想いとは 〜アーレアン〜
|
■ショートシナリオ
担当:天田洋介
対応レベル:6〜10lv
難易度:やや難
成功報酬:4 G 18 C
参加人数:5人
サポート参加人数:3人
冒険期間:05月28日〜06月03日
リプレイ公開日:2008年06月04日
|
●オープニング
パリ冒険者ギルドは今日も賑やかであった。多くの冒険者が新たな依頼を探したり、報告をしに訪れている。
「アーレアンの奴、どうしてるかな?」
ギルド員ハンスはカウンターに座り、友人の青年冒険者アーレアンの事を考えていた。
この前の依頼でアーレアンは初恋の女性ミローレアと戦う立場になった。依頼に入る前からアーレアンは覚悟していたが、事実とわかるとやはりショックだったようだ。
ミローレアはどうやら簡単には治せない怪我をした恋人ラオームの為に盗賊をして、金を稼いでいるらしい。
ラオームとミローレアが住んでいる場所はハンスが突き止めて、アーレアンに伝えてあった。
アーレアンは十日ほど前、ラオームとミローレアが住む町に向かった。会えたところでどうするかわからないと呟いたアーレアンの姿が、まだハンスの頭にこびりついていた。
「やあ、ハンス」
「ん? おおっ!」
突然アーレアンが現れて、ハンスは椅子から転げ落ちそうになる。
「戻ってたのかって‥‥その隣りの人は?」
ハンスはアーレアンが肩を貸している男に視線を移す。
「この人がラオームさんだよ」
「ラオーム‥‥さん? 連れてきたんだ!」
ハンスは椅子から立ち上がる。そして気がついた。
ラオームの右足は膝から下が、ない。
アーレアンはラオームを静かにカウンターの椅子へ座らせた。
「アーレアンくんから聞きました。ミローレアの奴、そんな無茶をして金を稼いでいたなんて‥‥」
ラオームが話す。依頼遂行中の出来事であったが、ミローレアは未だラオームの右足が吹き飛んだのを自分のせいだと考えているようだ。
黒教義クレリックのミローレアだが、白教義の神聖魔法の中に足を再生出来る魔法があるのは知っていた。治してもらうための資金を貯めるとミローレアはいっていたようだ。
「たまに家を空けるのは、冒険者ギルドの依頼に参加しているものとばかり‥‥。まさか盗賊に‥‥」
ラオームはテーブルを見つめたまま、俯いたままだった。
「どうかミローレアを助けて下さい!」
ラオームの懇願にハンスは困る。冒険者達の活躍で金が戻ってきたとはいえ、ミローレアを含めた盗賊六名の罪が消えた訳ではない。それ以前にも盗賊行為をしているかも知れなかった。
「助けるといっても‥‥、罪を帳消しには出来ないし、犯罪人を遠くに逃がす手助けをしたら冒険者ギルドの沽券に関わる。冒険者に捕まえてもらうことで、これ以上罪を犯さないようにするぐらいしか出来ないですよ」
「わたしも元冒険者。わかっています。どうか罪なき人を殺めないうちに、ミローレアを捕まえて下さい。罪の償いが出来る今のうちに」
ハンスはラオームを見つめながらため息をついた。
「いいんだな? アーレアンも」
ハンスの問いにアーレアンが頷く。ここに来るまでに覚悟を決めてきたようだ。
この前の依頼人である町長から冒険者ギルドには手紙が届いてた。すでに捕まえられた盗賊二名の尋問結果である。
この前見つけた盗賊の隠れ家は一時的に用意されたもので、本拠地は別にあった。どうやらラオームの住む地域の隣町らしい。
「ミローレアさんを捕まえる事を第一にして、残る三人の盗賊も捕まえる依頼でよろしいですね?」
「はい」
ハンスは羊皮紙にペンを走らせて、依頼書を書き上げる。
