盗人退治 新人シーナの指南

■ショートシナリオ


担当:天田洋介

対応レベル:1〜5lv

難易度:易しい

成功報酬:0 G 52 C

参加人数:4人

サポート参加人数:1人

冒険期間:01月09日〜01月13日

リプレイ公開日:2007年01月16日

●オープニング

 冒険者ギルドの一角では二人の受付女性が休み時間をとっていた。
「さて、依頼を出しましょう。ある村に盗賊がよく出現して悪さをします。村人の代表が現れて冒険者ギルドに依頼を頼みました。村に被害を出さずに盗賊を退治して欲しいというのが依頼内容です。さて、あなたはどんな事をして依頼を解決しますか?」
「はい、はーい」
 新人の受付女性シーナが手をあげる。
「まずー持ち物の点検かな。今は冬ですから防寒着は必須ですね。これは必ず持っていった方がいいと思います。保存食もエチゴヤで日数分、手に入れておくと万全です〜。装備もきちんと動けるかを注意しながら装備したほうがいいです。魔法や技を覚えているか確認。あ、ノルマンならゲルマン語、覚えてないと話せないです。通訳してくれる人がたまたまいる場合もありますけどね」
 自信ありげにシーナは答えた。
「そうね。まずは持ち物点検。難しい依頼とかになったらいろいろ必要ですけど、それはまだ先の話しね」
 ベテランの受付女性ゾフィーは頷いた。
「馬とか驢馬がペットにいると、重たい物をいろいろ運べて便利ですね。シフールさんはいつも苦労してるみたいですよ」
 シーナは熟練者のようないい方をする。もちろん知っているというだけで実践した事は一度もない。
「あと、一番の問題はどんな事をするかね。具体的にどんなことをしたい?」
「盗賊をギタンギタンにやっつけたいです〜」
「確かにそうなんだけど、もう少し細かくいってくれない?」
「そうですねー。仲間の冒険者さん達と共同した方がよさそうですね。出来るだけ相談はした方がよいのです。わたしはウィザードなので仲間で剣が得意な人に戦ってもらっている間に、後方からドッカーンと魔法で攻撃したいですー。あ、もちろん前線で戦ってる仲間の支援もしますよ」
「戦闘はそうだけど、なぜ依頼に参加したかったのかな? あと、その前後はどうするの? 村にいく時とか、帰りとか、どうやって盗賊を誘き出すのとかね。別にこっちから攻めにいってもいいけど」
「まず『動機』は報酬目当てかな。金欠気味なので。『目的』は盗賊退治ですね。『手段』として盗賊をどうおびき寄せるかを考えますね。今回は偽の宝物を村人に用意してもらってうまく誘いだすのがいいかな? 『手段』の一部として支援したい人にどんな事してあげるかも考えた方がいいかも。もちろん戦闘においてどう行動したいか‥‥これは私の場合、さっきいった魔法でドッカーンですけど〜。ちゃんと戦う場所を考えて村に被害が出ないようにしないと」
 シーナは満面の笑みだ。
「あっ! 行き帰りはみんなと楽しく話したいな〜 決めゼリフとか考えたりして」
「何をしてるんだい?」
 男性のギルド員が二人の受付女性に声をかける。
「依頼を受けた冒険者が何を考えるかやってたんです。冒険ってどんな感じなんだろーって。わたし達受付も、冒険者の立場になってみれば、どんな情報を提供したら喜ばれるかわかるかなと思いまして」
 男性のギルド員は感心する。
「そういえば、この依頼がそんな感じのだったね」
 男性のギルド員は持っている依頼書を二人の受付女性に見せる。
 ある集落からの依頼であった。
 夏秋の間に貯蔵した食料を盗む集団がいて困っているという。集落に被害を出さず、退治して欲しいとあった。
 その他の情報としては、集団は若い連中らしい。子供も混じっていたとの集落の者の目撃談もある。盗まれた食料はそのまま、もしくは簡単な調理で食べられるものばかりらしい。挽いていない麦も大量に置かれていてたが、見向きもされていなかった。
「ちなみに猟師が多い集落みたいで食事は豪華みたいだぞ。特にお肉がすごいらしい」
「えー。それって、顔より大きい骨付きお肉でるかな〜。がぶりつきするの夢なんですぅ。わたし依頼入ろーかな。『動機』は肉です。にくぅ〜」
 男性のギルド員を見上げるシーナの瞳はキラキラしていた。
「そりゃ冒険者もわたし達もギルド員だけど、ダメでしょ。それは」
 ゾフィーが注意するとシーナは肩をすぼめるのだった。

