レイス退治のツィーネ

■ショートシナリオ


担当:天田洋介

対応レベル:1〜5lv

難易度:普通

成功報酬:1 G 62 C

参加人数:6人

サポート参加人数:4人

冒険期間:04月04日〜04月09日

リプレイ公開日:2007年04月12日

●オープニング

 暗がりの中、振るわれた剣は漂う青白い不確かな浮遊物を捉える。
 悲鳴をあげるかのように開けた口が避けて青白い炎は散った。
 凶暴な幽霊、レイスの末路である。
「哀れな‥‥」
 ツィーネは魔剣を鞘に収めて、一度ゆっくりと深呼吸をした。
 両膝を床につけてペンダントの十字架を握り、神に祈りを捧げる。それからツィーネは蜘蛛の巣が張り、家具が散乱している屋敷の外へと出た。
 外に出ればまだ日が昇っていた。依頼主である現在の屋敷の持ち主もこれで満足だろう。
 ツィーネは十九歳の女性である。揺れる長い金髪は後頭部で束ねてあった。
 冒険者ギルドを訪れたツィーネは依頼金を受け取り、今回一緒に戦った仲間と別れた。

「ツィーネお姉ちゃん、おかえり」
 定宿に戻ったツィーネは待っていてくれた六歳の男の子テオカを抱き上げる。
「いいもん買ってきたぞ」
 ツィーネが袋から取りだしたのはテオカの好きなチーズである。
「一緒に食べよお」
 ニコニコ笑いながらテオカが持ってきた皿にチーズを取り分ける。そして二人で食べ始める。
 ツィーネとテオカは血が繋がっていない。テオカはかつての恋人マテューの弟だ。
 その恋人はすでに死んでいた。
 正確にいえば死んでレイスになっているはずだ。
 ただ、どこにいるのかがわからない。ツィーネが冒険者となり二年の月日が経っていたが、何一つ情報は得られていなかった。

 数日後、ツィーネは冒険者ギルドで依頼書を読んでいた。しかし気に入ったものがなく、受付に直接訊いてみた。
「え‥‥レイス退治の依頼はないかですか? ちょっと待って下さいね」
 受付の女性は同僚の所に行き、入ったばかりの依頼の中にツィーネのいうレイス退治がないか訊いて回る。
「つい先程受けたのがありました。場所は、」
「その依頼に入る。よろしくな」
 内容もろくに聞かずにツィーネは依頼に参加希望を出す。
「一応、内容をお話し致します。場所はパリから歩いて一日の森の中にある窪んだ地域です。そこに何匹かのレイスが住み着いていて、近くの村人が迷惑しているそうなんです」
「おい! 何匹かとはなんだ! 何人といえ!」
 ツィーネの怒鳴り声は冒険者ギルド内に響き渡った。
「‥‥すみません。何人かのレイスが住み着いていて、それの退治が依頼ですが‥‥よろしいですか?」
 小さな声で言い直した受付の女性にツィーネは頷いた。
「いや‥‥わたしが悪い。大きな声を出してすまなかった」
 ツィーネは受付の女性に謝ってから冒険者ギルドを出る。
「マテュー‥‥。いつか、わたしが安らかにさせてあげるから‥‥」
 ツィーネはテオカの待つ定宿に帰るのであった。

●今回の参加者

 eb1023 クラウ・レイウイング(36歳・♀・ファイター・人間・イギリス王国)
 eb1875 エイジ・シドリ(28歳・♂・レンジャー・人間・神聖ローマ帝国)
 ec0222 セルシウス・エルダー(23歳・♂・ナイト・ハーフエルフ・イスパニア王国)
 ec0669 国乃木 めい(62歳・♀・僧侶・人間・華仙教大国)
 ec1945 リリアム・トウ(24歳・♂・ウィザード・ハーフエルフ・イスパニア王国)
 ec2068 神崎 輪(25歳・♂・僧侶・人間・ジャパン)

