シーナの思いやり 〜シーナとゾフィー〜

■ショートシナリオ


担当:天田洋介

対応レベル:フリーlv

難易度:普通

成功報酬:4

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:12月06日〜12月11日

リプレイ公開日:2009年12月15日

●オープニング

 冒険者ギルドの受付嬢シーナは、ここ最近ご機嫌である。水が冷たい冬の今時期でも満面の笑みでカウンターの拭き掃除をするぐらいに。
 黒い冬トリュフをエテルネル村出張店『四つ葉のクローバー』店長ワンバから安く譲ってもらえたのが一番の理由だ。ヴェルナー領エテルネル村近くの森の豚放牧場にあるオークの木の根元にはトリュフが自生していた。豚に食べられてしまう前に収穫するのがとても大変らしいのだが、それはまた別の話である。
 夏トリュフは以前に食べたものの、真の意味で人々をとろけさせるのは冬トリュフ。食いしん坊のシーナが知らないはずがない。
「う〜ん‥‥‥‥」
 そんなシーナがふと思いだしたように悩みだした。
 仕事が終わった後、何か変な物でも食べたのかと先輩のゾフィー嬢は心配して自宅隣のシーナの家を訪ねてみる。
「ギルドで様子が変だったし。お腹でも痛いの?」
「ちょうどよかったのです。ゾフィー先輩、これ全部あげるのです」
 シーナは山盛りトリュフが入ったカゴをゾフィーに抱かせる。
「え? 何で? だってこのトリュフ、シーナが買ったのだし、とっても楽しみにしてたじゃない。料理をお裾分けしてくれるならわかるけど全部くれるって‥‥シーナ、やっぱり大変な病気にでもかかったんじゃ」
 ゾフィーは慌てて近くのテーブルにカゴを置くとシーナの額へ掌をあてる。
「わたしは大丈夫なのですよ。大きなお節介だとは思うのですけど‥‥ゾフィー先輩、聖夜祭も近いし、そろそろちゃんとレウリーさんの気持ちを確かめるといいのです〜。このトリュフはレウリーさんキラーとして使って欲しいのですよ☆」
「シーナ‥‥」
 ゾフィーは固まり、しばらくシーナを見つめ続ける。レウリーとはゾフィーの恋人でブランシュ騎士団黒分隊に所属する騎士だ。主にコンコルド城内の黒分隊詰所での待機任務をしていた。
「気持ちは嬉しいけど、このトリュフを活かす料理の腕なんてわたしにはないわ」
 ゾフィーがトリュフを返そうとするとシーナは首を横に振る。
「じゃあ、まずゾフィー先輩が美味しいトリュフ料理を作れるようになるのです♪ 本番のトリュフは聖夜祭の頃にまた買えるようにワンバさんに頼んでおくのですよ」
 シーナの笑顔に思わずゾフィーが涙を零しそうになる。
 とはいえ、シーナも調理は得意ではない。食べるのはとても得意なのだが。
 閃いたシーナはいつものように家の外壁へ貼り紙をした。トリュフ料理が得意な人、美味しい食べ方を知っている人を募集する内容であった。

●今回の参加者

 ea2113 セシル・ディフィール(28歳・♀・ウィザード・人間・ノルマン王国)
 eb3600 明王院 月与(20歳・♀・ファイター・人間・華仙教大国)
 eb6702 アーシャ・イクティノス(24歳・♀・ナイト・ハーフエルフ・イギリス王国)
 eb9243 ライラ・マグニフィセント(27歳・♀・ファイター・人間・イギリス王国)
 ec1862 エフェリア・シドリ(18歳・♀・バード・人間・神聖ローマ帝国)
 ec4004 ルネ・クライン(26歳・♀・神聖騎士・人間・ノルマン王国)
 ec5115 リュシエンナ・シュスト(25歳・♀・レンジャー・人間・ノルマン王国)
 ec5385 桃代 龍牙(36歳・♂・天界人・人間・天界(地球))

