旅立ちの悩み 〜ちびブラ団〜
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■ショートシナリオ
担当:天田洋介
対応レベル:フリーlv
難易度:普通
成功報酬:4
参加人数:5人
サポート参加人数:2人
冒険期間:12月15日〜12月20日
リプレイ公開日:2009年12月23日
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●オープニング
少年ベリムート・シャイエ、現在十一歳。
少年クヌット・デュソー、現在十一歳。
少女コリル・キュレーラ、もうすぐ十一歳。
少年アウスト・ゲノック、もうすぐ十一歳。
かつてちびっ子ブランシュ騎士団と名乗っていた子供達四人それぞれに本物の騎士への道が開かれようとしていた。
クヌットのデュソー家は世間から商人のように思われていたが、元々騎士の家系である。北海に面する港町オーステンデを含むミリアーナ領で役職を務める老翁ケタニリアの元で、クヌットの騎士修行は始まる予定だ。
アウストは騎士ヒストロテ・モステンティの養子になった。クヌットの親戚であるヒストロテはトーマ・アロワイヨー領の騎士である。アロワイヨー領主の口利きによって、ヒストロテとは別の騎士の元での修行がもうすぐ始まるであろう。
コリルは冒険者でもある騎士の養女になれた。クヌットと同じトーマ・アロワイヨー領内での修行だが、おそらくは離れての日々になるだろう。修業先の騎士は女性だと伝えられていた。
ベリムートは他の三人と比べると非常に特殊だ。はっきりといえば騎士になる筋道は何も決まっていないといってよい。だからといって諦めている訳ではなく、彼なりの考えがあった。
ブランシュ騎士団黒分隊長ラルフ・ヴェルナーが主体となり、海運業者トレランツ運送社の協力によって新造帆船による遠海への旅が秘密裏に計画されていた。
その旅に参加する意志をベリムートはつい先日固めたばかりだ。
国王ウィリアム三世の許可だけでなく、エイリーク辺境伯やカーゴ一家のエリス・カーゴ、アロワイヨー領主も一枚噛んでいる。空を飛ぶことはないようだが新造帆船にはアトランティスの技術も使われているらしい。
遙か遠くの西の大陸を目指す新造帆船には騎士も多く参加する。ベリムートは航海で役に立って認めてもらい、騎士の道を目指そうとしていた。
子供達四人はそれぞれに忙しい日々を送っていた。聖夜祭の用意もあるが一番大変なのは身の回りの整理だ。
「は〜〜‥‥」
クヌットはミリアーナ領への旅支度をすればそれでよいのだが、心残りは妹のジュリアである。家を何年も空けることになるのを伝えると幼いジュリアは泣き続けた。
やがて塞ぎ込んでいたかと思うと、クヌットを家の外に出さないようにドアの前に座り込む。そんなジュリアの行動が繰り返されていた。
「どれにしたらいいんだろう‥‥」
アウストは本のどれを持っていこうかを悩む。養子先のヒストロテの家に持ってゆく荷物はすでに過剰気味であった。すべての本を持ってゆく訳にはいかない。どうしても持ってゆく本を厳選する必要がある。
「ウサギのミーヤちゃんがいいかな。それとも――」
コリルはたくさんのぬいぐるみをどうしようかと考え込んだ。捨てるなどとんでもなく、かといって倉庫に放り込むのもかわいそうに感じられる。
養子先の騎士の家に置いてもらったとしても、やはり同じだ。トーマ・アロワイヨー領の女性騎士の元まで連れていけるのは一体のみだと心に決めていたコリルだが、なかなか選べられない。他人にとってはどうでもいい事でもコリルにはとても重要であった。
「どんな旅になるんだろうか‥‥」
