副長は何処へ 〜ちびブラ団〜

■ショートシナリオ


担当:天田洋介

対応レベル:フリーlv

難易度:普通

成功報酬:0 G 78 C

参加人数:6人

サポート参加人数:2人

冒険期間:02月28日〜03月04日

リプレイ公開日:2008年03月06日

●オープニング

 ちびっ子ブランシュ騎士団。
 略してちびブラ団の仲良し四人組はパリの裏通りに入ってゆく。
 奥には小さな空き地があり、そこでは似顔絵の絵描きが木札を並べて商売をしていた。
 たくさんの子供達が集まり、裏通りとは思えない賑やかさである。
 似顔絵といっても注文されて絵描きが描く事は滅多になかった。置いてある木札にはパリで有名な人物が描かれてある。
 実は子供だけでなく、若めの男性、女性も購入する人気商品であった。
 もっとも大人には空き地ではなく、酒場などで売っているらしい。大人が買う高い似顔絵には綺麗な色がついていて、子供達の垂涎の的だ。
「お兄さん、どうしたんだ?」
 ちびブラ団の藍分隊長こと少年クヌットは、ため息をつく絵描きの男に声をかける。
「注文をされたんだが‥‥、いや何でもないよ。気にしないでおくれ」
 絵描きの男はクヌットに言いかけて止める。
「もしかしたら、手伝えるかもしれないよ〜」
 黒分隊長こと少年ベリムートも絵描きの男に近づく。橙分隊長こと少女コリル、灰分こと少年アウストも集まる。
「‥‥まあ、話すだけ話すか。実はね――」
 絵描きの男は悩みをダメモトでちびブラ団に語った。
 悩みとはやはり似顔絵についてである。
 ある人物の似顔絵を、ある婦人から注文された。だが絵描きの男は、その人物を観た事がない。
「ブランシュ騎士団黒分隊のエフォール副長。エフォール・ヴェルタルという人物なんだ。知っているかい?」
 絵描きの男の言葉に、ちびブラ団は八つの目をパチクリとさせる。
 知っている、会った事もあるとちびブラ団が伝えると、今度は絵描きの男が目をパチクリさせた。
「ラルフ黒分隊長は酒場にも出入りするので、見かけた事があるんだよ。ところがエフォール副長は滅多に酒場を訪れない。他の場所でもさっぱりだ‥‥。注文されたご婦人はエフォール副長をよく知っているそぶりだった。いい加減な絵では納得してくれそうもない‥‥」
「女の人が知っているのなら、エフォール副長を紹介してもらえば?」
 絵描きの男にアウストが質問する。
「忍ぶ恋らし‥‥、とにかく、大っぴらにはしたくないらしい。それでもせめて手元に似顔絵を置いておきたいらしいんだよ。だからそれは無理なんだ」
「そうなんだ〜。お兄さん、ちょっといってみよ」
 コリルが絵描きの男の腕を引っ張る。さすがに商売の途中で消える訳にはいかなかった。他の子供達がいなくなるまで待ち、それから絵描きの男はちびブラ団と一緒に王宮の門近くの詰め所に向かった。
「ありがと〜、門番のお兄さん」
 ちびブラ団は挨拶をして詰め所を後にする。エフォール副長を呼んでもらおうとしたがいなかった。外で物影に隠れていた絵描きの男はがっかりする。
「ここは冒険者に頼んだ方がいいよ」
 ベリムートが肩を落とす絵描きの男に提案した。
「冒険者ギルド‥‥? 頼んだ事はないけど、何とかしてくれるのかい?」
「なるよ〜。でも、お金かかるけど平気?」
「大丈夫、大丈夫。ものすご〜く、気前のいいご婦人でね。前金もたくさんもらったんだ。依頼金はどれくらいかかるんだい?」
「えっとね――」
 絵描きの男に訊ねられたベリムートは今までの経験から大体の金額を教えた。
「それぐらいなら余裕だ」
 絵描きの男は元気を取り戻した。
 ちびブラ団は絵描きの男を冒険者ギルドまで道案内するのであった。

