大空の覇者 〜ちびブラ団〜
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■ショートシナリオ
担当:天田洋介
対応レベル:フリーlv
難易度:普通
成功報酬:4
参加人数:5人
サポート参加人数:-人
冒険期間:09月01日〜09月07日
リプレイ公開日:2008年09月10日
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●オープニング
ノルマン王国の守護者ブランシュ騎士団に憧れる子供の数は多い。
パリの空き地に集まる四人の子供らも自らをちびっ子ブランシュ騎士団、略してちびブラ団と名乗っていた。
ブランシュ騎士団黒分隊隊長ラルフ・ヴェルナーから教わった型を思いだしながら、子供達なりに剣の稽古を行っている真っ最中である。
「いたっ!」
「あ、クヌットだいじょうぶ?」
少女コリルの繰りだした木刀が脳天に当たり、少年クヌットが頭を抱えてその場にしゃがみ込んだ。
「よそ見したらダメだぞ。稽古の途中なのに」
少年ベリムートは振っていた木刀を剣帯もどきに収める。
「真剣にやらないとね」
少年アウストが地面に尻をつけたクヌットに片腕を伸ばす。クヌットは左手で頭をさすりながら右手でアウストの手を握って立ち上がった。
「へんなのが空に浮いていたんだよ。ほら、まだあるぞ」
クヌットが指さした青空には確かに妙なものが浮かんでいた。長方形の下でいくつものひらひらしたものがなびいている。
「見に行ってみよ〜」
誰ともなく浮かんでいる妙なものに向かって駆けだす。街角をいくつも曲がり、辿り着いたのはセーヌの畔であった。
「おじいちゃん、それなに?」
コリルが糸を巻いた棒を左手に持ち、右の手で糸を摘んで空を見上げる老翁に声をかける。糸は空にのび、上空の妙なものに繋がっているようだ。
髷を結った白髪の老翁は着物を着ていた。腰に下げた刀からいってもジャパンの侍である。
「これか? これはジャパンの『凧』だ。初めて見たのかな?」
ちびブラ団の四人は老翁を見上げながら同時にコクリと頷く。老翁は笑うとちびブラ団に凧揚げをさせてあげた。
そして近々、大凧大会の開催があるのをちびブラ団に教える。
今揚げている凧より何倍もの大きな凧をぶつけ合い、糸を絡ませて相手方の糸を切る。最後まで大凧が残っていたチームが勝ちというものだ。
大きな被害に遭ったパリより遠くにあるノルマン江戸村への支援金を募る催しである。パリの商人ギルドが企画したらしい。
「一対一ではなく、たくさんの参加チームが入り乱れてやるそうだ。これは見物だぞ。わしも血が騒ぐのだが、こちらの知り合いは少なくてな。こうして小さな凧を揚げて気を紛らわせていたところだ」
老翁がため息をつくとちびブラ団は相談を始める。そして自分達も手伝うから一緒に大凧大会に参加しようと老翁を誘った。
老翁は大声で笑いながら子供達の頭を撫でた。
大凧の大きさは縦5メートル、横3・5メートルはある。
老翁一人と子供四人で、とても揚げられるものではなかった。それに老翁が作り方を知っているとはいえ、開催日まであまり時間がない。
「冒険者に頼んでみようか?」
アウストがギルドの前で手伝ってくれそうな冒険者を探そうと提案する。
「賞金や賞品とかあるのかな?」
「そもそも支援金集めが目的だから賞金はなさそうじゃな。確か上位のチームには旗と法被が贈られると聞いたな」
ベリムートの問いに老翁が顎へ手を当てながら答える。
「きっと手伝ってくれる冒険者はいるはずだ。やってみようよ。えっと‥‥」
老翁の名前を呼ぼうとしてベリムートの喋りが止まった。
