完成に向けて 〜アロワイヨー〜

■ショートシナリオ


担当:天田洋介

対応レベル:フリーlv

難易度:普通

成功報酬:1 G 17 C

参加人数:6人

サポート参加人数:1人

冒険期間:05月06日〜05月16日

リプレイ公開日:2008年05月13日

●オープニング

 パリから北西、ヴェルナー領の北方に小さなトーマ・アロワイヨー領はあった。
 トーマ・アロワイヨー領主となった青年アロワイヨーにはまつりごとの他にもう一つ悩みがある。
 パリ近郊の森の集落で出会った娘ミラのことである。
 ミラは冒険者達のおかげで無事にアロワイヨー家の親戚であるバヴェット家の養女になれた。これで家柄について文句をいう者は少なくなるはずだ。
 バヴェット家の屋敷はトーマ・アロワイヨー領内ではなく、別の領内にある。ミラが移り住むとアロワイヨーと離ればなれになってしまう。そこで別荘宅がトーマ・アロワイヨー領内に用意される事となった。
 バヴェット夫人は昔からアロワイヨーの事を気に入っている。二人の結婚が決まるまで、当分の間別荘宅でミラと過ごすつもりのようである。


「もっと早くに来る予定だったのにすまないね」
「いえ、お忙しかったのですから仕方ありません。これといった催しもありませんでしたし、服も間に合いましたから」
 青年領主アロワイヨーと恋人ミラは馬車内で揺られる。
 気を利かせた執事は御者の横に座っていた。
 馬車の周囲には騎乗する護衛の騎士五名の姿がある。景色を観たいという事で、珍しく陸路でのパリ来訪であった。
 パリ城塞門を潜り抜け、以前注文したミラの服を受け取りに店へと立ち寄る。来るのが遅れた分だけ報酬を弾んでおく。
「今日、森の集落に向かうのは難しいね。先に冒険者ギルドに頼んでおこう。パリにいる間は、いろいろとあるし」
「それがいいわ。お礼もいいたいの」
 アロワイヨーにミラが同意する。
 全ての服を載せて馬車は冒険者ギルドに向かった。
 出入り口の扉を潜り抜けると、アロワイヨーとミラは一瞬で固まるように立ち止まる。
「バヴェット夫人‥‥、どうして?」
「おほほほ。驚かせようと思って、セーヌ川を船で上って先に来たのよ。アロちゃんの執事の話から、ここには必ず立ち寄ると思ったのよ。まんまと当たったようだわ」
 まんまる体型のバヴェット夫人が羽根の扇子を手に高笑いをした。
「あの‥‥実は、滞在中はパリ近郊の森の中にある集落で過ごそうと考えていたのですが」
「いいわ。わたくしも、そこでお世話になりましょう。アロちゃんとミラの出逢いの場所なのでしょ? ここは観ておきませんと」
 バヴェット夫人にアロワイヨーは面食らう。
 正直にいって森の集落の生活はすべてが質素だ。贅沢な暮らしに慣れたバヴェット夫人では耐えられないのではとアロワイヨーは考えた。
 言葉を選んでパリ市内での豪遊を勧めるが、バヴェット夫人は頑として聞かない。
「わかったわ。この服も着替えて貴族の身分を隠しておくし、贅沢なこともいわない。それでいいでしょ?」
 結局、バヴェット夫人に押し切られる事となる。
「ここまでいってるのだし‥‥」
「そうだね。連れて行こうか」
 ミラの一言でアロワイヨーも諦める。
「でもあれはあきらめないよ」
「ええ、完成させて。必ず」
 久しぶりにアロワイヨーが森の集落に向かうのには訳があった。
 約八ヶ月前、アロワイヨーは一人の力で小さな丸太小屋を作る。しかし組みあげただけで、出入り口は空けられず、暖炉や煙突もまだない。
 今回は最後まで仕上げるつもりでいたのだ。友人の石工職人シルヴァにも集落には来てもらう。本職としての助言をしてもらうが、作業は全部アロワイヨー一人でするつもりでいた。
 アロワイヨーはカウンターに出向いて依頼を出す。冒険者にミラとバヴェット夫人の世話をしてもらう為に。