ベリムートは連日パリの船着き場を訪れていた。旅立つ時には最低限の服と装備、小分けした金を持ってゆくつもりである。
その他に必要な物がないかと道行く船乗りに聞いてみるが、今一要領を得なかった。それもそのはず、予定されている航海はこれまでにない長距離である。もしかしたら地の果てに辿り着いてしまうかも知れない程に。月のエレメント・アルテイラの導きによって、遙か彼方に存在するという月道を発見する航海は困難を極めるであろう。
すでに寄港先が決まっているドーバー海峡や北海、または地中海周辺とは勝手が違う。未知ゆえに必要な品が絞りきれなかったのだ。
四人は吉多の元での修行の後、冒険者ギルドのテーブルを囲んでお互いの悩みを語る。
しばらくすると通りすがりに相談を耳にした冒険者が一人また一人とテーブルの席に座って、四人の話を聞いてくれるのであった。
●リプレイ本文
●相談
ゆったりとした時間が流れる冒険者ギルド。テーブルを囲んで話し込んでいたのはベリムート、クヌット、コリル、アウストの子供の冒険者達である。
その姿を見て近づく巨体の冒険者が一人。
「どうしたのデス?」
同じテーブルについたのはジャイアントのラムセス・ミンス(ec4491)。身体は非常に大きいのだが、実は四人の子供達とあまり変わらない年齢だ。
「あのさ――」
ベリムートが説明するとラムセスは大きく頷いた。
「皆、旅の支度は始めてデスか。僕はジプシーデスし、なれているデス」
遠くへ旅立つ為の用意を手伝うというラムセスに四人の子供達が喜ぶ。
「あらあら、よく知る顔が揃っていますね。どうかなさったのかしら?」
「あ、クリミナ先生」
クリミナ・ロッソ(ea1999)の姿を見上げたクヌットはすぐに椅子から立ち上がる。次に別の椅子を引いてクリミナに座ってもらった。
ルネ・クライン(ec4004)とラルフェン・シュスト(ec3546)の二人も姿を現す。二人の指にはお揃いの指輪が輝いていた。
「皆で何の相談をしているのかしら?」
「コリル、ここにいたのか。隣に失礼させてもらうよ」
ルネとラルフェンがコリルを挟むようにテーブルの椅子へと腰掛けた。そして子供達四人から旅支度に際しそれぞれに悩みがあると相談された。
「あ、アニエスちゃんがいるよ」
その時、腕を組んで窓から外を眺めていたアウストが通りすがるアニエス・グラン・クリュ(eb2949)を発見する。
「どうかなさったんですか?」
「いろいろとみんなで悩んでいたんだ」
アニエスがギルド内にやって来てアウストの隣に座る。そして子供達は一人ずつ、自分の悩みを全員の前で説明した。
「アウストさんは本の悩みですか。お気持ちはよくわかります」
「持ってゆきたい本はたくさんあるんですけど選ぶのに迷ってしまって――」
クリミナは主にアウストの相談に乗る。
「これまでにない長い航海で必要な物‥‥を探しているのですね」
「そうなんだ。船乗りの人に聞いてもピンとくるのがなくてさ」
アニエスはまずベリムートの悩みを聞いた。
「縫いぐるみか。物には想いが宿り記憶が刻まれる。捨てられないよな。俺の部屋にもぬいぐるみがあるんだ、家族の手製の‥‥ま、この話はいいや」
「そうなのね。せっかくだからその縫いぐるみ達を見せてもらえるかしら?」
ラルフェンとルネはコリルの話題に答える。一番の難題だと思われるクヌットの相談にも後で参加するようだ。
そのクヌットはラムセスの前で背中を丸めて項垂れていた。
「ジュリアが寂しがっているのは俺もよくわかっているんだけど、どうしたもんだか。今日なんか、まだ夜明け前から目を真っ赤にして玄関のとこに座っててさ。すごく寒いのに‥‥」
「ジュリアさん、沢山泣いているデスね。大好きなおにいちゃんと離れるのは辛いデス。でも、旅立つ時が来るのは判って貰いたいデス」
