【棺に花を】沈黙の帰還

■ショートシナリオ


担当:天音

対応レベル:8〜14lv

難易度:難しい

成功報酬:4 G 98 C

参加人数:7人

サポート参加人数:-人

冒険期間:06月05日〜06月10日

リプレイ公開日:2008年06月11日

●オープニング

●小さな棺
「どうしてこんな事にっ‥‥‥!」
 ウェルコンス男爵邸の玄関広間に、セルシアの涙交じりの声が響いた。レシウスは静かに、その肩に手を置く。だが今は慰めの言葉が出てきそうになかった。
「アネッテ姉様、どうしてこんな箱の中で寝てるの?」
 小さな妹ヘルマの言葉。それに的確な返答が出来ず、セルシアは思わず妹を抱きしめた。
 目の前に置かれた棺。
 蓋のずらされたそれの中には、花の香りに包まれるようにしてアネッテが――まるで眠っているかのように横たわっていた。
「‥‥‥事情は、理解した」
 羊皮紙をぎゅっと握り締めて、ウェルコンス男爵が低い声でハーネ男爵家からの使いの者に声を掛ける。
「アネッテをここまで連れて来てくれた事、感謝する」
 使いの者は跪いたまま、男爵の言葉に深く頭を垂れた。

 男爵に渡された書状はハーネ男爵直筆のもので、ハーネ男爵邸で起こった『事故』が事細かに記されていた。
 アネッテは夜半、部屋に迷い込んだ子猫を追いかけ、廊下に出たという。そしてそのまま二階を走りぬけ、一階へ降りる階段へ差し掛かった。そしてその踊り場から一階に降りようとした時、足を滑らせて階段から落下、打ち所が悪くそのまま息を引き取ったのだという。
 該当の事件は男爵子息エーフライムが目撃していたという。エーフライムは廊下を走る足音を聞いて廊下を覗いたところ、駆けていくアネッテの後姿を見つけ、追いかけたのだ。だが彼が階段の上に追いついたときには、アネッテが足を滑らせて階段から落ちる瞬間だったのだという。
 悲鳴と物音を聞いた使用人達が駆けつけたときには、アネッテは昏倒しており、程なく息を引き取ったのだとその書状には書かれていた。
 ハーネ男爵は自らの監督不行き届きだと深く書面にて詫びているという。
「っ‥‥この間俺が無理にでもハーネ男爵邸へ潜入して、アネッテと接触していればこんな事にはならなかったかもしれない‥‥」
 レシウスは拳をぎゅっと握り締め、過日メイディアへ赴いた時の事を思い返す。あの時アネッテやエーフライムに接触できていれば、何かが変わったのかもしれない――そう思わずにはいられない。
「レシウス」
「はっ、義父上」
 腹の底から出されたかのような太い男爵の声に、レシウスはその場に跪いた。婿入りした今でも私兵だった頃の癖が少し抜けない所がある。それは彼が真面目な証。
「アネッテの死の真相を調べて来い」
「!」
「お父様!?」
 ウェルコンス男爵の言葉に、レシウスだけでなくセルシアも驚いたように顔を上げる。
 男爵は娘の死がただの事故ではないと思っているのだ。それはもしかしたら、娘の死を受け入れたくない父心から出た疑念なのかもしれないが――。
 棺を運んできた使者たちを帰すと、男爵はつかつかと棺に歩み寄った。そして何を思ったか眠っているアネッテのドレスの裾をめくり上げる。袖をまくる。
「太腿から足に掛けて血の跡。手首に紐の跡の様な擦過傷。顔は白粉で隠されているが、殴られたような跡がある」
「「!?」」
 男爵は至って冷静であった。普通ならば突然の娘の死に動転して遺体を検めるどころではないだろう。
「これでもまだ、『事故』を信じる気になるか?」
 その言葉に、レシウスもセルシアも返答をすることが出来なかった。


