デビルの欲するモノ 〜サッカノの手稿〜
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■ショートシナリオ
担当:天田洋介
対応レベル:11〜lv
難易度:普通
成功報酬:8 G 65 C
参加人数:8人
サポート参加人数:2人
冒険期間:03月04日〜03月12日
リプレイ公開日:2007年03月12日
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●オープニング
静かなる森の奥、雪残る山中には枯れた蔦に覆われる石造りの古き建物があった。屋敷と呼ぶには小さすぎるその住まいには、何名かの者が滞在していた。
そして今、夜空から現れた客人を迎える。
闇の中、悪魔崇拝ラヴェリテ教団の若き指導者エドガ・アーレンスは雪が降り積もった庭に跪いていた。その隣りには少女コンスタンスの姿がある。
漆黒の翼をヘルホースが静かにたたむ。エドガの前にはヘルホースに跨ったままの、アビゴールの姿があった。
「わかっておるな」
アビゴールはエドガに長槍の先を向けた。
「はい、アビゴール様。策は既に心の中に。数日後には動く所存でおります」
「その言葉が聞きたかったのだ。報告を待つとしよう」
アビゴールは長槍をエドガに向けるのを止め、コンスタンスに振り向く。
「おじさま。エドガ様も反省しております。わたくしも考えが御座いますので、どうかごゆるりとしてお待ち下さいませ」
「デビルと人間は種として相容れぬ。人間のような呼び方は止めろというておる」
「幼き頃、そう呼んでよろしいと仰ったではありませんか」
少女コンスタンスの小さな笑い声だけが周囲に響いた。
「コンスタンスよ。長きおぬしの一族の願い、叶えようぞ」
アビゴールが伝え終わると、ヘルホースが翼を広げた。ゆっくりと飛び上がったと思うと、遙かなる上空に姿を消した。
「神よ」
パリ教会の礼拝堂で、司祭ベルヌは神に祈りを捧げる。三賢人の末裔である彼は司祭とは思えぬ程の筋肉質な身体をしていた。聖職者の服をまとわなければ、知った者でなければわからないであろう。
「悩みでもあるのか? ベルヌとやら」
若い女性の声が聞こえ、ベルヌは振り向く。
「‥‥コンスタンス!」
少女の姿に司祭ベルヌは呟いた。
「貴方のいうコンスタンスではありませんが‥‥そう、わたくしはコンスタンスという。一緒に来て頂きたく、お迎えに参りました」
少女コンスタンスの側にはエドガの姿もある。
「大胆な‥‥。悪魔崇拝者が教会を訪れるとは」
「そう。騒ぎを起こせば我々もただではすまぬ。しかし教会もそれなりに覚悟してもらう事になろう。お前一人がついてくれば何事も起きぬ。安心しろ。考えを変えたのだ。殺しはしない」
礼拝堂には三人だけであった。
「あなたも知りたいのではなくて? そう、知恵の実を口にしたのは人間ですもの。あくなき知識への欲求は抑えられるはずもない」
「何をいっているかわからない」
「サッカノの手稿に書かれてあるはずの‥‥白き玉の在処の事よ」
司祭ベルヌと少女コンスタンス、そしてエドガの話しは続く。
そして司祭ベルヌは教会から姿を消した。迎えに来た二人と共に。
三賢人の末裔の一人である司祭ボルデが冒険者ギルドを訪れたのは司祭ベルヌの失踪から数日が経った後であった。
個室に通された司祭ボルデは司祭ベルヌの行方を捜して欲しいと依頼を行う。
「何か手がかりとなる物とかはありませんか?」
受付の女性が訊ねると司祭ボルデは古い羊皮紙の束を取りだした。
「これはこちらのギルドでお世話になった事がある『サッカノの手稿』の一部の写しです。先祖代々伝えられてきた物です」
捲られた頁には絵が描かれていた。
「この絵の女性の名はコンスタンス。サッカノ司教の娘です。彼女は悲運の死で亡くなるのですが、既に一人の男の子を産んでいました。問題はその赤子が行方不明になったのです。もちろん遙か遠き時代の出来事。その赤子はとうに亡くなっているでしょうが、問題はサッカノ司教の血を受け継ぐ末裔なのです」
