羊皮紙集め 〜ちびブラ団〜

■ショートシナリオ


担当:天田洋介

対応レベル:フリーlv

難易度:普通

成功報酬:0 G 78 C

参加人数:6人

サポート参加人数:2人

冒険期間:05月14日〜05月19日

リプレイ公開日:2008年05月21日

●オープニング

「お父さん猫、見つからなかったね」
 ちびブラ団の橙分隊長こと少女コリルが呟く。
 ちびっ子ブランシュ騎士団の四人は、いつもの空き地でのんびりと過ごしていた。
 先頃、黒分隊長こと少年ベリムートのところで飼っているメス猫メルシアが妊娠したので父親猫を探したのだが、見つからず仕舞いであった。
 春の日差しは心地よく、すでに夏の到来を思わせる。
「ま、ちび猫は産まれるからさ。それでいいじゃん」
 藍分隊長オベルこと少年クヌットは草むらに寝転がって雲を眺める。
「どんなちび猫かな‥‥。出来れば飼いたいんだけどな‥‥。でもうちには鷹がいるしな‥‥」
 灰分隊長こと少年アウストは腕を組んで悩む。
「欲しければいつでもいってな。アウスト」
「うん。少し考えておくよ」
 ベリムートにアウストが答えた。
「いたーーーー!」
 突然、空き地に大声が響き渡る。
 寝ていたクヌットが驚いて飛び起きた。
「アウラシア?」
 駆け寄ってくる人物を見てコリルが首を傾げながら呟く。
 ドテッとアウラシアが転ぶ。驚いたちびブラ団は駆け寄った。
「大丈夫?」
「平気、平気です」
 ちびブラ団に支えられてアウラシアは立ち上がった。
 アウラシアは写字を主に行うシスターである。本名はニーナだが、ちびブラ団は彼女が記憶喪失中に使っていたアウラシアの名で呼んでいた。
「なんか、服、くたびれてない? まるで記憶喪失の時や、預言の火事の時みたいに」
 アウストがアウラシアの修道服を眺める。他のちびブラ団三名もいわれて確認する。確かにくたびれていた。
「実はですね――」
 アウラシアはちびブラ団に巻き込まれた災難についてを話す。
 写字生としてアウラシアはヴェルナー領のポーム町の教会で世話になっていた。ところがつい最近、デビルが町に襲来して大惨事が起こったのだという。
「でも天使様が舞い降りて、怪我していた人達を治してくれたんですよ〜。瓦礫の下から這いでた時に去ってゆくお姿を拝見しました」
 両手を合わせてアウラシアは祈る。
 ちびブラ団は珍しい光景だと黙って見ていた。修道服を着ていてもアウラシアはシスターとは思えないぐらいに普段から個性的である。
「生きていてよかったな」
 クヌットがアウラシアの腕をポンポンと軽く叩いた。
「はい。生きていてよかったです。本も無事だったんですよ」
「ほんとに本が好きなんだね。アウラシアは」
 アウラシアの笑顔にベリムートが感心する。
「そうそう、みなさんにもお手伝いしてもらいたい事があって探してたんです。羊皮紙を売っているお店を知りませんか?」
 アウラシアは思いだしたように、ちびブラ団に相談する。
 ポーム町では火事が起こり、かなりの建物が燃えてしまった。その中に本作り用の羊皮紙が保管されていた倉庫もあったのだ。
「市場や懇意のお店はすでに回ったのですが、とても足りないのです。どこかの羊飼いをしている方とか、知りませんかね」
 アウラシアの質問にちびブラ団の四人は首を横に振る。
「そうですか‥‥。冒険者に力を貸してもらえるように、先程ギルドへ依頼を出しました。その時、一緒に探してもらえますか?」
「もちろんだよ〜」
 アウラシアの頼みをちびブラ団は即答で受け入れる。
「よかった。みなさんといると安心できるんです」
 アウラシアは大人らしからぬ事を呟く。
 それからちびブラ団はアウラシアにポーム町であった出来事を聞かせてもらうのだった。

