(54歳・♀・クレリック・人間・神聖ローマ帝国)
 ea6480 シルヴィア・ベルルスコーニ(19歳・♀・ジプシー・シフール・ビザンチン帝国)
 eb2949 アニエス・グラン・クリュ(20歳・♀・ナイト・人間・ノルマン王国)
 eb5231 中 丹(30歳・♂・武道家・河童・華仙教大国)
 ec2830 サーシャ・トール(18歳・♀・レンジャー・エルフ・ノルマン王国)
 ec3857 エブリオ・ミハエル(36歳・♂・神聖騎士・人間・フランク王国)

●サポート参加者

セレスト・グラン・クリュ(eb3537

●リプレイ本文

●集合
「やや、ちびブラ団も一緒だったのか」
「浪漫指南顧問のサーシャさんだ。よろしくね〜♪」
 サーシャ・トール(ec2830)は朝早く集合場所の広場にやって来て初めて知る。セップ茸の収穫依頼にはちびブラ団の四人とベリムート夫妻も同行するそうだ。
「メルシアと仲良くしてね」
 コリルは屈むとサーシャのちびウサギ、ムゥニィにちび猫メルシアを紹介する。
「おいらのうさ丹もよろしゅう頼むわ。やさしくしてやってや」
「あ、中丹さんと、うさ丹だ。前に耳持ってごめんな」
 河童の中丹(eb5231)もペットのウサギ、うさ丹をちびブラ団に見せる。クヌットがうさ丹を包み込むように両手で抱いた。
「マルコとペテロもよろしくです。セップ茸の香りを記憶させて探すつもりです。たくさん採りましょう」
「橙飛行隊長も一緒だったんだぁ〜。‥‥いまさらだけどアニエスちゃんって呼んでいい?」
 アニエス・グラン・クリュ(eb2949)は笑顔でベリムートに頷いた。ちびブラ団の誰もがアニエスちゃんと呼んでみる。
「おやおや、賑やかですね」
「クリミナせんせーもなんだね。よろしくお願いします〜」
 クリミナ・ロッソ(ea1999)が馬に猫を乗せてやってくる。
 クリミナは市場に立ち寄ってお肉を手に入れてきた。アンチセプシスをかけたので新鮮さについては大丈夫である。調理の時まで繰り返しかけるつもりだ。
「クリミナおば様、これを」
 アニエスも肉の購入を知っていて費用の一部を負担する。
「お仕事はちゃんとやるとして、気をつけて楽しんでらっしゃいね」
 見送りにきた母セレストから調味料を受け取ったアニエスである。
「山や森なら、結構詳しいわ。よろしくね」
「シルヴィアさんだ。頼りにしてるね」
 馬車の屋根にはシフールのシルヴィア・ベルルスコーニ(ea6480)が座っていた。ちびブラ団は見上げながら挨拶をする。
「俺が依頼主のバムハットだ。セップ茸をた〜んと採ってくれよ〜」
 馬車の御者台からバムハットと名乗ったひげ面の大男が飛び降りる。
「俺と旦那が御者をやって、馬車二両で山に向かうって寸法だ。ほらほら、乗った乗った!」
 ガハハッと笑ったバムハットは子供達を抱き上げて次々と馬車に乗せてゆく。アニエスもひょいと持ち上げられて馬車に乗せられた。
「バムハットおじ様は、シャシムおじ様を知っていますか?」
「シャシム? おう、親戚にいるが奴がどうかしたのか?」
 アニエスはその豪快さと容姿からやっぱりと頷いた。
 バムハットは冒険者の馬を慣れた手つきで馬車に繋ぐと御者台に座る。ベリムートの父親ももう一両の御者台に座った。
「いざ、キノコの山へ!」
 馬車はセップ茸が採れる山に向かって走りだした。