司祭ボルデは話しながら、雪山で少女の姿に引き寄せられて殺された司祭アゼマを思いだす。あの時の少女はこの絵の女性コンスタンスと瓜二つであった。
司祭アゼマもこの絵を知っていた。それ故に確認しようと少女に近づいていまい、悪魔崇拝者に殺されてしまった。
「その末裔がデビルに飼われているのではないかと私を含む三賢人の一族は考えています。生かしておく理由は、デビルが欲す白き玉、大量のデスハートンの玉の隠し場所の鍵である可能性がある事。サッカノの手稿には在処が暗号として書かれているのです。いや、まだ完全にはわからないのですが‥‥。それにその謎はサッカノの手稿の一部ですし」
司祭ボルデは考えをまとめるためにしばし目を閉じた。あらためて口を開く。
「最近になり、サッカノの手稿を狙う一団の事がブランシュ騎士団のおかげでわかりました。悪魔崇拝の集団はラヴェリテ教団といい、指導者の名はエドガ・アーレンス。それを率いるはデビルの騎士、アビゴール。奴らが司祭ベルヌを連れ去ったのに間違いありません。わたしも冒険者についてゆき、大量のデスハートンの玉が眠る場所を探します。そうすれば司祭ベルヌを助けるチャンスもあるはずです。よろしくお願いします」
司祭ボルデは依頼を出し終わると祈った。司祭ベルヌの生存と、そしてデビルに心奪われぬようにと。
●リプレイ本文
●探索
「それでは行こうか」
ナノック・リバーシブル(eb3979)は仲間に声をかける。冒険者達は司祭ボルデから緊急用の薬を受け取り、雪が所々に残る山に足を踏み入れた。
二日をかけて目的の山岳部の麓に着き、今は三日目の朝だ。冒険者の中で御者の上手な者で交代しながらここまで来たが、特別な問題は起きていない。馬車に揺られながら、様々な事を司祭ボルデに訊いて、すでに作戦は練られていた。集落とさえいえない木こりの家屋が二軒ほど麓にあり、そこに馬二頭と馬車を預ける。気のいい人達で安心して預けてよさそうであった。
「よかったら使ってくれ」
李風龍(ea5808)はテッド・クラウス(ea8988)と司祭ボルデに余分に持っていたセブンリーグブーツを貸した。李風龍(ea5808)自身は韋駄天の草履を履く。他の仲間はすでに持っていたので、全員が長距離を楽に歩くように走れる。李は機動力をあげておく事にこした事はないと考えたのだ。
「まずはここで試してみます」
さっそく着いた遺跡でチサト・ミョウオウイン(eb3601)がミラーオブトルースを展開する。すぐ隣りには愛犬の焔が座っていた。
司祭ボルデによればこの山岳部には太古の祭事遺跡が点在する。すべてがジーザス教に則したものではなく、デビルを崇拝した教えもあったという。
麓に着くまでの間、チサトはサッカノの手稿についていろいろと司祭ボルデに訊いていた。司祭ボルデ自身も手探り状態らしく、まだはっきりとした事はわからないようであった。
残念ながらこの遺跡に魔法を感じさせる何かはなかった。司祭ボルデがサッカノの手稿の研究時に作った地図を見ながら次の遺跡に向かう。
「ダビデ紋を見つけるさね」
ネフィリム・フィルス(eb3503)はフロストウルフと共に岩石の坂道を駆け登る。ボルデ家の写本によればダビデ紋、または六芒星と呼ばれる印が入った場所が怪しいらしい。もっとも遺跡にはありふれた印でもあるので、必ずとはいえないのが残念である。行方不明の司祭ベルヌは、ダビデ紋研究の専門家であった。すでに怪しい場所は絞られていたがダビデ紋はこの周辺に集中する。だからこそ依頼を出した司祭ボルデはここが怪しいと睨んだのだ。
馬を預けた木こりにも司祭ボルデに借りたコンスタンスの絵を見せたが知らないと答えられた。ネフィリムは山の中で猟師などに出会えば絵を見せて訊くつもりである。