●今回の参加者

 ea1999 クリミナ・ロッソ(54歳・♀・クレリック・人間・神聖ローマ帝国)
 eb2949 アニエス・グラン・クリュ(20歳・♀・ナイト・人間・ノルマン王国)
 eb5231 中 丹(30歳・♂・武道家・河童・華仙教大国)
 ec2830 サーシャ・トール(18歳・♀・レンジャー・エルフ・ノルマン王国)
 ec4491 ラムセス・ミンス(18歳・♂・ジプシー・ジャイアント・エジプト)
 ec4938 ナガト・ユキ(24歳・♀・ウィザード・人間・イギリス王国)

●サポート参加者

壬護 蒼樹(ea8341)/ セレスト・グラン・クリュ(eb3537

●リプレイ本文

●集合
 朝早く、冒険者達はちびブラ団がよく遊んでいる空き地に集まる。すでに依頼人アウラシアとちびブラ団の四人が待っていた。
 停まっている馬車は羊皮紙を大量に運ぶのを想定した為か、とても大きなものだ。四頭立てであり、真面目そうな騎士が一人、御者台に座っている。
「お久しぶりだな、アウラシアさん。あちらは大変だったんだね」
「そうなんです。でも、こうして無事でしたし、早く図書館のポーム町として復活してもらいたくて羊皮紙集めを引き受けたんですよ」
 サーシャ・トール(ec2830)に声をかけられたアウラシアは元気いっぱいであった。
「あら、お衣装はどうなされたのですか? 大分くたびれているようですが」
「他のは全部燃えてしまいまして‥‥。事件に巻き込まれた時のこれしか今ないんで」
 それではとクリミナ・ロッソ(ea1999)はアウラシアにお古の修道服を提供する。アウラシアは馬車内で着替えてきた。
「サイズもぴったりです〜。ありがとうございます」
 喜んでいるアウラシアの姿にちびブラ団はアウラシアとクリミナの体型を見比べる。
「ああ、私昔はもう少しやせてたんですよ、うふふ」
 ベリムートの頭を撫でながらクリミナは笑う。
「初めましてデス」
 大きな影がちびブラ団に近づいた。
「ラムセス・ミンスデスよろしくデス」
「よろしくね〜」
 ニコニコと笑うジャイアントのラムセス・ミンス(ec4491)にちびブラ団は一人ずつ自己紹介をする。
「蒼樹のおじさんからプラティナさんに贈り物預かってきたデス」
 ラムセスはコリルに小さな狩衣を手渡そうとする。
「あの‥‥ごめんね。プラティナは女の子なの‥‥。これ男の子用たよね。せっかくもらっても着せてあげられなくてもったいないから」
「そうデスか‥‥」
 ラムセスは小さな服を手に涙目になる。
「お、ここにいたんですね。どうしたんですか?」
 挨拶に来た壬護蒼樹がラムセスとちびブラ団の様子に気がつく。
「わかりました。誰か必要な人に渡した方がいいですものね。そうそう、ラムセスはみんなとあまり変わらない歳なので仲良くしてあげてくださいね」
 壬護蒼樹の言葉にちびブラ団は驚く。ラムセスは二メートルを越えた身長なのにちびブラ団と二、三歳しか歳が違わなかった。
「中丹でおま〜。ちびブラ団のみんな、元気にしとったやろか」
 中丹(eb5231)がペットを連れてちびブラ団に近づいた。
「なんか光っているような」
 アウストが馴染みがあるはずのウサギのうさ丹を見つめる。
「ほい、ちょいとうさ丹変化したんやで。ビリッと来るから、悪戯せーへんようにな」
 中丹はすでにオーラテレパスでうさ丹にちびブラ団や仲間には電撃を控えるように言い聞かせてあった。
「これからもよろしくね〜。うさ丹♪」
 コリルがうさ丹の頭を撫でてあげる。
「クヌットさん、ちょっとご相談があるのです」
「ん? アニエスちゃん、なんの相談?」
 大きな馬車を見上げていたクヌットにアニエス・グラン・クリュ(eb2949)は父親へ会わせて欲しいと頼んだ。
「任しておけよ。父ちゃんに会わせればいいんだな」
 クヌットの父親は倉庫を使った商売をしていた。受けた注文や売れ筋の商品を仕入れては保管して欲しい人に売り渡す。手広い、何でも屋的問屋稼業である。
「オレもいくデス」
 ラムセスもクヌットの父親へ会いに行くこととなる。
「羊皮紙の寄り合いに聞けば、いろいろと教えてくれるかも知れないな」
「わたし末端のお店しか知らなくて‥‥。いわれてみれば、きっとありますよね」
 サーシャから相談されたアウラシアが頷く。寄り合いの場所がわからないのでサーシャとアウラシアは調べるところから始める事にした。
「ぼくもいい?」
「もちろんだ。一緒に行こうか。アウストくん」
 屈んでサーシャはアウストに返事をする。
 寄り合いについては場所がわかったのなら、全員で向かう約束となった。
「おいらは羊の牧場主んとこ行ってみよ」
「あ、待ってよ〜」
 うま丹とうさ丹を連れて歩き始める中丹をコリルが追いかける。
「私は冒険者ギルドをあたってみますわ。日々、たくさんの羊皮紙を使っているはずですもの」
「俺、ついてゆくよ〜」
 クリミナはベリムートと一緒に冒険者ギルドへ向かった。