●キノコ狩り
 冒険者達は鶏の鳴き声で目を覚ます。
 寝ていたのは山小屋。昨日のうちに山に辿り着いて、バムハットの住処に全員が世話になったのである。
「貸してもらって、とっても助かったわ」
 山は冷える。昨晩、アニエスはシルヴィアに毛糸の手袋と靴下を貸していた。
「今年はいつもと違う辺りに生えているみたいだ。あとな、セップ茸は傘が開く前のがうめぇ〜んだ。見つけにくいが出来れば、そういうのを採ってきてくれ。もちろん開いたのも採ってきてくれよ。それも充分にイケルからな」
 バムハットの説明を冒険者達とちびブラ団達はカゴを担いで聞いた。自前のカゴを持っていた者もいる。見本として一人に三つずつ成長が違うセップ茸が渡される。
「慣れるまでは、そいつと見比べながら探してくれ。くれぐれも変なキノコは混ぜないでくれな。では、ひとまず昼頃までキノコ狩りだ!」
 バムハットが先頭になって山道を歩きだした。まずは大まかな収穫地域までの移動だ。そこからがキノコ狩りの始まりであった。

「美味しい時期のは傘が開いていないので見つけにくいのか。木の根は踏まないように気をつけた方がいいぞ」
「わかったぜ。一番で見つけたいよな」
 サーシャは木の根を痛めないように木の根を踏まないようにして歩く。クヌットも一緒に山の斜面を歩いてゆく。
「こういう場所にありそうなんだが‥‥」
 サーシャは植物知識を生かしてキノコが生えてそうな場所を探る。落ち葉もあるが、まだまだ青い草花もたくさんある。それらに隠れてセップ茸は生えているはずだ。
「これ、そうなんじゃないのか?」
 クヌットが四つん這いになって屈んでいた。サーシャも屈んでみる。見本としてもらったセップ茸とそっくりなのがたくさん生えていた。
 一つを採って傘の裏を確認する。外見がよく似たキノコもあるようだが、傘の裏の特徴はかなり違うそうだ。
「これはセップ茸だな。根本から丁寧に採るべきだ」
「みんな、あったぞぉ〜!」
 クヌットは叫ぶが返事はない。仲間は近くにいないようだ。
「これぐらいなら二人でも採りきれるな。がんばってみよう」
「お〜! カゴ一杯にして持って帰るぜ」
 サーシャとクヌットはカゴを安定した場所に降ろすと、セップ茸の採集を始めるのだった。

「マルコとペテロ、がんばれ」
 アニエスの隣りを歩くベリムートが犬二匹に声をかける。その後ろをクリミナとベリムート夫妻がついてゆく。
 二匹が探しているのはセップ茸の匂いである。アニエスは二匹が匂いを捉えるまで、風向きを考えながら進む方向を決めた。風上に向かって歩けば、それだけ遠くの匂いも嗅ぐことが出来ると考えたからだ。
「蛇なども気をつけて下さいね」
 クリミナはさりげなく注意を促す。
 二匹が突然に吠えた。二匹の後ろをアニエスとベリムートが走ってついてゆく。
「セップ茸、ありました!」
 アニエスは一つを採って高く掲げる。クリミナと夫妻が追いついて辺りを見回した。
 木々の根本辺りにたくさんのキノコが見える。特徴からいってもほとんどがセップ茸であろう。
「さて、がんばろうか」
「そうね。ベリムート」
 ベリムートの父親が息子の頭に手を置いた。母親も近寄ってキノコ狩りが始まる。
「まずはカゴ一杯でいいようね」
「バムハットおじ様はそういってました」
 クリミナとアニエスも屈んでセップ茸を採る。
「よくやったよ。マルコとペテロ」
 役目を終えた二匹の頭をベリムートが撫でる。小さく吠えた二匹はアニエスに振り向いて、もう一度吠えた。
 木漏れ日が落ち、時折風が吹き抜ける。秋とはいえ、まだまだ日中は暖かい。
 五人と二匹はそんな中でキノコ狩りをするのだった。

