真・悪魔殲滅大作戦 〜シーナとゾフィー〜

■ショートシナリオ


担当:天田洋介

対応レベル:フリーlv

難易度:易しい

成功報酬:4

参加人数:7人

サポート参加人数:1人

冒険期間:01月04日〜01月09日

リプレイ公開日:2010年01月13日

●オープニング

「とぉ〜!」
 パリ冒険者ギルド受付嬢シーナ・クロウルの自宅から掛け声が寒空の外に洩れ聞こえる。
 声の後には何かがまとめて倒れる音が続く。
「ふぅ‥‥。あんまり遅いと近所迷惑なので、今日はこのぐらいにしておくのですよ〜♪」
 シーナが片づけ始めたのはケーゲルシュタットという遊びの道具類。棍棒六本と、大小の球二個の木製だ。
 棍棒には悪魔の名前がつけられていて、それぞれに点数も設定されている。
 インプは1。グレムリンは2。リリスは3。イペスは4。アビゴールは5。アガリアレプトは6点だ。
 二個あるうちの好みの大きさの木球を手にし、遠くに並べた棍棒を狙って床へ転がす。棍棒を倒した分だけ設定された点数がもらえる。倒れた棍棒を並べ直して三回木球を投げて合計する。そして一番点数の多い者が勝者だ。
 元々は修道院で行われていた悪魔払いの儀式なのだが、今では遊戯として世間に広まっていた。
 以前にもシーナは何度かケーゲルシュタットの大会を開いた事がある。
「今度こそ勝つのです!! 負けられないのですよ〜☆」
 家の外壁にケーゲルシュタット大会の告知を貼ったシーナは握り拳を作って冬の夜空を彩る星々に誓うのであった。

●今回の参加者

 ea2004 クリス・ラインハルト(28歳・♀・バード・人間・ロシア王国)
 eb3759 鳳 令明(25歳・♂・武道家・シフール・華仙教大国)
 eb7706 リア・エンデ(23歳・♀・バード・エルフ・イギリス王国)
 eb8121 鳳 双樹(24歳・♀・侍・人間・ジャパン)
 ec1862 エフェリア・シドリ(18歳・♀・バード・人間・神聖ローマ帝国)
 ec5115 リュシエンナ・シュスト(25歳・♀・レンジャー・人間・ノルマン王国)
 ec5382 レオ・シュタイネル(25歳・♂・レンジャー・パラ・フランク王国)

●サポート参加者

ラルフェン・シュスト(ec3546

●リプレイ本文

●練習
 パリの無人屋敷。
 シーナの貼り紙を見て集まった人々は、ケーゲルシュタットの大会開催の為に広間を掃除していた。
 以前、本格的に掃除しただけあって薄く積もった埃を取り除くだけで済む。最後に木球を転がす床への油塗りが終わる。
「磨き込みは終わりましたね。前から参加したかったのです。ケーゲルシュタット」
 クリス・ラインハルト(ea2004)がシーナの隣で屈んで床板を指先で触ってみた。
「シーナさん。参加する以上、本気で負けませんですよ?」
「強力なライバル出現なのです☆」
 和気藹々と話すクリスとシーナの元に降りてくるシフールが一人。
「ついにこにょ日が来たにょ〜ね。らいばるに引導をわたしてにょるまんけーげる☆王をめざすにょ〜」
 まるでゴゴゴゴゴゴッと目から炎を燃やすような勢いの鳳令明(eb3759)であった。以前に使ったマイボールも持参してやる気満々だ。
 鳳令明の手に握られていたのはクリスに頼まれて作った始球式用の新しい棍棒。悪魔『バアル』の姿を刻んだものだ。人とカエルと猫の頭を持ち、蜘蛛の身体をしていた。
「私も勝ちに行きますよ。目指せ一番!」
 シーナの背後にいたリュシエンナ・シュスト(ec5115)が、握り拳を作って天を見上げる。偶然ではあるが鳳令明も同じような立ち姿で闘志を燃やす。奇しくもシーナも似たような誓いをしていた。
「これ、一回やってみたかったんだよなぁ」
 レオ・シュタイネル(ec5382)が始球式の投手に選ばれる。狙いを定めてバアルの棍棒へと一直線。見事、カ〜ンッと棍棒を吹き飛ばした。
 壁に跳ねて戻ってきた木球をシーナが拾う。
「よっす、シーナ。優勝目指して頑張るぞ!」
「ふふふっ、みんな狙っているようですけど、この日のために猛特訓を積んできたのです☆」
 レオとシーナが楽しそうに話す。その様子をリア・エンデ(eb7706)と鳳双樹(eb8121)は遠くから眺めていた。
「シーナ様がすご〜く燃えてるのですよ〜」
「私もシーナさんに負けませんよ」
 がんばりのポーズをした鳳双樹をリアが応援する。呼応したフェアリーのファル君、雲母、雫が二人の頭上を飛び回った。
「シーナさん。川口花さんとティリアさん、呼びたいのです」
「はいなのです〜。花さんは迷子が怖いので送り迎えをお願いするのです☆ そういえば――」
 エフェリア・シドリ(ec1862)は花を呼ぶ話のついでにシーナからぞ〜にぃについてを聞く。
「ぞ〜にぃってどんなジャパン料理?」
 側にいたリュシエンナもぞ〜にぃへの興味を示した。
「お手紙を書いてみるにょ〜。ラルフぶんたいちょ〜とか招待するのじゃ〜」
 鳳令明は練習の前に大会出場への招待状を書いた。
 シーナ曰く、ゾフィーは仕事が終わったら来るらしい。レウリーはゾフィーからの誘いを断るはずもない。ちなみにこの空き屋敷の持ち主とレウリーは知り合いである。元ちびブラ団についてはリュシエンナが手伝いに来た兄のラルフェンと直接誘うという。
 なので実際に鳳令明が書いたのはラルフ卿と偽ヨシュアス宛ての二通だ。どこにいるのかよくわからないのでコンコルド城に送った。後に判明するが丁寧な返事の手紙によって二人は欠席となる。
 用事のある者は外出。多くの者は木球を手にしてケーゲルシュタットの練習を始める。
 それぞれに自前で持ってきたセットの他にシーナが予備の道具を持ってきていた。二人から三人で組み、順番で投げ合うのだった。

