【死神の顔】苦しみの村人

■ショートシナリオ


担当:天田洋介

対応レベル:フリーlv

難易度:難しい

成功報酬:0 G 85 C

参加人数:8人

サポート参加人数:4人

冒険期間:04月26日〜05月02日

リプレイ公開日:2007年05月05日

●オープニング

「それではルッツ司教様、ごきげんよう」
「神のご加護がありますように」
 礼拝所でミサが終わり、村人が家へと帰ってゆく。
「ルッツ司教様、このままでは村は……」
 村の長の娘、カリアは司教ルッツに話しかける。一月程前から奇病に倒れる村人が現れる。赤い発疹が身体中に出来て我慢出来ないほどかゆいらしい。衰弱して死に至る者もいる。
 今では村人の半分が病の床に伏せていた。
「大丈夫ですよ。カリアさん。ちゃんと神様は私たちを救ってくれます」
 司教は目を細め、やさしくカリアに言葉をかけた。カリアも司教に別れの挨拶をして家に戻った。

 それから二日目の夜に大雨が降る。カリアはこの村の水源となる人工の池が気になってランタンを手に見に行く。池はなんともなかったが、池に水を運ぶ小川がかなり増水していた。
 カリアは山へと繋がる小川の上流も確認してみる事にした。
「あんなものあったかしら?」
 カリアは滅多に村人が立ち入らない程の山奥で立ち止まる。小川のすぐ側の崖に穴が掘られていた。その中にはたくさんの鉱石が捨てられている。
 気配を感じたカリアはランタンの火を消し、大きな木の幹の影に隠れる。
 そして二つの人影を見かけた。
 一つはルッツ司教、もう一つは信じたくはないがデビルだ。ルッツ司教はデビルに渡された手紙を雨が避けられるように大きな木の下で読み始めた。
「なるほど。もうすぐアビゴール様がこの村に現れるようですね。簡単にデスハートンで魂を獲りやすいように、もっと病人を増やしませんと」
 ルッツ司教の言葉でカリアは気がつく。鉱石は鉱毒の元になるもので、この水を飲んでしまった為に暮らす村人が病気となった。
 理由はわからないが、ルッツ司教はデビルの手先であった。

 三日後にカリアはパリの冒険者ギルドを訪れていた。
 デビルの襲撃から村を守る依頼を行った後で、カリアはもう一つの依頼を始めた。
「私と一緒に村まで解毒剤を運んで配布して欲しいのです。出来れば村人全員を脱出させたいのですが‥‥信じてもらえませんでしたし、それに病人がたくさんで諦めています」
 カリアは悲しそうな顔をして何度か瞬きをする。
「ですが、一人でも救出をお願いしたいのです。歩いて半日程度の場所に集落があります。そこに受け入れをお願いしてあります。どうかお願いします」
 カリアはもう一つ、袋に入った依頼金を受付の女性に渡すのであった。

●今回の参加者

 ea3441 リト・フェリーユ(20歳・♀・ウィザード・エルフ・ノルマン王国)
 eb0339 ヤード・ロック(25歳・♂・ウィザード・ハーフエルフ・ノルマン王国)
 eb3601 チサト・ミョウオウイン(21歳・♀・ウィザード・人間・イギリス王国)
 eb4840 十野間 修(21歳・♂・陰陽師・人間・ジャパン)
 eb8113 スズカ・アークライト(29歳・♀・志士・ハーフエルフ・イギリス王国)
 eb8664 尾上 彬(44歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 ec0037 柊 冬霞(32歳・♀・クレリック・人間・ジャパン)
 ec0938 レヨン・ジュイエ(29歳・♂・クレリック・人間・ノルマン王国)

