清浄なるパリ

■ショートシナリオ


担当:天田洋介

対応レベル:11〜lv

難易度:普通

成功報酬:7 G 32 C

参加人数:8人

サポート参加人数:2人

冒険期間:06月11日〜06月17日

リプレイ公開日:2007年06月17日

●オープニング

「最近のノルマンはどこかおかしい。一体なんだろうねえ」
 一人の老翁が広場のベンチに座って呟く。
 行き交う人々に変わった様子は見かけられない。はしゃいで遊ぶ子供達もいる。
 隣りで聞いていた青年にはいまいちピンとこなかった。
「それはいわゆる『最近の若いもんは』ってやつかい? いつの時代も年寄りはそういうんだ。昔は美化されるからな。じいさんが若い頃と俺達がやっている事に差なんてないもんさ」
「あんたは頭良さそうだ。ちと老人の戯言につきあってくれるかの?」
 老翁はしわくちゃの笑顔で青年に話しかける。
「世の中の悪い事を他人のせいにできれば、それは楽なもんだ。しかしだ。デビルって奴は確かに存在する。そしてデビルは人を惑わす」
「別にデビルの存在を疑ってはいないよ」
「多少の事件はあるが、パリは平和なもんだがね。ちょっと外に出てみれば、そこらでデビルが悪さしておる。わしのいうノルマンはおかしいっていうのは、そういう事だ」
「つい最近も聖霊降臨祭でゴタゴタがあったしな。それに修行とかでバラバラだったはずのブランシュ騎士団もパリ周辺に集結している。確かに状況からみれば、焦臭いもんだ」
「それにあの胡散臭いノストラダムス。あれと悪魔崇拝者の区別は、わしにはできん」
「まあ、そうだね。それには賛成だ。‥‥で、この話しには結論があるのかい?」
「そう、急ぐでない。こうして変わらなく感じられるパリにも、水面下でデビルの魔の手が忍び寄っている。あんたの懐にあったもんもそうだ」
「えっ?」
「頭もいいし、こんな老人と話してくれる優しさもある。未来もあるのだから、そんな狂うだけの薬は止めておきなさい」
 老翁は小袋を取りだす。それは青年が持ってきた小袋であった。その中に入っていたのは大麻の粉である。
「いつの間に? じいさんスリなのか!」
「大昔な。だから人に説教できるもんじゃないが‥‥」
 老翁は小袋を開けて粉を捨てる。
「こんなものは奴隷商人や人買いが使うもんだ。薬として使う場合もあるが、あんたには必要なかろう。最近になって安い大麻が大量にパリに流されておる。デビルが悪魔崇拝者を使って流しておると‥‥おや?」
 老翁の話しの途中で青年の姿はなくなっていた。

 老翁は冒険者ギルドを訪れる。
「大麻で身を滅ぼすのを、わしは自分の息子で知っとる。だからお願いしたい。前途ある若者を救う為になんとかして欲しいのだ」
「つまり、悪魔崇拝者が大麻を大量にしかも安くパリ市民にばらまいているのですね?」
「そうだ。デビルのやつらが何かしでかそうとしている前触れかも知れん。なるべくその悪の芽を摘み取って欲しい」
 老翁は資料と一緒に依頼金を受付の女性に渡す。
「わしは文字は読めん。だが、ここにある資料は悪巧みをしていた悪魔崇拝者からくすねたもんだ。あっ、金は真面目に働いて得たもんじゃぞ。勘違いせんでくれ」
 老翁はギルドを立ち去る際、涙を零した。それがなんの為に流されたのかは老翁しか知らない事であった。

●今回の参加者

 ea2100 アルフレッド・アーツ(16歳・♂・レンジャー・シフール・ノルマン王国)
 ea2350 シクル・ザーン(23歳・♂・神聖騎士・ジャイアント・イギリス王国)
 ea4465 アウル・ファングオル(26歳・♂・神聖騎士・人間・神聖ローマ帝国)
 ea7890 レオパルド・ブリツィ(26歳・♂・ナイト・人間・ビザンチン帝国)
 ea8284 水無月 冷華(31歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 ea8898 ラファエル・クアルト(30歳・♂・レンジャー・ハーフエルフ・フランク王国)
 eb3225 ジークリンデ・ケリン(23歳・♀・ウィザード・ハーフエルフ・フランク王国)
 eb3979 ナノック・リバーシブル(34歳・♂・神聖騎士・ハーフエルフ・ノルマン王国)