「司祭もいろいろ教えてくれたし、何とかなるかね」
シャルウィード・ハミルトン(eb5413)は呟きながら忍犬である影と一緒に遺跡以外の怪しい場所がないか探っていた。空には信頼がおける鷹の愛称ハルが大きく翼を広げて滑空する。テレパシーを使えば大体の状況もわかるし、索敵は万全である。
洞窟をいくつか発見していたが、デビルなどの敵は今の所見つからなかった。しかし油断は大敵である。
「あのときの悪魔崇拝者たちがそんな危険なものを追い求めていたとは」
テッドは隣りを歩く司祭ボルデに、ブランシュ騎士団黒分隊と一緒にラヴェリテ教団と戦った時の事を話した。司祭ボルデはまず狙われると考えられる。テッドは常に警護するつもりでいた。
通りすがる切立った崖のたもとや谷の合間など外部から見えにくい場所に注意を向ける。まず白き玉の在処、そして敵が隠れている可能性もある。すべては注意深く行動しなければならなかった。
「うまくいかないな。何かが邪魔しているのだろうか」
ディグニス・ヘリオドール(eb0828)は司祭ボルデに借りた地図にダウジング・ペンデュラムを垂らすが、特に反応はない。麓に着くまでにもやっていたがやはり反応はなかった。ディグニスはとにかく洞窟を捜索するつもりでいた。細工で隠蔽されているならば、かえってその様子は不自然なはずである。
「人の魂を渡したくはありませんね」
シクル・ザーン(ea2350)は遺跡を見渡したチサトと李、そして司祭ボルデに話しかける。シクルは遺跡の調べに力を入れていた。
とにかくデビル達よりデスハートンの白き玉を探さなくてはならない。先手を打つ事こそが有利に繋がるはずだとシクルは考えていた。問題があるとすればデビルに飼われているというサッカノの末裔の事だ。どうやら末裔が隠し場所の鍵になっているらしい。その意味ではデビルに一歩先んじられている。
シクルは山に関しては多少慣れていた。状況をみて地図にある遺跡だけでなく他も探すつもりである。
「助けたい人達が‥いるんです」
その場にいた李がチサトの独り言を耳にする。
「まだまだ時間はある。がんばろうじゃないか」
李は微笑んだ後で真剣な顔に戻り、連なる山の峰を眺めた。自分も追い求めている魂の玉がある。チサトも同じだ。今回の事件に繋がりがなかったとしても、何かのヒントにならないかという期待があった。
李は仲間の位置を把握しながら、どこにでも駆けつけられるように気をつかっていた。探すのに夢中になるとどうしても離ればなれになりやすい。強い仲間であるが、一人ずつを狙われるととても危険だ。注意しなければならなかった。
「地図の遺跡は全て確認してきた。上空からデビルの姿は窺えなかった」
ペガサスのアイギスから降りたナノックは集まっていた仲間に報告をする。空は赤く染まり、夜が訪れようとしていた。
ナノックは司祭ボルデに話しかける。やはり誰もが知っているような遺跡には白き玉は隠されていないのではないかと。
司祭ボルデも可能性は低いと考えていた。しかし、サッカノの手稿にも書かれていない、もしくは痛みが激しくて判読出来ない情報が眠っているはずだと語る。
「白き玉の隠し場所へのヒント‥‥」
全員で考えたが答えは見つからなかった。取り敢えず薪を集め、野営の準備を始めた。
●残されたもの
「輝いています!」
四日目の昼過ぎに訪れた遺跡でチサトが呟いた。指差したのは小さな石造りの祠だった。本当に微かな輝きで今では殆ど魔力はなくなっていると考えられる。
ネフィリムは祠を取り囲む石柱に、長い年月の間に雨風に削られて見えにくくなったダビデ紋を見つける。
司祭ボルデは周囲を探り、地面残った跡を眺める。よく見なければわからない程薄く、雨でも降れば消えてしまいそうな溝の深さだが、見覚えのある図形があった。
「これは三賢人の末裔の間で取り決められた記号です」
「って事はこの辺りに?」
「そうです。この辺りに司祭ベルヌが訪れ、残したのでしょう。記号はここから南南西を示しています」