「これは失敬。わしは吉多幸政という者だ」
老翁が名乗り、ちびブラ団も順に自己紹介をする。
ちびブラ団は吉多と一緒に申込書を商人ギルドへもらいに行った。続いて冒険者ギルドの前で参加してくれそうな冒険者に声をかけてゆく。
クヌットが持っていたたくさんの申込書のうちの一枚が風に舞って遠くに落ちる。
たまたま通りすがった真っ白なマントを羽織る人物が拾い上げて目を通した。
その人物は大事に申込書を仕舞うと、マントをなびかせて城の方角に消えてゆくのだった。
●リプレイ本文
●凧作り
「まったく恐れ入ったわい。ちびブラ団のみんなは顔が広いの」
吉多幸政はクヌットとコリルの頭の上に手を置き、ベリムートとアウストを見つめながら大いに笑う。
場所はセーヌ川に近い建物の中。一階が倉庫になっていて、ここで凧作りを行う事となる。ちなみに二階は吉多幸政の住居となっていた。
「これがタコ。ふむ。初めて見るけど面白そうね。ジャパンや華国で遊ばれているの?」
ナオミ・ファラーノ(ea7372)はコリルが持っていた凧を手にとっていろいろな角度から眺める。
「その通りやで。華国でも凧は揚げとるんや」
中丹(eb5231)もナオミの側で凧を眺めた。ジャパンのものであって中丹の知る凧とは少々違うようである。
吉多幸政がジャパンの出身なので、特に凧の形状には口を挟むつもりがない中丹であった。
「お父さんは子供の頃得意で一番だったって言ってたデス〜」
ラムセス・ミンス(ec4491)がナオミから凧を受け取ってじっと見つめる。
「ジャパンの凧は見るの初めてデス〜」
ニコリと笑ってからラムセスがアニエス・グラン・クリュ(eb2949)に凧を渡す。
「これの大きなものが‥‥小屋一つ分の凧が空を舞うってどんなでしょう。ワクワクしますね」
アニエスの言葉にちびブラ団の四人が次々と同意する。
「忍びにとって凧揚げは仕事です。遊びでは初めてですが、経験を生かせるはずです」
最後にジャパン出身の重井智親(ec5199)が凧を眺める。とてもよい出来で、これなら吉多幸政に製作の指揮を任せられると心の中で呟いた。
「その凧と、これから作るケンカ凧との違いを説明させてもらおうか」
吉多幸政は建物の外に全員を連れだすと、枝を拾って地面に絵を描き始めた。
「大きさだけが問題ではなくてな。普通の凧とケンカ凧とは安定性の違いがかなりある。ケンカ凧はわざと不安定に作られてあって、さっき見せた凧のように足などはついておらん。なぜそうなのかといえば、安定した凧だと動かすのが至難の業なのだ。空中でわざと暴れさせる事で凧を移動させ、タイミングを計って繋がっている糸を引っ張る。引っ張っている間は凧が安定するので、それによってコントロールをする。うまく敵の凧に近づかせて糸を切ってしまうのがケンカ凧という訳だな」
吉多幸政の説明はかなり長かった。しかし重要な事である。
「せっかくやし、上位入賞狙わんとな」
中丹がより詳しく知りたいというので、商人ギルドからもらった大会規約の紙が吉多幸政から渡される。
決めなければならない事はたくさんあった。
ケンカ凧の構造をよく知るという意味で、まず子供四人で揚げられる程度の小型のものを作り上げる段取りとなった。その上で大型の本番用のケンカ凧が作るという流れだ。小型のものは練習にも使われる。
せっかくなので本番の大凧に何の絵を描くかも相談された。
アニエスの案に加え、いくつかの意見がでる。結果としてアウスト家で飼っている鷹の絵が採用された。練習用の凧にはグリフォンである。
木材をいくらか持ってきたラムセスであったが、吉多幸政によれば凧作りには合わないようである。そこで適した木材を手に入れる為に木工ギルドへ出向く事にした。