●サポート参加者

タケシ・ダイワ(eb0607)/ 護堂 熊夫(eb1964

●リプレイ本文

●接触
「どきやがけ! 俺に逆らうなど、神に逆らうなど何様だ!」
 中年男が街角で暴れていた。力一杯に壁を打つ手は血だらけだ。物だけでなく人にも突っかかってゆく。
「とても迷惑です」
 現れたジークリンデ・ケリン(eb3225)がスクロールのアイスコフィンで唱え、中年男を凍らせた。
 続々と仲間が集まりだし、ジークリンデが説明する。待ち合わせの街角でこの中年男が暴れていた事を。
「呼んで‥来ました‥」
 アルフレッド・アーツ(ea2100)が衛兵を呼びに行ってくれた。衛兵によるとこのような事件が多いそうだ。中年男の首からデビルを象るアクセサリーがぶら下がる。凍らされたまま連れて行かれた。
「強力な作用の大麻をいたずらに使っているせいだ」
 依頼主の老翁スズリは呟いた。スズリは冒険者達に資料を渡す。
「大麻を直に売っている売人の名簿ですね。『結社シューぺルブ』と記述があります」
 アウル・ファングオル(ea4465)が資料に目を通した。受付から資料があるのは聞いていたが、顧客名簿だと考えていた。アウルはより深い情報で瞳を輝かせる。
「これは‥とっても‥助かります」
 アルフレッドは献立表が出てきてがっかりする覚悟までしていた。これなら取っ掛かりが楽になると胸をなで下ろす。
「新たな悪魔崇拝者集団か‥‥」
 ナノック・リバーシブル(eb3979)は瞳の奥に憎しみの炎を燃やした。惑わされるヒトを必ずしもデビルと同一視する気にはならない。しかし容赦するつもりもないナノックである。
「部下など捨石にしか考えないのが悪魔崇拝者です。下っ端を捕まえても意味がありません。ここは慎重に幹部へ繋がるように辿って行きましょう」
 シクル・ザーン(ea2350)はすでに敵地への潜入についてを考えていた。
「スズリさん、この資料はどこでくすね、いや手に入れたのですか?」
 レオパルド・ブリツィ(ea7890)の訊ねに、スズリは賭場で偉そうな態度の男の側近から手に入れたと答える。ただし、その後賭場を訪れてみたが見かけていないとも答えた。
「パリ全体に売人は広がっていますが、特に貧民街が多いようです。こちらの地域に集中してみてはどうでしょうか?」
 水無月冷華(ea8284)は情報を吟味する。水無月もアイスコフィンを使うつもりであった。幾度となく使ってきたこの魔法は敵を捕らえる時にとても役に立つ。
「私は情報収集のために囮をしたいと思うわ。一応購入資金ぐらい用意できるし」
 ラファエル・クアルト(ea8898)の言葉に、スズリがある程度の金額なら負担するというのだった。

●開始
「‥‥何も、考えたくなくなることばかり。なんにでもすがりたい気分なんだ。俺だけじゃない、だいたい皆そんなもんだろ?」
 薄暗い路地裏でラファエルは大麻の売人に接触していた。わざとハーフエルフの特徴である耳を出し、服装も崩れた感じで着こなす。いつもの口調を変えてわざとぶっきらぼうに話した。
 近くの屋根の上からアルフレッドが監視をする。地上の離れた場所には水無月の姿がある。信用させる為に今日の所は買いに来ただけである。金と引き替えにラファエルは小袋を受け取った。