●依頼
・ハーネ男爵邸(メイディアにある)内の人物と接触し、事故の真相を突き止める
・調査期間は3日目の夜まで。5日目の夜に行われるアネッテの葬儀までには帰還するため
・アネッテの葬儀に参列して、棺に花を手向けて欲しい
・エーフライムは15歳。彼との接触を望む場合は2日目夜に行われる社交界を利用できる
・エーフライムは美少年で名うてのプレイボーイ。年上も年下も幅広く魅了するという
・ハーネ男爵邸には男爵、男爵夫人、エーフライムと多数の使用人が住んでいる
・男爵夫人は普段離れに住んでいて、滅多な事では本館には現れない
・護衛の募集はされていないので、邸内の人物への接触方法には頭を使うこと
・誰にどんな事を尋ねるのか、しっかり決めておいた方が吉
・アネッテは子息の誕生日パーティへ、男爵の名代として行き、その後一緒に連れて行ったメイドたちを先に帰してまで男爵邸に滞在していた
・アネッテは10歳でした。エーフライムに憧れていたらしいです

●今回の参加者

 ea8147 白 銀麗(53歳・♀・僧侶・エルフ・華仙教大国)
 eb3446 久遠院 透夜(35歳・♀・鎧騎士・人間・ジャパン)
 eb4288 加藤 瑠璃(33歳・♀・鎧騎士・人間・天界(地球))
 ec0844 雀尾 煉淡(39歳・♂・僧侶・人間・ジャパン)
 ec4205 アルトリア・ペンドラゴン(23歳・♀・天界人・人間・天界(地球))
 ec4322 シファ・ジェンマ(38歳・♀・鎧騎士・パラ・メイの国)
 ec4371 晃 塁郁(33歳・♀・僧兵・ハーフエルフ・華仙教大国)

●リプレイ本文

●少女と少年
 少女には友達がいた。
 二人の少年とは、親に連れられていった社交界で出会った。
 家の爵位も同じであり、年の頃も近かった三人は、すぐに意気投合し、お互いの家に遊びに行く間柄となった。
 だがそうした楽しい時間を過ごせるのもほんの少しの間。
 少女は気づく。
 どちらかの家に、自分は嫁ぐことになるだろうということに。


●真実を求めて
「残念ながら‥‥」
 出発前にアネッテの遺体との体面を望んだ冒険者たちに、レシウスは申し訳なさそうに告げた。
 アネッテの遺体はすでに港町ナイアドのウェルコンス男爵邸に運ばれており、そのナイアドへはゴーレムシップを利用しても2日近く掛かる。
「レシウス、アネッテはウェルコンス男爵夫人に似ていた?」
 久遠院透夜(eb3446)の問いにレシウスはゆっくりと頷く。
「ああ。セルシア同様ウェルコンス男爵夫人に良く似ていた。だが男爵夫人というよりはセルシアの小さい頃にそっくり‥‥だろうか」
 セルシアの絵姿を持っているという彼は懐からそれを出し、白銀麗(ea8147)に見せる。銀麗はミミクリーでアネッテに化ける事を考えているので、念入りにセルシアの絵姿からアネッテの姿を想像した。レシウスに細かい質問も投げかける。
「10歳の子がそんな死に方をするなんて‥‥許せないわね」
 呟かれた加藤瑠璃(eb4288)の言葉にアルトリア・ペンドラゴン(ec4205)が頷けば、皆が一様に押し黙る。皆思っていることは同じだ。アネッテへ、花と共に真実を届けたいと。
「怒るのも悔やむのも後にして、今は冷静に真相を暴こう」
 透夜の言葉に「頼む」とレシウスは深く頭を下げたのだった。