●今回の参加者

 ea8341 壬護 蒼樹(32歳・♂・僧兵・ジャイアント・ジャパン)
 eb2949 アニエス・グラン・クリュ(20歳・♀・ナイト・人間・ノルマン王国)
 eb5231 中 丹(30歳・♂・武道家・河童・華仙教大国)
 ec2830 サーシャ・トール(18歳・♀・レンジャー・エルフ・ノルマン王国)
 ec4004 ルネ・クライン(26歳・♀・神聖騎士・人間・ノルマン王国)
 ec4540 ニコラ・ル・ヴァン(32歳・♂・バード・人間・フランク王国)

●サポート参加者

セレスト・グラン・クリュ(eb3537)/ 乱 雪華(eb5818

●リプレイ本文

●集合
「助かります。オレノといいます」
 路地裏の空き地で、依頼人の似顔絵描きオレノが冒険者達に挨拶をする。ちびブラ団の四人の姿もあった。
 依頼書の内容が改めててオレノの口から説明される。
「ご婦人の忍ぶ恋‥か」
 ルネ・クライン(ec4004)はオレノの言葉を繰り返すように呟く。
(「私にはいつそんな相手が現れるのかしら‥」)
 両手を合わせ、ルネは空を仰ぎ見た。
「似顔絵をかくのに副長さんを観察したいのか」
 サーシャ・トール(ec2830)はオレノの説明が一段落すると考えを巡らせる。探すにしてもエフォール副長は変装しているかも知れない。その点が一番の問題だ。
 サーシャは仲間に変装についてを振ってみる。
 アニエス・グラン・クリュ(eb2949)も変装について深く考えていた。もしかして酒場で目撃されないのは変装しているせいではないかと。
「酒場は他の方に任せますね。図書館、教会とかを回ろうかな。コリル君、一緒に来てくれるかな?」
「うん♪ でも、コリルちゃんって呼んでね〜」
 ニコラ・ル・ヴァン(ec4540)を見上げたコリルが微笑んだ。
「家族を演じたいのでルネさん、夫婦になって一緒に探してもらえませんか?」
「嫌」
 きっぱりとルネに断られたニコラが固まる。ニコラをコリルとフェアリーのプラティナが人差し指でつつく。
「あ、そういう意味じゃなくて、サーシャと一緒に探す約束をしていたの。見つかってから家族を演じて副長の気をひくのはいい考えね。その時は一緒にやるわね」
 ルネはニコラに説明すると、サーシャと目を合わせて頷き合う。我に返ったニコラはコリルと一緒に副長を探す事にした。
「クヌットさん、副長と一度会ってるはずなんですが、顔を覚えていないのでまた一緒に探してくれますか?」
「おー、一緒にいこうぜ。‥‥そうだ。肩車してくれる?」
 壬護蒼樹(ea8341)はさっそくクヌットを肩車してあげる。互いに意見が合い、一緒に行動する事に決まった。
「質問があります」
 アニエスはオレノに何故隠れて副長を観察したいのかを訊ねた。もしかしてエフォールがオレノを宮廷絵師として知っているのではないかと想像していたのだ。
 残念ながらそれは外れていた。逆に宮廷絵師ではないからこそ、頼まれたのかも知れない。
 絵の依頼人は自分がエフォール副長を慕っているという事実をも隠しておきたいという。それが守られる別の方法があるのならば隠れる必要はないとオレノはアニエスに告げた。
「難しいことはおいといて、副長はんの似顔絵ゲット大作戦や! そやな〜、アウストはん、一緒にいこか?」
「うん! 中丹さんと一緒だね」
 中丹(eb5231)はうさぎのうさ丹と遊んでいたアウストと探す事にする。
 アニエスは副長をよく知っているので単独行動だ。
 サーシャとルネにはベリムートが同行する。
 壬護とクヌット、ニコラとコリルのコンビは決まっている。
 他に細かい点を話し合い、五日間に渡るエフォール副長探しが始まった。