●サポート参加者

ユリゼ・ファルアート(ea3502)/ 藍 采和(eb7425)/ リア・エンデ(eb7706)/ コトネ・アークライト(ec0039

●リプレイ本文

●時間との戦い
 依頼人カリアと冒険者達は奔走していた。
 解毒剤、薬、食料、それらを運ぶ馬車、荷車など、様々な用意が必要であったからだ。

 全員が集まった時はこの様であった。
「こんなに。これだけあれば、かなりの用意が出来ます」
 カリアはチサト・ミョウオウイン(eb3601)からの寄付に驚いていた。
「いえいえ。先に向かいたいと思いますので書状を頼みます」
 チサトは首を傾げてニコリと笑う。横で座る愛犬焔は護衛役だ。
「私は報酬をお返しします。それと‥‥」
 さらに寄付をしようとしたレヨン・ジュイエ(ec0938)の手をカリアが抑える。
「これで充分です。より多くの食料や回復薬を用意しましょう」
 カリアは涙ぐみながら頷く。
「別に馬車を用意できないだろうか? 依頼料は返上するから、それでどうだい?」
 尾上彬(eb8664)は愛馬の舞の手綱を握り、カリアの前に立つ。
「はい! 用意します‥‥ありがとう」
「俺が用意する荷車代は自分で出すから心配いらないよ。江戸っ子は宵越しの銭はもたないんだ」
 尾上は微笑を浮かべた。尾上の友人の藍も手配を手伝ってくれるという。
「うーむ、気楽に儲かる依頼を探しているのに‥‥」
 ヤード・ロック(eb0339)は、みんなから少し離れた場所で自分の性分についてぼやいた。それでも受けた以上はきっちりやるのが信条である。
「解毒剤は一手間掛けるだけで効果が桁違いです」
 十野間修(eb4840)はカリアに相談を持ちかける。
「荷馬車の準備とかの合間に少しでも手配しませんか? 大丈夫、先発する人達が出来る事をしていてくれます」
「そうですね。用意に時間がかかりますし」
 カリアが承諾する。続いて十野間は自分が預かっていたチサトの解毒剤をスズカに託した。
「重〜い! なんて言ってられないわ」
 スズカ・アークライト(eb8113)はカリアと十野間から解毒剤を預かる。
「それにしても、司教のくせに悪魔とつるむなんで許せないわね。ね? 冬霞」
 スズカは柊冬霞(ec0037)に声をかける。
「その通りです。私用でパリへ出て来ていた所で、このような依頼を目にするとは思いませんでした」
 柊はカリアに近づいてお辞儀をした。
「久々にノルマンに帰ってきたけど‥。大変な様子ですね。そう思うでしょ? スノウ」
 リト・フェリーユ(ea3441)は愛馬スノウを眺めた。
「よろしくお願いしますね」
「私に任せてね」
 リトは乗馬に不安があるのでスズカに馬を誘導してもらう。
「リト、少し待ってね。薬草を用意するから」
 ユリゼは初日のみの参加だが薬には精通していた。症状を抑えたり、清める作用のある薬草をリトに託すつもりでいた。
「お姉ちゃん‥‥無理しちゃ駄目なんだよ」
 コトネはスズカに貸す物があり、集合場所に立ち寄る。だが冒険者の誰かに初日だけの参加の場合、期間内で返せないので貸すのは無理だといわれる。
「そうなのですか‥‥」
 隣りで聞いていた柊は残念がる。見送りに来ていたリアにセブンリーグブーツを借りるつもりでいたのだ。
「俺のを貸そう」
 尾上が柊にセブンリーグブーツを貸す。尾上は馬に牽かせる荷車で向かうつもりだった。柊はお礼をいう。
「旦那さんがいるんだから、無理しちゃ駄目なのですよ〜」
 リアは柊に軽く注意を促すと、その場にいたみんなにメロディーをかける。
「そうです。旦那様に便りを出さないと」
 柊は帰りが遅くなっても旦那が心配しないように手紙を書く。
 冒険者達は先に出発する者、準備を行う者に分かれるのだった。