具体的な対策を考える前にジュリアの様子をクヌットから詳しく聞いたラムセスである。
今日のところは対策方法をみんなで考えてきて明日から解決する事となった。
「困っている皆様に声をかけられたのが最初の出会い‥‥あれから三年ですか。昔と違う点は‥皆様はギルドの外ではなく中に居る、という事。ですね」
しみじみとアニエスは話す。子供達四人にとっても感慨深いものがある。
「シュレク堂で買った焼き菓子をおみあげに力になりに行くデス〜」
ラムセスはせっかくなら焼きたてをとクヌットの家に向かう当日に用意してもらえるよう今日のうちにシュクレ堂へ頼みに行くつもりだ。
「俺の十代前半は鍛錬と旅。その中で己を生かす道、認めてくれる相手を探してた。常に筆記用具とお守りのナイフは手放さずに」
少しでもヒントになればとベリムートに自分の昔を聞かせたラルフェンである。
「雲りの無い気持ちで旅立ちの日を迎えられるよう、お手伝いをさせてね」
コリルの手を握りながらお喋りを続けたのはルネだ。
「様々な学問に通じた本があるようですね」
クリミナはアウストから書籍名を聞いては頷いた。数にすれば百冊はあるという。それだけの蔵書を持っている一般人はそうはいない。それだけアウストが勉強熱心であり、また両親が期待している証ともいえた。
しばらくして四人の相談にのった冒険者達は自身の用事を済ませる。その多くが冒険者ギルドで終わるものであったが、アニエスだけは違っていた。絵札描きのオレノの元に向かう途中だったのである。
アニエスから事情を聞いたクリミナも一緒に向かう。
まずはオレノからドレスのデザイン画を受け取り、次に向かったのは仕立屋だ。
そこはトーマ・アロワイヨーの領主夫妻の結婚衣装の制作を任されたお店。具体的にはそこで働いていた針子のサラリーナ嬢とホートラ嬢の仕立てたものである。
クリミナはサラリーナとホートラの顔見知りだ。まずはクリミナがアニエスを二人に紹介する。
それからアニエスはアロワイヨーからの紹介状とオレノが描いたデザインを手渡して青いドレスを注文した。
今日のところは寸法がとられ、仮縫いは後日となる。
ちなみに初日手伝いの諫早似鳥はアニエスに頼まれた調査結果をギルド経由で手紙として残す。
今はいないようだがブランシュ騎士団黒分隊にもかつて女性隊員はいた。黒分隊内での交際は禁止されているようで、男性隊員と結婚した記録は存在していない。男女ともに黒分隊を止めてから結婚した例は一組だけあるが、具体的な足取りは掴めなかった。
●アウスト
「仰っていた通り、たくさんの本がありますね」
ある日、クリミナはアウストのゲノック家を訪ねる。部屋の壁面に置かれた棚にはびっしりと本が並んでいた。
難しいラテン語の本もあってクリミナは嬉しくなる。
「読破していない本とそれ以外を分けましょう。読み返したい気持ちがあるのは承知していますが、まず優先すべきは読んでいない本でしょうから」
「クリミナ先生、わかりました」
クリミナに頷いたアウストはさっそく本の仕分けを始める。クリミナも手伝って約一時間後には大まかに移動が終わった。
そこからさらに細かく分けられる。何度も読み返したい本、財産として残しておきたい本、思い出が詰まっている本。本といっても一言では片づけられないものがある。
本の目録を作ることを勧められたアウストはさっそく取りかかった。翌日、再びやってきたクリミナに確認してもらう。
目録は養子先のヒストロテ、修業先の騎士、そしてトーマ・アロワイヨー領主宛の手紙に同封される。同様の本があれば持ってゆく候補から外せばよいからだ。