●リプレイ本文

●相談
 シーナの自宅には多くの人が集まっていた。ゾフィー嬢に冒険者八名、それに料理人のティリア嬢の姿もある。
 シーナは全員をテーブルにつかせた上でカゴを抱えて運んできた。そしてテーブルの中央に置く。
「集まってくれてありがとうなのです☆ これが黒トリュフなのです。これを使った美味しい料理の作り方をゾフィー先輩に教えて欲しいのですよ〜♪」
「どう調理したらよいのかわからなくて。どうかお願いします」
 シーナとゾフィーが全員に詳しい事情を話す。
「ん〜トリュフの良い匂い」
 セシル・ディフィール(ea2113)は漂ってくるカゴのトリュフの香りに目を細める。
「ゾフィーさん、料理に大切な事って何だか分ります?」
「あの‥‥なんでしょう?」
 セシルに対しゾフィーがかしこまった。
「ふふふ、それはですね。料理は愛情です! 食べて貰う人の事を考えて一生懸命作れば、美味しいものができる筈です!!」
 大切な人が喜んでくれるのを想像しながら作ればよいとセシルは語った。自分もに出来る限りのお手いは致しますからと胸を叩く。ちなみにセシルの心の中で最後の言葉に『試食とか』が付け加えられていたのは誰も知る由もない。
「いろいろと調理の腕があがる魔法のアイテムを持ってきたんですよ〜♪」
 アーシャ・イクティノス(eb6702)はいろいろと取りだしてテーブルに並べる。
「鉄人の鍋、荒布の杓子でしょ、それに鉄人のナイフ。でもゾフィーさんには貸しません! これらはお手伝いのみなさんをゾフィーさんと同じぐらいの腕にするように持ってきたもの。愛は自らの手で掴むものなのです!」
 ビシッとゾフィーを指しながら、決まった〜と握り拳を握る自分を想像するアーシャ。最後に自分の結婚話でノロケるのも忘れなかった。
(「まさに乙女の園だな‥」)
 この場に唯一の男が桃代龍牙(ec5385)である。
「ゾフィーさん、ちょっと‥‥」
 桃代龍牙は隣に座るゾフィーに小声で話しかける。
「ここにいるの皆上手い人ばかりだから、案外判りにくいかも。俺はゾフィーさんと同じぐらいの腕だと思うから話し合って克服していこう」
「わかりました。あまり自信がないんですけどがんばりますので」
 ギルドのカウンターにいる時の自信に満ちた姿とは違うゾフィーを桃代龍牙は見た気がする。
「冬トリュフ、なのですね。おいしいのでしょうか? お料理といえば、しょうゆです。花さんの家でこうかんしてもらうのです」
 エフェリア・シドリ(ec1862)は川口花の実家を訪ねようと考えていた。醤油の他に気になる事もあったからだ。
「エフェリアちゃん、一緒にいってお醤油と交換してもらおうね♪」
 明王院月与(eb3600)はシェリーキャンリーゼを手に持ってエフェリアにウィンクをする。かなり以前、月与とエフェリアは花とお醤油と交換してもらえる約束をしていたのだ。
「そういえばシーナさん、誕生日だったのです」
「お? エフェリアさん覚えていてくれたのですか〜」
 エフェリアに先日が誕生日だった事をいわれたシーナは照れ気味だ。さらに一同からのおめでとうの言葉に溶けそうなぐらいに顔を綻ばせた。
「ゾフィー殿に教える料理の他に、シーナ殿のためのシフォンケーキも作ろうと思うのさね」
 ライラ・マグニフィセント(eb9243)は後で自分のお店からお菓子作りの道具を持ってこようと考える。ゾフィーへの料理指南のついでにシーナの誕生日をみんなで祝う為だ。
 お互いにどのようなトリュフ料理を作るのかが話し合われる。
 日程に余裕があるので、それぞれに準備が整ったところで調理開始であった。一度に教えてもらってもゾフィーが覚えきれないので一日に二品が限界だろう。
「シーナさん、こないだはホントにありがと♪」
 一度解散の直後、リュシエンナ・シュスト(ec5115)はルネ・クライン(ec4004)と共にシーナへと近づいた。
「ほら、こんなに素敵なの!」
 リュシエンナがルネの手をとってシーナに指輪を披露する。
「細工がすごすぎるのですよ〜☆ わぁ〜」
 シーナはしばらく瞬きを忘れてしまうほどにルネの『誓いの指輪「絆の灯火」』を凝視した。
「シーナのお陰でこんなに素敵な指輪が出来たわ。本当に本当にありがとう!」
「いえいえ〜。彫金師のボスコさんのおかげなのですよ☆ とってもよかったです〜」
 シーナはリュシエンナと共にルネを祝福する。いくら食いしん坊のシーナでも結婚には憧れがあるので気持ちはわかる。問題はそのお相手なのだが。
 まだ出かけていなかったみんなも様子に気がついてルネの回りに近寄った。指輪を見せてもらうと恋の話に花を咲かせるのだった。