 夜遅くにチサト、リト、スズカ、柊が村に到着する。深夜ではあるが村の長の屋敷を訪ねた。
 チサトはカリアから預かった書状を床に伏せていた長に渡す。
「カリアがそこまで思い詰めていたとは」
 長は呟くと咳をする。
「ルッツ司教の一件は知っているがデビルと繋がっているとは信じられん。だが、村人が病になっているのも事実」
 長は考え込んだ。
「確固たる証拠がない以上、ルッツ司教をどうする事も、そして村人に強制も出来ん。‥‥だが村人は本人が納得すれば連れて行って構わない。明日、わしの意志を伝えておこう」
 長の言葉に冒険者達は喜んだ。
「夜間とはいえ罠については危険もある。止めて頂けるか?」
 リトは長に頷く。
 手始めに冒険者達は屋敷の者の治療を始める。
 チサトは病の者に解毒剤を飲ませる。水はヤードから借りたスクロールで綺麗な水を用意した。
 柊は長の体力をリカバーで回復させる。そして食料の浄化を行った。
 リトは病状を名簿に書き込んでゆく。後で運ばれる解毒剤を速やかに活用する為だ。
 スズカは村の中を一通り見回りする。途中、礼拝所の窓の戸から洩れるランタンの灯りを見つめた。
 長の屋敷に泊めてもらい、チサト、リト、スズカ、柊は明日に備えるのだった。

●治療
 二日目の昼頃、カリアが御者をしてレヨンが同乗する馬車が物資を積んで村に到着する。
「ようやく着きました。馬車の上で走りたい気分でしたよ」
 レヨンは村の土を踏み、心の中で神への祈りを捧げる。
 セブンリーグブーツを履き、驢馬を誘導してきた十野間も着く。
 昨日の内に到着した仲間と合流し、情報の交換が行われる。
「村人の治療ですね。今日我々がしなくてはならない事は」
 十野間は強く頷いた。村にいる冒険者達は持てるだけの解毒剤を抱え、村の家々に向かうのだった。

「大丈夫 絶対よくなりますから‥何処か痛くないですか?」
 リトは病にかかったお年寄りの背中をさすり、そして治療を行った。解毒剤だけでなく、薬草を使って痛みや痒みの症状を抑えるように努める。仲間にも患者を知る為に、名簿をつけてもらえるように頼んであった。

「これは鉱毒被害ですね‥‥。私が前に経験しました――」
 十野間はどのような原因で症状が出るのかを患者に説明する。
「このままですと問題が。治療に専念し、又、原因を特定しませんと――」
 説明を続けながらも十野間は解毒剤で治療を行う。
「明日、また来ますので」
 十野間は今日の所は説得を止めておいた。治療が効いてからでないと信頼が得られないと考えたからだ。

「思い当たる節はありませんか? すべては水に溶けだした鉱毒のせいなのです」
 チサトはまだ動ける状態の村人を集め、池の近くで説明を始める。
「もうすぐ仲間が本格的に水の調査を行います。私も調べてみましたが――」
 さらに説明と続け、水が原因なのを印象づける。
「この水は安全です。小川と池の水は使わないようにして下さい」
 チサトは空樽をスクロールで水を充たして村人に提供する。これ以上病人を増やさない用意であった。
「これでよいでしょう」
 柊はチサト、スズカと一緒に村の家々を回る。そして口に入るモノの浄化に努めた。
「次は何を致しましょうか?」
 柊は解毒剤をチサトに渡す。
「少し休んでいて下さい。この方達の治療は私がやっておきます」
「そうよ、チサトちゃんのいうとおり。少し休みなさい、倒れられたら貴女の旦那に会わせる顔がないわ」
 チサトだけでなく近くにいたスズカにも柊は心配される。
「人集りが?」
 スズカが窓から人々を見かけ、一人で患者の家の外に出る。
「耳を貸さない方がよろしいでしょう。冒険者がそんな事をするなんて聞いたことがありません」
 聖職者の衣を着た者が村人に話しかけていた。ルッツ司教である。
「病人を治療しに来ただけよ、ギルドはお城と協力して動いているんだから他意は無いわ」
 スズカが村人の中に入ってルッツ司教を睨む。
「スズカさんのいうとおりです。効果的な治療手段を持つ私達の邪魔とはどう言う了見でしょうか?」
 通りがかった十野間も立ち止まってルッツ司教と対峙する。
「明確な理由をお聞きしたいものですね」
「神の声を聞けるならば、そのような質問は愚かです。もうすぐ祈りの時間ですので。皆さんごきげんよう」
 十野間の問いに答えず、ルッツ司教は立ち去ってゆく。
「妨害までするとなると‥途端にカリアさんの見聞きしたと言う話に信憑性が出てきますね」
「そうね」
 十野間にスズカは同意する。そしてスズカは今の出来事の報告と護衛の為にカリアの元に向かうのであった。