司祭ボルデと李の会話は続く。
それから五個所の遺跡を回る。その内の二個所の近くに記号が地面に書かれていた。
それぞれの方角が交差する場所に丸をつける。その場所をナノックがペガサスに乗って確認にいった。上空から確認したその場所には小さい滝があった。
夜になり、一行は野営場所で焚き火を囲む。
「チサト様が魔力を探りましたし、司祭ベルヌはきっと別の方法で方向を示す遺跡と確認したのでしょう。発見した三個所は見つけようとしていた場所を指し示す遺跡。そして地図に丸をつけた滝の辺りが‥‥」
司祭ボルデは言葉の最後を濁した。
「いくら口が堅くてもリードシンキングでだだ漏れさ。内緒なんて出来るはずがない。ベルヌが知っているならデビル達も知ってるはず。鍵となる者がいるならとっくに白き玉の眠る場所を荒らしているさ。そうじゃないなら、罠?」
シャルウィードは腕を組む。
「司祭ベルヌが我々を罠にはめようとしているか、すでに荒らされているか、それとも入れない理由があるのか。三つに一つです」
テッドは寝る用意の為に頭に巻いていた布を外した。
「ベルヌ司祭が私たちに反するとすれば、デビルに乗っ取られるか。もしくは‥‥考えたくはありませんがベルヌ司祭本人が悪魔の誘惑に負けて寝返る可能性があります。本物ではなく下級悪魔が化けた可能性もあります」
チサトの話に司祭ボルデは視線をそらした。チサトも心が痛む。立場は違うがデビルとの関わりにおいて助けたい人がいるのは一緒だからだ
「その滝周辺の監視をお願いします。そして司祭ベルヌが現れるのを待ってくれませんか?」
それぞれに返事した間は違っていたが、司祭ボルデの案に賛成した。白き玉は重要であるが、依頼は司祭ベルヌの救出が第一である。夜ではあったが、滝を監視出来る小高い場所まで移動した。その際に熱くした石がみんなの懐を暖める。日が暮れた山はよく冷える。李の案で焚き火をした際には必ず懐石を用意していた。
●デビルと司祭ベルヌ
五日目は何事もなく過ぎる。あまりにも平穏で本当に滝近くを監視する意味があるのか考えさせる程だ。小鳥がさえずり、芽吹き始めた緑が眩しい。風はまだ冷たいが陽の当たる場所は暖かかった。
少なくとも様々なアイテムや魔法を使ってもデビルの反応はない。冒険者のペットによる索敵にも引っかからなかった。
全員で話し合いをする。滝を調査するか、それともまだ待つかが話し合われるが結論は出なかった。
事態は突然に急変する。
深夜、ナノックの指輪で蝶が羽ばたき、シャルウィードの肩に鷹のハル飛び乗って危険を知らせる。犬や狼は吠えはしなかったが、主人の元にいって身体を揺らせた。
見張りの者が声をかける必要もなく、全員が飛び起きて戦闘体勢を整える。
星空に一つの影。滝の近くでもなく、その影はまさに木々に隠れているはずの冒険者達の小高い野営場所に舞い降りた。
「ほー。こんな所にいたのか」
影の正体は長槍と盾を手にし、ヘルホースに跨った悪魔の騎士アビゴールであった。
「アビゴールよ、地獄へ帰るが良い!」
言葉が出るより身体が先に動いたディグニスは魔剣を振るった。アビゴールが盾で受け止めるが散った火花は激しい。ヘルホースが蹄が空へとふわりと浮かび、アビゴールは共に大木の枝の上に立つ。
すでに戦った仲間がいるので全員がアビゴールだと認識するが、何も知らなければ確実にはわからなかった。ヘルホースに乗っているからアビゴールという認識がせいぜいである。詳しい事までは知る由もない。
「これは手厳しい一撃ぞ。やるな。人間」
アビゴールは笑いながらディグニスに声をかける。仲間はそれぞれに魔法をかけ、準備を整えた。
いつの間にか周囲には五匹のグレムリンと十匹強のオーガ族が窺える。冒険者達は決して油断した訳ではない。索敵していた外から短時間で近づくとすればこの程度の数が限界である。想定した敵の数だ。
