ちびっ子ブランシュ騎士団と悪魔崇拝の館

■ショートシナリオ


担当:天田洋介

対応レベル:フリーlv

難易度:普通

成功報酬:4

参加人数:6人

サポート参加人数:6人

冒険期間:02月28日〜03月05日

リプレイ公開日:2007年03月07日

●オープニング

「アイタタッ」
 ブランシュ騎士団灰分隊長フランを名乗る少年アウストはぶつけて落ちたお尻をさする。いつものオバケ屋敷と呼ぶ無人屋敷の庭で遊んでいると、突然足元が抜けたのだ。そして落っこちたのである。
「アウス‥‥いやフラ〜ン、大丈夫?」
 頭上から橙分隊長イヴェットを名乗る少女コリルの声が聞こえる。
「ぼくは平気だけど、登れないよー」
「待ってて‥‥ああっ!」
 次々と子供達が落ちてきた。どうやら三人で手を伸ばそうとしたが、滑ってしまったらしい。落ちた底には土が積もっていてショックが和らいだ。
「どうしようか」
 黒分隊長ラルフを名乗る少年ベリムートは腕を組んで考えるが何も浮かばなかった。どうやら何かしらの地下通路に落ちたようだ。
「とにかく進んでみようぜ」
 藍分隊オベルを名乗る少年クヌットが穴の中を進み始める。落ちた穴の壁には使いかけのたいまつがあった。オベルを名乗る少年がたいまつを手に取り、火を点ける。
 通路は丸太で補強されているものの、土が剥きだしで、まるで坑道のようである。途中に隠し扉を見つけて入ってみたりした。
 長くたいまつの光だけを頼りにしていたが、四人は遠くに光を見つけて走る。
「ここは教会かな?」
 辿り着いた場所はなんらかの建物の広間のようだ。天井の壊れた個所から光が差す。窓に填った戸は頑丈に打ちつけられていた。押しても引いてもびくともしない。それらしき出入り口もなかった。
「違うよ。ここ‥‥。だって」
 使いかけの蜜蝋燭がたくさん設置されていた祭壇にはシャレコウベがある。床に血の跡のような滲みが点在した。
「これってどう見てもデビルの像だよね‥‥」
「って事は、ここって‥‥悪魔崇拝者の隠れ家?」
 子供達四人は動きを止めた。そして気配がないか、周囲をゆっくりと見回す。誰もいないようだが、よくはわからなかった。
「ここに来るための隠し通路なんだ。俺達は地面が崩れてそこに落ちた‥‥。危険過ぎるぞ」
 四人は急いで通路に向かう。無我夢中で元来た道を戻ってゆく。
 どれくらいの時間が立ったのかはわからないが、落ちた穴の場所まで着いた。とにかく子供達は運がよかった。
 フラフラしながら四人で肩車をしてイヴェットを名乗るコリルを地上まで登らせた。そして縄を持ってきてもらう。木に結んだ縄を掴み、なんとか全員が地上まで這い上がった頃には夜になっていた。
 木材や枯れ草を運んで、穴のあるのがわからないように細工する。
 子供達は家に戻ると夜遅く帰ってきた事で、親達から大目玉をもらった。そのせいもあってか、今日の出来事を話しても誰一人として信じてもらえなかった。
 翌日、四人の子供は集まる。
「まずいぞ。あんな危険な場所見つけたのに母さん信じてくれないや」
「うちもそうよ。ほっとく訳にはいかないよね?」
 四人は寒空の下で考えた。
「冒険者なら信じてくれるかも知れない」
「でもさ、この間いわれたじゃん。報酬あるのが当たり前だって」
「うーん。でも、もしかしたらパリの大危機かも知れないんだよ。この前のはその通りだけど、今回は違うでしょ」
「そうだよ。この前とは違うと思う。冒険者に相談してみよう。それから他の手を考えてもいいんじゃないか?」
 子供達は冒険者ギルドの出入り口近くで待機する。話しを聞いてくれそうな冒険者がいないか、通り過ぎる人々を見つめていた。