「ルッツ司教ですか?」
 村人の治療の途中で礼拝堂を見かけて、祈りの為にレヨンは立ち寄っていた。そこにルッツ司教が戻ってくる。
 声をかけるレヨンを無視して奥にある扉を開いて、ルッツ司教は姿を消した。その立ち振る舞いはとても聖職者とは思えなかった。
 レヨンは強い疑念を抱きながら、再び解毒剤を抱えて治療に向かった。

「ふぅ、結局俺が一番最後に到着か。ま、いいけどな、と」
「待たせたな」
 夕方、御者をする尾上とヤードが荷車に乗って到着した。時間がかかったのは特に効果が高くなるように解毒剤に手を加えたからだ。
 リトが頼んであった診断書から特に症状が重い患者を選んで、特効の解毒剤が届けられる。この日の治療はこれで終了した。
 そしてデビル襲来と鉱毒の元の発見を行う冒険者達も村に到着する。冒険者の何人かは情報の提供をしに行くのだった。

●説得
 三日目は治療の継続と、特に村人の説得を行う手筈となっていた。

「このままではもっと病気が広がってしまいます一度徹底的な調査と対処が必要なんです。一日でも早く戻れる事が出来る様に仲間達も尽力しています。感染の被害に脅かされずにゆっくり療養しましょう‥ね?」
 リトは患者にやさしく声をかける。
「一旦村を離れ、治療に専念しませんか? それに原因を特定しなければ、多くの死者が出る可能性が高いのです」
 十野間は患者にかけるやさしい言葉遣いの中に力強い意志を込める。
 その他の冒険者達も治療を施しながら説得するのであった。

「ま、俺が村人にどうこうしても怖がられるだけだろうしな、と。俺はこそこそと人目に付かないように調査でもしているさ」
 そうカリアに答えたヤードは、鉱石が捨てられていた横穴があった場所を訪れた。
「さてと、原因はいったい何かな、と」
 空気が澱んだ様子もなく、スクロールの出番はなかった。ヤードの前を愛馬のまだ若いモンゴルホースが進む。
「痛っ!」
 馬が蹴った小石がヤードの頭に当たる。当たった個所をさすりながら小石を拾う。とても変わった石である。
「もしかして鉱毒の元の鉱石か?」
 ヤードは周囲をさらに探したが、それらしき小石は当たった一つだけである。カリアに確認してもらう為、ヤードは山を下り始める。
「お手柄だぞ。しかし司教がデビルとね‥‥。相反するもの同士でよくやってられるもんだな、と」
 ヤードは愛馬を誉めてあげるのだった。