●今回の参加者

 ea9927 リリー・ストーム(33歳・♀・ナイト・人間・ノルマン王国)
 eb3600 明王院 月与(20歳・♀・ファイター・人間・華仙教大国)
 eb6702 アーシャ・イクティノス(24歳・♀・ナイト・ハーフエルフ・イギリス王国)
 eb7706 リア・エンデ(23歳・♀・バード・エルフ・イギリス王国)
 eb8121 鳳 双樹(24歳・♀・侍・人間・ジャパン)
 ec1862 エフェリア・シドリ(18歳・♀・バード・人間・神聖ローマ帝国)

●サポート参加者

ジル・ストーム(ea6951

●リプレイ本文

●出発
「ミラとバヴェット夫人は集落で待っています」
 一日目の朝、パリの待ち合わせ場所にはアロワイヨーと執事の姿があった。
 近くには立派な馬車と護衛の騎士三名の姿がある。
「アロワイヨー様、リリー・ストームと申します」
 リリー・ストーム(ea9927)は優雅な動きでアロワイヨーに挨拶をする。
「よろしくお願いするね、リリーさん。好きな呼び方で構わないから。貴族の家柄のようだね。バヴェット夫人の事、フォローとかよろしくね」
 アロワイヨーは笑顔で挨拶に答える。
「あたいもがんばるからね。お姉ちゃん達からいろいろと聞いているよ」
「頼もしいな。丸太小屋を完成させている間、ミラとバヴェット夫人を頼むね」
 見上げる明王院月与(eb3600)にアロワイヨーが微笑んだ。
「エンデさん、お急ぎになるのですね」
「はう、いろいろと用意があるのですよ‥‥。ゴニョゴニョ」
 リア・エンデ(eb7706)はセブンリーグブーツに履き替えているとエフェリア・シドリ(ec1862)に声をかけられた。そっと耳打ちをし、計画を打ち明ける。
 リアはアロワイヨーに聞こえないように、次々と仲間に小声で話してゆく。
「了解だよぅ」
 月与も、にこぱっ、と笑顔でリアにウインクする。
(「これで仲間には話したのです。後は村の皆様とバヴェット様だけなのです〜」)
 リアはニヤリと笑うと立ち上がる。
「お先に失礼しますです〜♪」
 リアはぴゅ〜っと先に森の集落へ向かってしまった。
「バヴェット夫人のことなんですけど――」
 アーシャ・ペンドラゴン(eb6702)はアロワイヨーに訊ねる。前にダイエットを勧めるといっていたが、実際にはどうだったのかを。
 それとなくいった事はあるが、聞き流されてしまったと答えが返ってきた。どうやらバヴェット夫人は運動嫌いのようである。
「少しパリで用事がありますので。集落で会いましょう」
 アーシャはベゾムを用意するとパリの空に消えてゆく。
「その格好は‥‥」
 アロワイヨーは鳳双樹(eb8121)の艶姿に目を奪われる。
「これはジャパンの服なのです。雲母ちゃんの十二単に合わせてみました♪」
 クルリと一回転する双樹の近くをフェアリーの雲母が飛ぶ。
「へえ〜。理由があってミラがジャパンの服をあきらめたっていってたけど、こういうのもいいな」
「エフェリアさんとは下駄がおそろいなのです♪」
 アロワイヨーは双樹の言葉にエフェリアの足下に視線を移した。桜の花があしらわれた鼻緒がとてもきれいな下駄である。
「丸太小屋の仕上げ、応援します」
 エフェリアの真っ白なドレスもよく似合っていた。
「ありがとう。それじゃあ、そろそろ向かおうか」
 アロワイヨーに誘われ、四人の冒険者達は馬車へと乗り込んだ。
 三騎の騎士に守られながら、馬車は森の集落を目指すのだった。