「参加させてくれ。ハンス」
「アーレアン、お前‥‥」
「いいんだ。俺はミローレア姉ちゃんに、もう罪を重ねさせない。絶対に」
「そうか。それじゃあ、参加にしておくぞ」
アーレアンの名をハンスは参加者として依頼書に書き加えるのだった。
●リプレイ本文
●出発
「よいしょっと。こんなもんでしょうかね、アーレアンさん」
「だね。これぐらいでいいでしょ」
冒険者ギルド近くの空き地で壬護蒼樹(ea8341)とアーレアンは雑巾を手に馬車を眺める。依頼人のラオームが借りた馬車を、少しでも金持ちの持ち物らしくする為に磨いていたのだ。
「学者さん、もう着いたかな?」
「さすがに無理だと思いますよ。無理をすれば深夜には着くでしょうけど」
アーレアンが壬護蒼樹との会話で口にした学者さんとはリフィカ・レーヴェンフルス(ec1752)の事だ。
リフィカは作戦の為、今回捕まえる予定の盗賊四名がいると思われるガイ町に先行していた。
「ふー、まさか掃除をするとは思ってませんでしたよ」
ヒューゴ・メリクリウス(eb3916)が馬車の小さな窓からスルリと抜けだし、地面に着地する。
壬護蒼樹とアーレアンが外、ヒューゴは馬車内の担当であった。
「凄い身軽だね、ヒューゴさんは」
感心するアーレアンにヒューゴが笑顔で返す。
「さて、買い物は済んだ。あとはこいつを‥‥。小紋太、これも食べたりしちゃいけないからね。他のペットも注意してくれよ」
諫早似鳥(ea7900)は購入してきた乾燥葉を刻み、ハーブが詰められた袋の中に入れた。墨で斑点を描いた変装の愛犬に注意を忘れない。もう一つ、解毒剤入りの水も用意しておく。
「よい木箱が見つかった。これでいいだろう」
フランシス・マルデローロ(eb5266)はロバのビックリを連れて空き地に戻ってくる。空の木箱がロバの背中にくくりつけられてある。
「新たにかかった費用に関しては、出させて頂きますので」
木陰に座っていたラオームが杖を持って立ち上がろうとする。アーレアンは駆け寄って肩を貸す。
「砂はセーヌ川のどこかで拾ってゆこう。出発しようか」
アーレアンがラオームと一緒に馬車へ乗った。仲間も乗り込み、フランシスが御者台に座る。
一日目の昼頃、一行の馬車はパリの城塞門を潜り抜けるのだった。
●アーレアン
日が暮れる前に、冒険者達は野営の準備を整える。保存食で空腹を押さえ、焚き火をしながらテントで休む。
薪がはぜる音が、静かな森の外縁で鳴り続ける。
見張りとなったアーレアンと諫早似鳥はたわいもないお喋りをした。次第にミローレアの話題となる。
「ラオームさんみたいな恋人がいたって不思議じゃないしさ。でも、なんていうか‥‥わからないや」
「魔術の道に進もうと思った時と、初めて女にときめいた時の気持ち。彼女があんたの出発点なんだよ。汚したくないから、守りたい‥違う?」
アーレアンは諫早似鳥の言葉に焚き火を見つけて黙り込む。
「大丈夫。嫌いじゃないよ。そういうの」
諫早似鳥が蚊避けの野草を焚き火に放り込む。
「助けるよ‥‥。ミローレア姉ちゃんの心も一緒に」
小さい声ながらアーレアンの声には決意が込められていた。
●ガイ町
「何だ? お前は?」
「まーまー、酒奢るからさ。札当てのゲームかい? 私も混ぜてくれよ」
二日目、真夜中のガイ町酒場。リフィカは暮れなずむ頃から酒場を渡り歩いていた。わざと着衣を乱し、無精ひげを残したままだ。
ガラの悪い三人が遊ぶテーブルにリフィカは座った。しばらく賭け事に興じてから話しを切りだす。
「いい儲け話があったんだが、別の仕事を入れてまいったよ。お、札が組になったよ。ついてるな」
