好きだったひと 〜アーレアン〜

■ショートシナリオ


担当:天田洋介

対応レベル:6〜10lv

難易度:やや難

成功報酬:4 G 56 C

参加人数:6人

サポート参加人数:-人

冒険期間:05月04日〜05月11日

リプレイ公開日:2008年05月12日

●オープニング

「もしかしてアーレアンかい?」
 雨音が聞こえる夜の酒場。青年ウィザード冒険者アーレアンは、冒険者ギルド員ハンスと呑んでいると声をかけられる。
「ミローレア姉ちゃん?」
「やっぱ、アーレアンだ」
 椅子に座るアーレアンが見上げるように振り向いた先には女性が立っていた。
「アーレアンの姉貴?」
 ハンスは首を傾げる。アーレアンの姉の名はイレフール・コカントだ。ミローレアではないと記憶していたからだ。
「いや、ミローレア姉ちゃんは俺の同じ村の出身でさ。俺より早く村を出ていったんだよ。パリの酒場で再会できるとは思ってなかったよ」
 アーレアンは一度立ち上がると、空いている席から椅子を持ってくる。そして同じテーブルにつかせた。
 話題はアーレアンの昔話に及ぶ。よく泣いていて、いじめた奴からかばったものだとミローレアにいわれ、アーレアンは恥ずかしさに顔を赤くする。
 ミローレアは十六歳のアーレアンより五つほど年上のようだ。
「俺に魔法の才能があるのを気づかせてくれたのはミローレア姉ちゃんなんだよ。俺は精霊魔法のウィザードで、姉ちゃんは神聖魔法黒のクレリックなんだけどさ――」
 笑顔でアーレアンが話す。
 ハンスはアーレアンの態度で気がつく。ミローレアはアーレアンの初恋の相手だと。
「ミローレア姉ちゃんはパリで何しているんだい?」
「‥‥ちょっと立ち寄っただけさ。すぐに仲間と旅に出るんだ」
「仲間? ミローレア姉ちゃんも冒険者、やってるの?」
「いや、ちょっと違うね。もう時間のようだ。それじゃあ、機会があればまたね」
 ミローレアは名を呼ばれて出入り口へと小走りに去ってゆく。
 アーレアンとハンスはその姿を目で追う。
 ミローレアを呼んだのはガラの悪そうな連中である。ミローレアを含めた六人が酒場から出てゆく。
 外はまだ土砂降りだ。
 アーレアンは胸騒ぎを覚えるのだった。


 一ヶ月後、アーレアンは冒険者ギルドでいつものように掲示板に貼られた依頼書を眺めていた。
「これ‥‥、もしかして」
 似顔絵付きの依頼書にアーレアンの目が留まる。
 ある町を襲った六人の盗賊を倒して欲しいという内容であった。
 犯人とされる六名のうちの一人がミローレアにそっくりだ。
 被害の説明にズゥンビも現れたとある。
 アーレアンは昔、ミローレアがクリエイトアンデットを死んだウサギにかけて動かしたのを覚えている。みんなに気味悪がられるから内緒にしてねと口止めをされていた。
(「もしかして‥‥いや、違うはずだ。でも‥‥」)
 アーレアンはしばし依頼書の前で立ちつくした。我に返ったのはハンスに肩を叩かれた時であった。
「確かめる為に‥‥依頼に入るのか?」
 ハンスの言葉にアーレアンは頷いた。

●今回の参加者

 ea7900 諫早 似鳥(38歳・♀・忍者・パラ・ジャパン)
 ea8341 壬護 蒼樹(32歳・♂・僧兵・ジャイアント・ジャパン)
 eb5486 スラッシュ・ザ・スレイヤー(38歳・♂・ファイター・人間・ノルマン王国)
 eb9226 リスティア・レノン(23歳・♀・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 ec1752 リフィカ・レーヴェンフルス(47歳・♂・レンジャー・人間・フランク王国)
 ec4009 セタ(33歳・♂・カムイラメトク・パラ・蝦夷)

