忍者部隊強襲 〜トレランツ運送社〜
|
■ショートシナリオ
担当:天田洋介
対応レベル:11〜lv
難易度:やや易
成功報酬:5 G 47 C
参加人数:8人
サポート参加人数:5人
冒険期間:11月05日〜11月12日
リプレイ公開日:2007年11月13日
|
●オープニング
パリから北西、セーヌ川を下ってゆくと『ルーアン』がある。セーヌ川が繋ぐパリと港町ルアーブルの間に位置する大きな町だ。
セーヌ川を使っての輸送により、商業が発展し、同時に工業の発達も目覚ましい。
ルーアンに拠点を置く『トレランツ運送社』もそれらを担う中堅どころの海運会社である。新鮮な食料や加工品、貴重な品などを運ぶのが生業だ。
トレランツ運送社の女社長『カルメン』と対立するグラシュー海運の女社長『シャラーノ』。
二人の戦いは単なる海運業者同士の争いから、すでに大きなものに変化していた。
カルメン社長が冒険者の力を借りて収集した情報は、海運業者シャラーノと武器商人メテオスの武装の予感にまで繋がる。
カルメン社長はすでにヴェルナー領主ラルフと接触し、シャラーノ等の領内活動を禁止させていた。ただ、ヴェルナー領はノルマン王国の一部にしか過ぎず、現実にはセーヌ川を境にして隣接するフレデリック領でグラシュー海運はのうのうと存在している。
ヴェルナー領のラルフ・ヴェルナー領主と、フレデリック領のフレデリック・ゼルマ領主は牽制しあう仲である。友好的な領主間ならば交渉もあり得るが、現状では無理な状況だ。
セーヌ川は不可侵領域である為、例えグラシュー海運の帆船がトレランツ運送社の目の前を航行しても入港しない限り、捕らえることはできなかった。
「こしゃくなカルメン‥‥。そしてゲドゥルもなにゆえにわたくしを排除するのか」
トレランツ運送社の敵であるシャラーノは、グラシュー海運の社長室で爪の手入れをさせていた。男性美形秘書の二人に両手の指を。
「いつまでもわたしくが後手に回ると思っているのかしら‥‥。そう思いますでしょ? メテオス様」
シャラーノは壁に飾られたメテオスの肖像画に話しかける。
「ジャパンにいる面白い者達をスカウトしましたわ。まずは実力をはかる為にも‥‥」
シャラーノは爪の手入れの終わった右手でテーブルに置かれたナイフの刃先を摘んだ。そしてメテオス横の壁に貼られた地図に投げる。
「もう、目障りすぎ。お遊びはここまで。いらなくてよ」
シャラーノが投げたナイフはヴェルナー領のルーアンに突き刺さる。
「二人の命を、これからの未来に捧げましょう」
シャラーノは高笑いが社長室内に響き渡った。
「ゲドゥル、どうかしたのかい?」
トレランツ運送社の社長室にはカルメン社長とゲドゥル秘書がいた。ゲドゥル秘書が変な声をあげたので、カルメン社長が訊ねたのである。
「急に背筋が寒くなったのです。なんでもありませんので」
「風邪でもひいたのかい? 今は無理しなくてもいい時期だからね。明日から何日か休んでも構わないよ」
珍しく優しいカルメン社長に驚きながらも、ゲドゥル秘書は休暇を辞退する。そのまま夕方まで仕事を続けた。
仕事が終わった帰り際、一通のシフール便が社長室に届く。すぐにゲドゥル秘書は中身を確認した。
「カルメン社長、引っかかることが書いてあります」
ゲドゥル秘書は手紙の内容を話す。グラシュー海運に潜らせた船乗りからの情報であった。
手紙によるとグラシュー海運は、つい最近ジャパンから五名の助っ人を連れてきたのだという。一部の船乗りがその五人から戦闘の手ほどきを受けているとも書かれてあった。
「なんだろうねぇ? ジャパンの者ってのは」