●バヴェット夫人
 昼頃、集落に到着するとアロワイヨーはさっそく道具を担いで姿を消した。
 丸太小屋を完成に導く為である。一足先に集落に来ていたシルヴァもアロワイヨーについていった。
 バヴェット夫人とミラ用の丸太小屋に冒険者達はオジャマする。ミラと双樹は少し外で立ち話である。
「何人かは会ったような気がするのだけど‥‥?」
 バヴェット夫人は集まった冒険者の顔を眺めた。
「ま、いいわ。集落にいる間はアロちゃんの乳母ってことになっているの。貴族の身分は隠すのでよろしく頼みますわ」
 バヴェット夫人はきらびやかな服装から質素な服に着替えていた。もっともまん丸体型は変わるはずもない。
「バヴェット様、じかじかかくかくとゆ〜訳なのですよ〜。ご協力御願い致しますです〜」
 リアから丸太小屋完成祝賀会の計画がバヴェット夫人に伝えられる。既に集落の人達の協力は得られていた。
「面白そうだわ。やっぱりここは美味しそうな食事を並べるべきとは思うけど‥‥、食材はあるのかしら? パリから取り寄せるのも手だけど」
 バヴェット夫人が悩んでいるとリリーがアイデアを出す。
「周囲の森で様々な食材が採れるようですわ。それらを使って美味しい料理を数品追加なんてどうかしら?」
「それ、いいわねぇ」
 リリーの言葉にバヴェット夫人が眼を大きくあける。
「山菜とか、果実は採れるのかな?」
「大丈夫なのですよ〜」
 首を傾げる月与にリアが答える。少しだけだが、リアは植物の知識があった。
「散歩しながらのたべものを探すの、きっと楽しいのです」
 エフェリアは子猫を抱きながらコクリと頷く。
「実はこんなものを用意してきたのですよ。ジャジャ〜ン♪」
 アーシャはカゴに入ったクルミ入りのパンをみんなの前に出した。
「うふふ♪ パリで評判なのですよ〜。宣伝は私も手伝ったのですよ〜」
 一人ずつ、アーシャはパンを手渡した。
「あら、美味しいわ‥‥」
 バヴェット夫人が口を左手で押さえながら驚く。みんなの顔も笑顔になる。
「丸太小屋の完成を見定めながら、祝賀会用にまた買ってきますね。ベゾムなら半日もあれば往復できますので」
 好評な様子にアーシャは喜んだ。
「ただいまです」
 立ち話を終えた双樹とミラが小屋に入っていた。双樹が聞いた所、ミラにはまだまだ貴族社会の作法など覚える事がたくさんあるらしい。
 アーシャから二人もパンをもらい、顔をほころばせる。
 祝賀会についてはアロワイヨーだけでなくミラにも内緒だ。
 別の話題で丸太小屋はさらに盛り上がるのであった。

●丸太小屋
 二日目から本格的な丸太小屋の作業が始まる。
 ドアの部分を鋸で開ける作業は、みんなで見守った。
 アロワイヨーが力強く鋸を使い、最後にはドアがはまる出入り口が開けられる。
 リアと双樹は気を利かせて果実の汁を混ぜたお水を用意してきていた。それをミラに手渡してこの場に残るように勧める。夕方までには食材を用意しておくと付け加えて。
 結果、作業の丸太小屋にはアロワイヨーとミラが残った。シルヴァは暖炉用の煉瓦を手配する為に一旦森を出てゆく。
 丸太小屋は放置されていたので屋根の一部が壊れていた。アロワイヨーはそれらを直した上で煙突用の穴を空ける。
 ミラはがんばるアロワイヨーの姿を見守った。
 鋸で切る音、金槌で叩く音が森に響く。
 窓部分も空けられ、戸がはめられる。屋根の藁も新しいものに葺かれた。
 運ばれた煉瓦で暖炉が組みあげられてゆく。煙突もだ。
 こつこつと少しずつ、丸太小屋は完成に近づいていった。

●疲れ
「あ、ありがと‥‥。月与さん」
 夜、アロワイヨーはベットに横たわり、月与のマッサージを受けていた。体力がついたとはいえ、筋肉の疲労はどうしても溜まる。
 蒸した布で身体を温めておいてから揉み始める。大分強ばっているのがわかった。
「いい香りがするね」
「双樹お姉ちゃん、アーシャお姉ちゃんと一緒に花を摘んできたんだ。ほら、あの花だよ」
 花瓶に生けられた綺麗な花々が飾られてある。
「そうか‥‥。城内と、ここではやはり同じ花を観ても違うように感じる‥‥」
 アロワイヨーは次第に言葉数が少なくなり、やがて寝てしまった。