●リプレイ本文

●準備
「ちと、聞きてぇんだがよ」
 スラッシュ・ザ・スレイヤー(eb5486)は片方の肘をカウンターに乗せてギルド員のハンスに声をかけた。
 一日目の昼までは各々で準備を行う事になる。それぞれに散らばり、昼になったらギルドに集まって依頼人の馬車に乗って出発だ。
 スラッシュはアーレアンが語ったミローレアという黒教義クレリックが気になった。そこで冒険者ギルドに在籍していたかを調べようとしていたのだ。
 ハンスによれば、ミローレアは一度だけ冒険者として参加した記録がある。
「資料によれば、ミローレアと同じ依頼に参加し、それから現れなくなった冒険者もいるな。名前はラオーム。三十歳ぐらいの男だ」
 ハンスは引き続き調べておくとスラッシュに約束するのだった。

「これでよしと‥‥飲んじゃ駄目だからね。小紋太、真砂。他のペットが飲もうとしたときも止めるんだよ」
 諫早似鳥(ea7900)は鈴蘭を購入し、馬車内に固定した鍋の水に入れておいた。ペットの犬と鷹に注意を忘れない。後で矢に塗って毒矢にするつもりである。
 費用は後々購入を知った依頼人が出してくれる事となった。

 殆どの冒険者はギルド内で依頼人から話しを聞いていた。
「残り三つのお金の箱と同じ物は用意できませんか?」
 軋む椅子を気にしながら壬護蒼樹(ea8341)は依頼人である村長の代理に訊ねる。多くの仲間も同じ事を考えていた。
「空箱ならあと十ぐらいはあるはずだから、自由に使っておくれ」
 依頼人が答える。
「中身は他の入れ物に移した方がよさそうですね。箱には石か何かを詰めておいて‥‥」
 セタ(ec4009)は考えを言葉にした。
 隣りに座る壬護蒼樹とは対照的にセタは小柄であった。一見すると女性のようだが、セタは立派な男性である。着やせするのもそういう印象を持たれる理由の一つだ。
「アーレアンさん、新しい魔法を覚えたんですって」
「バーニングソードを覚えたんだ」
 リスティア・レノン(eb9226)は小声でアーレアンに話しかける。落ち込んだ様子はないのだが、いつもの弾けた様子はない。やはりミローレアの事が気になっているのだろうとリスティアは思った。
 諫早似鳥がテーブルに現れて座る。
「似鳥君、破魔矢を貸してくれてありがとう。すまないが、後で矢に毒も塗らせてもらうつもりだ」
「構わないよ」
 リフィカ・レーヴェンフルス(ec1752)は諫早似鳥に礼をいう。
「ここにいたか」
 スラッシュが現れて椅子にドカッと座る。そしてハンスから聞いた事を仲間に話した。
 準備が終わり、全員で外に停めてある馬車でパリを出発するのであった。

●アーレアン
 二日目の宵の口、一行は町に到着する。
 準備をするには遅い時間なので、町長屋敷の番人達と代わって見張ることにした。
 木箱のある屋敷奥倉庫内で監視、屋敷外での警戒、小部屋での仮眠をとる、のローテーションである。
 冒険者七名なので魔力回復が必要な者の休憩を優先させた。

「敵にミローレアがいるかははっきりしていないが、女が変わる理由は常に男絡みだ。ラオームって男が怪しいね」
 諫早似鳥はアーレアンと一緒の見張りの時に言い放った。厳しいようだが現実を受け止める所から始めなければならない。特に命のやり取りをしなければならない状況下で迷っている暇はないからだ。
「俺も、そう思う。ただ理由はあるはずなんだ。その人が盗賊になったからって、わたしも盗賊になりましたって人じゃないはずなんだよ」
 アーレアンなりに考えているのを知って、それ以上諫早似鳥はいわないことにした。