●アニエス
「乱さん、お話して下さってありがとうございます」
 アニエスは教えてくれた乱雪華にお礼をいうと酒場へと向かった。そしてポーム町のシスターアウラシアに手紙をしたためる。ラルフ黒分隊長の手助けになると考えた頼みを書き連ねた。
 もちろん主題となる副長の情報もたくさん教えてもらっていた。特に気に掛かったのはパリに流れる噂についてだ。過去の出来事によって、ラルフとエフォールが何者かに陥れられようとしているらしい。
 アニエスは王宮の門番詰め所へと向かい、副長宛の手紙を預けながら黒分隊隊員に訊ねる。隊員は一つずつ丁寧に答えてくれる。
「分隊長は現在ヴェルナー領においでのはずです。副長の特技ですか? 武術以外ですよね。そうですね、時々分隊長とチェスをしています。お酒は呑まれますが、酔った場面は見た事ありません。好きな食べ物までは知りませんね」
 話してくれた隊員にお礼をいってアニエスは立ち去る。副長の屋敷にも向かい、同じように手紙を預けて質問をする。
 夕方には仲間と集まって情報を共有した。様々な場所を訪れて副長を探すアニエスであった。

●壬護
「シーナさん、こんにちは〜」
「こんにちはなのです☆」
 壬護はクヌットと一緒に冒険者ギルドのシーナ嬢を訊ねる。そしてシーナにパリの食事処を教えてもらう。情報を得るとさっそく二人は向かった。
「すげー!」
 テーブルに並べられた料理にクヌットが目を見張る。必要経費としてある程度までは食事代もオレノが出してくれるという。限度を越えたら自腹だ。
「そう言えば知ってますか? ブランシュ騎士団を結婚させようと言う計画があるんですよ」
「一人もん、おおいからな」
「よくそんな言葉知っていますね」
「母ちゃんが近所のおばさんと話してたぞ」
 食事を頬張りながら壬護はクヌットとお話をする。そして周囲にも注意を配る。
 アニエスが描いた似顔絵を観たものの、壬護は副長を思い出せなかった。それならそれでと似顔絵を頼りに調べてゆく。変装をしてる事を考えて想像力を巡らせた。
 いくつもの店を渡り歩くうちに事件は起こった。
「そんなことあるもんか!」
 クヌットが隣りに座っていた酔っぱらい男の向こう臑をけっ飛ばしたのだ。
「このガキ! 何しやがる!」
 掴もうとする男の手をすり抜けて、クヌットが逃げた。壬護は、口の中のものを飲み込み、硬貨をテーブルに置くと追いかける。
 店の外に出ると男とその仲間が辺りをうろついていた。
「ん? あっ!」
 壬護は探していると後ろから服を引っ張られて気がつく。クヌットは道の隅でアニエスから借りたパラのマントで隠れていたようだ。
「よいしょ」
 壬護はクヌットを抱えると走りだす。そして安全な場所まで逃げると理由を聞いた。
 副長の悪口を酔っぱらい共がしていたのをクヌットは聞いたようだ。復興戦争当時、副長は旧王国軍を裏切ったのにラルフと仲が良かっただけで不問にしてもらったのだと。
「わけがあったんだよ‥‥きっと」
「うん。気にしないでいいよ」
 事情をよく知らない壬護であったが、涙目のクヌットをなぐさめるのであった。

●中丹
「かぱぱぱぱ!」
 パリの人目から隠された場所にある賭場。中丹はテーブルにかじりつき、目の色を変えていた。
 転がるサイコロ。一喜一憂する人々。中丹もその中の一人である。
「中丹さん、大丈夫かな? そう思うだろ? うさ丹も」
 アウストは賭場の片隅にあるカウンターでミルクを飲んでいた。賭場にいる人達は結構優しく、アウストに優しく声をかけたり、奢ってくれたりする。
 大声さえだせば中丹に聞こえる位置なので必要以上には警戒する必要はないが、アニエスから借りたパラのマントだけは忘れずにつけているアウストであった。
「それにしても来ないね」
 アウストは賭場の人々の顔を確認したが、副長は見あたらない。変装も疑ってみるが、どうも違う。
「気長にやるしかないよね‥‥。うさ丹」
 アウストはうさ丹を持ち上げて話しかけた。
「次来る、来るんや! うひょ〜、来たんや〜〜!!」
 中丹は賭け事に夢中のようだ。ビッカビッカと磨いたクチバシを輝かせている。
「ぎゃ〜、だ〜め〜や〜‥‥‥‥」
 勝ったり負けたりしている姿を心配して、アウストは中丹に近づく。
「アウストはん‥‥はっ?」
 袖を引っ張られて中丹は振り返る。
「こ、こんなことに夢中になっとる場合やなかった‥‥。すんまへんな、ありがとうや」
 中丹は一旦賭けるのを止めた。
「さて〜見つけたるんや! というても副長はんの顔、どないやったっけ‥‥。ま、アウストはんがいれば平気やな!」
 中丹は似顔絵を思いだしながら、アウストに副長の話しを聞いた。
 少しだけ賭けて追いだされないようにしながら、賭場を見張る中丹とアウストであった。