●サポート参加者

カノン・レイウイング(ea6284)/ 十野間 空(eb2456)/ シシリー・カンターネル(eb8686)/ エフェリア・シドリ(ec1862

●リプレイ本文

●村へ
 初日に冒険者達はギルドの個室へと集まり、作戦会議を開いた。
「レイスに接触されるだけで、ダメージを喰らう。それをまずなんとかしないといけない」
 ツィーネが会議の口火を開く。
「提案があるのだが」
 様々な意見が出される中、エイジ・シドリ(eb1875)が初日の情報収集について触れた。
「それは村でおこなった方がいいのではないか?」
 セルシウス・エルダー(ec0222)は情報収集をするのは賛成だが、パリより今回の依頼主である村でやった方がいいと唱える。
 多数決がとられ、会議が終わったら村へと向かう手順となった。情報収集は明日に行う事とし、その間にエイジが武具製作をするのも決まる。
 会議が行われている個室には冒険者の友人の姿もあった。
 エフェリアはエイジに届け物があってこの場にいる。初日に情報収集をしないので特に手伝う事もないようだ。
 十野間は冒険者の先輩として、十分注意し、事に当たるようにみんなを激励する。
 少々固い雰囲気の会議は終わり、冒険者達はお昼前にパリを出発した。

「噂を聞きましたわ。よくレイス退治の依頼に参加なさっているようですね」
 国乃木めい(ec0669)は歩きながらツィーネに訊ねる。神崎輪(ec2068)とセルシウスの姿も近くにある。
「確かに‥‥ギルドで怒鳴ってしまったのが噂の輪を広げてしまったか」
 ツィーネは後ろ髪を揺らしながら自らの顎を触る。
「レイス専門とは若い貴方がなぜ? 理由があるのかしら?」
 国乃木の問いにツィーネはうつむいて口を噤んだ。
「少し遅れ気味だから急いだ方がいいな」
 先頭を歩いていたクラウ・レイウイング(eb1023)はみんなに声をかけてツィーネに助け船を出す。冒険者にはそれぞれの事情がある。本人が話したくないのなら、そっとしておくのが一番だと思ったからだ。今は話せる時期ではないのだろう。
「立ち入った事を訊いてしまったようね。ごめんなさいね」
「いえ」
 国乃木の言葉にツィーネは頷く。
 夕刻になって野営の準備を行う。集めた焚き火を前にして食事が始まった。
「こんなはずでは‥‥」
 神崎はおにぎりを用意するつもりでいた。たくさんのおにぎりでみんなとうち解けあうつもりでいたのだが、依頼前にパリで見つけた米の値段はとんでもなかった。ジャパンのゆうに10倍の値がつけられていた。とてもではないが、用意出来ない。
「それは何?」
 ツィーネが神崎の保存食を覗く。神崎の保存食はたまたまジャパンのものだった。その保存食には味噌玉が添えられていたのてある。
「ど、どうですか?」
「しょっぱくて面白い味」
 神崎と保存食を少し交換したツィーネは味噌を舐めて笑った。赤面しながら神崎もつられて笑う。
 冒険者達は食べ終わると交代で見張りを決めて、明日に備えて早めに就寝するのだった。

●聞き込み
 二日目のお昼頃に冒険者達は村へと着いた。
 まずは村の長の屋敷を訪れると歓迎される。今日の食事と宿をしてくれるそうだ。エイジを除く全員で手分けして村人に話を訊きに回った。
 夜になり、部屋で相談する。
「問題のレイスは元ドワーフの夫婦のようです‥‥。旅の途中で野盗に襲われてレイスに」
 神崎は数珠を手にする。
「窪地からは滅多にでないらしいな。ただ、人を見かけたらしつこく追いかけてくるようだ」
 クラウは剣を抱えるように座っていた。
「村人二人が取り憑かれて、高い場所から飛び降り、亡くなったようだ。こちらの情報でもレイスは二人らしい」
 セルシウスは拳を強く握る。
「滅多な事がない限り、森の中の窪地に村人は近づかないようですね。わざわざ遠回りしなくてはならず、不便を強いられているようです」
 国乃木は話すと道返の石をエイジに渡す。
「国乃木めい、確かに受け取った。あと、銀のネックレスをバラして投網に仕込んだ。準備完了だ。これでレイスを捕まえられるだろう」
 エイジは出来上がった投網とシルバーナイフと縄で作った縄ひょうをみんなに見せる。
 ツィーネはレイスが元ドワーフの夫婦と聞き、少し落ち込んだ様子をみせた。
 後は今日知り得た情報で初日に考えた作戦を修正する。レイス退治の本番は明日へと迫っていた。