「なんだい? その儲け話ってのは?」
一人が興味を示すと残りの二人も視線をリフィカに向ける。食いついてきたとリフィカは心の中で呟くが、笑顔のまま話しを続けた。
パラの金細工師夫婦がパリに像を作りに行くのだが、護衛を探しているのだという。材料として砂金をたくさん持っていると吹聴する。
盗賊四名を誘いだすための嘘であり、金細工師も仲間が化ける予定である。
具体的にどの宿屋に泊まっているなどは話さなかった。目的以外の奴らがかかる場合もある。その時に違うと惚ける為だ。
「三、四人が理想の募集で、妻は身重だから女性も一人欲しいようなんだ。食事もついていると聞いた。漫然と馬車に乗ってパリに行くだけで、たんまりと報酬がもらえるなんて夢のようだろ? ま、私には関係ない話になってしまったけどね」
リフィカはわずかだが賭けで儲ける。それで酒代を払うと、別の酒場に向かうのであった。
●準備
二日目の夕方、馬車の一行はラオームの自宅があるサリオ町に到着する。ラオームの家にミローレアは戻っていなかった。
フランシスと諫早似鳥は馬車で宿屋に泊まり、すでにパラ夫婦を演じていた。諫早似鳥はラオームから布袋を借り、お腹に忍ばせて妊婦を装う。
サリオ町から行うのは疑い深い者達を信じさせる為である。宿屋というのは人を捜す時に誰もが考える場所だ。目的地の手前から偽装すれば、時間の関係からいっても完璧である。
壬護蒼樹とアーレアンは途中で下車し、何日か後に馬車が停まるであろう野営地近くで待機していた。アーレアンは確実に、壬護蒼樹も顔がばれているからだ。
ヒューゴは得意の隠密で近すぎず遠からず、パラ夫婦を護衛していた。隣りの部屋で外の様子に注意を向けている。
リフィカは酒場回りを終えて、そのままガイ町で仲間の到来を待っていた。
「誰も悪い人なんていなかった‥‥。ただ、少し不運な事があって、そう思うんです」
暗がりの中、壬護蒼樹はアーレアンに話しかけた。
二人が潜む場所として選んだのは、森の少しだけ奥に入った場所だ。仲間の馬車が停まるであろう野営予定地からは焚き火も見えないはずである。
アーレアンはテントの中で仰向けに寝ころび、顔だけ外に出していた。
「少しでも早くラオームさんの足を治したかったんだろうね。ミローレア姉ちゃんは」
木々の隙間から見える星空をアーレアンは見つめ続ける。
「あ、ごめんな。早く寝ないと交代出来ないもんな。お休み」
「お休みなさい」
アーレアンは気づいてテントに潜り込む。壬護蒼樹は焚き火を絶やさぬようにしながら見張りである。
(「これ以上罪を重ねさせないためにも、今はまだ、手心を加えるわけにはいかない、頑張ろう」)
壬護蒼樹は側にいる馬の穂群と猫の光樹を撫でる。そしてアーレアンが見上げていた夜空を仰ぐのであった。
●誘い
三日目の朝、パラ夫婦に化けたままフランシスと諫早似鳥は馬車で隣のガイ町へと出発した。
ヒューゴはセブンリーグブーツで追走する。得意の忍び歩きをして足音を消し、確認の為に馬車へ接近する時はインビジブルを使う。
昼頃、馬車はガイ町に到着する。
町の通りを走っていると御者のフランシスは多くの視線を感じる。リフィカの流した噂は浸透したようだ。
宿屋に泊まり、砂入りの木箱をわざと目立つように部屋へと運び込む。中身は砂金という触れ込みである。
しばらくして護衛をしたいという者が宿屋を訪ねてきた。部屋で諫早似鳥は木箱の番をし、宿屋の入り口近くでフランシスが対応する。
ヒューゴはいつでも出られるように身を潜めて待機していた。
(「あれは?)