●社交界の日に
 主に冒険者達の行動の中心のなるのは2日目の社交界だ。普通に客として潜入する者にはレシウスの手により招待状が預けられる。
 社交界に普通に参加するのはチャイナドレスを着こんで誘惑の香水を使用した瑠璃に丹念に化粧を施し、ノーブリスキルトと聖十字の上衣を着用した晃塁郁(ec4371)、ブラウライネを着込んだアルトリアだ。銀麗は貴婦人に変身して潜入する。
 透夜はリンデン幻奏楽団の団員として会場で演奏をさせてもらうという交渉に成功していた。
 シファ・ジェンマ(ec4322)はこっそりと忍び込むことを予定している。
 雀尾煉淡(ec0844)は離れにいるという男爵夫人の調査を予定していた。
「昨日事故現場を見てきましたが」
 ミミクリーで使用人に化けて潜入してきた銀麗が口を開く。
「エーフライムさんの私室から問題の階段まで、ぽつりぽつりと比較的新しい血痕がありました。必死に落とそうと努力したような跡もありましたが、血はそう簡単には落ちません」
「! ということは、アネッテさんはエーフライムさんの部屋で怪我を負わされて、廊下を逃げたという――」
「――可能性もありますね」
 塁郁の言葉をシファが引き継ぐ。そう、あくまで今の所推論に過ぎない。
「何にせよアネッテさんが不自然な怪我を負っていたのは事実です。エーフライムに近づく皆さんは気をつけてください」
 煉淡の言葉に一同は頷く。
「私はエーフライムの私室付近をもう少し当たってみます。他にも女性が監禁されているかもしれませんし」
「そちらは任せた」
 竪琴を手に、透夜がシファの肩を叩く。
 そろそろ時間だ。
 この屋敷で起こった不幸な「事故」などまるで無かったかのように、パーティが始まる。


●真実と、狂おしいほどの想いと
 宴は華やかに、そして和やかに進められていく。使用人達も一様に忙しく会場と厨房を行ったり来たり、そしてお客の案内、と忙殺されていて余計な事を考えている余裕は無いようだ。使用人にリードシンキングを使用した煉淡だったが、これと言った情報は得られなかった。ゆえに当初からの予定通り、夫人のいる離れに向かう。使用人達の意識が会場に向いている今ならば、見咎められる危険は低そうだった。
 ミミクリーでジャイアントオウルに化けた煉淡は離れへと近づく。会場の喧騒とは対照的に、小さなランタンでのみ明かりを取っているだけであり、ともすれば人の気配すら感じられないほどで。
「(‥‥夫人は本当にいるのでしょうか)」
 こっそりと、ディテクトライフフォースを唱える。魔法発動時の光は闇が隠してくれる。
「(反応は3つ‥‥どれもそれほど大きくなく。小柄な女性‥‥でしょうか)」
「奥様、そちらは危のうございます!」
「!?」
 突然の声に、煉淡は急ぎミミクリーでジャイアントオウルへと化ける。離れの中庭、そこにふらふらと迷い出てくる寝巻きの女性と、慌ててそれを負うランタンを持ったメイドの姿が見て取れた。
「(あれが夫人でしょうか‥‥?)」
 その姿は異様と言えば異様だった。うっすらと口元に笑みを浮かべているものの、目はうつろ気味で。ともすれば、すぐに壊れてしまいそうな儚さもあいまって。
「ふふふふ‥‥はははは‥‥」
 夫人はくるり、庭で一回転し、そして笑う。狂気の片鱗すら感じさせるように。
「あの人は‥‥どこ? 私のあの人は‥‥またあの女のところに行ったの?」
「奥様、旦那様は後できちんといらしてくださいますから。お部屋でお待ちいたしましょう?」
 徐に座り込み、がさがさ、と芝生を漁る夫人。それをまるで子供をなだめるかのようにあやすメイド。
「(これは‥‥カオスの魔物云々以前に、夫人は心を‥‥)」
 そう、その様子はまるで心を壊してしまった人間のように見えた。