「詳しくはわかりませんが‥‥、今一度冒険者達を呼んで対策を練られたらどうでしょうか? シャラーノとの戦いが膠着のまま続くとは思えませんし、何か嫌な予感がするのです」
「‥‥そうだね。あたしもこの間のメテオスとの会談後から嫌な予感がしているのさ。パリにいって頼んでおくれ」
ゲドゥル秘書はカルメン社長から許可を得る。さっそく明日出航の自社帆船を調べる。
「思い過ごしで済めばいいのですが‥‥」
帰り道のゲドゥル秘書は呟いた。
●リプレイ本文
●予感から真実
パリを出航する際、冒険者達は知り合いから様々な情報を得る。
シルフィリア・ユピオーク(eb3525)は国乃木から。十野間修(eb4840)はリンカからと。
「ジャパンからの刺客と言えば‥‥シノビだな」
そして黄桜喜八(eb5347)も自らと重ねながら呟いた。
二日目の昼頃、いつも直接ルーアンに入港するトレランツ運送社の帆船が停まった。冒険者達は小舟に乗せられる。
セーヌ川の畔にいたのはトレランツ運送社からの使者だ。
「本社で食事を運んできてくれた人だな」
「私も見覚えがあります」
エメラルド・シルフィユ(eb7983)とコルリス・フェネストラ(eb9459)は使者の顔に覚えがあって信用する。仲間も信用し、使者が用意していた馬車に乗り込んだ。
馬車はルーアン内の古びた建物内に入る。
「お待ちしてました」
現れたのはゲドゥル秘書である。
「これはどういうことでしょうか?」
馬車を下りた十野間修(eb4840)が挨拶より先に質問をした。
「わたしとカルメン社長の暗殺計画が発覚したのです。すべて用心の為です」
ゲドゥル秘書の言葉に冒険者達は驚くが、やはりという気持ちも持ち合わせた。
依頼が出た後に、潜入者からより詳しい連絡が入った。カルメン社長とゲドゥル秘書を暗殺する為に、忍者の刺客がルーアンに潜伏したと。
身の危険を感じたカルメン社長とゲドゥル秘書は昨日から本社に泊まっているという。今のところルーアン東部にあるセイレーンを閉じこめている倉庫の存在はグラシュー海運側にばれていない。
不安げな表情をしたゲドゥル秘書の説明は終わった。
「小耳に挟んだんだけど、風邪かもしれないんだって? 寒気なんてね、気合いで跳ね返せるんだよ。ダメだったら格安で診てあげるっ☆ あっ、ボクはエレンの警護でずっと倉庫だから社長によろしくいっておいてね」
エル・サーディミスト(ea1743)は薬草の風邪薬が入った小袋をゲドゥル秘書に渡す。倉庫の場所は知っているし、愛馬ヴィヴァーチェも連れてきたので問題はない。ここから移動すれば追跡される事もないはずだ。
「役に立つかわかりませんが、使って下さい」
ゲドゥル秘書は冒険者全員に夜闇の指輪を渡す。冒険者達は感謝して受け取り、それぞれに行動を開始した。
●エルフの商人
「そこはもう少しまからないかな? ここの数字を5にしてくれたら嬉しいね。そのかわり、新鮮なカキを一箱サービスするからね」
「その条件はねぇ〜。う〜ん。7ならどうです?」
一人で本社を訪れたカンター・フスク(ea5283)は社員と交渉をしていた。もっとも見せかけの嘘商談である。
場所は玄関口近くの廊下がよく見渡せる解放された一室だ。来客をチェックするには絶好のポイントである。
(「今のところは怪しいそうな者はいないな」)
カンターの座る場所は受付カウンターもよく見えた。怪しい客が来た時用に受付嬢と合図も決めてある。
倉庫に向かうのは控えるつもりのカンターであった。行かない訳ではなく、回数を最低限にすることで追跡されるのを防ぐべきだと考えたのだ。それに考えていたより来客は多い。会社の終わった時間にゲドゥル秘書が用意してくれた宿に行き、深夜にでも倉庫に向かった方がよさそうである。