●今回の参加者

 ea2113 セシル・ディフィール(28歳・♀・ウィザード・人間・ノルマン王国)
 eb8121 鳳 双樹(24歳・♀・侍・人間・ジャパン)
 eb9459 コルリス・フェネストラ(30歳・♀・ナイト・ハーフエルフ・フランク王国)
 ec0037 柊 冬霞(32歳・♀・クレリック・人間・ジャパン)

●サポート参加者

レア・クラウス(eb8226

●リプレイ本文

●到着
 星々の瞬きが激しかった。
 鳳双樹(eb8121)はレアに最近の上空では激しい風が吹いていると教えられていた。明日の夜は曇るし、きつい寒さであるともいっていた。
 セシル・ディフィール(ea2113)、柊冬霞(ec0037)、鳳の三人は真夜中に目的の集落に辿り着く。
「若い方、子供も雑じっている様ですから盗みから足を洗わせたいですね」
 セシルは意気込みを口にする。
「その通りです。いかなる理由があるにせよ、物を盗むという行為は悪い事です。正月早々で気がのりませんが、少々お説教が必要ですね」
 柊も白い息を漂わせながらやる気に溢れていた。
「もし説得を聞いてくれずに武器を構えてくるなら戦意をそぐ事を考えます。なるべく戦いは避けたいです」
 鳳は愛馬ハクトを撫でる。
「みなさんー」
 集落の入り口にコルリス・フェネストラ(eb9459)が手を振りながら現れた。セブンリーグブーツで先に訪れて前準備をしてくれていたのである。
「鳳双樹です。よろしくお願い致します」
 鳳に続き、みんながあらためて挨拶を行う。
「盗みに入る人の中に子供も混じっていたということは、孤児集団の可能性もありますので、退治とはいかなくても、盗みがなくなればいいかと思います」
 コルリスも意気込みを話す。コルリスは近づく途中でみんなの意気込みを聞いていたのだ。
「小屋を借りられるように頼んでおきました」
「食料庫はどこですか?」
「今日の所は集落の方々で見張りをするそうです。もう日が変わっているはず。朝からの忙しいはずなので早く寝ましょう」
 セシルの問いに笑顔で答えたコルリスはみんなを小屋へ案内した。小さいながら暖炉があり、毛布も用意されている。鳳は馬に載せていたみんなの重たい荷物を降ろして小屋に移す。冒険者達はすぐに寝たのだった。