「(特に女の人を監禁している様子は無いですね‥‥)」
 会場の騒ぎに乗じてエーフライムの私室がある辺りに忍び込んだシファは、女の人が監禁されている可能性を考えて部屋の扉に聞き耳を立ててみたりして人の有無を確かめていた。しかしどの部屋からも人の気配は感じられず、どこかに誰かを監禁している様子は無かった。
「(ここが、恐らくエーフライムの‥‥)」
 絨毯に残った血痕を見て、彼の部屋にあたりをつける。扉に耳を近づけてみると、きちんと閉まっていなかったのかキィ‥‥と小さな音を立てて扉が開いた。廊下に設置されたランタンの光がほの暗い部屋に射し込み、ぼんやりと部屋の中の様子を窺わせる。

 キラリ‥‥

 丁度、ベッドの下あたりで何かが光ったように見えた。シファはそっと部屋の中に入り込み、ベッドの下に手を伸ばす。
「これは‥‥髪飾り?」
 そこにあったものは上等な素材で出来た、子供好きしそうなデザインの髪飾りだった。

 青年と少年の丁度真ん中あたり。15歳というその少年は背が高く、年齢よりは大分大人びて見えた。社交界に参加するご婦人方や少女達に細やかに声をかけ、また自分を見る視線を感じれば相手から声をかけさせる前に礼儀だとばかりに自分から声をかけてダンスへと誘う。そんな彼が一人になった隙を狙い、透夜が声をかける。
「これはこれはお美しい吟遊詩人殿で」
 エーフライムは美しい顔をほころばせ、彼女に微笑みかける。だがその笑顔が誠のものか、怪しいものだと透夜は思う。
「お褒めにあずかり光栄です。ところで子息殿」
 透夜は鎮魂歌を爪弾きながらゆったりと問いかける。離れた位置で、銀麗がこちらを見ているのを確認しながら。
「吟遊詩人は見えぬ者を見、聞こえぬ声を聞いて歌を作る‥‥私には少女の声が聞こえる」
「‥‥ほう?」
 透夜の言葉にエーフライムは顔に微笑を貼り付けたまま、興味深いとでも言うように問い返す。
「痛い、苦しいの叫び、帰りたいと願い。‥‥そしてどうして嘘をつくのと責める声が」
「さて‥‥身に覚えは有りませんが?」
 スッと一瞬、エーフライムの瞳が鋭くなったように見えた。銀麗のリードシンキングがエーフライムの表層思考を読み取る。
『この吟遊詩人、何か知っているのだろうか?』
 読み取れたのはそんな猜疑心。それは「何かがあった」と認めているも同然だったが、それが「事故」を指しているかもしれなく、まだ断定するのは早かった。


 透夜がエーフライムの前を辞した後、今度は瑠璃が彼に近づいた。魅惑的な香りを放つ彼女に気づいたエーフライムは、微笑を浮かべながらゆっくりと彼女に近づいていく。
「これはこれは‥‥このような美しい花がこの会場に咲いているのに気がつかないとは、失礼致しました。よろしければ少しお話でも?」
「よろこんで」
 にっこりと微笑む瑠璃。渡りに船とはこのことだ。人酔いしてしまったので涼しい所へ行きたいの、との彼女の言葉でエーフライムはバルコニーへと彼女を誘導する。
「美しい黒髪だ‥‥よろしければこのパーティが終わった後、僕の部屋で共に飲みなおしませんか?」
 するりと瑠璃の髪を撫でる彼の手。瑠璃はその手をぱしん、と払いのけて凛として言った。
「あなたが女の子や女性をどう扱うのか、聞いているわよ。退屈しているおばさん達にはただの遊びかもしれないけれど、さすがに仲間入りはゴメンね。このお屋敷で亡くなったって子も、おんなじ理由かしら?」
「これはこれは‥‥嫌われてしまったようですね。ですが彼女の事は誤解ですよ。変な噂になっているようでしたら困りますね。僕になついてくれていた可愛い子だったのに、惜しい事をしました。不幸な事故だったのです」
 流れるように飛び出す彼の言葉。瑠璃は勿論それを頭から信じてはいない。彼の表情は「悲しみ」を作っているようにしか見えないからだ。
「事故‥‥ね‥‥」
 瑠璃の呟きが、夜風に乗って流れた。