●レイス
 三日目の朝になり、冒険者達は森の中に入った。
 一時間程歩いた場所に問題の窪地はあった。
 大体四メートル程度の深さがあり、楕円形型だ。一番長い直径は三百メートル程である。周囲には木々を始めとするいろいろな草が生えているが、窪地の中は雑草の茂みだけ。一部にぬかるんだ個所もあるようだ。
 一個所だけ窪地に繋がる緩やかな斜面があり、そこが歩いて下りられる唯一の場所だ。
 一番視力のいいセルシウスが見てもレイスの姿は見当たらない。
 エイジが道返の石を使って国乃木の愛犬シロに取りつけた。張られた結界に収まりながら冒険者達はゆっくりと進む。
 国乃木はデティクトアンデットを唱えて警戒をする。窪地の縁を辿るように歩く。神崎はレイスが出たのならばホーリーフィールドを展開するつもりでいた。
 前衛のセルシウス、クラウ、ツィーネは常に先頭に立つ。
 一周回ってみたが、レイスとは遭遇しない。どうやら窪地中央にいるらしい。
 唯一の斜面から冒険者達は窪地に下りる。セルシウスは用意としてオーラパワーを自分へとかけた。
 少し進んだ場所に壊れた馬車が転がっていた。地面に刺さった剣と白骨化した遺体が同じ場所で朽ち果てている。
 ぬかるみを越えて冒険者達はさらに進む。背の高い雑草の群生に差しかかった時、国乃木は感じた。レイス一匹の存在を。
「いますわ!」
 国乃木の言葉に冒険者は身構える。
 周囲は高台にそびえる木のせいで日影になっていた。群生から飛びだしたレイスの青白い姿がはっきりとわかる。
「結! 金剛界結界」
 神崎はホーリーフィールドを展開する。現れたのはドワーフの女レイスだ。空中で渦を巻くように昇ると、一直線に冒険者達を襲う。
 クラウが魔剣でレイスを弾く。レイスはかなりの速度で飛んできた。油断をすれば一気に攻め入れられてしまう。
 セルシウス、ツィーネも、互いに背中をつけて付け入られないよう注意を怠らない。
「もう一体来ます!」
 国乃木が指した先にはドワーフの男レイスが青白い身体を震わせていた。
 エイジがナイフで作った縄ひょうを飛ばす。当たりはしなかったが、男レイスは空飛ぶ速度をゆるめる。続いて国乃木がコアギュレイトを唱えて男レイスの動きを止めた。
「そこ!」
 さらにエイジが銀の鎖が混じる投網で男レイスを捕らえた。男レイスが動けない間に女レイスを倒さなくてはならないと、冒険者の誰もが考えた。
 セルシウスがエイジにオーラパワーを付与する。
「きっと女のレイスは男のレイスを助けようとする。そこを狙いましょう」
 ツィーネが背中を合わせていたクラウに呟く。大声を出さなかったのはレイスが理性を持っているのを危惧したからだ。セルシウス、国乃木、神崎へと小さな声で伝達される。
 案の定、自由に空を飛べるはずの女レイスの動きは男レイスの周囲に限定されてゆく。動きの幅がわかるのなら、対策もしやすい。
 国乃木が女レイスにもコアギュレイトを唱えて動きを止めた。
 前衛が一気に攻撃を仕掛けて女レイスがその衝撃に悲鳴をあげる。
 クラウの魔剣が瀕死の女レイスの右脇腹に、セルシウスの魔剣は喉元に、ツィーネの魔剣はみぞおちへと独特の感触で深く突き刺さった。
 止めとして、エイジが投げた縄ひょうが当たり、女レイスはちりぢりになって消え去った。
 男レイスが網の中で暴れだす。国乃木が再度コアギュレイトをかけようとしたが間に合わず、男レイスは縄から飛びだして高く空に舞い上がる。
 両腕を広げて襲ってきた男レイスは神崎が張ったホーリーフィールドに弾かれた。真上へと飛んだ男レイスに目がけて神崎のブラックホーリーとエイジの投網が放たれるが身体を捻るように避けられてしまう。
 攻防が続く中、知らぬ間に後退してしまった冒険者達はぬかるみに足を踏み入れてしまった。
 男レイスが伸ばした手をツィーネが剣で受け止める。しかしバランスを崩してぬかるみに尻餅をつく。
 男レイスが急速にツィーネへ近づく。憑依するつもりに違いなかった。
「危ない!」
 クラウとセルシウスがツィーネを挟むように剣を外に構える。国乃木の愛犬シロがツィーネに寄り添い、神崎がもう一度ホーリーフィールドを張り直す。
 エイジの縄ひょうのシルバーナイフが突き刺さると男レイスは天を仰ぎ見て叫ぶ。国乃木が魔力を振り絞り、最後のコアギュレイトを放った。
 クラウの肩に掴まり、ツィーネは立ち上がる。セルシウスはオーラショットを撃ち込む。
 クラウ、ツィーネ、セルシウスはアイコンタクトをとって動きの止まった男レイスへと駆けた。
 クラウがフェイントアタックで剣を振り下ろし、セルシウス、ツィーネと続く。そして返す刀で攻撃は続けられた。
 青白い炎は散り、男レイスは消え去った。
 その場には何も残らない。まるで何事もなかったのように、近く雑草が風に揺れる。
 セルシウスの瞳が真紅に染まろうとしていた。もう少し戦闘が長引けば狂化が起きていたかも知れない。だが赤い瞳はだんだんと普段の色に落ち着いてゆく。
 ツィーネは十字架のペンダントを手にして祈る。
「今一度の眠りを終え‥再び生を与えられるその日まで‥安らぎの野にてしばしの休息を与えん」
 レイスに祈りを捧げる国乃木の隣りに神崎も立つ。
「もう‥哀しみのくびきより解き放たれました。どうか自由に‥なってください。安らかな眠りを」
 神崎は数珠を手にしてレイスに手向けの言葉を呟いた。
 冒険者達は壊れた馬車近くにあった白骨を埋めてやる。そして墓標として岩を運んでやった。
「こんな感じでいいか?」
 エイジが墓標に国乃木から聞いた言葉を刻んであげた。
「安らかに眠れよ」
 クラウはレイスになってしまった死者の冥福を祈った。
「剣を持つ俺が言っても説得力が無いが‥本当はレイスは退治するものではなく、浄化されるべきものなんだろうな‥」
 セルシウスも夕日の中、墓標へと汲んできた水を地面へと染み込ませた。

