私を市場へ連れてって!
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■ショートシナリオ
担当:天音
対応レベル:8〜14lv
難易度:やや難
成功報酬:3 G 32 C
参加人数:9人
サポート参加人数:1人
冒険期間:07月08日〜07月13日
リプレイ公開日:2008年07月12日
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●オープニング
●秘密の市場
アトランティスには時折、地球と呼ばれる天界から良く分からないものが落ちてくる。それはガラスで出来た何かであったり、プラスチックと呼ばれる不思議な容器だったり、ビニールと呼ばれるつるつるした布であったり、不思議な食料であったり、はたまた奇抜な衣服だったりとか。
挙句の果てに人まで落ちてくるのだから、一体どういうことだろうか。
落ちてきた人は冒険者として有能な素質を持っていたりする。そして彼らの世界から落ちてきたアイテム、それは彼らにとってはごく当たり前のものではあるが、この世界の者にとっては大変珍しい品物である。好事家達が大枚はたいて欲しがる事もあるとか。
通常の市場でそれら地球の品物を見かける機会はそうそうないだろう。だが――
「私も聞いた話なのですが、秘密の市場が開かれるそうなのです」
支倉純也がギルドで冒険者に対してぽつりと零した。名前からして胡散臭いことこの上ないのだが‥‥。
「どうやら、地球の製品を色々と扱っている市場らしく、好事家たちがこぞって品物を仕入れに来るとか」
「ということは、その市場に行けば地球の品物が手に入るというのか?」
冒険者の問いに、純也は小さく頷いて答えた。
「確実に‥‥というわけではないでしょうが、その可能性は高いと思います。ただ‥‥」
「ただ?」
「どうやら中には偽物を扱っている店もあるそうです。ですからそれらを間違えて買わされないように注意しなければならないようです」
それなりの目利きが必要との事か。
「あとは、値段なのですが、こちらもそれなりにするようですから、目的のものを見つけたら値切ってみるのも良いかもしれません」
「値切り‥‥まけてくれるのか?」
「それほどまでに欲しいのだという熱い思いをぶつければ、恐らく」
なるほど。
「ああ、あともし市場へ行くのでしたら、何が欲しいかしっかり心に定めて行った方が良いですよ。でないと目移りしたり、欲しい品物が見つからなかったりするかもしれませんから」
それでは良いお買い物を、と純也はにっこり微笑んだ。
●良いものを買う秘訣
・予算何ゴールドまでと決めておく
・探すものの種類を決めておく(武器/防具/服飾品/野外道具/筆記用具/食料品/酒類/商業関係/楽器/治療用品/照明用品/その他、など。もっと細かく探しているものがある場合は個別指定でどうぞ)
・類似品や偽物をつかまされないように注意する
・どうしてもそれが欲しいんだという熱意を語って値切る
●リプレイ本文
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一行は純也から聞いていた通りの道順でメイディアの街の裏路地を歩いていた。秘密の市場‥‥つまりは闇市だろうか、だが販売しているものは地球の品であり、悪いものではない。だからこそ、なんとなくどきどきする。実は後ろからこっそりついて行っている記録係自身までもこの買い物を楽しみにしてい――わかってます、お仕事が先。
裏路地の闇市といえば雑多で薄汚いものを想像しがちだが、そこは思っていたよりも整然としていた。店舗と思われる屋台ごとに品物は大まかに分かれており、目的のものが見つけやすそうだった。なんにせよ、その店頭に並んでいる品物は地球のものか地球の技術が取り入れられたものばかりで、地球人である者達にとっては一種懐かしさを感じさせるものだ。反対にそれ以外の者達にとっては珍しいものばかりで、目移りしてしまいそうになるのをぐっと堪えなければならない。
「あなたも律儀ねぇ」
「だって先生がきちんとしろって言ったんじゃないですか」