ジャパンや華国では竹が使われるのだが、ノルマン王国での入手は難しい。柔軟性があって軽く、加工のし易い木材がないか木工ギルドのカウンターで訊ねる。あいにくとギルド長はいなかったが、腕の立つ職人がいくつかの候補を教えてくれた。ついでによい木材問屋も教えてくれる。
「がんばるのデス! ナオミさん、最初は木材を細く削ればよいのデス?」
木材を購入して倉庫に戻る。小さなケンカ凧はラムセスが中心になって作り始める。基本の寸法は吉多幸政が教えてくれた。
「そうね。節のない部分で目を考えて――」
木工に秀でたナオミにアドバイスをもらってラムセスが作業を続ける。ちびブラ団もナイフで木材を削ったりと懸命に手伝う。
「凧はこの微妙な反りが大事なんやで」
中丹も参加し、凧の左右の偏りや反りを確認をした。バランスをわざと悪くするとはいっても、重心を下にしないだけでメチャクチャに作ればいいものではない。基本は大切であった。
「これを使ってくださいね」
骨組みが出来上がると和紙の代わりに貼られたのはアニエスが持ってきた布だ。どうやら母親に内緒で持ってきたようだ。
「よい仕上がりです」
ニカワが乾くまで干された凧を眺めて重井智親が呟いた。側にいたちびブラ団が笑顔で突きあう。
最後に大凧を作る為の下準備が行われて一日目は終了するのだった。
●大会に備えて
二日目からは凧揚げの練習と大凧の作業の二つに分かれる事となった。その時々に合わせて冒険者達はそれぞれを手伝う。
アニエスにいわれた通り、ちびブラ団は手袋をして子供用としては少々大きめの凧を四人がかりで揚げようとした。
場所は大会が行われるセーヌの畔である。
最初のうちはラムセスが凧をもってアニエスもちびブラ団と一緒に糸を引っ張った。なかなか揚がらず、六人が凧を持って走り続けるという微笑ましい状況が続く。
やがて重井智親が悪い点を指摘して徐々にうまくなっていった。
アニエスの愛犬ペテロとマルコが凧揚げが落下すると取りに行ってくれるおかげで、時間が有効に使える。
凧を揚げる練習の他に体力作りも行われた。
凧揚げ大会の出場者の一部参加者はわかっている。ほとんどが大人のチームであった。冒険者が手伝うとはいえ、ゆえにちびブラ団にも体力が必要だ。
走り込み、腕立て伏せなども行われる。ラムセスやアニエスも一緒につき合った。
空飛ぶ絨毯に糸を結びつけ、ちびブラ団の四人に引っ張ってもらう練習も行われる。少しでも引っ張る感覚を養ってもらう為に。
木刀での練習をしている時に侍の吉多幸政が教えてくれる一幕もある。腰を落とし、重心を低くして放たれた素振りに子供達は目を丸くした。
夕日の中、逆光の子供達が川面の輝きを背景に走る姿を重井智親は脳裏に焼き付ける。
一方で大凧作りもナオミを中心にして骨が組まれる。
練習用の凧をそのまま大きくすればよいのではなく、補強なども考えなくてはならなかった。図面を新たに用意した上での作業になる。
これまでに得た知識を総動員してナオミは大凧を仕上げてゆく。力仕事は重井智親やラムセス、中丹が手伝ってくれる。
ナオミが骨の各部を紐で固定している時、中丹は麻糸を前に胡座をかいて腕を組んでいた。ラムセスが探してきてくれた太く縒られたものだ。
何か工夫が出来ないかと考える中丹だが、これといったアイデアは浮かばなかった。
三日目の夕方、全員が倉庫に集まっていた時、吉多幸政がフェアリーの花水木が乗って遊んでいるものに注目する。ラムセスに訊ねるとレミエラだと答えが返ってくる。
吉多幸政は大会規約をよく知っている中丹に訊ねた。
中丹はよくわからない表現も仲間に質問をして大会規約を暗記していた。本を読むのが嫌いな中丹にしてはとても珍しい行動である。