●今回の参加者

 ea0714 クオン・レイウイング(29歳・♂・レンジャー・人間・イギリス王国)
 eb2277 レイムス・ドレイク(30歳・♂・ナイト・ハーフエルフ・ビザンチン帝国)
 eb2949 アニエス・グラン・クリュ(20歳・♀・ナイト・人間・ノルマン王国)
 eb4803 シェリル・オレアリス(53歳・♀・僧侶・エルフ・インドゥーラ国)
 ec1031 ヴィメリア・クールデン(31歳・♀・レンジャー・パラ・イスパニア王国)
 ec1235 龍 陽友(30歳・♀・武道家・ハーフエルフ・華仙教大国)

●サポート参加者

アルンチムグ・トゥムルバータル(ea6999)/ ウェルナー・シドラドム(eb0342)/ 光翼 詩杏(eb0855)/ アンリ・フィルス(eb4667)/ バル・メナクス(eb5988)/ 張 源信(eb9276

●リプレイ本文

●話し合い
 ギルド前では冒険者達がちびブラ団を囲んでいた。
「でね。あれは絶対悪魔崇拝者の館なんだ」
「そうなの。でもいくらいっても信じてくれないの」
 子供達は先日の出来事を説明する。
「皆様は賢明です。自分の街を憂う心は騎士として当然ですよね」
 前に手を貸したアニエス・グラン・クリュ(eb2949)は自分より小さなちびっ子分隊長達に微笑んだ。
「あ、これは報告に相当しますから無報酬で結構ですよ☆」
 アニエスは子供達に予め答える。
「ノルマンも物騒よね。でも、小さく見える事も見逃せないわね」
 シェリル・オレアリス(eb4803)は子供達に頷いた。
「ちびっ子達も侮れません」
 レイムス・ドレイク(eb2277)は腕を組んで感心する。
 とにかく子供達のいう館を見てみようと決まる。その前に冒険者達だけで集まった。子供達を連れて行くかどうかである。
『子供達とは同行した方が仕事はやり易いよね』
 ヴィメリア・クールデン(ec1031)は言葉を発せられないので筆談で意志を伝えた。
「俺個人の探索を手伝わせるつもりは全く無い」
 そういったクオン・レイウイング(ea0714)だが、仲間が子供を連れて行くのなら反対もしないそうだ。
「子供達には同行してもらう。ただし日帰りで、夜までにキリをつけて。それと最初にいっておくけど――」
 龍陽友(ec1235)は男に触れられると狂化するのだという。子供でもダメなので、自分に同行させるならコリルだけにしたいそうだ。
「子供達の同行は、精神衛生上反対します」
 レイムスは子供達の将来を考えて反対する。それに対してアニエスが案を出す。自分達が見つけたのに入れないとなれば、子供達は無茶をするかも知れない。年齢が近い事もあり、アニエスは子供の気持ちがわかっていた。
 一日交代二人ずつ、くじ引きで館調査班と入口保持班を子供達にやってもらう。館調査班に連れてゆく子供には精神的ショックに繋がりそうな場所からは遠ざける約束でだ。もちろん子供達にも納得させる。
 考えは違えども子供達の事を思うのは同じであった。子供達は連れてゆく事に決まる。夕方にはヴィメリアが家まで送るそうだ。
 それから冒険者達は子供達に話を訊いた。
「俺、持っているよ」
 ちびブラ団のラルフがクオンに筆記用具を貸してくれた。羊皮紙は近くで買い、子供達に訊いて概ねの地下通路の地図を描いてゆく。
「蝋燭やたいまつの残り具合は如何でした?」
 アニエスがちびブラ団に簡単な質問をしてゆく。シェリルも子供達の話に耳を傾ける。大まかに聞き終わると、冒険者達は子供達と一緒にオバケ屋敷へ向かうのだった。

