誰が為の東歌
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■ショートシナリオ
担当:天音
対応レベル:8〜14lv
難易度:やや難
成功報酬:4 G 98 C
参加人数:6人
サポート参加人数:2人
冒険期間:05月18日〜05月23日
リプレイ公開日:2008年05月25日
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●オープニング
「この間の吟遊詩人がね」
「ああ、また恐獣に巻き込まれたんですか」
そんなやりとり。
最初の言葉はゴーレム工房所属のゴーレムニスト、ユリディス・ジルベールのもの。
次の言葉は彼女が訪れた冒険者ギルドで彼女の応対をした職員のもの。
吟遊詩人――それはエルフの男性で、何故か行く先々で恐獣に出会ってしまっているという不思議な人。
「いえ、今回は既に巻き込まれているわけじゃなくて」
頼まれたのよ、とユリディスは告げる。
「あの人、何故だか知らないけれど自分や友との思い出の地を回っているらしくて。今回はその行き先途中に恐獣がいるらしいのよ」
別の道を通ればいいと思うのだけれど、どうやら彼にとってはその道筋も大切なものらしく。
また、近隣の村からも恐獣らしきものを見かけたという報告が来ているという。さすがにそれでは放置するわけにも行かず、ユリディスが依頼を持ってきたというわけだ。
「今はまだ村とかが襲われている被害は出ていないのだけれど。でもこれからでないとは言いきれないし、被害届けが『出されていない』だけで既に被害が出ていないとも言いきれないし」
つまり旅人などが襲われてしまい、全滅してしまって被害届けを出せない状態――という可能性もないわけではないということだ。
「だから退治に行こうと思うの」
「『行こうと思うの』ってあー‥‥まあいいか」
どうせ止めても無駄だろうと判断した職員はユリディスに先を促した。
「今回相手にする恐獣はアルティスピナクス、デイノニクス、ガリミムスらしいわ。アルティスピナクスは八メートル位あって屏風の様な背びれが有るの。デイノニクスは三メートル位の大きさだけれど、素早くて凶暴だわ。ガリミムスはダチョウという生き物に似た恐獣らしいわ。それほど強くはないらしいけれど、群れを成しているみたいね」
数の暴力という言葉もあるので、注意はしておくに越したことはないだろう。
「辺りは平地――というか草原みたいなものだから、フロートシップを下ろすことも出来るし、特に気を使わないといけない建物はないわ。だから頑張って頂戴」
そういうとユリディスはいつものように艶然と笑んだ。
●敵戦力予想
・アルティスピナクス2体〜
・デイノニクス2体
・ガリミムス5体〜
●貸与ゴーレム
・オルトロス2騎
・モルナコス最大5騎
・ゴーレムグライダー最大3騎
・フロートシップ・ナロベル(デロベ級3番艦)
※ゴーレムは最大数まで使用しなくても構いません。
※ゴーレムに乗り手がつかず、かつ作戦に必要な場合は人型ゴーレムにのみNPC鎧騎士(専門レベルくらい)が派遣され、作戦にしたがって行動します。
※最大数使用しない場合は何騎まで、と決めてもらえると助かります。
●リプレイ本文
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ゴーレムと冒険者を乗せたフロートシップは、迅速に目的地の平原へと向かっていた。
「そういえばユリディスさん」
移動中のフロートシップの中、ゴーレム格納庫へゴーレム機器の最終チェックにでも行こうかと考えていたユリディスに声を掛けたのは風烈(ea1587)だった。
「戦闘時に戦闘要員がフロートシップから迅速に出撃する方法はないか?」