紙巻タバコと時計類を探して屋台を覗いていくのは門見雨霧(eb4637)と何故かユリディス。雨霧がゴーレム工房に出国届けを出しに行った時に彼女を誘ったのだ。確かに出国の際はきちんと理由を届け出る事、彼女はそう教えていた。
「まあなんにせよ、ゴーレムニストであることはあまり公にしないように。ゴーレムニストを狙った強盗殺人なんてのもあるらしいから」
「ひぇ‥‥」
珍しそうにそこかしこの品物を取りながら物騒な事をさらっと言うユリディス。雨霧は目的のものを扱っている屋台を遠目に認めて、彼女を促した。
「あと、あっちの工房には極力近づかないこと。いきなり訪ねたらあっちの工房では信用度ゼロに近い上に、こっちに戻ってきた時に工房にいれてあげられなくなる恐れがあるわ。やましいことは何もしていなくともね」
「気をつけます」
目的の紙巻タバコを5つ購入した雨霧は、改めてゴーレムニストの重さを噛み締めていた。
「この辺ですね‥‥うぅむ」
「あら応急手当キット発見したわ」
医療器具を求めるクロード・ラインラント(ec4629)と月下部有里(eb4494)は、それらしいブースの前に来ていた。有里は早速目的の応急手当キットを発見し、中身に欠損や破損、汚損がないかチェックする。
「聴診器や血圧計、滅菌ガーゼなどは見当たらないですね」
「その辺の品物は俺もまだ見たことないな」
クロードの呟きを拾ったのか、ブースの奥から青年が歩み出てくる。
「血圧計や湯たんぽなんかも残念ながらないが、医療用具だったら代わりに使えそうなものを見繕ってやるぜ?」
「あなたはまさか、地球人ですか?」
その青年の口から出た言葉に驚きつつもクロードは問う。さすがにこちらの世界の人からそれらの医療器具の用語を聞けるとは思っていない。すると青年はあっさりそれを肯定し、この市場の品物の分別や使い方の説明を担当しているのだ、と告げた。だからだろう、この市場がまるで地球で言うデパートの売り場のように品物別に分けられているのは。
「ガーゼ類は応急手当キットの中だな」
「それは持っているので、他のものをお願いします」
「じゃあ、ハンドタオルや浄水水筒、水銀温度計、救命胴衣なんてどうだい?」
確かに吸水性の優れたタオルや水をろ過してくれる水筒、体温計とまでは行かないが温度計に救命胴衣、それなりに医療に近いものだ。
「おいくらになりますか?」
クロードは青年の出した額に眉を顰める。ちょっと高い。
「こっちはいくら?」
有里は一番綺麗で内容の揃っている応急手当キットを指す。だがそちらもちょっと高めだ。
「使用方法も目的もわからない方がこうして並べて眺めているより、使ってもらった方が道具も幸せだと思うんです」
「中身の使い方が分からなければただの観賞物よ。使い方が分かってこそ、道具も人の役に立つんじゃないかしら?」
二人の値切りに、青年も少し考える。そこにひょい、と顔を出したのはルシール・アッシュモア(eb9356)だ。
「クロードさん、有里センセ、ルシこれと同じ様なの他のところで見たことあるから、無理してここで買うことないよ。高いなら他で買った方が‥‥」
「わかった、まけてやるから」
商人の娘であるルシールの駆け引きに苦笑しつつ、青年は相手が同じ地球人だからということもあるのだろう、大分まけてくれた。沢山購入したクロードには、オマケにハーブの束をつけてくれる。
「その代わり、俺が病気になったり怪我をしたら治療頼むよ?」
「ええ、勿論です」
感謝は忘れません、とクロードは微笑んだ。
フィリッパ・オーギュスト(eb1004)は一人、画材らしきものを扱っている界隈を歩いていた。本当は楽器を手入れする道具が欲しかったのだが、やはり予想していた通り中々見つからず。今度は色をつける道具を探す。「色鉛筆」や「クーピー」と呼ばれる画材があれば良いのだが‥‥。
「ありませんわね」
とりあえずその辺にあったプラスチックの細長いものと、蓋のついた細長い物を手にとって見る。プラスチックの方は上部を何度か押すと、先から細長い芯らしきものが出てきた。蓋のついた方は蓋を取ると中が筆になっており、墨が染み込んでいるのか筆の先は黒い。
「どうだい、安くしとくよ? 色をつけるものがほしいなら、この『缶』とやらには絵の具が入っているらしいよ?」
「どうしましょうかねぇ‥‥実は少し目的のものとは違いますの」