愛犬のブラーチャは近くの窓の外で待機させてある。見張りもしてくれるだろうし、叫べば駆け寄ってくるだろう。
会社の空気となって見張り続けるカンターであった。
●新人男性秘書
「カルメン社長のこと、よろしくお願いしますね」
ゲドゥル秘書が隣に机に座るマクシーム・ボスホロフ(eb7876)に小声で話しかけた。秘書見習いを演じてゲドゥル秘書の護衛をするのがマクシームの役目である。
本社を訪れる前にマクシームはゲドゥル秘書と相談をする。最初は社内の構造についての質問をして戦いやすい場所、守りに適した場所などを教えてもらった。それらの情報は仲間にも伝えてある。
もう一つ、ゲドゥル秘書に確認したのは身代わりの偽カルメン社長に対する態度だ。事が起きた時、影武者を本物の社長としてゲドゥル秘書には行動してもらいたいと。それが無理ならばカルメン社長を守りきるのは難しい。
ゲドゥル秘書はとにかくがんばると約束してくれる。
見えないように武器を忍ばせているマクシームだが、弓と矢は玄関口近くのある場所に隠してあった。矢はゲドゥル秘書が支給してくれたものだ。
もう少し時間が経てば、社長室での勤務に切り替わる。それからが護衛の本番といえた。
●黒髪の女社長と護衛の二人
「そうだねぇ。そこら辺は任せるよ。いつものようにやっておくれ」
社長室で部下に指示を出すカルメン社長はすでに本物ではなかった。シルフィリアが影武者役としてカルメン社長に変装していたのである。
社屋に入る時には十野間修を護衛に従えて騎士として訪れた。敵に見張られていたとしても、まず気づかれないはずだ。
偽カルメン社長の横では武装したエメラルドが鷹のような目で周囲に注意を向けていた。
すでにエメラルドはグラシュー海運側に面が割れている。ならば逆手にとってエメラルドが護衛する事で、本物のカルメン社長だと印象づける作戦である。
シルフィリアの髪型や化粧など、エメラルドが手を貸してそれなりに仕上がっている。立ち振る舞いや話し方などは、コルリス、十野間修が教えた。ちょっと身長は高いがシルエットなら瓜二つ。近寄られなければバレないはずだ。
ゲドゥル秘書と、秘書見習いを演じるマクシームがやってきて社長室には四人となる。社屋内であっても偽カルメン社長には社長室と隣の応接室だけの移動のみにする。わざと出かけて敵を誘う方法も考えられるが、相手をじらしてこちらに有利な状況に巻き込む方がやりやすい。
本物のカルメン社長は社屋地下の特別室に待避中である。かなり特殊な造りになっている部屋であり、大人しくしている限り安全のはずだ。社屋建築時からあるらしい。
「失礼します」
コルリスも護衛役として社長室に現れる。
先ほどまではベゾムで上空から社屋を監視をしていた。特に怪しい姿は見あたらなかったが、忍者というのはいろいろと厄介な技を使う。油断は禁物であった。
コルリスは護衛なので、いつでも戦えるように弓を身につけていた。矢は存分に使って欲しいとゲドゥル秘書から預かっている。愛馬アイラーヴァタも近くに待機させていた。
「エメラルドさん、わたしは主に窓側を受け持ちます」
「そうしてくれ。わたしは廊下付近に注意を向けよう」
コルリスは遠くを見通せる窓側を注意する。エメラルドは突然の戦闘が予想される狭い廊下側を担当した。
●索敵監視
「トシオ、変な臭いがあったら頼むな‥‥。アオイも頼むよな‥‥」
黄桜は庭の林の中をペットと一緒に歩く。社長室にはたくさんの仲間がいるので、庭を巡回していた。特に風上側を。
黄桜はストリーボグの旗を手にしている。風向きを少し前から予測してなびいてくれる優れものだ。