●食材取り
「にょろにょろさん、おいしかったのです」
 みんなで森を散策する中、エフェリアがバヴェット夫人にピクニックにいった時の事を話す。
「ウナギもパイ包みにすると美味しいのよね。イギリスの料理って聞くけど、結構美味しかったわ」
「ウナギはどうかわかりませんが、川魚は狙ってみますわ。そのために、ホラ」
 リリーが集落から借りてきた釣り竿をバヴェット夫人に見せる。
(「どうしたら運動を好きになってもらえるんだろ‥‥」)
 バヴェット夫人の後ろ姿を観ながらアーシャは考える。
「野苺みつけたよ」
 月与が草むらの奥で発見する。
「すごいのですよ〜。これで一品増えるのです〜」
 リアは赤い小さな実に目を輝かす。
「雲母ちゃん?」
 フェアリーが誘う方向に双樹は向かう。すると鮮やかに青く咲いたヒヤシンスを見つける。香水は即座に作れないので、花を飾って香りを楽しんでもらおうと考える双樹である。
 次々と山菜が見つかり、もってきたカゴに入れられてゆく。
「とってくるのです」
 エフェリアはすすっと木の上に登り、実をもぎる。
「はう〜! と、とれたのです♪」
 エフェリアが落とした実をリアは見事にキャッチした。
 バヴェット夫人もみんなと一緒に山菜を摘む。
(「これでいいのかも」)
 自発的に動いているバヴェット夫人を観てアーシャは頷く。問題は領内に戻ってからであるのだが。
 山菜の収穫を得てから、バヴェット夫人とリリーは川で釣り糸を垂らし始めた。
「わかりますわ〜。舞踏会とは、ただ踊りにいくだけではないですものね」
「そうなのよ。ミラがいても未だアロちゃんにちょっかいだしてくる女性は多いのよ」
 リリーとバヴェット夫人は貴族社会を話題にする。
「キラキラと木漏れ日がきれいなのです」
 エフェリアは森の景色のお絵かきを始める。川に落ちないように子猫をしっかりと膝に乗せておく。
「むにゃむゃ‥‥」
 リアは疲れたようで、ペットのファル君をお腹に乗せてお昼寝する。
「綺麗なお花の冠ね」
「双樹お姉ちゃんの花のブレスレットもいいね」
 双樹と月与は二人で花飾りなどを作ってみる。祝賀会にはまだ日があるので、試作である。
「どこかに‥‥もっと美味しそうなのが。あ、あの鳥‥‥」
 アーシャは、より珍しい山菜がないか森を駆けめぐった。最終的には野鳥を見つけて、お肉をゲットする。
 少しは分けるがアロワイヨーの為に獲ったお肉だと、バヴェット夫人に釘を刺しておくアーシャであった。