宿屋を遠くから監視している者にヒューゴは気づく。リフィカである。リフィカもヒューゴに気づく。
「それでは明日の朝出発だ」
「砂金をたくさんだなんて危ないだろ。今からでも構わないぜ」
フランシスはある四人に護衛を頼んだ。依頼書の似顔絵はよい出来で、間違いなく目的の盗賊四名である。ミローレアの姿もあった。
「それには及ばない。それでは」
フランシスは宿屋の奥に戻る。無理に入ろうとする盗賊四名だが、宿屋の用心棒に阻まれてついてゆく事は出来ない。
「ここで無理に荒事にする必要はない。明日の‥‥寝静まった夜にでも奪おう」
盗賊共の会話をヒューゴとリフィカは耳にする。
盗賊共が立ち去った後で、リフィカとヒューゴはお互いに近づいた。
「引っかかったようだ」
「無理矢理奪おうとかいってましたね。強盗はいけません。強盗は」
リフィカとヒューゴは情報を交換する。互いに別の位置からパラ夫婦の監視と護衛をする事を確認して分かれるのだった。
●奇妙な旅
四日目の朝、馬車はパリを目指した。化けたパラ夫婦と四名の盗賊を乗せて。
離れた位置からヒューゴとリフィカがついてゆく。
「揺れると赤ちゃんに触るの。ゆっくり走ってねぇ、あなた☆」
「任せておけ。大事なお前とわしの二世だからな」
馬車の中から諫早似鳥が御者をするフランシスに話しかけた。馬車の中には諫早似鳥以外に四名の盗賊も座っている。
「女性がいて助かるわぁ」
諫早似鳥は犬の小紋太を間に挟んで真向かいに座るミローレアに話しかけた。
「そういってももらえると。失礼だが、指輪をしていないのは何故でしょう。ご主人もしていないようですが」
ほらきたと諫早似鳥は心の中で呟く。女性はこういう事に目ざとい。
「わしの部族では、指輪は子供が授かった時に交換するものなのだ。今、妻のお腹にいるのが最初の子供でな。指輪のデザインはもう決めてある。後でスケッチをお見せしましょう」
御者台のフランシスは間髪入れずに説明し、最後に大いに笑う。
「そうそう。この人ったら、あたしの作った食事じゃないとダメ♪ っていうの」
「結婚する前の食事が嘘のようだ。この世にこんなうまいものがあるなんて思わなかったよ」
「もう、あなたったら♪」
「うははははっ!」
パラ夫婦にあてつけられた盗賊の男三名はうんざりとした表情でそっぽを向く。ミローレアだけはどこか寂しげな表情で二人の会話を聞いていた。
時は過ぎ、夕暮れになって馬車は停まる。当初から予定していた野営地であった。
薪にする枝集めは男達に任せ、諫早似鳥は料理作りを始める。ミローレアが手伝うというので用意してあった材料を切ってもらう。
「大丈夫ですか?」
「平気よ。いつものことだから」
ミローレアが声をかける。諫早似鳥はつわりの演技をたまにしてみせる。
隙をみて、用意してきた下剤入りハーブを鍋に注ぎ込む。なにくわぬ顔で諫早似鳥は鍋をかき混ぜた。
食事が始まり、鮭入りスープが振る舞われる。盗賊四名には発泡酒が用意された。
フランシスがわざと発泡酒に手をつけようとすると、諫早似鳥に目が光る。
「あたしが我慢してるのに〜! あなたはあたしと同じでこれね」
諫早似鳥はフランシスに解毒剤入りの水を手渡す。毒に対抗できるアイテムも貸してあるので、まず平気なはずと諫早似鳥は計算していた。
●盗賊
夜も更け、パラ夫婦は馬車内で眠る。
雇われた盗賊四名は集まり、小声で相談を始めた。
「馬車ごと盗むのが一番楽だな」
「殺すのか?」
「縛っておけばそれでいい。その為にわざわざこの時間まで待ったんだ」
男三名が話す中、ミローレアは周囲に目を凝らす。
「妊婦がいるんだ。馬の一頭でもおいていかないか?」
「それは無理だ」
「だが‥‥」
「わかった。馬は駄目だが、食料は置いてゆこう」