●川口の実家
「声が聞こえるのです」
「赤ちゃんの泣き言‥‥ってことはやっぱり?」
 川口花の実家前でエフェリア、月与が顔を見合わせてやっぱりと頷く。
「すでに産まれたようですね」
 追いかけるように到着したセシルも二人の会話に加わる。
 以前、花の母リサが三人目の出産時期が今頃だといっていた。
「お三人方」
 玄関のドアを叩くと花が現れる。赤ん坊にさっそく会わせてもらう事となった。
 リサからお乳をもらって赤ん坊は安心したようだ。泣きやんですやすやと眠っている。
「あかちゃん、なんて名前でしょうか?」
「『ユーリ』よ。以前に旦那が候補にあげていた名前ね」
 エフェリアは眠る赤ん坊から視線を外さずにリサに訊ねる。
「ユーリって名前だと女の子だね♪」
 月与はユーリの握る小さなかわいい手を見つめる。
「赤ちゃんはユーリちゃんですか。ふふ、可愛い‥‥」
 セシルはワインをリサに贈る。後で作るトリュフ・ハニーも持ってくるつもりである。
 源造、そして菊太郎をあやすオイレーナと別室でしばらく話してから醤油と交換してもらう。
 エフェリアは花と一家の絵を描いたら届ける約束をするのだった。

●ゾフィーの特訓
 まず二日目にゾフィーに教えたのはリュシエンナである。
「料理の道は弛まぬ努力と溢れる愛の結晶で出来てるの♪」
 リュシエンナは茶筅をゾフィーに贈ってからさっそく調理を開始する。ゾフィーは月与からもらったふりふりエプロン姿だ。
 作るのはカブをつかったポタージュ。カブとベーコンをオリーブ油で炒め、鶏や牛乳ベースのスープで煮込まれる。刻んだトリュフも一緒に入れられた。
 最後に小分けする時、別に作ったトリュフソースをかけさらにスライスしたトリュフと細かいチーズをかけて完成である。
「美味しいわ! すごく元気が出るわね」
 ゾフィーはその美味しさに驚く。
 ペロリと平らげるシーナの姿を見て、一同が口をあんぐりとさせる一幕もあったが。
 ゾフィーはとったメモを確認しながら一人で作ってみたが、どうしても味を再現出来なかった。ゾフィーには背伸びしすぎな料理だったようである。
 続いてはルネの番だ。
「皆の素敵な料理が楽しみだわ。私からはサラダを提案するわね」
 ルネはトリュフとハーブを使ったサラダが提案された。
 癖の少ないハーブを主な野菜とし、少し甘めのビネガーで味付け。最後にスライスしたトリュフを乗せて出来上がる。
「前菜としていいわね。この料理」
「大事なのは大好きの気持ちを籠める事よ♪」
 こちらはビネガーを使ったドレッシングさえ間違えなければゾフィーでも何とかなる。失敗せずにほとんどルネと同様の料理が仕上がるのだった。