「返事が届くのには時間がかかるので、わたくしが関われるのはここまででしょう。その上で剣術や回避術等戦闘の基本を記した本をまず一冊。今一番興味があり面白いと思うジャンルを一冊。格言集等即読み返す事が出来、個人的に感銘を受けた本があれば一冊を持っていってはどうでしょう?」
「大体絞れてきました、クリミナ先生。何とかなりそうです」
「本は大切ですが書かれている知識にのみに心開き、事実から目を背けたり自身の考えを放棄してはいけませんよ」
「はい!」
感謝の印としてアウストはゲノック家の夕食にクリミナを招待する。その晩、穏やかな時間を過ごしたクリミナであった。
●ベリムート
日をあらためて冒険者ギルドのテーブルを囲んだのは三人。ベリムートの目の前にはアニエスとクリミナが座っていた。
「航海で必要な、例えば食料などは船に用意されているでしょう。後々に役立つ物を持っていた方がよいと思います」
アニエスは筆記用具と日々の出来事を書き連ねる為の羊皮紙を持っていた方がよいとアドバイスする。いつどこでなにが起きたかを羊皮紙の束に書き連ねてゆけば将来の回顧録や自身の履歴を辿る道しるべになるはずだと。
「わたくしは星図を持ってゆくことをお勧めしますわ。少なくとも船がどの方角を向いているのかがわかりますので」
どうすれば星図が手にはいるかを知らなかったクリミナだが、その重要性は理解していた。
「そうか‥‥書くための道具は持って持っていこう。問題は無くさないように、濡れても大丈夫なようにする工夫だよな。星図は‥‥、占星術の人が持っている物とは違うんだろうか。後でラムセスさんに聞いてみよう」
ベリムートは二人のアドバイスのおかげでなんとかなりそうだと確信を得る。
「後は手鏡と櫛も。顔つきは日々変わります。目上の方に囲まれ生活しますし、最低限身だしなみは整えた方が、と」
アニエスはさらに孤独を友とする術を身につけるようにと告げる。簡単にはいかないだろうが、歳も経験も異なる集団の中で過ごす為には必要なはずだと考えたのだ。
「鏡と星図は『内なる自分と語る』助けとなりますよ☆」
最後にアニエスはにこりとベリムートに微笑むのだった。
●コリル
「うわぁ〜。たくさんいるのね♪ この猫はなんてお名前?」
「えっと、クリムっていうの」
ある日の昼間。キュレーラ家にやってきたルネはコリルに連れられて部屋を訪れた。たくさんの縫いぐるみが棚などに飾られていた。ベットの片隅にも座らせられてある。
「失礼させて‥‥すごいな、この数は」
ラルフェンもコリルの部屋に入った瞬間、縫いぐるみの数に驚いて何度も瞬きをする。二人より遅れてきたのはコリルの母親と祖母に挨拶をしていたからだ。父親は仕事に出かけていて今はいなかった。
「一番最初にもらったぬいぐるみはどの子かしら?」
「えっと‥‥この子。ピンク猫ちゃんっていうの」
かなり傷んでいるぬいぐるみをコリルはルネの手にそっとのせる。
「私にこのほつれとか直させてもらえる?」
「うん。お願いするね。あたしじゃうまくできないもの」
ルネは手芸道具を借りてさっそく縫いぐるみの修繕を始めた。そしてこの縫いぐるみを一緒に連れていったらいいとコリルに勧める。
「このピンク猫ちゃんはどうやって手に入れたんだい?」
「えっとね。こっちのお父さんに買ってもらったの。五歳のときにちょうど聖夜祭の頃だったかな。露店で売ってたんだよ〜」
ラルフェンの訊ねにコリルが思い出を語った。
「他の子は俺が大切に預かり、我が家で飾っておこう。コリル次第だがどうだろう?」
「うん、お願い。お父さん」
「そ、そうだな。せっかくだから全部の子を絵に描かせてもらおうか」
「ホント? 本当に描いてくれるの?」
お父さんと呼ばれて照れた様子のラルフェンの腕をコリルが両手で握って振り回す。その様子を縫い針を使いながらルネは微笑ましく眺めていた。