ミローレアは一名の男と話し合う。
「どうした?」
「いや、気のせいだと思うが、ちょっと腹がな。大丈夫だ、やろう」
前衛一名が馬車の扉に手をかける。前衛二名がロープを手にして、中に入り込もうと待機する。ミローレアは周囲の気配に嫌なものを感じた。腹の調子もなんだかおかしい。
突然狼のような遠吠えが間近で響き渡った。突然、馬車の下から前衛一名に飛びかかる。犬の小紋太である。
「こんな犬‥‥なんだ? この輝きは!」
突然周囲が明るくなり、盗賊共は動きを止めた。ミローレアが見上げた夜空には真っ赤な火球が輝いていた。
「うおおおおっ!」
空飛ぶベゾムから飛び降りるように壬護蒼樹は着地する。すかさず大錫杖で一番大柄の盗賊が持つ剣を打ち砕く。
「魔法が使えないように‥‥」
リフィカは離れた木の上で弓を構える。アーレアンが放つ二度目のファイヤーボムの輝きを頼りにミローレアの腕の袖を狙う。少々の傷を負わせたが、馬車の側面にミローレアの両腕を縫いつけるのに成功する。
「投降しな!」
馬車の上に登った諫早似鳥はダーツで盗賊共の手足を狙う。
「不届き共めが!」
フランシスは諫早似鳥の隣りでスリングを使った。
盗賊共は下剤が効いてきて動きが鈍い。弱々しく、恰好の的であった。次々と降参の態度をとる。
「罠だったのか!」
一名のみ、一番大柄な男が暴れるのを止めなかった。壬護蒼樹が相手をして疲弊させてゆく。
「スマートじゃありませんよ。キミ達は」
いつの間にか大柄の男の側にいたヒューゴが急所を打ち抜く。仕留められた盗賊は地面へ膝をつき、倒れ込んだ。
「この人達、プロですからね。念入りに‥‥」
ヒューゴは絶対に逃げられないように、丁寧にロープで盗賊共を縛り上げてゆく。
ミローレアは縫い止められた腕を動かそうとするが、髪を掠めて顔のすぐ側に矢が刺さって諦める。いつでも撃ち抜けるという、リフィカの警告であった。
「ミローレア姉ちゃん‥‥」
アーレアンは縫い止められたままのミローレアに近づいた。
「もう止めよう。ラオームさんも、こんなの望んでいない。まだ取り返しはつくんだ」
アーレアンの目をミローレアは見ない。
「‥‥まっすぐに育ったね、アーレアン。ずっとそのままでいてね。だがわたしももうお終いさ」
か細い声でミローレアは呟くように答える。
大きな音が鳴り、その場の全員が振り向いた。
フランシスが諫早似鳥の手を借りて、木箱を馬車から放り投げたのだ。中に詰められていた砂が辺りに飛び散る。
「金に目が眩んでいるから、ただの砂が砂金にみえるのだ。他人から金を巻き上げて、ラオームが喜ぶとでも思ったのか?」
フランシスが諭すように話す。
「ミローレア姉ちゃん、どんな事になっても、ラオームさんは待っているっていってたよ」
アーレアンはミローレアの零れる涙を指先で拭ってあげた。
●そして
五日目の朝、アーレアンは壬護蒼樹にベゾムを借りてラオームへ会いにゆく。
報告をすると、ラオームは少ない言葉ながら感謝をした。
ミローレアを含む盗賊四名はラオームの住む町が含まれる領内の官憲に引き渡される。確実な事はいえないが、三、四年間、留置所で労働が科せられるらしい。
アーレアンは仲間と合流をし、六日目の夕方にはパリに到着した。
馬車を返し、冒険者ギルドでハンスに報告をする。
「これ、ラオームさんが冒険者だった頃に手に入れたものだって。自分にはもう意味のないものだから、みんなで分けてくれって」
アーレアンは預かってきた指輪を一人ずつ手渡した。
「今日の仕事はこれでお終いだ。アーレアン、呑みにいくか? みなさんもどうです?」
ハンスが全員に声をかける。
アーレアンの話が聞きたい冒険者は、酒場までつき合うのであった。