●花の家
「元気でよかったのです」
 花の実家を訪れたエフェリアは幼い菊太郎を膝に乗せ、リサが抱く赤ん坊のユーリを眺めていた。
「おかげさまでね。あっ、ちょっと待ってね」
 リサは眠ったユーリをベットに寝かさせてから戻ってくる。
 最初には菊太郎に、続いて寝ているユーリにエフェリアが渡したのはお年玉だ。
 花がエフェリアと一緒に出かけようとするとリサがお餅を持たせてくれる。これでぞ〜にぃが作れるとエフェリアはお礼をいう。
 ジョワーズに立ち寄って予約をしたエフェリアは、料理人のティリアにも大会の出場を勧めるのだった。

●吉多の家
「稽古が終わったところかな?」
「そうらしいな」
 リュシエンナとラルフェンは吉多の家を訪ねた。そしてベリムート、クヌット、コリル、アウストをケーゲルシュタットの大会に誘う。
「うん♪ 途中まで参加しようか〜」
 コリルに他の三人も賛同して参加が決まった。
 全員で屋敷へと向かってさっそく練習を始める。
「ゾフィー、妹から聞いた。よかったな、レウリーと仲直りできて」
「ええ。みなさんに心配かけてしまって」
 夕方頃やってきたゾフィーにラルフェンが声をかけた。
「がんばれ〜!」
 リュシエンナや元ちびブラ団が見守る中、ラルフェンは参考記録を残す。20、15、17で合計52だった。