 レイスを倒した冒険者達はその夜、窪地内で野営をする。村人の証言はレイス二匹であったが、それ以上いる可能性もあり得る。この窪地周辺の安全をせめて一晩くらいは見届けてからパリに戻る事にしていた。
「危ない所をありがとう」
 ツィーネは焚き火にあたりながら転んだ時の事を仲間に感謝する。依頼の大半を終えたせいか、みんなリラックスしていた。
「気にするな」
 クラウが小枝を折って焚き火にくべる。
「‥‥ちゃんと話しておいた方がいいな。わたしとレイスとの関わりを」
 ツィーネはうつむきながら話し始める。
 かつてツィーネにはマテューという恋人がいた。
 二年程前、マテューは久しぶりに現れた親友に誘われて仕事を手伝う。知らずに手伝っていたマテューだが、仕事とは騙して連れてきた者を遠くの土地で奴隷や娼婦として売る人身売買であった。
 気がついたマテューは連れてきた者を逃がし、親友をいさめた。ところが親友は逃げた者達を皆殺しにする。
 マテューは親友と戦ったが殺される。重い怪我を負った親友はどこかに消え、マテューはツィーネによって故郷の地に葬られる。
 だがしばらくして嫌な噂が立つ。マテューの姿をしたレイスを見たという村人が現れたのだ。
 ある日、ツィーネは夜空の中を遠くに飛んでゆくレイスのマテューを目撃してしまう。それからその付近ではレイスの目撃はされなくなった。
 ツィーネは一人残されたマテューの弟テオカと共に旅に出る。パリへ辿り着き、そしてマテューから少しだけ教えてもらっていた剣術を頼りに冒険者となったのだ。
「レイスは‥‥遺恨の果たす事が出来れば浄化されるものらしいが、それまでにたくさんの犠牲者が出てしまう。言葉で説得など出来ようもなく‥‥。だからこれ以上、愚かな事をしないように、わたしの剣で安らかにする。だからレイスの姿があれば駆けつける。そう決めたのだ」
 ツィーネの話しは終わり、薪の弾ける音だけが続く。
「貴女は‥敢えて剣の道を選んだのか‥」
 セルシウスが呟く。
「貴女は強い、そして本当に優しい女性だ‥。だがその優しさ、もう少し自分にも向けた方がいい」
 続くセルシウスの言葉にツィーネは顔をあげる。
「どれほど‥無念だったんだろう‥ね。マテューさん。何が正しいかなんて‥僕には分からないけど、マテューさんの噂を耳にしたら‥伝えます」
 神崎は黙祷する。
「お願いする。みんなももし情報があったら教えてくれ」
 ツィーネは全員に頼み込む。
「お話しはよくわかりましたわ。ただ‥貴方が癒されなければ、彷徨う恋人の魂はそれこそ浮かばれませんわ‥‥。残された恋人の弟さんの為にも、無理はいけませんよ」
 国乃木はやさしくツィーネに言葉をかけた。
「義弟殿がいらっしゃるのか。それならば早くにパリへと戻る方が良いな。戻ってから軽く一杯と思っていたが、そうもいかぬらしい」
 クラウが軽くツィーネの背中を叩く。
「そろそろ焼けたな」
 エイジは焚き火にかざしていた獣肉を降ろす。レイス退治の後、少し時間があったので狩ってきたのだ。
「食べるといい。元気になるぞ」
 エイジは肉を切り分けると真っ先にツィーネに渡す。
「ありがとう」
 ツィーネはエイジに笑顔を返した。