 三日目の最初はエフェリアだ。
 エフェリアが考えてきたメニューはいろいろとある。トリュフを醤油で漬けにしたり、焼いたり。醤油を隠し味にしたシチューの具にトリュフを使ったものなど。
 最終的にはパンにトリュフとチーズをのせて焼いたパンがゾフィーに教える料理となった。実際に作るのは料理人のティリアが引き受けてくれる。
「そうなのです。しょうゆで少し味付けの下拵えをしてほしいのです。パンにバターを塗るのはわたしがやっておくのです」
「了解〜」
 エフェリアが想像する料理をティリアが再現してくれた。
 エフェリアも簡単な作業は手伝う。リヴィールタイムで正確な焼き時間を計り、ゾフィーに教える。
「醤油の隠し味があるとないとでは、かなり違ってくるわね。美味しいわ〜」
 ゾフィーは醤油入りとそうでないのを食べ比べて感心する。
 パン作りからになると難しいが、売っているものを手に入れればゾフィーでも何とかなりそうだ。パン屋『シュクレ堂』かライラのお菓子店『ノワール』などでパンはきっと手に入るであろう。
「私もパンですが、パンケーキです。名前は『トリュフ・ハニーのパンケーキ』。これならゾフィーさん大丈夫でしょ?」
 セシルはさっそく作り始める。ティリアも手伝ってくれたが、それほど難しくはなかった。
 唯一手間がかかるとすれば、トリュフを蜂蜜に漬けておく時間だけだ。今から使うのは昨晩のうちにセシルが漬けておいたものである。
 パンケーキを焼いて漬けて置いたトリュフを添える。
「簡単ですね。それにこの風味‥‥独特で美味しいわ」
「他にも果物があれば一緒に添えてくださいね。ただ、ディナー向きではないのですよね‥‥。この蜂蜜漬けのトリュフは他の料理に合いますよ。お肉なんかにも」
 まじまじとフォークの先に刺さっているパンケーキの切れ端を見つめるゾフィーにセシルが説明する。
 ゾフィーとセシルの会話を聞いていたシーナの耳が『お肉』のところでピクリと動いたのをリュシエンナとアーシャは見逃さない。さすがシーナだと妙なところで感心した二人であった。

 四日目、順番が回ってきたアーシャは張り切っていた。
「簡単なんですよ。薄くスライスしたトリュフを鶏卵と混ぜるだけ。それと厚切りスライスした生のトリュフに粗塩をかけると、ワインのおつまみに最高のスクランブルエッグの出来上がりです♪」
 他にオリーブオイルが塗られたパンに、バター焼きのスライス・トリュフを乗せたものも用意される。
「美味しい〜♪ まるで味の展覧会なのです〜♪♪」
「あ、あの‥‥アーシャさん?」
 さっそく自ら作った料理を食べ始めたアーシャにゾフィーが戸惑う。まだ細かな質問がまだだったからだ。
 アーシャの横ではシーナとセシルも同じように笑顔で頂いていた。
「あ〜、そうでした。えっとですね――」
 ゾフィーの視線に気がついたアーシャは調理における注意点を教える。
 アーシャに続いては月与の順番になった。
「スパゲッティはティリアお姉ちゃん、お願いね。あたいは具を作るね♪」
 月与はスパゲッティの麺に関しては専門家のティリアに任せる。
 さっそく具の方にとりかかった月与は大蒜のみじん切りをオリーブ油で炒めて、さらにトリュフと白ワインを加える。
 味を調える為にハーブ塩と岩塩を加え、茹で上がった麺とよく絡めた。最後に生トリュフの薄切りを散らして完成である。ちなみに炒める際に醤油が隠し味に使われていた。オムレットに関しては明日作るライラに譲った月与だ。
「まるでこのあつらえた組み合わせのようにとっても美味しいのね。驚いたわ」
 ゾフィーはフォークに絡まった麺を眺めて瞬きを繰り返す。
 ただゾフィーが作るのには少々難しい。乾燥した麺があれば、あるいはゾフィー一人でも作れたかも知れなかった。