●安穏
 練習の日々はまったりと続いた。
 空いた時間に屋敷を訪ねては木球を転がす。メラメラと闘志をたぎらす者は泊まり込みをして没頭する。
 時にはみんなで料理を頂く時もある。
「ぞ〜にぃ、お待ちどうさま♪」
 リュシエンナが作ったのはシーナ曰く『ぞ〜にぃ』である。花、エフェリア、ティリアが手伝い、味見はシーナが担当したものだ。
 醤油ベースのジャパンと変わらないものと、とろとろお肉入りチーズ・シチューと餅の組み合わせによるノルマン風ぞ〜にぃが日替わりで用意される。
「面白いのですね〜♪」
 クリスがフォークで刺した餅を唇でくわえて『みょーん』と伸ばす。
「楽しいにょ〜♪」
 鳳令明、そして全員がクリスと同じようにやってみた。
「みょーん、楽しいのです。パンとふわふわもあるのです」
 エフェリアはシュクレ堂で買ってきたパンを振る舞う。
「シーナ様、お口の回りが真っ白なのですよ」
「はっ!」
 シーナの鼻の下に出来ていた生クリームのお髭をリアが持っていた布で拭いてくれる。
「シーナさん、この後はリアさんと私とで練習をしましょう♪」
「わかったのです♪ 食べたら運動しないといけませんよね〜」
 鳳双樹にシーナは、はつらつと答えた。
「美味しそうなもの、皆、よく知っているよな〜」
「あ、レオさん。このシュクレ堂のパンは特に美味しいのですよ」
 レオとシーナは食べ物からケーゲルシュタットに話題を移す。どうやらレオは小さな木球の方が合うようだ。
「そういえば‥‥」
 リュシエンナはコリルと話しているうちに出身国がばらけているのに気がつく。
「あたし達は冒険者としてノルマン代表〜♪」
 コリルがリュシエンナ、ベリムート、クヌット、アウストと手を繋いだ。
「名乗るのも面白そうなのですよ?」
 という訳でクリスはロシア王国代表となる。
「我が華国にょ〜け〜げるりょくは世界一なにょじゃ〜」
 鳳令明は華仙教大国代表を宣言。
「あたしはジャパンね」
「わたしの代表選手さんは神聖ローマ帝国です」
 鳳双樹はジャパン、エフェリアは神聖ローマ帝国。
「俺、フランク王国代表ッ!」
「はう〜。な、なら私はイギリスなのですよ〜」
 レオはフランク王国、あたふたしながらリアがイギリス王国代表を言葉にする。
「わたしは冒険者ギルド代表なのです☆ あ、今お仕事中のゾフィー先輩には内緒なのですよ〜」
 全員が宣言したところで掛け声があがる。
 三日目の夕方には元ちびブラ団四人の先行試合が始まった。明日から数日間、パリにいないからだ。
「調子よかったのに残念だぜ」
 クヌットの一投目はすべてをなぎ倒しての21。続いて15、最後は大ハズレで0。合計36で終わる。
「アガちゃんに嫌われているよね〜」
 コリルは10、15、15の合計50。アビゴールを一本。そして三投ともアガリアレプトは倒せずだ。
「半端をとり逃したな」
 ベリムートはリリスを二回、イペスを一回倒し損ねる。18、18、17で合計53の成績だ。
「あと一本だったのに」
 アウストは二投目にアガリアレプトを残しただけだ。21、15、21の合計57の好成績を残す。
 元ちびブラ団の成績は最終日の本試合に含まれる事となった。

●大会
 五日目の早い時間からケーゲルシュタット大会は始まった。
「リアさんがんばって〜」
「冷静になれば大丈夫なのです〜」
 鳳双樹とシーナが大声でリアの応援をする。
「大回転グルグル投げなのですよ〜」
 リアは回転しながら木球を投げ出す投法を編み出していた。最初は三本残して6。二投目は大ハズレ。三投目はアガリアレプトのみを倒して6。合計12点で終わる。
 点数によってエフェリアの鈴の音が鳴り響いた。
「はう〜〜、目が回って気持ち悪いのです〜〜。ファル君もですか〜」
 投げ終わるとふらふら〜ぺったんと床に大の字に寝転がったリア。真似していたフェアリーのファル君も主人と同じ格好だ。スノーマンの雪ちゃんも何故か主人の近くで寝転がる。
「散々煮え湯飲まされたもんな、デビルには。レオ・シュタイネル、いっくぞ〜」
 レオは最初こそイペスを残したものの、その他は全部倒す。17、21、21の合計59というよい成績だ。三投目の時、レオは勝利のポーズを取った。
「先輩〜、レウリーさんにいいとこみせるのです〜」
 シーナやみんなの応援を浴びながらゾフィーが木球を転がす。16、15、10の合計41。続いて投げたレウリーは21、16、16の合計53で投げ終わる。
(「狙うはイペスとリリスの間‥‥。回転を忘れずにっと」)
 綺麗なフォームで投げたのはリュシエンナ。三投目でイペスを残したが残りはすべてなぎ倒す。21、21、17の59だ。
「え〜と、こんな感じかな」
 続いては料理人のティリアの番である。仕事が忙しくてあまり練習していないのに関わらず、10、15、10で合計35の成績を残した。
「あたしもがんばらないとね」
 川口花は6、6、大ハズレの合計12で終了。特に三投目はシーナの頬をかすめる大暴投である。投げる球も迷子の気質を持っているようだ。シーナよりも子猫のスピネットが驚いていた。
(「むむ‥。悪魔は厄介だったのです」)
 花の次に投げるクリスは小さな木球を持ち、瞳を閉じていた。黙示録の戦いを思い浮かべていたのである。
「ていっ!」
 闘気を高めて投げてからは早かった。次々に木球が棍棒にゴロゴロ転がってゆく。16、15、17の合計48だった。
「要は剣術と同じ‥‥集中が大事ですよね‥‥」
「双樹ちゃん、がんばるのです〜」
 鳳双樹はリアの声援に手を振ってから投げた。三投目のストライクの時にはリアとシーナは抱きつきながら喜ぶ。18、11、21の合計50だ。
「アガリアレプトさんに向かって転がすのです。ごろごろなのです」
 両手で抱えた小さな木球を持ったエフェリアは中央より左に寄ってから床へ転がす。両手の下投げで力一杯だ。二投目にストライクを叩き出し、10、21、6の合計37の成績に終わる。
「いくにょ〜〜!」
 鳳令明は助走に加えて全身のバネを使い、シフールとは思えない力強さで木球を転がした。二投目にイペスを残したものの、他は完璧。21、17、21の合計59という数字を残す。
「し、しまったのです〜」
 最後に投げたのはシーナだが凡ミスに泣く。最後こそストライクだったが、19、18、21の合計58。
 59が三人いたので同点決勝と相成る。六点のアガリアレプトをバアルに変えてさっそく始まった。
「せっかくだから悪魔殲滅するぞ!」
 レオはアビゴールを残して16。
「シフール魂をみせるにょ〜!!!!」
 猪突拳を利用したパワフルな投法だった鳳令明だが、一番先頭のインプがかすって踊っただけで倒れるまでには至らない。よって20。
「兄様にちゃんと報告出来るようにしないとね」
 リュシエンナはここにきてすべてをなぎ倒して21。バアルが宙をくるくると飛んで床に転がる。
 優勝はリュシエンナ。
 二位、鳳令明。三位、レオ。四位、シーナ。五位、アウスト。六位はレウリーとベリムート。八位は鳳双樹とコリル。十位、クリス。十一位、ゾフィー。十二位、エフェリア。十三位、クヌット。十四位、ティリア。十五位はリアと花で終了した。