「‥‥と、言うと?」
足を止めて振り返り、小首を傾げるユリディスに烈は自分の考えをぶつける。
「今までの戦いだとフロートシップが着陸してから兵士やゴーレムが出撃するという事があった。でもそうすると着陸してから離陸するまでフロートシップの動きが止まって的になるだろう?」
「確かに、そうね」
「小型の兵士輸送用のフロートシップを格納庫に積んでおくという事は出来ないのか?」
烈の問いに、ユリディスは顎に手を当ててしばし考える。
「フロートシップは小型でも30m以上はあるわ。だから普通の50〜60m級のフロートシップに更にフロートシップを積むのは困難ね。前に浮遊機関の魔法を使ってゴーレムを下ろす事は出来ないのかって聞かれたことがあったけれど、その場合はゴーレムを固定する方法、その装置を動かす鎧騎士が位置する場所、装置の大きさなど色々と問題があって実現は難しそうだったのよ」
「なるほど」
「けれども」
言葉を切ったユリディスを、烈は黙って見ながら続きを待った。
「ゴーレムでなく通常の戦闘要員をフロートシップから迅速に下ろす装置ならあるいは‥‥。チャリオットとグライダーの良いとこ取りをして‥‥」
「ユリディスさん?」
顎に手を当てたまま、なにやらぶつぶつと始めたユリディス。烈が声を掛けても反応はない。彼女の顔は、研究者のそれになっていて、既に何か思いついた案を纏めるのに必死なようだ。
「‥‥まあ、今後の戦闘要員出撃の迅速な方法が確立されるきっかけになればいいんだがな」
そんなユリディスを見て、烈は苦笑を漏らした。
●
準備や整備を終え、一行は問題の平原へと差し掛かる。恐獣が目視できる範囲にフロートシップを留め、オルトロス2騎、モナルコス5騎、グライダー1機が出撃準備を整えていた。
オルトロスには加藤瑠璃(eb4288)と白金銀(eb8388)が乗り込み、モナルコスには王都から派遣されてきた一般の鎧騎士が乗り込む。グライダーには操縦者としてバルザー・グレイ(eb4244)が乗り込み、その後ろにアリウス・ステライウス(eb7857)が援護として乗り込む予定だ。一方布津香哉(eb8378)はナロベルに残り、精霊砲と大弩弓の指揮を取る。
「まずは整備・点検の手伝い有難う。お礼を言うわ」
「こちらこそ、学ぶ事が多いので日々勉強です」
ユリディスの言葉に、彼女の点検について回っていたアリウスが答える。一人前のゴーレムニストへの道は険しい。先はまだまだ長いと彼は感じている所だ。
「力仕事くらいなら手伝えますから」
「私は技術屋としても興味がありましたし」
答えるのはバルザーと銀。力仕事を手伝ってくれたバルザーはともかく、技術屋としてゴーレム整備に興味のあった銀には、ユリディスが教えられることなんてほんの少ししかなかったのだが。
「ところでさ、恐竜の肉って食べられるのかな? あれだけ大きいと食い応えありそうだが‥‥誰か食べたことある人いる?」
じーっと恐獣の群れを眺めていた香哉が何を言いだすかと思えば。一同の目が一瞬点になる。
「世界には『ダイナソア味の保存食』なんてものも存在するみたいだから、誰か食べた事がある人でもいるんじゃない?」
くす、と笑って答えたのは瑠璃だった。ダイナソア味の保存食‥‥一体どんな味がするのだろうか? 今は想像する事しか出来ないが。
「それじゃあ行くとするか。ユリディスさん、魔法宜しく」
ペガサスを足場にしてフロートシップから降りるつもりの烈の言葉に、ユリディスは頷く。
全員が持ち場につき、恐獣駆逐作戦が始まった。
●
「精霊砲、バリスタ、撃て!」
ゴーレムで出撃した仲間たちを巻き込む恐れがないことを確認した香哉の叫び声が、フロートシップ乗組員の耳に届く。すると一斉に平原の恐獣たちに向けて大量の矢と精霊砲が放たれた。
ドガァァンッ!!