 最後の五日目は桃代龍牙とライラである。桃代龍牙はゾフィーをフォローしながらライラの調理を手伝う。
「まずは鶏のポワレさね」
 ライラはトリュフを細かく刻んで熱した油に入れる。そこで鶏のもも肉の表面をかりかりに焼いた。エフェリアにもらった醤油を少し垂らして風味を足してみる。
 さらにスライスしたトリュフをかけて完成である。
 オムレットもライラはゾフィーに指南した。
 シフォンケーキを作る要領で卵白を泡立てるのがコツだ。細かく刻んだトリュフやチーズ、そして卵黄をさっと混ぜる。それを鍋に流し込んで焼き、ふわふわになるように二つ折りにすればよい。
「さりげない料理の旨さとメインで一撃男は胃袋でつかめる!」
 実は桃代龍牙とライラは組んで作っていたスープがあった。コンソメスープと呼ばれるものでかなりの手間がかかる。二日前から煮込み続けてようやく今日の完成に間に合った。
 ライラは鶏などの他の肉類なら経験があるのだが、桃代龍牙のいうように牛肉で挑戦するのは初めてだった。
 煮込んだスープを漉して、さらにトリュフや具材をいれて完成である。
 ゾフィーは最初からコンソメスープとオムレットはあきらめる。コンソメスープはかかる時間、オムレットは微妙な火加減などが難しそうだったからだ。
 ただ鶏のポワレについては挑戦してみるつもりである。何度か失敗をしているうちにコツを覚えられるであろうと。
「そうね‥‥。どれも美味しかったのだけど――」
 ゾフィーはセシルの『トリュフ・ハニーのパンケーキ』、アーシャのトリュフ入りスクランブルエッグ、ルネの『トリュフとハーブのサラダ』に決める。エフェリアのパンはどこかに出かけた時のお弁当用として覚えておく。
 もう少し頑張らないといけないが、ライラの『鶏のポワレ』も挑戦してみるつもりであった。ちなみに一番印象に残ったのは桃代龍牙の知識があってこそ出来上がった牛食材のコンソメスープだったようだ。
「シーナさんの誕生祝でもするか!」
 桃代龍牙の一言でこれまでに作った料理をもう一度全員で作り始める。過ぎてしまっていたがシーナの誕生日を祝う為だ。
「俺は小麦粉練って洗い流して麩を作ってやろう。簡単だからシーナさんも覚えるといい。ダイエットに良くて腹持ちもいいから」
「何です? その麩って?」
 シーナは調理する桃代龍牙をじっと観察する。小麦粉を水にさらすと残るものがある。それを焼くと焼き麩、油で揚げると揚げ麩が出来上がった。
 夕方、全員で手分けして作られた数々のトリュフ料理でシーナの誕生日会が開かれる。
「ふわふわして面白い味なのです♪」
 シーナは麩の変わった食感を喜んでくれた。みんなにも好評である。エフェリアが子猫のスピネットにあげると喜んでいた。
「おめでとー。シーナさん♪」
「おお〜、これは‥‥膝掛けなのです☆」
 そして全員で作ったパッチワークの膝掛けが贈られる。精霊達がシーナの頭上をグルグルと回り続けた。
 仲良しのシーナとゾフィーや豚のアップリケ、エスカルゴの刺繍が施されているとても凝ったもの。これからの寒い季節に重宝するとシーナは喜んだ。
「ガブリといってくれ。シーナ殿」
 生クリーム付きシフォンケーキがライラの手で切り分けられた。
 シーナとゾフィーは集まってくれた全員に感謝する。
 夜遅くまで笑い声が途絶えなかったシーナの家であった。