●ルネとサーシャ
「雪華がいうには副長も大変らしいのよね。それで調べ歩いているのかも知れないわ」
 ルネはベリムートと手を繋いで、サーシャの後ろを歩いていた。
「黒分隊に会いに行こう。出来れば毎日が良さそうだな」
 サーシャは振り返る。
 三人は王宮門の詰め所に出向いた。ちょうどアニエスと入れ違いになりながら、黒分隊隊員から話を聞いた。副長の特徴を聞いて、さらにどこにいるのかを訊ねる。
 副長は休暇中であるので居場所はわからない。ただ、緊急の事態に備えてパリにいるのは確かなようだ。
「つい最近、領地が襲われたこともあり、身辺の注意はなされているようでしたね。そうだ、思いだした! 馬の事をいってましたよ。戦いに備えて新しい馬が欲しいと。さっきの子には伝えなかったな。悪いことをした」
 隊員から教えてもらい、ルネ、サーシャ、ベリムートは詰め所を後にする。
「旧聖堂や教会、図書館、武芸の訓練場などを考えていたが、馬を扱う所を調べた方がよさそうだな」
 サーシャは考えを言葉にする。
「それがいいわね。直接会えないかも知れないけど、足取りは追えそうね」
 ルネが強く頷いた。
「アニエスちゃんにも教えてあげないと。ルネお姉ちゃん、サーシャお姉ちゃん、夕方にはみんな集まるんだよね?」
 ベリムートが心配そうな顔で二人を見上げる。
「そうよ、大丈夫。ベリムートは優しくていい子ね♪」
 ルネは屈むとベリムートを頭を撫でて抱きしめた。
 それから三人で馬を扱う商人を探した。たくさん馬を扱っている商人だけでなく、小さな所も探した。
 馬を欲しがるのはごく普通の事だ。副長の一番の特徴である赤毛だけではなかなか特定出来ない。変装の可能性もあるので、特によい馬を買おうとした人物に絞って探した。
 夕方の集合時に、三人は仲間に副長が馬を探しているのを知らせるのだった。