●そして
 四日目の朝、冒険者達は村に立ち寄った。
 レイスを二匹消し去った事と、墓を造ったのを伝える。村人に犠牲者がいるのはわかるが、レイスになったドワーフ夫婦も悲しい境遇である。できれば供養してあげて欲しいと告げてパリへの帰路についた。

 一晩の野宿をして五日目の昼前に冒険者達はパリに到着した。
 報告を終えると、冒険者達はギルドの外に出る。ツィーネの胸元には途中で買ったチーズが抱えられていた。
「義弟殿はチーズがお好きなのだな。早々に引き上げると良かろう。私は私で可愛いフラウを愛でる事にするさ」
 クラウが屈み、足元でじゃれる愛犬のフラウの頭を撫でる。
「機会があればまた共に戦えれば良いな」
 クラウは立ち上がると手を振って立ち去った。
「俺もレイス戦の経験を積みたいと思っている。では」
 セルシウスは愛馬ソレイアードで消えてゆく。
「恋人の心はきっと貴方の元へ届けられているはずですから。それではごきげんよう」
 国乃木は歩いてゆく。
「何かわかれば‥お伝えします」
 顔を赤くしながら神崎はお辞儀をすると、小走りに消えていった。
「それでは。また会ったならよろしくな」
 エイジも姿を消した。
「さてと‥‥宿に戻りますか」
 ツィーネは珍しく最後まで冒険者仲間を見送った。いつもは一番に帰る事が多いのに。
 定宿ではテオカが待っているはずだ。ツィーネは早足で歩くのであった。