 夜陰に紛れ、尾上は礼拝所に向かう。
 猟師の姿に人遁の術を使って変装済みである。レヨンに教えてもらった礼拝所奥にある扉の向こう側が怪しいと踏んでいた。
 尾上は昼間もルッツ司教の動向を窺っていた。だが不自然な点は見つからない。
 しかし、カリアが話していたデビルからの手紙を探せれば証拠となるはずだ。デビルからの手紙を見せれば避難する村人も増えるに違いなかった。
 隠密の技を駆使して礼拝所内に進入する。
 灯りは点いていたが誰の姿もない。
 一時間が過ぎ、再度人遁の術を使って変装する。あらかたの場所は調べ終わる。
「これは?」
 美術の素養があるレヨンは宗教画の前で立ち止まった。宗教画には様々な約束事がある。中心となる者をより高い位置に描くとかあるのだが、この宗教画には外れた部分があった。
「これでは悪魔崇拝の絵ではないか」
 宗教画の近くを調べてみると、壁の煉瓦が外れるようになっていた。その奥にデビルからの手紙とおぼしき羊皮紙が入っていた。
 尾上は元の状態に戻すと、急いで礼拝所から立ち去るのであった。

 三日目の内に説得し、集落に運べた村人は十九名であった。明日の説得がどれだけ救えるかの鍵となると冒険者達は考えていた。

●脱出
 四日目、鉱石とデビルからの手紙は村人に公開された。隠されていた鉱毒の在処ももう一つの冒険者達の手によって暴かれる。
 村人のほとんども集落への移動を承諾してくれた。
 ルッツ司教は姿を消す。どこに行ったのか誰も知らなかった。カリアの話しによれば、約一年前からこの村の礼拝所を任せられるようになったそうだ。それ以前の事は誰も知らない。
 カリアが頼んであった馬車が御者つきで村に到着する。
 馬車と荷車を合わせて三両となり、村人の移動が始まった。
「皆様、もう少しですよ」
 患者に付き添っていた柊が声をかける。解毒剤が効いたおかげで自力で立ち上がれる者が増えていたのも脱出の追い風となる。
 この日だけで三十六名が集落に移動した。カリアも含めて残る村人は十六名であった。

 五日目、冒険者による残る十四名の説得が朝から行われていた。
 多くは年寄りで、死んでもいいからこの村に留まりたいという。大分調子がよくなった長も村人の説得に駆けつける。
「この後、鉱毒を取り除いたりしなくてはならず、村は大変なのだ。おぬしの知恵もまだまだ借りたい。どうかこの冒険者達のいう事を聞いておくれ」
「私からもお願いします。村の再建に手を貸して下さい」
 長とカリアが年寄りに話しかける。これ以上の説得は冒険者達では無理であった。馬車を待機させ、いつでも出発出来るように用意していた。
 その間もリトはブレスセンサーを使ってデビルを警戒する。冒険者達は移動中の護衛にも気を使う。
 夕方までには十四名の移動が完了する。残る村の者は長とカリアのみであった。

 六日目、デビル退治の冒険者達と挨拶を交わした冒険者達は、長とカリアを馬車に乗せて村を出発した。
 冒険者達は集落に立ち寄って二人を下ろす。
「皆様、ありがとございます」
 カリアと長は冒険者達に深くお礼をいった。
 カリアは村人全員を移動させられるとは思っていなかった。村人の説得に繋がるルッツ司教の企みもカリアだけでは暴けなかったはずだ。それに全員に行き渡るだけの解毒薬、運べるだけの能力を得るだけのお金と行動力も足りなかった。それを可能にしたのは冒険者達のおかげである。
「あの方達ならやってくれるでしょう。心配なさらずに」
 チサトが言葉を残し、冒険者達を乗せた馬車三両は集落を後にした。
 日が落ちた頃に冒険者達はパリに到着する。
「今回は疲れたわね〜。ん〜〜癒されるわ♪ ねえ、チサトちゃん」
 スズカは突然にチサトをぎゅーと抱き締める。チサトは驚いて両腕をあげてアバアバする。
「旦那様を心配させておりますので失礼致しますね」
 報告を終えると、柊は頬を赤く染めながら一足先にその場を立ち去る。
「お手伝い出来たようで、うれしいですわ」
 リトは仲間にさよならの挨拶をする。
「あの村人達に聖なる母のご加護がありますように」
 レヨンは祈りを捧げる。
 もう夜は遅い。冒険者達は挨拶を終えるとそれぞれの戻る場所へと帰るのだった。