「ここから入るの」
 子供達が枯れ草と細い丸太を退かす。そこには大人が一人入れる程度の穴が空いていた。
 龍は子供達の使った縄がまだ残っているのを確認する。誰かが来た様子はなかった。
 ちびブラ団内でくじ引きをしてコリルとクヌットが館調査班となる。アウストとベリムートが入口保持班だ。入口保持班にはアニエスの愛犬ペテロを残してゆく。
「皆様はペテロと遊んでいるフリをして穴を見張って頂きます」
 アニエスは入口保持班にいろいろと心得を教えた。それに加え、ペテロに怪しい音が近づいたら吠えるように言い聞かせておく。
 縄を外し、アニエスが持ってきた縄ハシゴをかけようとすると、龍も自分の縄ハシゴをかけようとしていた。二人は笑う。龍の縄はしごがかけられ、冒険者達と子供二人は地下通路に降りる。
 かがり火用のたいまつがまだ壁面の青銅製の篭には残っていた。それに手にとって火を点ける。
 入口保持班の二人が丸太と枯れ草で穴を隠す。真っ暗になった中を子供達の指示通りに進んだ。天井が低く、クオンとレイムスは腰を曲げている。レイムスは一番前を進み、もしもの場合に備えた。
 通りにくさや複雑さ、隠し通路のせいもあったが、三十分程度で館に到着する。
 ここでバラバラになって館の探索が始まった。

●クオンの四日間
 クオンは地下通路に戻った。子供達が指摘した以外にも、気になった場所があったからだ。地図を修正しながら、新たな隠し部屋を探す。土くれが撫でつけられただけの隠し扉や、さらに地下へと続く穴を見つける。
 念の為、忍び歩きで進む。辿り着いた場所には大した物はなかった。拾った木桶をポイッと投げ捨てる。
「ん?」
 何度か跳ねて木桶は止まるが、一個所だけ変な音がした。その場を掘ってみるとすぐに頑丈そうな扉が現れた。明日の作業とする事にして仲間のいる館へと戻る。
 仲間と情報を報告しあう。するとレイムスが興味を示し、一緒に調べる事が決まった。
 翌日の二日目、さっそく開鍵して扉を開け、地下へ降りる。
「これは‥‥拷問部屋だな」
「子供達には見せられません」
 埃を被った様々な拷問道具が並べられていた。その横を二人で通り過ぎる。
 目撃した二人は一瞬目を背けた。奥には穴が掘られていて、底には白骨化した遺体が折り重なっていた。
 三日目、クオンは館の調べに移る。初日にレイムスが祭壇周辺の調べをしていたが、審議をさらに厳格にする為にクオンも行った。意見は殆ど変わらなかった。
 四日目には本や日記を調べた。悪魔崇拝者の館であるのは疑う余地がない。しかし魔法陣の痕跡は見当たらなかった。

●レイムスの四日間
 レイムスはまず地下通路から入ったばかりの広間を調べる。天井から垂れ下がる紋章旗にはドクロが描かれていた。
「こ‥‥これは」
 レイムスには覚えがあった。悪魔の騎士アビゴールが掲げていた軍旗と同じ紋章である。
「という事はここを使っていた悪魔崇拝とは、以前戦ったラヴェリテ教団の可能性が高いです」
 側にいた仲間にレイムスは伝えた。
 祭壇には男と女の対となるドクロがあった。女のドクロには作り物の蛇が巻き付けられ、どうやら旧約聖書のアダムとイヴを指していると思われる。数え切れない程の蜜蝋燭は短くなると継ぎ足されている。長く祭壇は使われていたのが窺えた。
 二日目はクオンと一緒に地下通路にあった拷問部屋を訪れた。その陰惨さに、吐き気を感じる程であった。
 三日目には館内の広間以外を調べた。豪華な部屋が六室あり、そこに残っていた手紙や蔵書を調べてゆく。聖書もあったが、デビルに関しての書物が多い。巻かれた羊皮紙があり、紐解くと血で書かれた署名がたくさんあった。ラヴェリテ教団信徒の名簿だ。
 四日目、レイムスは今まで調べた個所を確認しながら考えをまとめてゆく。屋根裏はアニエスと子供達が隠し部屋を発見していた。