●ニコラ そして
 ニコラはコリルと一緒に副長の足取りを探したが無駄骨に終わっていた。
 四日目の夕方、コリルを家に送る帰り道にチャンスが訪れる。
「ラルフ黒分隊長、ああいうお馬さんに乗っていたよ〜」
「そうなんだ。立派な馬だね。‥‥分隊長クラスの人が乗る馬がああいう馬‥‥」
 コリルの視線の先にあった馬をニコラはよくよく眺める。
「この馬の持ち主は誰か教えてもらえる?」
 馬の見張りをしていた少年にニコラは訊ねる。少年は料理店の入り口の前で指を差した。
「エフォール副長だよ。髭とかつけてるけど」
 遠目だがコリルは断言する。一人食事をしているのがエフォール副長であると。
「これは大変だ。あの、誰か伝言頼める人いないかな?」
 ニコラは馬番の少年に頼み、交代の仲間を紹介してもらう。そして依頼人のオレノ宛ての伝言を頼んだ。夕方の今なら仲間が集まっている可能性も高い。
「なんとか時間稼ぎしないと‥‥。ルネさんがいれば」
「まずはルネお姉ちゃんが来ればいいのね。橙飛行分隊プラティナ隊員出番よ♪」
 コリルはカバンでおとなしくしていたプラティナを出す。
「ベリムートはわかるでしょ? ルネお姉ちゃんとサーシャお姉ちゃんも一緒にいるはずだから、見つけたら連れてきてね」
 コリルが手振り身振りでベリムートの事をプラティナに伝える。プラティナはコクコクと頷くと夕日の中を飛んでゆく。
 すると本当にプラティナはベリムート、ルネ、サーシャを連れてきた。
 コリルを中心にしてニコラ、ルネが手を繋いで料理店へと入る。
 仲良し家族を演じようと考えていたが、コリルの事は副長に知られている。ここは親戚夫婦が姪を食事に連れてきた設定にする。
(「かわいいルネさんと夫婦の役ができるなんて役得だなぁ」)
 ニコラはニコニコと席に座る。ルネはすでに臨戦態勢に入っていた。
「まったく‥‥約束に遅れてくるなんて、どういうつもりよ」
 ルネの演技は真に迫っている。
「そんなこといわれても、男には男の事情があるんだ。細かい事いうなよな」
 ニコラも負けじと反撃した。
「紳士じゃないわ。‥‥そういえば、この前見かけたブランシュ騎士団のエフォール様はさすが騎士ね。とても感じがよかったわよ」
「なんだって! 副長なんて単なるアンポンタンじゃないか! あんな優男のどこがいいんだ!」
「何をいってるのよ。あなたなんかより、エフォール様の方が何倍もかっこいいんだからね!」
 ニコラとルネがいがみ合っていると副長が立ち去ろうとする。そこを見計らってコリルが動く。
「あー、エフォール副長だ〜」
 コリルが副長に挨拶をし、ニコラとルネはわざとらしく隣りの席を振り向く。
「本物! す、すみません!」
「あ、エフォール様! これはお見苦しいところを」
 ニコラとルネ、コリルは仲間が集まるまで時間稼ぎを行った。

 オレノを始めとして全員が料理店に集まる。
「エフォール様、実は――」
 アニエスがコリルに近づき、副長にお願いを始めた。是非自分とちびブラ団と一緒に絵のモデルになって欲しいと。
 従兄弟にブランシュ騎士団の知人がいるといっても信じてもらえずに困っていた。そこで署名入りの絵を送りたいとアニエスは頼んだ。
 ルネとニコラは間近で、他の者達は遠くで様子をうかがう。
「今日で私用は済み、明日の午前でよければ空いている。どこに行けばよいかな?」
 副長は快諾してくれた。
 明日の約束をし、その日は副長と別れるのだった。

●五日目
 パリが見渡せる高台に並び、エフォール副長を中心にしてちびブラ団とアニエスはオレノに絵を描いてもらう。他の冒険者達は少し離れて見学だ。
 もしもの事を考えてオレノは変装をしていた。副長は騎士姿である。
 オレノはゆっくりと副長を観察できて満足そうだ。
 副長は去り際にアニエスの刀に目を留める。よい刀を持っていると言葉を残し、馬に乗って立ち去った。
「ありがとうございます。これはせめてものお礼です」
 オレノは冒険者達にペンをプレゼントする。アニエスには今描いたスケッチ絵も渡される。
「勝ったら名馬が売っとる場所を教えてくれるって約束して賭けてたんや。いいとこまでいってたんやで〜」
 中丹は高台の太陽を見上げてクチバシをキラ〜ン☆とさせる。
「戦いの場で馬の善し悪しは確かに大切だからな」
 サーシャは数日間を思い返して頷いた。
「ちびブラ団の皆はさすがよね」
 ルネはちびブラ団一人一人の頭を撫でる。
「あ、あの‥‥僕はどうでしたか?」
「演技、とてもよかったわ」
 ニコラはルネに褒められて照れた。
「これ、アニエスちゃんにあげるね」
 ベリムートがアニエスに渡したのはラルフ黒分隊長の木札だ。ここだけの話しだけどあげるとベリムートは囁いた。
「おいしいお店を見つけられてよかったなあ。さあ、魔法の勉強をがんばらないと」
「それにしてもたくさん食べたぞ」
 壬護はクヌットに突っ込まれて照れ笑いをする。仲間もつられて笑った。
 オレノと別れると全員で冒険者ギルドに向かう。そして報告をしてすべてを終えるのであった。