土煙を上げて、敵に降り注ぐ矢と精霊砲。集中砲火を受けたアルティスピナクスが危険を感じ、背中の棘を広げて威嚇しているのが見える。
「(これがカッパーゴーレム‥‥今まで乗ったウッドやシルバーに比べると、少し反応が鈍いのね)」
瑠璃は斧を装備したオルトロスで恐獣との距離を詰める。背中に棘を生やしたアルティスピナクスやディノニクスとの距離はすぐに縮まったが、どうやらダチョウに良く似たガリミムスはオルトロスより足が速いようだった。
そのガリミムスを、バルザーの乗ったグライダーがゴーレム隊の方へ追い立てるように飛ぶ。後部に乗ったアリウスは高速詠唱でファイヤーボムを唱え、足の速いガリミムスを狙った。すでに精霊砲と大弩弓の砲火を受けていた彼らの動きは鈍く、次々と炎に包まれ叫び声を上げる。
瀕死のガリミムス達の動きは鈍い。このまま着実にダメージを与えていけば、逃がさずに倒すことができそうだった。
烈はペガサスから飛び降り、ディノニクスの撃破だけを目指す。何度か失敗したが漸く成功したオーラエリベイションを纏い、その拳を振るう。すると彼の胸元にレミエラの紋様が浮かび上がり、仄かに光を発し始めた。昼間である現在は良くわからないが、その明るさは夜間で辺りをうっすら視認できるほどだろうか。紋様自体は昼間でもはっきりと視認できた。
既にナロベルからの攻撃によって傷を負っているディノニクスの動きは鈍く、その身体は烈の卓越した拳捌きを避けることは出来ない。傷を負わされたことに怒ったように牙を向けるディノニクスだったが、その牙さえも烈は華麗に回避する。
一方、もう一体のディノニクスには瑠璃が当たっていた。モナルコス隊にアルティスピナクスを一旦任せ、ぶんっと斧を振り下ろす。ガツンと首筋に斧をめり込ませたディノニクスはその牙で反撃を試みる――が
「(乗りこなして見せるわ――!)」
瑠璃の方が一歩勝っていた。オルトロスは辛うじてディノニクスの攻撃を避ける。ダメージの累積していたディノニクスの攻撃はやはり鈍くなっていた。このまま攻めきれば勝てる、そう思わせるほどに。
「(足つきのゴーレムに乗るのは久しぶりですね‥‥頑張らないと)」
大盾と小剣を装備したオルトロスを駆るのは銀。モナルコス隊と協力して隊列を整え、威嚇の様相を呈しているアルティスピナクスの攻撃を防ぐ。その間にモナルコス隊が敵へと攻撃を加えていた。
『危ないっ!』
と、二体いるうちの一体が、もう一体に攻撃を仕掛けているモナルコスへと爪を振り上げるのが見えた。銀は急ぎ、そのモナルコスを庇うように間に割り込み、大盾でその爪を受ける。
『すいません、助かりました!』
風信器を通してモナルコス操縦士から礼の言葉が掛けられる。銀は敵から視線を外さないようにしながら答えた。
『気をつけてくださいね』
「かかったな」
烈の見せた隙を狙って攻撃してきたディノニクスに、カウンターアタック+ダブルアタック+ストライクEXという合成技を決めた烈は、倒れ付すディノニクスを見た。その彼の近くを、雷撃がすり抜ける。ナロベルからユリディスが放ったライトニングサンダーボルトだ。
「!」
事前に仲間を巻き込まないようにとタイミングを打ち合わせていたゆえ、彼女にとってはきちんと計算した上の射線なのだろうが、実際に側を雷撃が通るというのは気持ち良いものではない。ちなみにその雷撃は、バルザーとアリウスがグライダーから相手をしているガリミムスを数体貫いた。
瑠璃がディノニクスを倒した後振り返れば、アルティスピナクスを相手にしているモナルコス隊はリーチの長い槍を得物に善戦していた。そこに瑠璃が加われば、すぐに全滅させられるだろう。
数が懸念されていたガリミムスはそれほど耐久力がないようで、確実に弱らされている。
「よし、最後にもう一発!」
香哉の指示で大弩弓が戦場奥のガリミムスに矢の雨を与える。
程なく、平原の恐獣たちは全て沈黙した。
●
「後始末もOK?」
まるで「忘れ物はない?」とでも聞くように訪ねるユリディスに、グライダーから降りたアリウスが苦笑しながら頷く。ファイアーボムで広がった炎は、プットアウトできちんと消し止めてきた。
「これで吟遊詩人も通行できるかな?」
恐獣の死体が横たわる平原を見て、香哉が呟く。そういえば元はエルフの吟遊詩人の持ってきた依頼だったような気がする。
「まあ‥‥死体の中を歩くというのもぞっとしないだろうが、他に恐獣の姿も見えないようだし」
倒し残しがいないか、一通り戦場を見て回ってきたバルザーがグライダーから降りながら告げる。
「それにしても恐竜、どんな味なんだろうな?」
「なんなら肉を持って帰ってみればどう?」
ナロベルから恐獣の死体を眺めている香哉に、ユリディスが悪戯っぽく囁きかけた。