大会規約によれば金属片などの大きな尖ったものは落下を考えて糸に取り付けるのは反則とされていたが、それ以外なら大丈夫だという。ちなみに魔法付与は大きく禁止と書かれていた。
ナオミが耳にした噂によれば、砂を糸にまぶすチームがあるらしいが、これは規約の範囲である。
翌日、吉多幸政はレミエラを手に入れてきた。エチゴヤから出てきた冒険者にちびブラ団と共に声をかけ、出来のよくないレミエラをもらってきたのである。
レミエラをかなり細かく砕いた吉多幸政は思った通りだと呟いた。砂の代わりにガラスの粉を糸に接着させる事にした。砂よりも糸の切断に効果がありそうだ。
骨組みが出来上がると、大会主催者からもらった和紙を骨に貼り付ける。
絵はちびブラ団の四人が共同して描き上げた。アウストが自宅から連れてきた鷹を参考にして大まかに描き、細かい部分や色塗りは四人で行う。
出来上がった大凧は五日目に試し揚げされる。
他のチームの大凧も空に揚げられていた。
「凧揚げ大会上位入賞を目指すんや!」
クチバシをキラ〜ンさせる中丹のかけ声に続いて、気合いを入れる一同であった。
●大会当日
六日目、ついにセーヌの畔でノルマン大凧大会が開催された。
参加チームが計十三団体もある大がかりな大会であった。
ちびブラ団の四人は以前に劇で使った騎士団風マントを羽織る。
吉多幸政がわしは裏方だからといって、『ちびブラ団と冒険者チーム』という名で大会に登録される。
大会主催者からの挨拶があり、その後にナオミとアニエスが個人名でノルマン江戸村復興資金の援助を行う。
「似てるよね」
ちびブラ団は自分達によく似たチームを見つけた。手を大きく振り上げて踊る、マント姿をしたパラの子供チームだ。
「ボクたちはちびパラ団だよ」
ちびっ子パラディン団、略してちびパラ団のリーダーはフィーネという名のとてもやんちゃそうな女の子だ。
「負けられないね」
ちびブラ団の四人は闘志を燃やす。
その頃、アニエスは噂を聞いて会場内で人探しをしていた。
(「いらっしゃいました!」)
アニエスは観客席の中にブランシュ騎士団ラルフ黒分隊長を発見する。
(「あれは‥‥!」)
ラルフ黒分隊長近くにいたのはウィリアム3世に瓜二つの人物だ。さらに藍分隊長のオベルの姿もある。ちびブラ団が持っていた絵札にそっくりなので、まず間違いない。
橙分隊はチームとして正式にエントリーをしているようだ。イヴェット橙分隊長が部下達に檄を飛ばしていた。
「どこかで会ったような‥‥どこやったろ?」
敵情視察をしている最中、すれ違った変な仮面姿のチームを観て中丹が首を捻った。
顔は見えないがリーダー格の立ち姿に見覚えがある。引き連れていた者達にも会ったような気がするのだが思いだせない中丹であった。
「緊張してきたのデス」
大凧の側でそわそわしていたのはラムセスだ。
吉多幸政が笑い、ラムセスと長く話す。この時初めてラムセスが十一歳であるのを知り、吉多幸政は大いに驚く。
「どこにも緩みがないし、これで大丈夫。風もあるし、凧揚げ日和ね」
大凧の点検が終わったナオミが大空を見上げる。
「これならいいところまでいけそうです。後は凧揚げの腕次第です」
各チームの大凧を調査してきた重井智親が吉多幸政に報告をする。
「そうか。わしも頑張ろう。冒険者にもちびブラ団と力を合わせてな」
切り株に座っていた吉多幸政がすくっと立ち上がった。
どのチームも凧揚げの準備を終えて教会の鐘が鳴るのを待つ。
鐘が鳴り響き、一斉に大凧揚げが始まる。
ラムセスと吉多幸政が大凧を支えて、その他の者達が一斉に引っ張る。