●葬儀の日に
 痛い。
 悲しい。
 エーフライム。
 好き。
 やめて。
 お願い。
 好き。
 なんで――。

 アネッテの棺の側に膝をついた塁郁が溜息をつく。ウェルコンス男爵の了解を得て、デッドコマンドを繰り返した彼女の中には、アネッテの切なる思いが流れ込んでいた。それは冒険者達が得た結論を裏付けるもので。
「深夜、アネッテさんの姿を模してエーフライムさんの前に出た結果――」
 銀麗は起こったことをありのままに話す。
 エーフライムは闇にぼんやりと浮かぶアネッテの姿を見て、驚いたように叫んだ。
 何者だ、また僕から母上を奪うつもりか――と。
 宗教の無いこの世界では幽霊や生霊という概念が存在しない。ゆえに彼に現れたのは、恐れよりも驚きで。
「使用人から聞いた話ですがハーネ男爵夫人は、ハーネ男爵が今でも昔好きだった女性を愛していると思い込み、心を壊してしまったそうです」
 社交界の間にこっそり使用人に接触していたアルトリアが述べる。
「滅多に表に姿を見せないのは、それゆえかと」
 実際に夫人の姿を見た煉淡の言葉だ、説得力がある。
「夫人は心を壊した時にエーフライムの事を忘れてしまったようだな」
 口の軽い使用人から巧妙に聞き出した透夜が溜息をつく。
「彼が女性に手を出し続けるのは、もしかしたら母親の愛を求めているのかもしれないわね」
 瑠璃がぽつりと呟いた。だが、それとこれとは別で――。
「アネッテちゃんが倒れているのを発見して騒ぎになった時、階段上にいたエーフライムが微笑を浮かべていたのを見たっていうメイドがいたの」
「エーフライムの私室で、これを見つけました。アネッテさんのものではありませんか?」
 シファが髪飾りを取り出す。それは喪服に身を包んだ末の妹、ヘルマがつけているのと同じもので。アネッテのものに、間違いはなさそうだった。
「つまり私達は、今回の事件をこう推理する」
 透夜がウェルコンス男爵、セルシア、レシウスを順に見、決意したように口を開く。

 エーフライムは母親を「壊した」原因となった者の娘アネッテを、彼女の好意を逆手にとって復讐の道具とし、自室に監禁、暴行した後逃げ出した彼女を階段から突き落としたのだ、と。

 これは様々な角度から調査した情報を繋ぎ合わせて出した結論。
 辛い事実ではあるが、これ以上でもこれ以下でもないと思われる。
「そうか‥‥」
 ウェルコンス男爵は額に手を当て、静かに涙を零す。自らの過去のしがらみが、自らの子供の命を奪い、そして友人の子供を苦しめている事に。
「でもアネッテさんは、最後までエーフライムを好きだったようです。恐怖や苦しみの中にも、好きだという思いがつまっていましたから」
 デッドコマンドを利用した塁郁の言葉に、セルシアが思わず嗚咽を漏らした。レシウスがそんな彼女を優しく抱きとめる。
 これから先、冒険者たちが出来るのはアネッテに花を手向けることだけだ。男爵たちのしがらみや、ハーネ男爵夫人のこと、母の愛に飢えたエーフライムのこと、それらは全て当人達が何とか解決しなければならないことで。
「パーティの時、これを着た私に良く懐いてくれた事を今でも良く覚えている。大きくなったら着せてあげようと思っていたのに‥‥残念だ」
 花と共に棺に振袖を入れる透夜。他の冒険者達も次々と棺に花を手向けていく。
「せめて葬儀のお手伝いはさせてください」
 煉淡の手を借り、葬儀はしめやかに執り行われた。
 小さなその身体が、無事に精霊界へ昇れることを祈って。