●聞き込み
 二日目の朝になり、コルリスが昨日の成果をみんなに伝えた。
 盗まれた具体的な食料は薫製肉やチーズ、雪下に保存する野菜が殆どだ。昨日訊いた数人の証言では、はっきりとした盗人の数や住処はわからなかった。
 そこで集落の長に相談した所、盗人集団を見かけたすべての人達を集めてくれるそうだ。冒険者達は準備を整えると集会所を訪れる。
「子供が盗んでいると聞きましたが?」
「若い子ばかりだ。ちっこい子もおったで。わしが見たときは、そうさなあ、全部で10人ぐらいだったかの」
「あたいが見た時は15、6人はいたでよ。男ん子と女ん子半々ぐらいだったかなあ」
 セシルの訊ねに二人の女性が答えてくれた。コルリスと鳳も他の人に同じ様な質問をしたが、帰ってきた返事は似たようなものだった。
「盗人はどのような道を逃走したかわかりますか?」
「集落から北の森の方には逃げたんだがね。剥きだしの鍾乳洞があったりして複雑なんだわ。あの森は。猟師のわしらでも全部は把握できとらん」
 鳳は訊ね回るが具体的な住処を知る者は誰もいなかった。他の冒険者達も訊いたがやはり誰も知らない。
「そうやねえ。今んとこ酷い怪我人はおらん。せいぜい擦り傷程度じゃ。盗人達もそんな感じだと思うで」
 柊は集落の者と盗人がどのようなやり取りをしてきたかを訊ねた。
 話しを訊き終わり、冒険者だけで集まる。
「森に入って調べるか、それとも集落で待ち伏せのどちらかでしょう。私ははっきりとしたねぐら位置がわからないので待ち伏せがいいと思います」
 セシルが提案する。
「長期の蓄えを考えた計画的な盗みではなく、只飢えを凌ぐ為の止むに止まれぬ盗みと思えるので、数度成功したのであれば同じ場所に現れると思います」
 柊が自らの考えでセシルの提案を補う。
「私も待ち伏せはいい案だと思います。重要です。ですが昼間は食料が襲われる可能性が低いので、夜までは森の方向にねぐらがないか調査しませんか?」
「一度はアジトを調査した方がいいと思います」
 コルリスの変更を鳳が賛成する。鳳だけでなくセシルと柊も変更を受け入れて森を探索する事が決まった。
 森では勘が働くコルリスと鳳を先頭に森をさまよう。剥きだしの岩があるだけでなく、崖のように突きだした岩肌にそって洞窟が地下に伸びてゆく個所など、さしずめ自然が作った迷路であった。長く知る猟師達が全部を把握していないという言葉が冒険者達の脳裏に思いだされる。セシルはペットである鷹のイグニィを飛ばしたが、怪しいものは見つからなかった。

 早々に集落に戻った冒険者達は備蓄倉庫を訪れる。三人の集落の者が監視を行っていた。今日、明日は冒険者が行うと告げると、何かあったときは手を貸しますという快い言葉を残して三人は去ってゆく。
 監視小屋が近くにあり、盗人を掴まえるまでは冒険者の本拠地となった。
 コルリスと鳳の手ほどきを受けながら、四人で周囲に縄を張り、木片を組み合わせた鳴子を取りつける。集落の者が使っていたものが小屋に残っていたのだ。効果がないので外したのだろうが、うまく使えば逃げ道を狭められる。
 夕方になると、集落の女性が食事を運んでくれた。食べたいものを訊かれ、柊は七草粥が食べたいと伝える。集落には米がないので、明日は麦による薬草粥を用意くれるそうだ。
「あの、お訊きしたい事が‥‥」
 鳳はある食べ物の事を相談するのだった。

 昨日の夜とは違い、空は曇っていて月や星がなく、すべてが闇に包まれていた。
 コルリスと柊が備蓄倉庫内で待機する。セシルと鳳は小屋で監視を行った。コンビで交代で休み、何かあれば起こす手筈になっていた。火も焚かず、灯りもつけず、四人とも闇の中で毛布にくるまり、じっと招かざる者を待つ。
 冬の夜は静まり返る。まれに寒さで木などが軋む音がした。
 小枝が踏まれて折れる音が続く。
 備蓄倉庫では柊がコルリスを、小屋では鳳がセシルを揺らして起こした。備蓄倉庫に近づく盗人達のたいまつだけが周囲を照らす。盗人達は備蓄倉庫に入ろうと、かんぬきを壊そうとしていた。
 頃合いと考えたセシルが威嚇のファイヤーボムを放った。
 火球が突如現れて盗人達から悲鳴があがる。地面に差しておいたたいまつに火が移り、周囲を照らしだした。盗人はボムの光に目が眩んでいた。予めわかっていた冒険者達は下を向いていて無事である。
 鳳が一番背の高い奴にバーストアタックを打ち込む。何かが剥がれ、地面に突き刺さる。
 備蓄倉庫から飛びだした柊がコアギュレイトを唱える。だが相手が逃げ腰であった為、範囲から外れてしまった。
「撤退!」
 盗人の誰かが大声をあげると一斉に逃げ始める。
 次々と盗人が姿を消す中、一人だけだがコルリスが投げた網に引っかかる。一網打尽にしたかったコルリスは残念がった。
 冒険者達は追いかけるのは止めて、掴まえた一人を確認する。網の中にいたのは女の子であった。
 グー!
 冒険者が声をかけるより先に女の子の腹の虫が鳴いた。あまりに大きな音に冒険者達はかける言葉を忘れるのだった。