「こういう偶然もあるのだな」
たいまつを持って現れたのは指導者エドガであった。その横には少女コンスタンス、そして司祭ベルヌの姿がある。
「ベルヌよ!」
司祭ボルデは叫んだ。
「お前達もデスハートンの白き玉を探しているならば‥‥そう、このベルヌがいった事はただの知識なのではなく、事実なのだな」
エドガは勝手な推測をする。冒険者一行は滝近くの事は何も知らないが、ここは黙っている事にした。
「ボルデ、私は知りたかったのだ。許して欲しい。だがただ言いなりになっていた訳ではない」
司祭ベルヌが必死に答える。
「何をいうのベルヌ。あれ程に我らの知識を欲していたというのに」
コンスタンスが司祭ベルヌの脇腹に小刀の柄を押しつけた。
「どんなに素晴しく甘美に聞こえても彼らの言葉の先にはなにもありはしません!」
司祭ベルヌが口にする言葉の意味がどうであれ、テッドは心に響くよう願いながら説得をする。
「司祭ベルヌは本物でしょうか?」
敵と味方で言葉が飛び交う中、シクルがチサトに訊ねる。隠れるようにミラーオブトルースを使ったチサトは司祭ベルヌの姿を自分だけが見える水鏡に映す。
「本物です」
チサトの答えを合図に冒険者達は一斉に動いた。それはコンスタンスが司祭ベルヌから離れたのを確認した時でもある。
ナノックはひらりとペガサスのアイギスに飛び乗るが、すでにアビゴールとヘルホースの姿はいなくなっていた。襲ってきたグレムリンを代わりに叩き落とす。
「アゴビール! 騎士の名折れだぞ!」
ナノックの呼びかけはやまびことなって響き渡る。
エドガは両手を縛られていた司祭ベルヌの背を押した。おかげで斬りつけようとしたディグニスとテッドは勢いを失う。その代わり司祭ベルヌを無事確保する。
「近い内に、この地でまみえようぞ」
エドガは外套の中にコンスタンスを入れると鬱蒼とした森の中に姿を消した。デビルの技のせいか姿はどこにもない。
シクルは司祭ボルデに襲いかかろうとしたグレムリンと対峙する。最後逃げようと消えかかるグレムリンに止めを刺し、地に伏せさせる。
チサトの焔、ネフィリムのフロストウルフ、シャルウィードのカゲは回り込んでオーガ族の退路を断つ。そして主人に吠えて知らせる。挟み撃ちにされたオーガ族は一溜まりもなかった。ネフィリムとシャルウィードの刃が冴えた。
戦いは終わった。デビルの死体は消え去り、そこにはオーガ族の肉塊だけが残った。司祭ベルヌの救出は成功したが、わだかまりがかなり残る冒険者達であった。
●そして
六日目の朝から冒険者達は滝を調べる。滝の裏側には洞穴があり、奥に厚く大きな扉で閉じられていた。無理に開けようとすれば何らかの仕掛けが発動するかも知れない。時間がない事もあり、今回は調べるのを見送る事にした。
デビルと行動を共にしていた司祭ベルヌによれば、すでに三日前にエドガとコンスタンスと滝の洞窟を訪れたのだという。
何か含む所があるらしく、コンスタンスの考えで中に入るのは取りやめになった。果たして入らなかったのか、入れなかったのか、司祭ベルヌには判らなかった。
司祭ベルヌが何故、ラヴェリテ教団とデビルと行動を共にしたのか? すべてはより深い情報を得る為であった。
得られた大きな情報を二つ、司祭ベルヌは冒険者に教える。
どこかの領地の騎士団長と結託したらしく、新たな兵力をラヴェリテ教団が手に入れたのが一つ。
今回、引き下がったかのように見えるが、滝裏の洞窟を諦めていないのがもう一つである。まず確実に滝裏の洞窟奥が白き玉の在処だとコンスタンスもいっていた。
麓に下りて預けていた馬車を受け取り、二日をかけて冒険者八人と司祭二人はパリへと戻った。残った薬であるが司祭ボルデはそのまま受け取って欲しいと感謝と共に冒険者に伝える。
シャルウィードの意見により、冒険者ギルド経由ではあるが今回の内容は王宮にも届けられた。しばらくの検討はあるが、王宮から調査の者が派遣されるはずであった。