●そして
 大会が終わって全員で向かったのはレストラン・ジョワーズ。チーズ料理と肉料理が美味しいと評判の店だ。
 エフェリアが予約していた個室での打ちあげが始まる。
「はう〜久しぶりなのです〜〜〜。と〜っても美味しいのですよ〜〜」
 リアは涙をちょちょぎらせながらフォークでパスタ料理を頬張った。
「シーナさん、こちらのお肉、とってあげますね」
「お肉の友よ。ありがとうなのですよ♪」
 鳳双樹は遠火で焼いた豚肉を切り分けて皿に乗せてシーナに渡す。
「ゾフィーさん、結婚の準備、順調でしょうか?」
「ええ。どんどんと決まっていて、もしかするとすぐかも知れないわ」
 隣にいるレウリーとゾフィーの仲が良さそうで安心するエフェリアだ。
「なぁ、シーナ、おススメのメニューとかはあるか?」
「そうですね〜。新メニューの肉そぼろのパスタ、すごく美味しかったのですよ〜。そちらのティリアさんの発案なのです☆」
 レオの質問にシーナは次々と答えてくれる。ちなみに今日は雇われている料理人としてでなく、客としてテーブルについていたティリアであった。
「シーナさん、今年の抱負は如何に?」
「そうですね〜。抱負はいつも元気になんですけど、それとは別にベリムートさんが旅立つ西の海への航海の帰りが楽しみなのですよ♪」
 リュシエンナはシーナを始めとしてみんなに抱負を訊いた。自身はゾフィーや兄の結婚式をまず見届けたいという。その後は吹く風次第だ。
「ケ〜ゲルにょあとははらぺこにょ〜♪」
「こっちの豆スープも美味しいのですよ。ほっぺた落ちそうになるのです☆」
 鳳令明はシーナに負けず劣らずとたくさんの料理を頬張る。
「単純ながら奥が深いですね☆ ケーゲルシュタットは」
「そうなのです〜。なので飽きないのですよ♪」
 シーナはプレ・サレの香草焼きを鉄串から外してクリスの皿に乗せる。レオの分も用意して皿を手渡した。プレ・サレとは海岸線で育てられた子羊肉である。臭みが少ないのに独特の風味がある特別なお肉だ。
 人心地つくとリアが竪琴を奏で始める。
 エフェリアは大会の最中を描いた絵をみんなに贈った。
「わたしのお家に寄って欲しいのですよ♪」
 ジョワーズを出た後、全員でシーナの家に向かう。そこで一人一人に手渡されたのは巨大な鉄の道具。焼き肉の為にシーナがルーアンの鍛冶職人に頼み、特注で作ったものだ。
「シーナ様、お、重いのですよ〜」
 リアが持とうとしてもびくともしない。
「お届けするのですよ☆」
 シーナは愛馬トランキルにリアの道具セットを載せる。お互いに協力しあって運ぶことにした。
 みんなの家を回る間にも会話は弾んだ。最後、笑顔で別れる一同であった。