 冒険者達は女の子を連れて小屋に戻る。監視は続けるが、今日の所はまず現れないであろう。
 女の子は鍋に残った夕食の残り物を温めるのを待たずに食べ続ける。先程の腹の虫といい、よほどお腹が空いていたのだろう。
「あら?」
 食べながら女の子は寝てしまった。冒険者達は監視の順番を決めなおし、明日に備えるのだった。

●あばら屋
 三日目の朝を迎え、冒険者は森の中で木々を縫うように進み、岩を越えてゆく。
 昨晩掴まえた女の子はリムといった。話してみると彼女は7歳で、森の中の家で子供達だけで一緒に住んでいるという。問題はリムが無邪気でまったく罪の意識がなかった事だ。説教するのは簡単だが、幼い彼女ではただ泣くだけで何も解決しないだろう。
「ここだよ」
 リムが指差した方向には家があった。あり合わせの木々を適当に繋げただけのあばら屋だ。
「お前達誰だ!」
 あばら屋近くにいた子供の一人が叫ぶ。あばら屋だけでなく、付近から子供達が集まりだした。その中で一番年上の青年が冒険者達と対峙した。
「人質なんて卑怯だぞ!」
 青年が叫ぶと、冒険者達は顔を見合わす。リムを拘束などしていなかった。セシルが頷くと、リムは青年の方に走っていった。
「大丈夫です」
 鳳が対峙する青年に殺気はないという。
「集落の人達に頼まれた者です。とにかくお話しをしませんか?」
 セシルがいうと青年はしばらく考えた。
「わかった」
 青年は数合わせなのか、三人の子供を連れて冒険者達の前に立つ。
「どうして食べ物を盗んだりしたんですか?」
「仕方なかったんだ‥‥。食べ物がほとんどない状態が今も続いている――」
 コルリスが訊ねると青年は話し始めた。元々、彼が住んでいたのは盗んだ所とは違う集落だった。その集落は近くの山が崩れて埋もれてしまった。最初は青年と同じ集落で親を亡くした者達だけだったが、次第に増えて今は20名程いるという。
「親がいなくなった途端、大人達はみんな冷たくなった。大人なんて信じられない」
 青年は唇を噛んだ。
「可哀想ですがそれだけで全てが済まされる訳ではありません」
 セシルは続ける。
「敵を間違ってはいけません。それは大人が悪いのではなくて、その冷たくした人が悪いのです。‥‥しかしその人も自分の家族を養うだけで精一杯だったのかも知れません」
「そうかも知れないが、簡単に割り切れない。だからボク達はボク達だけで生きて生きたいんです」
 青年が正面を見据えた。
「いかなる事情があるにせよ、相手の物を盗むとの行為は自分をも卑しめるのですよ?」
 柊が悲しそうな瞳で青年を見つめる。
「それしか‥‥」
「確かに生き残る為には必要だったのかも知れません。でも、繰り返すうちにそれが普通になっていきます。いつか何も感じなくなります。その時はもう盗賊以外の何者でもないんです。リムや慕う子供達を盗賊にしたいのですか?」
 青年はセシルの前で言葉を返せないでいた。
「お兄ちゃんを苛めないで。お腹空いててみんな泣いちゃったから‥‥」
 走ってきたリムが青年に抱きついて叫んだ。頬には涙が流れていた。
 子供達全員が泣き始めた。
「集落の方々にキチンと謝りましょう。大丈夫。きっと解って下さいますよ」
「事情を話して許してくれるように口ぞえしましょう。働き口に困っているのならみなさんを迎え入れてくれるよう頼んでみます。約束します」
「私も寛大な処分を集落の人に頼んでみましょう」
「集落の人に相談します。働いてもらうなり、狩りの方法を教えてもらうなりしましょう」
 冒険者はしばらく子供達と話してから集落に戻る。長を始め、集落の人々を説得するのだった。