●アニエスの四日間
「しっかり掴まって下さいね」
 アニエスはちびブラ団のオベルをフライングブルームに乗せて浮かぶ上がる。ちびブラ団のイヴェットは龍に任せていた。
 まずは広間の天井の壊れた場所を小槌で少しずつ広げる。そろりと顔を外に出し、誰もいないのを確認する。
「あっちがパリだな」
 ちびブラ団のオベルが指差した方にはパリの街並みがあった。高く空を飛び、館がわずかにパリ郊外にあるのがわかる。高い塀と取り巻く林のおかげで、外部から館の様子は見えない。周囲にも人家はなく孤立した場所にあった。
 夕方になり、仲間との情報交換をすると、アニエスはオバケ屋敷の穴近くにテントを張る。調査が終わるまではここで寝泊まりするつもりでいた。アルンチムグがやって来る。ギルドの資料によると悪魔崇拝者の摘発は行われていたが、調べている館ではなかったようだ。
 二日目、ちびブラ団のフランとラルフと一緒に館を訪れた。地下通路の監視と天井裏の調べを一緒に行う。
 三日目も天井裏を探っていると、隠し部屋を発見する。お手柄はちびブラ団のイヴェットことコリルであった。中に入ると手の込んだ装飾付きの少女用ドレスがたくさん仕舞われていた。はしゃぐコリルの横でアニエスはランタンで周囲を照らす。館の屋根には亀を含む四体の動物の像が飾られていた。これは前にオバケ屋敷を図書館で調べた時にあった東洋の神獣である。隠し部屋の扉にも同じ動物が描かれていた。絵自体に意味はないかも知れないが、どうやら、この館のかつての持ち主はオバケ屋敷と同じようだ。
「ボリス・アングラード‥‥」
 アニエスは図書館の資料で知っていたオバケ屋敷の持ち主の名を呟いた。
 四日目は龍、ヴィメリア、シェリルと一緒に部屋を調べ上げる。子供達は室内寸法を測る為に糸を持って元気よく動き回っていた。

●シェリルの四日間
 シェリルは広間に隣接した部屋を調べ始める。儀式に使われたと思われる物以外にも、生活用品があった。少ないながらここに住んでいた形跡がある。一番雑多な印象のある場所を探し、そこでスクロールで過去の様子を眼前に再現させた。
 間を空けて時間をずらして何度も観る。
「デ‥‥」
 最後に翼のある小さなデビルらしき姿が現れた。手には手紙を持ち、飲み物の容器を逆様にして中に入ってないか確かめていた。そこで魔法は切れる。話し合いの時に事を仲間に伝え、注意を促すのだった。
 二日目も過去を観てみたが、デビルの姿は現れない。昨日に一週間前を観たので、同じ時間をなぞるのは無理であった。それ以降の時間にデビルの姿は見当たらない。後の時間はちびブラ団のラルフと一緒に隠し部屋を探した。何か引きずった痕がないか調べたが、その日は見つからなかった。
 三日目、優良視力が役に立ち、痕の追跡の末、隠し部屋を発見する。ちびブラ団のオベルと一緒に中を探ると、たくさんの本が置かれていた。表の部屋にも書庫はあったが、ここにあるのは傷みの激しい書物である。ここで写本が作られて表の書庫で閲覧出来るようにしたようだ。
「ということは、ここにあるのは稀覯本。表の本より重要な本があるかも知れませんね」
 シェリルの言葉にちびブラ団のオベルは大喜びだ。
 四日目はヴィメリア、アニエス、龍とちびブラ団の二人と一緒に部屋の寸法などを調べたのだった。

●ヴィメリアの四日間
 ヴィメリアは、まずは広間の全体図に取りかかった。祭壇の様子や天井から垂れ下がる紋章旗、椅子などを丁寧に描いてゆく。
 時々、ちびブラ団の二人が手があいたようでやってくる。子供達はまだ文字がよくわからないようで筆談は無理であったが、絵によって意志の疎通は出来た。
 壊れた天井から差し込む日が赤くなり、ヴィメリアはちびブラ団のイヴェットとオベルを送る事にした。地下通路を抜けて穴を登り、ちびブラ団のラルフとフランも合流させる。手を繋いで子供達を家まで送り届けた。依頼の間は毎日送るつもりでいた。
 二日目には地下通路にあった拷問部屋の様子をクオンに頼まれて描く。あまり気乗りしない場所であったが、資料としては必要であった。ランタンを頼りに描いたが、なるべく早めに退散する。
 広間に戻ってヴィメリアはちびブラ団の子供達に絵を描いてあげようと思いつく。
「これ俺なの? かっこいいよ。ほんとの黒分隊長みたい」
 最初に描いてあげたちびブラ団のラルフはじっと絵を見つめて喜んでくれた。時間を見てフランの絵も描く。少しだけ背を高くし、白い外套と鎧を身にまとう姿であった。
 三日目は天井裏の隠し部屋が見つかり、呼ばれてそこを描いた。合間にちびブラ団のイヴェットを描いてあげる。リクエストで鎧には花の文様をつけ加えた。オベルの絵も描いて四人全員分が終わる。送り届ける帰り、ちびブラ団全員からお礼の言葉をもらった。別れの時、長く手を振る子供達にヴィメリアも手を振った。
 四日目は龍、アニエス、シェリルとちびブラ団の二人と一緒に部屋を調べる。ヴィメリアは丁寧に部屋の様子を絵に描くのであった。