「アーレアン、ぶっちゃけミローレアだっけか? その女、お前の初恋の人だろ?」
 木箱の上に座るスラッシュが、倉庫内をうろつき回るアーレアンへにやりと笑う。
「えっと、そのだな。なんていうか‥‥」
「クックック、顔に出てんぜ」
 スラッシュは真っ赤な顔のアーレアンを見て肩を上下に揺らす。
「複雑な気持ちは分かるけどよ、酒場で会ったミローレアはどうだったんだ?」
「どうって‥‥、変わったようで変わらないようで」
「まあ、人間、時間で色々変わっちまうこともあるけどよ。心にピンと張った芯は簡単にゃ錆付かねぇもんだぜ」
「ミローレア姉ちゃんも?」
「俺にゃわからん。でもよ。黒でも白でもお前はミローレアを信じなきゃいけねぇ、そう思うぜ。ケツぁ俺らが持ってやっから正しいと思う事、テメェがカッコイイと思うようにやんな」
「ありがとう、スラッシュさん‥‥」
 スラッシュの言葉にアーレアンが強く拳を握った。

「その人がもし盗賊だったら、アーレアン君はどうするつもりなんだい?」
 小部屋で雑魚寝をする中、リフィカはアーレアンに訊ねる。寝付けなかった壬護蒼樹も耳を傾けていた。
「戦うよ。スラッシュさんとも、そんな話しをしたんだ。もし盗賊が酒場で見た人達だったら、相当の手練れに見えた。無傷で捕まえるとか悠長なことはいわないけど、止めは刺さないように出来ないかな?」
「わかった。私からもみんなに話しておこう」
 アーレアンにリフィカは頷く。
(「ミローレアって人、アーレアンさんの初恋の人っぽいな‥‥」)
 壬護蒼樹はちょっぴり涙ぐむ。もっとよい形の再会ならよかったのにと。
 しばらくして三人とも寝入る。何事もなく夜は過ぎ去り、三日目の朝が訪れた。

「昨日はよく眠れましたか」
 リスティアは井戸の近くに現れたアーレアンに声をかける。二人とも顔を洗いに来ていた。
「よく寝たよ。元気だぜ、ほら」
 アーレアンはひょいと井戸近くの岩で逆立ちをした。
「‥‥もしミローレアさんが、盗賊にいたらどうするんです?」
「みんな気にしてくれてるんだな。ありがとう、リスティアさん」
 アーレアンは戦う決意をリスティアに話した。
「そうですか。依頼の目的は盗まれた木箱のお金を取り戻すことですし」
 いつも笑顔のセタが現れる。大声のアーレアンの声は遠くにも届いていたようである。
「そうなんだ。よろしく頼むよ、セタさ‥‥!」
 アーレアンが逆立ちのバランスを崩して井戸へと落ちる。リスティアとセタが急いで井戸の底を覗き込んだ。
「ふー‥‥」
 アーレアンが井戸の縁に掴まっているのを確認してリスティアとセタは安心する。二人で腕を引っ張り、アーレアンを助けるのであった。

●用意
 三日目の日中は大急ぎで準備が行われる。
 諫早似鳥は、まず被害状況を調査する。侵入されたの壁等の損害や、どのような魔法が使用されたのかをだ。地形についても調べておく。森が近くにあった。
 スラッシュも前に襲われた時の事を町の人々に聞いて回る。ズゥンビが襲来し、町の自警団の注意が向いている間に盗賊共は地面の中から町長屋敷に侵入したようだ。
 箱の中身は壬護蒼樹が入れ換える。ダミーの十箱と合わせて石を詰めておいた。
 そして石造りの倉庫まで、町長屋敷の者達に大げさに運んでもらう。作戦を知るのは町長と冒険者のみだ。盗賊共のスパイが町に紛れ込んでいる可能性が高いからである。
 人々の目がダミーの箱運びに向いている間に、セタが本物の硬貨を入れた三箱を町長屋敷の何気ない部屋に移動させる。
 移動が終わると壬護蒼樹とセタは照明などの準備を行った。
 リスティアは未来予知をして仲間に伝えておく。襲ってくると思われるのはやはり深夜である。それから水たまりを重要そうな場所にわざと作っておいた。アーレアンが井戸から水運びをしてくれる。
 リフィカは町の外から来たと思われる人達に箱の移動の噂をわざと流した。貴族への租税として献上するという諫早似鳥がいっていた嘘を広げる話しもしておく。
 夕方には準備が整い、ダミーが置かれた倉庫周辺に冒険者達は潜んだ。
 諫早似鳥は愛犬小紋太を近くの森へと放つ。
 太陽が沈み、夜が訪れるのだった。