「かっぱっぱ〜♪」
 山の森を河童の中丹が先頭を歩く。木の枝を縫うようにシルヴィアが飛び、その下をバムハットとアウスト、コリルが歩いた。
 シルヴィアを除いた全員がカゴを背負っていた。
「天気は大丈夫そうね。少し探してみるわ」
 シルヴィアは仲間に言葉を残して遠ざかる。他の仲間より山深くに入ったが、まだセップ茸は発見出来ていなかった。
「なかなか見つからないね」
「まだ歩き始めて一時間ぐらいだよ」
 コリルとアウストが話していると、シルヴィアが戻ってくる。すぐ近くにたくさんのキノコが生えている場所があるという。
「おお、今年はこんな所に生えていたのか」
 バムハットが周囲を見回す。木々が密集している少し薄暗い周辺にたくさんのキノコが生えていた。
「さっそく、キノコ狩りやで」
 中丹はカゴを降ろしてセップ茸を採り始める。
「これが美味しい時のね」
 シルヴィアはまだ傘の開いていないセップ茸を選んで仲間のカゴに入れてゆく。小柄な身体が幸いして探しやすい。
「中丹さん、こっちにもあるよ」
 コリルが呼ぶとほっぺたを膨らませた中丹が振り向く。山葡萄を見つけたようで、摘み食いをしていたのである。
「熟れてて、うまいで」
 中丹はコリルとアウストにも山葡萄をもいであげた。
 セップ茸採りは順調に進み、すぐにカゴが一杯になった。昼頃に山小屋へ戻ると、他の仲間も戻っていた。
 どのカゴもセップ茸がたくさんだ。
「こりゃ思ったより、今年は多く採れそうだな」
 バムハットは目を細くして喜ぶ。
 昼食が終わり、午後も続行される。暮れなずむ頃には今日のセップ茸採りは終わった。
「あまり遠くにいってはいけないよ」
 サーシャが言い聞かせて、ちびウサギ、ムゥニィが山に放たれる。仲間のペットも山小屋の周辺で遊んでいた。
 山小屋の煙突からは煙が立ち上る。夕食作りが始まったのである。
「こんな感じでいいかしら?」
 炊事場ではクリミナとシルヴィア、コリルが食材と格闘していた。バムハットはセップ茸を好きなだけ使っていいと言い残して炊事場を立ち去る。
 クリミナは用意してきたお肉を取りだす。鳥肉のお腹にセップ茸などを詰めて煮込んだ料理を作っていた。コリルが一生懸命に具を詰めてゆく。
「バターで炒めても美味しそうね」
 大体の料理が出来上がり、シルヴィアは最後の一品としてセップ茸のバター炒めを作る。その香りに誘われて食いしん坊の男達が集まってきた。
「出来たら呼ぶから、もう少し待っててね」
 コリルが食いしん坊達を炊事場から追いだした。
 夕食は出来上がり、山小屋に全員が集まる。椅子が足りないので大木を輪切りにしたものに子供達は座った。
 お祈りをして夕食の時間が始まる。
「美味しいぞ!」
 クヌットが一言叫んだだけで、ちびブラ団の四人は黙々と食べた。皿の上に何も無くなるまで、ただひたすらに。
「おかわり!」
 ぼぼ全員が同時に声を上げた。大人達、冒険者達はその姿に笑う者もいた。
 就寝の時間となり、ちびブラ団は昨日眠りについた部屋のドアを開ける。
「あっ!」
 そこにあったのは落ち葉の山であった。
「今晩だけですが、落ち葉のベットはどうですか?」
 アニエスがシーツを子供達に渡した。広げて落ち葉の山に被せる。
「アニエスちゃんが集めてくれたの?」
「三人の分隊長様も手伝ってくれました。どうぞ寝てみて下さいね」
 まずコリルが出来上がったばかりのベットに寝転がった。続いてアニエスと三人の男の子分隊長も大きなベットに転がる。
 その晩、ちびブラ団とアニエスは一緒に落ち葉のベットで夢を見たのだった。