●龍の四日間
「よろしくね」
 ちびブラ団のイヴェットことコリルが龍に改めて挨拶をした。館の見張りと警護をしようと考えていた龍だが、初日だけに一番目立つ広間には仲間がたくさんいた。
「そうだ。館とは反対の方はどこに繋がっているか調べてみるのはどうかね?」
 龍は屈みながらコリルに訊ねた。小気味よい返事があり、二人は地下通路を進み始めた。途中、見かけたクオンに手を振る。穴の下を通るとき、入口保持班の二人と犬に声をかけてさらに進んだ。
 数メートルの階段を登り、光が洩れる天井を龍とコリルでゆっくりと押し上げる。わずかな隙間から覗くが、人影はない。どこかの建物のようだ。
「ここ、オバケ屋敷だよ」
 コリルは周囲を走りながら確認した。前に冒険者達と一緒に入った事があるという。オバケ屋敷の裏口近くに通路は繋がっていた。普段、子供達が遊んでいる反対側にあたる場所だった。
 二日目、入口近くの壁の狭間で龍は起きる。この日はヴィメリアにランタンを貸して、館の見回りと警護に務めたのだった。
 三日目、二日と同じく見回りと警護をしていた龍にコリルが近づいてきた。
「これみて!」
 手にしていたのはヴィメリアが書いた騎士姿のコリルの絵だ。龍は一緒に喜んだ。龍は筆談でヴィメリアに頼まれ、コリルに伝える。無理してブランシュ騎士団じゃなくても良いんだよ、キミ達はキミ達だからと。他の三人にも会った時に伝えてあげた。
 四日目、アニエス、シェリル、ヴィメリアとちびブラ団と一緒に行動をした。みんなが調べている近くで警護を行う。シェリルによれば過去にデビルが現れたようだ。警戒を怠る訳にはいかなかった。

●全員の最終日
 四日間で調べた内容を全員で付き合わせて、提出書類を二部作る。一部は冒険者ギルド、もう一部は王宮に提出する為である。
 午後になり、暮れなずむ頃に書類は完成した。
 まずは冒険者ギルドに提出する。その足で城へと向かった。
 門番の衛兵に話をすると、しばらく待ってくれといわれる。すぐ近くにある衛兵用の休憩部屋に通されて冒険者とちびブラ団は座って待った。
「ブランシュ騎士団黒分隊隊長ラルフ・ヴェルナーという。悪魔崇拝の館があると聞いたが、君らが発見してくれたのか?」
 白い外套を揺らし部屋に現れたのはラルフ分隊長であった。突然の出会いにちびブラ団の面々は固まった。ラルフを名乗るベリムートを始め、四人共書いてもらった絵を見せる。ラルフと全員が握手したが、子供達はマリオネットのような動きである。
 書類を提出し、さらに子供達はラルフに頭を撫でられた。冒険者であるアニエスも撫でられて顔を真っ赤にしていた。
 館のさらなる調査と閉鎖をラルフが約束し、全員で休憩部屋を後にする。
 報奨金が後で届けられるというので、書類作りに使った羊皮紙など材料代は割り勘にする事にした。クオンが子供達用に買ったお菓子も含む事にし、みんなから渡す。
 大喜びしたちびブラ団は冒険者達に二つ名をつける。
「お菓子ありがとう。信じてくれてありがとう」
 夕暮れ、全員が手を振って別れるのだった。