その後、数日をかけてすべての縫いぐるみはラルフェンの家に運ばれる。約束通りにラルフェンはすべての縫いぐるみが集合する絵を完成させた。縫いぐるみ達と共に頑張るコリルを応援する想いを込めながら。
●クヌット
ある日、ジュリアはアニエスとコリルに連れられて外出する。ドレスの仮縫いを見学しないかと誘われたからだ。
ジュリアの留守の間にデュソー家を訪れたのはルネ。
「お話がありまして――」
ルネはジュリアがクヌットに謝るようにする為に仲間達を代表して二人の両親に協力を求めた。
アニエスが考えた方法はひたすらジュリアに対して沈黙する事。デュソー家の全員がだ。
難色を示した両親だが二日間だけという約束で承諾してくれる。いくらクヌットの為とはいえ、それ以上は親として見ていられないというのが理由であった。
気持ちがわかるルネは無理をする必要はないと話し合いの最後に付け加える。そして戻ってきたジュリアを抱きしめてから立ち去った。
「お兄ちゃんは家を出てったりしないよね」
家に戻ってきたクヌットの服の袖をジュリアが引っ張る。
(「ごめんな。ジュリア」)
クヌットはぐっと我慢して何もいわずに自分の部屋に消えた。
その時からデュソー家では筆談でやり取りされる。ただやはり両親は辛かったのか、一日持たなかった。それでもクヌットは沈黙を守る。
「こんにちはデス、すふぃんくすさんデス〜」
落ち込んでいる様子のジュリアの元にやってきたのはまるごとすふぃんくす姿のラムセスである。
「ラムセスちゃんだ」
「ばれてたのデス」
抱きついてきたジュリアにラムセスは照れてみせる。
日中、ラムセスはジュリアと遊んだ。
「あったかいぎんこさんをご用意したからお外にいきましょ〜」
ジュリアにはまるごとぎんこを着せて魔法の絨毯で空の散歩である。精霊の『柳絮』と『それいゆ』も一緒だ。
「あそこがクヌットさんが剣術や馬術を教えてもらっている吉多さんのおうちデス」
ラムセスはセーヌ川沿いの建物を見下ろしながら指さす。そして小高い場所へ着陸し、パリの景色を眺めながらジュリアと一緒にシュクレ堂の焼き菓子を頬張った。
「皆クヌットさんと仲良しデス。パリだけでもこんなに広いデス。人はいつか旅に出るデス。クヌットさんも騎士さんになりたいデス。ジュリアさんも寂しいかもしれないデスけど、ジュリアさんも素敵なレディになってクヌットさんを見返そうデス」
そういってラムセスは自分のお母さんからもらったという手紙をジュリアに見せる。
「ジュリアさんも字を覚えてクヌットさんとお手紙するデス?」
「そうすればお兄ちゃんと話せるようになるの?」
ラムセスは手紙がどういうものかをジュリアに優しく説明する。
デュソー家に戻るとルネが来訪していた。
「ジュリアが寂しい様にクヌットも寂しいのよ。だから寂しいのを少しだけ我慢して、お母さんやお父さんと一緒にクヌットを応援してくれないかな?」
ルネも促すようジュリアとお話をした。
「お兄ちゃん寂しいの?」
「そうよ。でも騎士になりたいのよ。それにジュリアの応援があれば、クヌットはきっと立派な騎士になれるもの」
ジュリアはルネに何度も訊ねるのだった。
●そして
相談から五日目、一同は冒険者ギルドに集まった。
ジュリアはクヌットに謝ったようだ。話すクヌットの顔がとても嬉しそうだったのがラムセスとルネの印象に残る。
「こんなに皆に愛されてるんだもの、優しい騎士になってね」
ルネはクヌットを応援し、他の子達にも一人ずつ声をかけた。
「皆様の憂いがなくなったようでよかったです。後は‥‥」
ドレスの仕上がりが予定に間に合いそうでアニエスもほっと胸を撫で下ろす。
子供達はお礼としてシュクレ堂の焼き菓子をみんなに贈る。
年の瀬も近づき、パリにもうすぐ聖夜祭が訪れようとしていた。