●クヌットの父親
「羊皮紙か。扱ってはいるんだけど、今は在庫なしだな」
 クヌットに連れられてアニエスとラムセスは倉庫にいた。クヌットの父親が羊皮紙についていろいろと教えてくれる。
「今回は間に合わなくても継続的に必要なものでしょうから、アウラシアさんに相談しておきます」
「よろしくね。お得意さまが増えるのはこちらとしても願ったりだよ。上質のものに限るんだね」
 クヌットの父親はアニエスに頷いた。
「こっ、これは紙デスか?」
 緊張してずっと背筋を伸ばしっきりのラムセスが倉庫にあった品物を指さす。
「ああ、これは羊皮紙とは違う。ジャパンの紙だよ。月道経由だから、ものすごく高いものだよ」
 クヌットの父親の説明を聞いてラムセスは思いだす。壬護がジャパンの紙について話してたのを。
 その他に羊皮紙の寄り合いについて聞いてみたが、特につき合いはないという。羊皮紙流通の一切合切を寄り合いが仕切っている訳ではないらしい。
 お礼をいって三人は倉庫を後にした。

●寄り合い所
「羊皮紙の寄り合い所か。近所にあったような、なかったような」
 サーシャ、アウラシア、アウストの三人は羊皮紙の寄り合い所を探していた。小売店で聞いてみてもはっきりとしなかった。
「知っているのか?」
「ああ、あまり人の出入りはないけどね」
 十一軒目でサーシャはやっと場所を教えてもらい、メモをとる。
「よかったです〜」
 アウラシアがほっとした表情を浮かべる。
「羊皮紙作ってるところとか教えてくれるといいね」
 硬い表情だったアウストの顔もほぐれる。
「そういえばベリムートくんのところの猫に赤ちゃんが産まれるんだって?」
「うん。ぼく、ちび猫もらいたいけどどうしようか悩んでいるの」
 サーシャとアウストは歩きながら猫談義である。アウラシアは途中の小売店で手に入れた羊皮紙を手に喜んでいた。
 場所を確認すると、仲間との待ち合わせ場所へと戻る三人であった。

●羊
 中丹とコリルはペットを連れてパリの郊外に出る。途中で羊を飼っている農家を見つけて声をかけてみた。
「旦那はん、羊皮紙になりそうなもん、おらへん? 本作りに必要なんや」
「うちのは羊毛用の羊なんだよ。最後も役に立ってはもらうが‥‥、あまり歳をとった羊の皮は羊皮紙には向かないんだよね」
 中丹は農家の人の話しを聞いて、あらためて感じる。羊皮紙というのが動物の皮であるのを。深く考えるのはやめておき、依頼の目的を思いだす。
「ほな、どこに行けばあるんやろ?」
「そういう専門のとこ、いったらいいと思うけどね」
 農家の人と話す中丹の服の袖を、コリルが引っ張る。
「やっぱり、みんながいってた羊皮紙のよりあいにいこうよ。きっと教えてくれるよ〜」
「そやなあ〜。闇雲に探すんより、そっちの方が確実やろか‥‥」
 考えを切り替え、中丹とコリルはパリに戻る事にした。