 夕方になり、冒険者と一緒に集落の人々が集まっていた。
「来ました!」
 遠くを眺めていた集落の一人が大きな声を出す。
 長い影を地面に落としながら、子供達の集団が集落を訪れた。
「今まで食べ物を盗んですみませんでした」
 青年を皮切りに子供達全員が謝る。
「せめてと思いまして、これを」
 青年と子供達は抱えていた薪の束を一個所に降ろす。
「足りないとは思いますが、今日はこれで。また持って来ますのでどうか許して下さい」
「待ちなさい!」
 去ろうとする青年と子供達を集落の長が呼び止める。
「薪はもらっておく。だが少し多すぎるようじゃ。代金としてこれを持っていくがいい」
 集落の何人かが青年と子供達の前に食料とナタやノコギリ、クギなどを置いた。
「食事の作り方も覚えたい者がいたら何人か来させなさい。それと、あの森はお前さん達の生命線になる。必要最低限にしてむやみに木を切るではないぞ。薪程度なら余分な枝で十分じゃ」
「はっはい」
「この冬の間は薪をもって来れば食料を分けよう。春になれば種も分けてやるから、畑でも作るがいい。狩りの手伝いをしてもらいたい者も何人かいる」
 集落の長が手を挙げると、四人の大人が太い棒を担いで現れる。ぶら下がっていたのは湯気の立つ大鍋であった。具だくさんのスープで溢れそうである。
「食べてきなさい」
 集落の長はよそったスープを子供達に向かって差しだした。

 子供達は森へと戻り、冒険者達は集落の長の家で食事の席に呼ばれていた。
「さすが冒険者だ。私達ではこうはいかなかったはずじゃ。この酒はとてもいけますよ。おみやげにもお持ち下され」
 集落の長が冒険者達に酒を注ぎに回る。
 食事はとても豪華であった。噂に聞いていた通り、様々な肉料理が並ぶ。焼き、蒸し焼き、煮炊き、大葉でくるみ蒸しなど料理方法も様々であった。
 料理を頂きながらセシルは考える。時間がなく、自活の為に勉学を教えられなかったのが残念だった。明日早くには出立しなければならない。
「明日朝お届けしますので」
 料理番が鳳に耳打ちする。
「よかった‥‥」
 コルリスは集落の寛大な処分に心の底から呟いた。
「おいしいです」
 柊は七草粥の代わりに作ってもらった薬草粥を笑顔で食べていた。
 美味しい物を食べると誰もが笑顔になる。冒険者達はスープを頂いた青年と子供達を思いだす。誰もが笑顔であった。

●夢
「ここんとこ残業続きでバテバテです〜」
 シーナは机に広がった書類を前でやる気をなくしていた。
「シーナを呼んでいる冒険者がいるわよ」
 ゾフィーにいわれてシーナはカウンターに出る。
「依頼を貼られていた時、男のギルド員さんから聞いたんです。依頼の集落のお肉を食べたがっている受付の人がいると。シーナさんですよね?」
「そうです! 私です〜 もしかしてこれは?」
 シーナは鳳が持ってきた大葉の包みを両手で抱えると、一緒に来たゾフィーをじっと見つめた。
「奥の給仕室の炉で温めなおしてもらいなさい。もちろん食べていいけど、みんなの分も残しておく事」
「了解です。ゾフィー殿!」
 ゾフィーの言葉を聞くやいなやシーナは肉の包みを抱えながらも器用に鳳の腕を掴む。
「ほんとありがとうー。一緒に食べましょう!」
 シーナに連れられた鳳はギルドのカウンターから姿を消したのだった。