●山の幸
 三日目もセップ茸採りは順調に進んだ。
 お昼が過ぎ、必要量のセップ茸は取り終わる。後は自由時間だ。
「へんなかお」
 葉っぱのお面をつけたアウストを観て仲間が笑う。アニエスの発案で周囲にあるものを使って遊んでいたのである。
「木にぶつかるだけでも大変ですよ。蜂の巣があったりしたら――」
 別の場所に移動するのでアニエスがちびブラ団に注意をしていると、遠くから声が聞こえてくる。
「大変!」
 シルヴィアがものすごい勢いで山小屋に飛んできた。一度通り過ぎて、戻ってきたシルヴィアは息を切らしていた。
「中丹さんが笑いながら変な踊りをしているの! とっ‥‥ても変な踊りよ!」
 シルヴィアの言葉にアニエスはピンと感づく。すぐに仲間を山小屋に呼びにいった。
「やっぱりあれか?」
「やっぱりあれでしょう」
 サーシャとクリミナがシルヴィアに案内をしてもらう。ちびブラ団とアニエスも後ろからついてゆく。
「かぱぱぱぱぱぱぱぱぱ、なんや笑いがとまらんのや、かぱぱ――」
 森の中で身体をくねらせながら、笑って踊る中丹の姿があった。
 シルヴィアはかじりかけのキノコを拾ってきた。どうやら中丹は毒キノコを食べたらしい。
 クリミナは中丹に触れながらアンチドートを唱える。笑いと踊りが止まった中丹がその場に座り込んだ。
「助かったんや〜。いろいろ山の幸を探しているうちにこんなになってしもうたんや」
 中丹は指さした遠くのカゴの中には、色々な種類の木の実や山葡萄がたくさん入っていた。
「場所覚えとるで。これから一緒にいかへんか?」
 中丹の誘いにみんなが賛成する。カゴを取りに戻って中丹の後をついてゆく。そこにはたくさんの山の恵みがあった。
 さらにシルヴィアもイチジクの木を発見し、ちびブラ団は大喜びする。
 山で生きる野生動物の為にも取りすぎに注意して採集が始まった。
 ちびブラ団は背伸びをしたり、木登りをして実を採ってゆく。転ぶ事もあったが、少々の擦り傷程度である。小川の水で洗っておけば自然と治るはずだ。
「甘いね♪」
 帰りはみんなでもいだばかりのイチジクを食べながら山小屋へ戻った。
 セップ茸入りのオムレットと山の幸のデザートで夕食を済ませ、ちびブラ団はテントに泊まる。最後の晩に山からの星空を観る事にしたのだ。
 なるべく暖かい格好をして冒険者達とちびブラ団達は夜空を見上げていた。
「あれが、よく神話に出てくる星座だよ」
「へぇ〜、本で読んだ事あるかな」
 サーシャが話す言葉をちびブラ団達は頷きながら聞いた。
「いい星空だこと」
「はい。クリミナおば様」
「かぱぱぱぱ‥‥あれ、まだ少し残っているんやろか」
 ちいさなペット達を抱えて温まりながら、冒険者達とちびブラ団の星空の観察は夜遅くまで続いたのであった。

●パリ
 四日目の朝、山小屋から馬車二両は出発する。山を訪れたみんなの他に、大量のセップ茸を載せて。
「おかげでたくさんのセップ茸が集まった。それとこれはカゴの底にあったんだが、冒険者には貴重だと聞いた事があるぞ。持って帰るがいい」
 夕方にパリへ着いたバムハットは冒険者達にソルフの実を渡した。山の幸を採った時、知らずにちびブラ団が拾ったようだ。
「さて、もう夕方だが明日のパリの朝食の為に市場に行ってくらあ〜。また何かの機会があればよろしくな」
 ガハハッと笑ったバムハットは馬車に乗って去っていった。
「美味しかったし、楽しかったよ〜」
 冒険者達はちびブラ団と別れの挨拶をする。
 送ってくれるというベリムートの父親が御者をする馬車に乗り、冒険者達はギルドに向かうのであった。