愛犬のトシオ以外にも、仲間の犬達が社屋を囲む庭に待機してくれているのはとても心強い。なぜなら姿を隠す方法はかなりあるが、臭いを消し去るのはそう簡単ではない。それは忍者にもいえる事である。湖心の術という音を消す技を忍者は修得出来るが、それも臭いでなら一発だ。
黄桜が風向きに注意するのは春花の術を恐れてである。強烈な眠気に誘われるこの術はかなり厄介だ。火災を起こす場合も風上からなので注意が必要である。
もっともわざと風下から侵入し、犬達の鼻が役に立ちにくくする方法もある。風下の方は十野間修が受け持っていた。
鐘の音が聞こえ、黄桜は目立つ庭の木に向かう。そこには十野間修が待っていた。
「まいっちまってよ‥‥。オヤジったら家に置いてゆくっていったらなきやまねぇんだよ‥‥」
「今回は水中での戦いが想定されないので、仕方ないのですが、寂しいのでしょうね」
黄桜はあらかじめ合い言葉を仲間に伝えてあった。オヤジとは黄桜のペットの水神亀甲龍の名前。もしも父親の意味で相手が答えたのなら、それは仲間に化けた偽物だ。十野間修の答えは合格である。
「他のペット達もちゃんと監視しています。わたしは明日、セーヌ川を見に行こうと思っているのですが」
十野間修のいったセーヌ川とはセイレーンがいる倉庫の事である。
二日目から三日目の朝にかけて、怪しい出来事は何も起こらなかった。
●セイレーンとの会話
「何かあればわたしが影縛と沈黙で対処しましょう」
十野間修の言葉を聞いたエルは、セイレーンのエレンがいる部屋に入った。そしてエレンの口を覆っていたすべてを取り除く。
カンターを通じて仲間には許可を得ていた。十野間修の力を借りて直接会話をする事も。いざとなれば魅了が解けるまで攻撃されても構わない覚悟である。
「魅了は使わないでね。そうなると、もう二度と仲間の賛成をもらえないかも知れないし」
エレンはエルを見つめる。
「こうして直接話すのは初めてだね。改めてよろしくね、エレン」
「何‥‥がしたいのだ。お前は?」
「まずはお友だちになりたいかな」
「どこか‥‥おかしいんじゃないのか? お前達の同胞を殺した事もあるわたしと友だちだと?」
しばらく押し問答に近い会話が続いた。しかしだんだんと他の話題にも移ってゆく。
「海中での生活かぁ〜。ボクもセイレーンだったら一緒に遊べるのにな」
「そんなにいいものではない‥‥。地上よりマシだがな」
「あのさ、虫のいいお願いっていうのは解ってるんだけど。シャラーノと手を切ってもらえないかな。それと、できれば‥酷いことをした人間も、許してください」
「そんな事、出来ないのはわかっているだろう?」
「でも、このままだとキミを帰せないよ‥‥。お姉さんのエレナの元に帰してあげたくても‥‥」
エルが涙目で訴えると、エレンは黙り込んだ。
●敵襲
三日目、四日目も何事もなく終わり、五日目になる。
事が起きたのは、昼の最中であった。
最初の襲撃は正面の玄関口。受付嬢の悲鳴が響くが、すぐに弱々しくなる。眠らされたとカンターは気づく。
「ブラーチャ!」
カンターが愛犬の名を叫び、そして隠してあったレイピアを手にとって駆けた。
廊下を駆け抜けようとした敵二人の進路をカンターは塞ぐ。
嘘商談の相手をしていた社員も斧を手にして参戦してくれた。彼は事務ではなく普段は船乗りをしている者だ。荒事にも慣れている。
2対2の狭い廊下での攻防が始まった。
カンターは攻撃を仕掛けるが、なかなか当たらない。とにかく避けるのがうまい敵であった。
犬のブラーチャは庭にいる冒険者のところまで走っていって吠える。
庭では黄桜と十野間修が待機していた。カンターの応援に駆けつけるか瞬時の判断を迫られた時、青空にいつかの点を見つける。
大凧であった。