●冒険者ギルド
「それでは職員の者に用意をさせますわ」
 冒険者ギルドマスター、フロランス・シュトルームが話し終わると個室を立ち去る。
 クリミナとベリムートは安堵のため息をつく。
 羊皮紙についてカウンターで質問をしていたら、たまたま通りがかったギルドマスターが話しを聞いてくれる事になったのだ。
 ギルドの羊皮紙を分けることは出来なかったが、仕入先は教えてもらった。
「上に立つ方は、やはりそれなりの威厳を持っていますね。それでは待ち合わせ場所に戻りましょうか?」
「そうしよう〜。ギルドマスターと会ったなんて、みんなに自慢できるぞ」
 クリミナとベリムートはギルド員から仕入先のリストをもらうと仲間の元へ戻るのであった。

●寄り合い
 二日目になり、全員で昨日のうちに判明した羊皮紙の寄り合い所へと向かった。
 流通を仕切っている様子はなく、困った事があった時に登録してあった会員同士で情報をやり取りするような組織であった。
 親切な職員が所属している羊皮紙の生産業者を教えてくれる。
 詳しい情報を得た上で、冒険者達は羊皮紙探しに邁進するのだった。

●図書館
 コンコルド城図書館にある個室にはアニエス、アウラシア、クヌットの姿があった。目の前にいるのは図書館管理人のニコル・リファレである。
「そういうことなのね」
 ニコルはアウラシアの本名であるニーナの身分証明を確かめて呟く。
「わかりました。少しですが、当座をしのげる程度はお譲りしますわ」
「あ、ありがとうございます」
 アウラシアは何度もお礼をいう。
「アウラシアがポーム町に戻ったら、すぐに本、作れそうだな‥‥」
「きっと、できると思います‥‥」
 アウラシアの姿を見てクヌットとアニエスは小声で囁く。
 相談が終わり、馬車が図書館近くに誘導された。
 クヌットとアニエスは羊皮紙を運ぶ作業を手伝う。
 その後、アニエスはちびブラ団との繋がりで知り合った王宮騎士団のディーリに手紙を出すのだった。