●襲撃
 真夜中、倉庫の扉の前にはいくつかのかがり火が焚かれていた。
 大錫杖を持ち、どしっと大地に両足を広げて壬護蒼樹は立つ。他の仲間はそれぞれの配置場所に待機する。
 一人一人仮眠をとる段取りになっていたが、誰もが起きていた。今夜来なかったとしても明日の昼に寝ればよい。町の自衛はかなりのものであり、昼間に襲うとは考えにくかった。
 唯一リフィカのみ、倉庫近くにはおらず、町で一番高い建物の屋根で待機していた。
 突然に鐘の音が鳴り、リフィカは振り向く。町で一番大きな門がある方角から叫び声が聞こえる。
「頼むぞ」
 建物を駆け下りたリフィカは愛馬アイテールに跨って急行する。そして近くの建物に登り、辺りを見回す。
(「あれか」)
 犬や狼のズゥンビが塀を駆け上がり、町の敷地に侵入していた。熊のズゥンビが門を攻撃している。自警団が対処していたが、苦労しているようだ。
 リフィカは即座に弓を構え、破魔矢をズゥンビに向けて放つ。
 かがり火は町の至る所にあった。仲間の用意のおかげである。
 ほとんどのズゥンビは破魔矢の一撃で動かなくなる。
(「問題は‥‥」)
 リフィカはズゥンビを使役したと思われる盗賊のリストにあった黒教義クレリックを探す。視認できる範囲では見つからない。
 まずはズゥンビの一掃を行うリフィカであった。

「えっ?」
 妙な音がして壬護蒼樹は足下に視線をやる。すると地面から頭を出して激しく呼吸をする男と目が合う。
「うぉぉぉっ!」
 壬護蒼樹が大錫杖を振り下ろすと、男は土の中に潜ってしまう。
「地面に潜っている盗賊を発見!」
 壬護蒼樹は腹の底から叫んだ。盗賊が使っているのはアースダイブである。
(「いた!」)
 諫早似鳥は倉庫の屋根の上から物影に隠れていた怪しい人物を発見する。一般の町民は夜間外出禁止であり、自警団の姿もしていなかった。装備からしてもウィザードに間違いない。
 諫早似鳥は弓をしならせ、毒矢を放つ。二発目の毒矢が敵の肩に命中する。
「みんな、頼んだぜ」
 アーレアンは仲間の武器にバーニングソードを付与すると外へと飛びだした。鍵が閉まる音が響く。
「ったく、モグラかっつうの」
 石床から突然に現れた二人目の盗賊に向けて、スラッシュは吐き捨てるように呟いた。
 襲ってきた盗賊にスラッシュは二刀流で挑む。弱ってからは盗賊の武器を絡め取った上で肩口に刃を振り下ろす。
 何歩か盗賊が退いて、スラッシュとにらみ合う形となった。
 新たに石床からあがってきた三人目の盗賊が木箱に近づく。小太刀が現れ、盗賊の親指と人差し指の先端がクルクルと宙に舞う。
「物を盗んではいけないと教えてもらわなかったのですか?」
 悲鳴を上げる盗賊の側にはセタが立っていた。直前までパラのマントで姿を消していたのである。
(「あんなところにも」)
 四人目の盗賊が現れたのを柱の影からリスティアは見つける。
(「ばれませんように」)
 スクロールを取りだしてリスティアは小さく唱える。盗賊が木箱を持ち上げた時、スリープの魔法を放った。ヘナヘナと床に倒れ込んだ盗賊は木箱の下敷きになる。
「入らせません!」
 壬護蒼樹はアーレアンに炎を付与してもらった大錫杖をやっと地上に現れた盗賊の前衛に構えた。
 諫早似鳥の毒矢による援護もあって盗賊を追いつめる。
「ここまでか‥‥」
 盗賊は身を盾にして壬護蒼樹に突っ込んだ。その間にウィザードが倉庫の壁に辿り着く。
 毒に犯されながらもウィザードは石造りの壁にウォールホールで穴を空けた。倉庫内部にいた仲間が脱出をはかる。
 もちろん冒険者達は追ったが、捕まえられたのはウィザードと盗賊の計二名であった。両名とも毒の苦しみで逃げ遅れたようである。
 リフィカがズゥンビを始末して倉庫にいる仲間の元に戻ってくる。結局、黒教義クレリックは姿を現さなかった。
 すぐに冒険者達は捕まえた二名を尋問する。このままだと毒で死に至ると伝えて。
 結果、盗賊共のアジトの場所が判明した。ぎりぎりのところで解毒剤が使われ、捕まえた二名の命は助かることとなる。
 犬の小紋太が戻ってくるが、とても機嫌がよい。どうやら主人の言いつけを守ったので褒めてもらいたいようだ。
 諫早似鳥が出した命令は『森で馬を見つけたら遠くへ逃がせ』であった。
 盗賊四名が歩いてアジトに戻っている姿を、諫早似鳥は想像した。