鐘が鳴っている間に大凧を揚げなければ失格であるが、鷹の絵が描かれた大凧は見事空へと舞い上がった。
用意した大凧が揚がらず、ここで四チームが脱落する。
ラムセスが糸を持つ一番最後に入って要となる。冒険者達は主に凧を支える役目だ。ちびブラ団四人の動きに合わせて糸を動かす。
吉多幸政は一番先頭に立つが、これは子供達が糸にぶら下がらないようにする為である。
大凧が大きく揺れ、そして糸が引かれることで位置を固定させる。パリの上空では大凧同士の戦いが繰り広げられた。
糸が切られて次々と大凧が風に流されてゆく。
ちびブラ団とちびパラ団との攻防が続いていた。まるで踊るようにちびパラ団の大凧が舞い、それをちびブラ団の大凧が追いかける。
「いまよ!」
コリルのかけ声と共に大きく引かれる。ちびパラ団の大凧が空の彼方に消えていった。
激しい潰し合いの中、ちびブラ団のすぐ側では謎の仮面集団と橙分隊チームとの戦いが始まる。
「あれ、知ってるデス。ファラオの仮面デス」
エジプト出身のラムセスが謎の仮面の由来を語った。
「そうや! あの雰囲気はフェリクスはんや! アニエスはん、そう思わへんか?」
「‥‥そうです! あれは」
中丹とアニエスは緑分隊長と面識がある。仮面で顔を隠しているが、あれは確かにフェリクス緑分隊長だ。
なぜ視界が悪くなる仮面をわざわざつけて凧揚げをしているのか、とかは訊ねてはいけない。それがフェリクスが緑分隊長たる所以である。何か深い意味があるのに違いない。
橙分隊チームとの大凧勝負は謎の仮面集団の勝ちで決まった。
ちびブラ団と冒険者チームは、市場連合チームの大凧を落とした。
最後は緑分隊であろう謎の仮面集団と、ちびブラ団と冒険者チームとの一騎打ちになった。
姿は別にして謎の仮面集団はとても手強い。そのアクロバティックな大凧の動きに翻弄されそうになる。
「落ち着いて。凧は大丈夫。わたくしが作ったものだもの。もっと暴れさせていいわよ」
ナオミが焦るちびブラ団に声をかける。
「凧は風がなければ、どうしようもありません。想定に入れた上でチャンスを待つのです」
重井智親からのアドバイスもある。
攻防は続き、やがて雲に太陽が隠れた。
その時、風の向きが微妙に変わる。
「後ろに走るぞ!」
クヌットとベリムートが顔を見合わせた後、大声を上げた。それに合わせて全員が後ろに駆ける。
上空では鷹の絵が描かれた大凧がファラオの仮面の絵の大凧の糸を断ち切る。
この瞬間、ちびブラ団と冒険者チームの優勝が決まった。
夕暮れ時、ノルマン大凧大会の閉会式が行われた。
三位、二位と順に旗と法被が贈られて、優勝のちびブラ団と冒険者チームの番となる。
冒険者達がちびブラ団に優勝の法被を肩にかけてあげた。当然自分達も羽織ってみる。
ちびブラ団の四人の手に優勝旗が渡される。風に揺れて大きく優勝旗がなびく。
ちびブラ団と冒険者達は誇らしげに胸を張った。会場に拍手が起こる。
「あれ、なんだ?」
クヌットが空を指さす。大会が終わったのに、まだ飛んでいる大凧があった。
よく観れば人が乗っていた。
「灰分隊長のフランだ」
ちびブラ団の灰分隊長であるアウストが大凧に乗っている人物を見破る。司会の話しぶりからすると、懇意の大会主催者からフラン灰分隊長が頼まれたようだ。
大凧から『ちびブラ団と冒険者チーム、優勝おめでとう』と書かれた垂れ幕が広がる。それを観て一層喜びを深くする一同であった。
「あ‥‥」
ベリムートが振り向いた時、大凧の糸が切れる。当然、フラン灰分隊長が風に流されてゆく。
これでもかと回転しながら大凧はセーヌ川へと落ちる。
プクッとフラン灰分隊長が水面へと顔を出し、会場のみんなが安心したところで大凧大会は終了するのだった。