●羊皮紙
「楽ちんやで〜。『ピカピョン、10万ボルトや!』とかいいたくなるぐらいにご機嫌や〜♪」
 中丹はアニエスから借りた空飛ぶ絨緞で空中を漂っていた。他にサーシャ、クリミナ、コリル、ベリムート、アウストも乗っていて少々窮屈であったが、ゆっくり飛んでも歩くより断然に速かった。
「待ってくださいデス〜」
 空飛ぶ絨緞についてゆくのはラムセスである。やはりアニエスから借りたフライングブルームで空を舞っていた。
 しばらくして一行は目的の作業場に辿り着く。木造一階建ての作りだがとても天井の高い建物であった。
「ここで羊皮紙が作られているのか」
 サーシャは施設を眺める。大きな桶や一緒に浸す為の石灰などがたくさん目に付いた。
 アウラシアの話しによれば、ポーム町では羊皮紙の生産はほとんどしていないという。それが慢性的羊皮紙不足に繋がっているのかとサーシャは考えた。
「ここの羊皮紙はよさそうデスね」
 ラムセスは作業途中の木枠に張られた羊の皮を見つめた。同行できなかったアウラシアからラムセスはサンプルの羊皮紙を預かっていた。
 どれくらいの薄さや白さ、頑丈さが理想であるかを示す為のものである。完成品を見てみないとはっきりとはわからないが、質は良さそうだ。
「こちら、冒険者ギルドと羊皮紙寄り合いからの紹介状になりますわ」
 クリミナは施設の責任者に事情を話した。
「今ある在庫を見せようか。こっちに来てくれ」
 施設の責任者は一行を別の場所に連れてゆく。
「こりゃ、たくさんあるんや。あの馬車じゃ運べきれそうもないな」
 堆く積まれた羊皮紙を中丹が見上げた。まったく同じ動きでちびブラ団の三人も羊皮紙の山を眺める。
「すべてはむりデスね」
 ラムセスは背の高さを生かして、かなり上から羊皮紙全体を眺める。どう判断しても質の悪い羊皮紙もあった。
「こりゃ手厳しいね。ま、たくさん作ったその中から品質別に分けて使うのが普通なんだ。っていうと、かなり上質のものをご入り用なんだね?」
 施設の責任者が自分の頭に手を置きながら笑う。
「一番上質なものはどちらになるでしょう?」
 クリミナの質問に施設の責任者が小さな木箱を指さす。
「これやな」
 中丹が中に入っていた羊皮紙を何枚か取りだした。
「おお、薄いんや! それにツルツルや! みんなも触ってみてや」
 中丹が屈んでちびブラ団の三人に触らせた。
「これからも定期的に仕入れたいのだが、それは大丈夫だろうか? 今回は上質の羊皮紙だけだが、今後、日常用の本に使う分の普通の羊皮紙も手に入れたいとアウラシアという依頼人はいっていたのだが」
 サーシャは施設の責任者と交渉に入る。クリミナも参加して値段や枚数の駆け引きである。
 その間、ちびブラ団三人、ラムセス、中丹は施設内を回った。羊皮の選別から始まり、残った羊毛の処理。枠にはめて伸ばし、ヘラでなめらかにしたりといろいろな作業を見学する。
 交渉が終わり、上質な羊皮紙を手に入れる。
 数日に渡り、様々な羊皮紙職人のところで交渉を繰り返した。
 少ない場合はその場で購入して、ラムセスが背負う。多い場合は馬車で取りに来る約束をする。
 アニエス、アウラシア、クヌットは主にパリ市内を駆けめぐって羊皮紙を手に入れた。
「こんなにたくさん!」
 ディーリの使いの者が屋敷に保存していた羊皮紙を運んで来てくれる一幕もあった。
 ディーリからの返事の手紙をアニエスは受け取った。忙しくて届けにいけないが、ラルフ黒分隊長にゆかりがあるポーム町の為に役に立てて欲しいとしたためられてある。
 手紙の内容をアニエスはちびブラ団にも聞かせる。
「あの図書館にはいったしな。気になるぜ」
「アウラシアも大変だけどさ。ラルフ黒分隊長も大変なんだよな」
「住んでいる人もたいへんだよ〜。おうち、燃えちゃったんだから」
「図書館あってのポーム町だからね。こうやって羊皮紙をあつめれば少しは役に立っているんじゃないかな?」
 クヌット、ベリムート、コリル、アウストは一人が話す度にうんうんと頷く。
「ラルフ黒分隊長には世話になっているしな‥‥。こんなときぐらい力を貸したいもんな。アニエスちゃんもそうだろ?」
「え‥‥は、はい。そうです。なんたってラルフ黒分隊長は私の目標ですし」
 ベリムートに答えたアニエスはちょっとだけ慌てていた。

●そして
 五日目の夕方、全員がアウラシアが泊まる宿屋に集まった。
 宿屋の車庫にある馬車は未使用の羊皮紙でいっぱいである。
「ありがとうございます〜♪ これで注文の本を作ることができます。あと、クヌットさんのお父さんのところとか、いろいろと羊皮紙を手に入れる繋がりが出来ました〜。ポーム町の教会に戻ったから、さっそく司祭様に相談してみますね。いつも羊皮紙羊皮紙と頭を悩ませていましたから、二つ返事で購入決定のはずです〜」
 アウラシアは感謝の印として冒険者とちびブラ団にペンダントをプレゼントする。謝礼金も上乗せした。
 明日にもポーム町へアウラシアは帰るのだという。
 名残惜しみながら、冒険者ギルドとちびブラ団はアウラシアが泊まる宿から立ち去るのであった。