「何もかもぶち壊してしまや良いんだ、こんな世界‥‥どうだ、俺は役に立つぜ」
 アウルはラファエルと別の売人と人通りの多い道で接触する。ラファエルの進展を見てからとも思ったが仲間が多く、分散しても大丈夫そうである。離れた場所にはシクルの姿があった。
「用があるのは楽しくなりたい奴だけだ」
「そういうな。報酬は‥‥そうだなお高くとまっている連中の血が見られればそれでいい」
 アウルはダガーを抜いて近くにあった木棒を両断する。
「どうしてもというなら、あいつを殺してきな。そうしたら信じてやるよ」
 売人が指さしたのは妊婦である。アウルが躊躇していると、売人は何もいわずに去っていった。
 アウルは悪魔崇拝者の認識を変える。自分が考えている以上に残忍な奴らだと。

 ジークリンデは女性の売人を発見した。木陰で誰かを待っているようだ。
 インビジブルを自らに施して売人に近づくとチャームをかけた。その後でリヴィールマジックで使うと銀色に輝く。チャームはちゃんとかかっていた。
「お話でもしませんか? 一緒にこちらへ」
 ジークリンデは待ち人が来ると面倒だと考えて場所を変える。女性売人は疑うこともなく、ジークリンデと話し始めた。
「たくさん大麻を譲って欲しいの」
 酒場に連れてゆき、親密さを深める。
 依頼期間はまだある。ジークリンデは日数をかけてより深い情報の入手するつもりでいた。

「わしは大丈夫だよ。ドジはふんどらんから」
「ですが、ある青年を止める為に声をかけたと聞きました。悪魔崇拝者ならどんな手を使ってくるかわかりませんし‥‥そうそう、僕はカチコミ要員ですので」
 スズリの行動にレオパルドは付き添っていた。今は広場で日向ぼっこである。
「みんなあんたのように実直そうならいいのだがな。まあ、わしは人の事いえんがの」
 スズリが笑う。レオパルドはスズリの護衛を第一としていたが、話しているうちに疑問が沸いてくる。
 レオパルドはアルフレッドが捜索開始の前に描いてくれたスズリと話した青年を絵を眺める。アルフレッドの考えによれば、買い手ではなく、売人の可能性もあったのでないかと。スズリに訊ねてみると、ただの買い手であったと答える。
「よく似てたのだ。大麻で身を滅ぼした息子にな‥‥」
 スズリはしんみりと話した。

 ナノックは仲間のいる貧民街とは別の場所で売人をする者を締め上げていた。路地裏で売人を地面へと転がす。
「お前達の崇拝するデビルはどんな奴だ?」
 ナノックは容赦なく責める。顔を腫らした売人はわなわなと震えていた。
「そんなこといわれても知らないものは知らないんだ。偉大なるお方は滅多に姿を現さない。代理のインプ様やグレムリン様がお越しになって‥‥もうやめてくれ!」
「指導者は誰だ!」
「しっ指導者じゃなくて、統括者と呼ばれている。名前は知らない。みんな統括者と呼んでいるんだ」
 ここまでと考え、ナノックは売人に最後の一撃を加えて立ち去る。死にはしないだろうが、何ヶ月かはベットでの生活だろう。口も当分聞けないはずであった。

 タケシ・ダイワがパリ中を回ってくれて、資料の正しさを教えてくれる。護堂熊夫は怪しい屋敷をいくつか冒険者達に教えてくれるのだった。

●二日目
「すべてが鮮明で、世界が変わった。どうしてもっと早くやらなかったんだろう」
 ラファエルは昨日の売人の元に走り、新たな大麻を手に入れた。
「もっといいもんはないのか? あんたなら持ってるだろう?」
「そんなに気に入ったのか。今日はないが、上役に頼んで明日持ってきてやるよ」
 ラファエルの言葉に売人が頷く。
 立ち去る売人をアルフレッドが空から尾行する。地上からは水無月だ。
 売人は入り組んだ道を歩いてゆき、知らない家に入る。売人の家はすでに昨日の時点で追跡済みである。どうやら売人に大麻を卸している上役の家のようであった。