●初恋の人
 四日目に冒険者達は森の中を進んだ。リフィカを除いて全員が協力してくれた町の人と馬に二人乗りである。
 森の中は暗く、ランタンが使われる。
 夕方にはアジトに辿り着くが、もぬけの殻であった。しかし暖炉はまだ燻り、他にも直前まで人が居た気配が残っている。
 すぐさま冒険者達は周囲を捜索した。
「あの冒険者の中にアーレアンがいたのか。強くなったね」
 頭上から声が聞こえて、アーレアンは見上げる。崖の上に立っていたのはミローレアであった。
「ミローレア姉ちゃん、盗賊なんてダメだ!」
「いろいろあってね。せっかくまた会えたけど、捕まるわけにはいかないんだ。時間稼ぎをさせてもらうよ」
 ミローレアは木箱を蹴り落とす。途中で岩にぶつかり、辺り一面に硬貨がばらまかれた。
 アーレアンは崖を登ろうとするが、脆くてすぐに落ちてしまう。
 ミローレアは崖から姿を消した。
 音を聞いてかけつけた仲間にアーレアンは事情を話す。
 盗賊共を追いかけたい所だが、硬貨がばらまかれた一帯は砂地であった。ぼやぼやしていると埋まってしまいそうである。
 依頼の趣旨を考え、冒険者達は硬貨の回収を優先した。
 諫早似鳥は鷹を飛ばしたが、魔法攻撃で威嚇されたようで引き返してくる。
 一晩を野営で過ごし、翌日の五日目に町へと戻った。
 硬貨はほとんど回収できたようで、町長は喜んでいた。依頼は成功のようである。
 捕まえた盗賊二名は町でしばらく預かった上で後に官憲へ引き渡すという。何かわかったら冒険者ギルドに知らせてくれると町長は約束してくれた。
 六日目の朝、冒険者達は町の人の馬車で帰路につき、七日目の昼頃にパリへ到着した。

●パリ
 冒険者達は冒険者ギルドを訪れる。
 報告が終わると、全員でハンスの話しを聞いた。
「アーレアン、気をしっかりして聞いてくれよ。ラオームとミローレアは恋人同士だ。ミローレアが参加した依頼は成功したけど、後遺症が残る怪我をラオームはしたみたいで、それで冒険者を廃業したらしい。二人はパリに住んでいたが、今は別の土地で暮らしている。場所はわかったよ」
 ハンスがアーレアンにメモを手渡す。
「ありがとう、ハンス。みんなにも依頼以外で世話かけちゃったみたいで‥‥。気持ち、とっても嬉しかったよ」
 アーレアンがテーブルを立ち上がるとギルドを後にする。その姿を冒険者とハンスは目で追うのだった。