黄桜が大ガマの術を唱え、煙が沸き上がる。煙の中からガマの助が現れた。
「これは!」
コルリスも社長室の窓辺で大凧を発見する。すぐさま取りだした弓で狙いを定めて矢を放つ。
十野間修は目測で距離を測り、大凧に乗る敵に向かってシャドウバインディングを唱える。
マクシームはゲドゥル秘書を一旦エメラルドに任せ、弓と矢を取りに行く。入り口近くではカンターと船乗りが戦っていたがどうやら優勢のようである。
「任せた!」
マクシームは二人に声をかけて社長室に戻る。長弓を構え、まだ空を飛ぶ大凧や地上に落下した敵に目がけて矢を放つ。
二人で乗っているのか、大凧から離れて滑空してくる敵もいる。黄桜がいっていたむざさびの術であろう。
「退路は確保されているな」
「そうね。平気よ」
エメラルドは逃げ道が塞がれていないか確認した上で、シルフィリアと行動を起こした。
偽カルメン社長のシルフィリアはわざと窓際でシルエットを見せ、自分がいる事をアピールする。そしてエメラルドは急いで隠す演技をした。
ここは囮として敵を引きつけようと考えたのだ。
冒険者達の遠距離攻撃はすさまじい。一部のみ庭への着地を許したものの、建物には近寄らせず、空中の大凧を次々と落としてゆく。
コルリス、マクシームは窓から庭に出て十野間修と合流し、庭に下りた敵と対峙する。エメラルドはそのまま社長室内で偽カルメン社長の警護を続けた。
その時、黄桜だけは庭の別方向から侵入しようとした敵と接触していた。
「トシオ、よくやったな‥‥。次はオイラとガマの助の番だ‥‥」
黄桜は愛犬トシオが発見した忍者に向かってガマの助で攻撃を仕掛ける。すると敵も大ガマを出して対抗してきた。
トレランツ運送社の庭で巨大なガマ同士の肉弾戦が始まった。
水掻きのついた前足が交差し、巨大なガマの身体が弾き飛ぶ。拮抗した戦いが続き、お互いのガマが力尽きようとした時、どこからか大きな笛の音が響いた。
黄桜と戦っていた敵は退く。
「あの身のこなし‥‥ホンモノのシノビだな‥‥」
黄桜は下っ端ではなくジャパンから来た忍者だと手応えで確認した。
笛の音ですべての敵は引き上げてゆく。戦いの名残として、庭にたくさんの壊れた大凧の残骸が転がっていた。
倒した敵は全部で七人。顔を覆っていた布をとるが、どうみても東洋の者ではない。ジャパンから来た本物の忍者は生き残って帰ったと冒険者達は考えた。
「社長室の場所は変えないと‥‥。特に空中からの敵に備えて弓が扱える者達をすぐにでも集めて、訓練された犬も用意しなければ‥‥」
腰が抜けて椅子に座り込みながらも、ゲドゥル秘書は社長室で状況を分析していた。
●パリへ
「指輪は使わずじまいだったようだけどもらっておくれ。何か役に立つだろうさ」
六日目の朝、地下室から出てきたカルメン社長は冒険者達にお礼をいった。
「それにしても暗殺とは‥‥。領主様にも相談しておくよ。うちだけじゃ対処しきれないだろうし。う〜ん。やっぱり外の空気はいいねぇ〜。地下室なんかにずっといるとおかしくなっちまう」
カルメン社長は両腕をあげて背伸びをする。
冒険者達は本物のカルメン社長を護衛し、ヴェルナー城と本社を往復する。
午後になり用意された帆船に乗って、冒険者達は帰路についた。七日目の夕方には無事入港する。
「エレンのことだけど、結構喋ってくれるようになったかな。まだ人間のことは恨んでいるけど‥‥でもボクはあきらめないよ」
最後にエルが決意を述べた。倉庫に敵襲はなく、まだグラシュー海運側はセイレーンのいる場所を特定できていないようだ。
冒険者ギルドで報告をし終わると空は暗くなっていた。
星空の下、冒険者達はそれぞれの寝床へと帰ってゆくのだった。