「そう、教えて欲しいのです。どこから手に入れているのかです」
 ジークリンデはチャームで友人となった女性売人と酒場で話した。外ではアウルとシクルが待機していた。
 ジークリンデは女性売人に家へと誘われてついてゆく。アウルとシクルは二人ともミミクリーが使える。大鷹に化けて高い場所に移動し、そして尾行する。
 途中、大麻を流してくれる自分の上役の家を女性売人は教えてくれる。
「任せてください」
 アウルは今度こそはと上役の家を外から張り込むのであった。

●三日目
「こいつ、なかなか見込みがあるんですよ。あっ、ちょっと仕事が残ってますので」
 売人がラファエルを自分の上役に紹介すると立ち去った。
「こんなすばらしい薬をもっと広めたい‥‥といっても信じてくれないよな。安いとは聞くが、俺にはもう金がないんだ。でも吸いたくてたまらない。だから雇ってくれよ! 頼むよ」
 ラファエルは上役に涙を浮かべて懇願する。
「我々も急いでいるからな。人手がもう少し欲しかった所だ。お前を連れてきた奴に二日ばかりついて仕事を覚えろ。すべてはそれからだ」
 上役は家へと戻ってゆく。
 ラファエルは家から離れて仲間の元に近づいた。
 アルフレッド、水無月はもちろんの事、シクル、ジークリンデの姿もあった。
 シクルは先程の売人にミミクリーで化けていた。本物の売人は縛られて監禁中である。
 ジークリンデは別ルートから同じ上役の家を突き止めたので、ここからは合流して行動するつもりだ。
 真向かいにあった空き部屋でアウルが上役の家を監視していた。
 ナノックは敵デビルの真相を暴くべく行動中。レオパルドはスズリの護衛を行っていた。

●四日目
「まだです。動く気配はありません」
 アウルがやってきたアルフレッドと話す。
 売人の上役がもっと上の幹部と接触すると考えて張り込みは続いていた。
 ジークリンデが虜にした女性売人によれば、かなりの上納金が溜まっているという。
 アウルは張り込みから外れた夜に、ラファエル達が捕まえた売人の元を訪れる。縛られたままの売人の前にミミクリーでデビルの姿で変身する。どこかで聞いた事がある山羊の雄の角付きだ。
 売人はその風貌からデビルだと認識したが、助けてくれ以外の言葉は発しなかった。ナノックが別の売人を締め上げた時と同じである。シューペルブの下っ端は本当に自分達が崇拝する存在を知らないようだ。
「そう簡単に姿を見せないとすれば、俺達が知らない高位のデビルなのかも知れない‥‥」
 アウルは売人から離れ、ミミクリーが解けると呟いた。
 夜は長く、冒険者は空き部屋で交代して家を監視した。しかしこの日はまったく動きがなかった。

●五日目
 冒険者達は全員が上役を監視する空き部屋を訪れて相談をしていた。
 すでにお昼は過ぎて、夕方を待つのみである。
 明日で依頼が終了する。
 今の時点で上役の家に踏み込んで捕まえるか、それとも待って元締めとなる統括者を捕まえるチャンスを待つかのニ択である。
 検討と多数決により、まだ待つことが決定した。
 辺りが赤く染まり、そして夜となる。夜間も交代して監視するが、動きはまったくなく六日目の朝が訪れるのであった。