●完成
 九日目の夕方、アロワイヨーが丸太小屋に椅子を運び入れて、再び外に出る。
「やったな」
 シルヴァがアロワイヨーの背中を叩いた。
 森の中の小さな丸太小屋が出来上がる。もう未完成品ではない。いつでも住める立派な仕上がりであった。
「俺、少し用事があるから戻るな」
 シルヴァが気を利かせてその場を立ち去る。
「アロワイヨー、やったわね」
 ミラがアロワイヨーに近づいた。
「いろいろと思いだすな。ミラの気を引きたくてダイエットしたとか、いろいろな思い出が詰まっているんだよな。この森は」
 アロワイヨーの話しにミラがクスクスと笑う。
「何がおかしいんだ?」
「あのね。今だからいいますけど、別に痩せたからといってアロワイヨーの事を好きになったわけではないのよ。痩せたから必ずモテる道理はないでしょ?」
「そりゃそうだけど‥‥」
「でも、健康になってよかったわ。長く生きてね。できるだけ長く一緒に生きていきましょう」
 二人は寄り添いあって夕日が照らす丸太小屋の中に入る。
「あ、いたいた。アロちゃんとミラ、こっちに来てちょうだい」
 突然、窓から赤い日差しが消える。よく見ればまん丸なバヴェット夫人の顔が覗き込んでいた。
 バヴェット夫人に呼び出された二人は出来上がったばかりの丸太小屋から離れてゆく。
「今のうちなのです〜♪」
 リアが先頭になって冒険者達が丸太小屋の中に駆け込む。
 まずは簡単に掃除をする。シルヴァが用意してくれた薪で暖炉に火を点けた。天井からはランタンを垂らす。それから飾り付けである。
 エフェリアが持ってきたシルバーリースや、月与、双樹、アーシャが用意した花で飾られてゆく。リアが考えて、エフェリアに絵を描いてもらった垂れ幕も壁に掛けられる。
 さらに集落で用意した料理が冷めないように急いで運び入れる。スープ類は暖炉を利用して保温を心がけた。
「これは‥‥」
 戻ってきたアロワイヨーとミラは目を丸くする。後ろでバヴェット夫人はニコリと笑っていた。
「さあ、さあ、丸太小屋の完成祝賀会ですわ。どうぞお座りに‥‥というのも変ですわね。丸太小屋の持ち主はアロワイヨー様なのに」
 リリーの言葉にみんなから笑いが洩れる。
 太陽が完全に沈み、夜が訪れた。だが森の中にある丸太小屋は賑やかであった。
「自分で採った山菜だと美味しく感じるのはなぜでしょう」
 サラダを食べるバヴェット夫人の呟きを耳にしたアーシャの脳裏にランタンが灯る。
「そ、そうですよ。お住まいの近くにも森とかありませんか? ミラさんと散歩がてら探してみたらどうでしょう?」
「それもいいわね。たまにはそうしてみましょう」
 バヴェット夫人に運動してもらうきっかけを見つけてアーシャはほっとする。
「シュクレ堂のパンにジャムをつけても美味しいよ。冷たい井戸水で冷やしたのも、ほら」
 月与は野苺を口にほおばる。バヴェット夫人もマネをする。
「ご苦労さま、だったのです。これ、おいしいです」
「ほー、どれどれ。うむ、なかなかいけるな」
 エフェリアに勧められてシルヴァはももだんごを頬張る。
「一曲唄うのですよ〜♪」
 リアが竪琴を手に歌い始めた。
「みんな、唄うのです」
 ホワイトドレスを着たエフェリアが唄いながら踊る。ハンドベルと下駄の音を合わせてリズムを刻んだ。
「あたしも参加します〜♪」
 振り袖姿の双樹も前に出てしゃなりと歌を唄い始めた。みんなも口ずさんで歌の輪が広がった。
「あら♪」
 ミラがエンジェルドレス姿のアーシャに声をかけく。そして音楽に合わせて執事と一緒に踊り始める。
 料理を頂き、唄い、踊って祝賀会は続いた。
「これ、描いてみました。どうぞです」
 エフェリアがピクニックの時に描いた絵を見せ終わると、新たなものを取りだす。内緒で描いたアロワイヨーの丸太小屋の絵である。
「ありがとう。大切にさせてもらうよ」
 受け取ったアロワイヨーは嬉しそうであった。
「せっかくなのだし、この丸太小屋に名前をつけたらどうでしょ。ねっ、バヴェット様」
 リアが訊ねると、全員がバヴェット夫人に振り返る。
「よろしいのであれば、名前をつけて頂けますか?」
 アロワイヨーにいわれてバヴェット夫人は考え込む。
(「アロワイヨーさんとミラさんの愛の‥‥。きゃー、私ったら何を考えているのかしら」)
 アーシャは頭に浮かんだ名前に頬を赤らめた。
「そうね。『アロちゃんハウス』でどうかしら?」
 つけられた名前に全員がずっこけるが、それはそれでよしとした。
「名前も決まったことですし、どうぞ♪」
 リリーはアロワイヨーとミラにワインを勧めた。どんな効果のワインかは内緒にして。含み笑いをするリリーであった。
 しばらくしてお開きになる。最後にバヴェット夫人からみんなにお礼が手渡された。
 アロワイヨーとミラを残し、他のみんなは近くの集落へと戻る。残ろうとするバヴェット夫人をアーシャが掴まえて一緒に連れてゆく。

 翌日の十日目、冒険者達はバタンキュ〜のリアを担いで馬車に乗せてパリへと戻る。楽しい思い出をお土産にして。