●追跡
 お昼になると動きがあった。
 上役が馬車で出かけたのである。まずは上空からアルフレッドが追いかける。
「見つけ‥ました。この貧民街じゃなく‥て、もっと裕福な場所にある‥屋敷です」
 冒険者達は一斉にアルフレッドが教えてくれた屋敷へと向かう。馬やセブンリーグブーツを使い、お互いに協力しあった。
 アルフレッドは役目を果たして安心した。地図にダウジングペンデュラムを垂らしても、あまりに大きな円を描き、大まか過ぎる範囲しかわからなかったからだ。
 冒険者は二組に分かれた。陽動班と元締めの捕獲班である。夜明けに入るのがよいというもっともな意見もあったが、すでに最終日の六日目である。時間がないこともあり、夕方に決行が決められた。
 アルフレッドが屋敷を上空から調べて仲間に知らせる。
 屋敷から出てきた下っ端らしき二人の男を捕まえ、シクルとアウルがミミクリーで化けた。急いで屋敷の中へと向かう。
「忘れ物だ」
 シクルは門番の者に倒した男から手に入れた符丁を渡す。つい先程出ていった者だという事もあり、すんなりと屋敷内に入り込む。
 二人は用意した服のフードを深く被る。ミミクリーの持続時間は長くない。シクルはさらに奥を目指し、アウルは入り口近くの誰もいない部屋に隠れた。
 頃合いを感じ、陽動班が攻撃を開始した。
 門番を蹴散らして、庭へと侵入し、さらに屋敷内へと進む。
 屋敷に入ったばかりの広間にレオパルドは愛馬マルダー、ナノックはペガサスのアイギスで突入する。レオパルドは馬上から魔槍で攻撃し、ナノックは天井付近から舞うようにして床に立つ悪魔崇拝者を攻撃した。アイギスはホーリーフィールドを展開していて頼もしい。
 部屋に隠れていたアウルが広間に入った二人に注意をとられていた悪魔崇拝者を叩く。そして広間に飛び込んできた愛馬に跨り、剣と盾を手にして戦った。
 ジークリンデはフレイムエリベイションをかけて屋敷の庭に待機していた。
 屋敷から逃げようとする悪魔崇拝者をアイスコフィンで次々と凍らせる。インフラビジョンで中を探ると今のところ、仲間が優勢のようだ。悪魔崇拝者の屋敷とはいえ、パリ市内である。強力な魔法は出来る限り控えたい。
 手薄になった裏口から捕獲班は進入した。捕獲班は屋敷にいるであろう元締めなる統括者を捜す。
 アルフレッドはランタンを手に進入する。暗がりを探す必要を考えていた。
 水無月は格闘で行く手を邪魔する者を排除してゆく。
 ラファエルは途中で悪魔崇拝者の上役と出くわした。
「てめぇ裏切ったな!」
「悪いけど‥‥私は偽物の霞のような夢には興味ないのよ」
 ラファエルはからりと笑うと剣を抜いた上役の攻撃をかわす。そして死なない程度に叩きつぶして先を急ぐ。
 先に進入したシクルとジークリンデがテレパシーでやり取りする。その結果をジークリンデがアルフレッドに教える。そしてアルフレッドから聞いた捕獲班は全員シクルが追いかける統率者を抑えようと先回りをした。
「氷よ、包め!!」
 水無月が素早くアイスコフィンを唱える。瞬く間にシクルが追いかけていた統率者は氷付けになった。
「いや、統率者ではないようです。その下のナンバー2です。逃げだす寸前の会話で聞きました」
 シクルが凍った男を前にして呟いた。残念ながらこの屋敷にシューペルブの統率者はいなかったようだ。
 アルフレッドが衛兵を呼び、屋敷にいた悪魔崇拝者達は捕らえられた。異端審問にかけられることだろう。
 衛兵が来るまでにリシーブメモリーで情報を聞き出そうとしていたジークリンデだが、魔力が切れてそこまでには至らなかった。
 話しを聞きつけてスズリも屋敷に来ていた。
「残念ながら統率者は捕まえられませんでした」
 水無月がいうとスズリはまず「ありがとう」といった。
「こいつでいいのだよ。息子なのだ、こいつは‥‥。世間に多大な迷惑をかけおって」
 スズリは氷付けのナンバー2が運ばれるのを見続けた。
 スズリの言葉に冒険者達は驚いた。息子は大麻で身を滅ぼしたとは聞いていたが、それが幹部だったとは知る由もない冒険者達である。
 冒険者の何名かはこれで道理がいく。スズリはお礼の品を冒険者達に渡した。
 すでに夜となったパリである。
 冒険者達はアルフレッドのランタンの火に導かれながら報告の為にギルドへと急ぐのであった。