「ふむ、お嬢さんは絵描きさんかね? だとしたら地球の品ではないがちょっと珍しい物もあるよ」
商人が取り出したのは様々な動物の毛で作られた絵筆セットと何かの顔料。絵筆のほうは高級な毛が使われていることが分かる。顔料のほうは――
「この青は、もしかしてラピスラズリですか?」
「そう、さすがだねぇ」
ラピスラズリ、高級顔料の一種だ。
「それではこの缶の絵の具を3つ、ラピスラズリの顔料、絵筆セット、あとこの二つあわせるといくらになります?」
後二つとは最初に彼女が手に取った商品。シャープペンシルと筆ペンというらしい。
「20Gだな」
「それではいりません」
価格を聞いて即座に踵を返すフィリッパ。商人は焦ったように彼女を止める。
「安くしていただけますの?」
彼女は振り返ってにっこり、と笑顔を浮かべた。
さてここは時計やらライトやらを扱っている界隈。すでに熾烈な争いが繰り広げられている。
「電池が切れたら使い物にならないでしょう? 私は充電器を持っています。ですから長く使ってあげることが出来るのです。品物も喜ぶかと」
こちらはハンディLEDライトを狙うベアトリーセ・メーベルト(ec1201)。
「時計は良いですよね〜。人が最初に自然を表現した道具であり芸術品。しかも、その中には職人の熱意と技巧が詰められているのが良いですよね!」
詩人風に訴えるのは時計を狙う雨霧。
「10G!」
「いやそれは勘弁してくれ嬢ちゃん」
「じゃあ12G!」
いい値を聞いた後商人の顔色を窺いながらじわじわ本領を発揮するのはルシール。彼女が狙うのはソーラー腕時計と手巻き懐中時計。同時にベアトリーセと雨霧の分も値切る。
「もうこれ以上は勘弁してくれ〜」
「じゃあいらなーい」
「あぁあ、ちょっとまったー!」
商人のおじさん、泣きそうである。
結局ベアトリーセはライトを半額以下で手に入れ、雨霧はいくつか種類のあった時計の中から予算の関係で手巻き腕時計を。ルシールは手巻き懐中時計とソーラー腕時計を破格で手に入れていた。傍で見ていると商人がなんだかちょっと可哀想に見えてくる。が、安く買うのは駆け引きに勝った者の特権なのだ。
予想通り、女性陣が最も多く溜まっていたのは服飾品売り場である。ライターと伊達メガネを手に入れた有里、空のペットボトルに、店番のお兄さんにちょっと「お願い」してタダで貰った粉末ジュースを溶かして入れて、飲みながらウィンドーショッピングを楽しんでいたベアトリーセ。真っ直ぐに服飾品売り場へ向かっていたソフィア・ファーリーフ(ea3972)にシャクティ・シッダールタ(ea5989)とその保護者(?)の巴渓(ea0167)。
「『せーらー服』に『すくーる水着』に『ぶるまあ』はどこですのー?」
名前こそ聞いたことはあれ、実物を見たことのないシャクティが、片っ端から品物を吟味していく。そこへ助け舟を出したのは地球人の有里。
「残念ながらセーラー服とブルマーは見当たらなかったわ。でもスクール水着っぽいのならばあそこ、ワンピース水着を置いている場所にあったわよ」
「有難うございますわ!」
勢い込んでそちらへ向かうシャクティ。愛する人にその装いを見せるため、乙女心爆発である。そんな彼女が言い値で買わされないようにと、渓は後をついていく。
「あぁん、迷ってしまいますわぁ」
そこにはワンピース水着だけで様々なデザインのものが。そしてビキニ水着も何種類か置かれている。
「こちらも良いですけれど、こちらの大胆な水着も‥‥うふふ」
大胆な水着を着た自分を見た恋人がなんというか‥‥妄想は膨らむ。
「私はこれにしてみます」
「私はこの黒ね」
ベアトリーセと有里は目移りしているシャクティの横で、ビキニ水着を手に取る。
「ねぇ、私がこれを着ているのを想像してみてよ。黒が似合うのは私くらいじゃないかな。なんなら白衣の下にあなただけに見えるように試着してみようか?」
さすが有里、大胆な値引き交渉である。
「もうすぐ海水浴の季節ですからね〜。水着はこれから良く売れると思うんですよー」
だが商人の女性、中々手ごわい。これが冬だったら、もっと簡単に売ってくれたかもしれない。
「私と、ベアトリーセさんとシャクティさんで纏め買いするから、それで値引いてもらえない?」
シャクティに至ってはまだ迷っていてワンピース水着とビキニ水着の両方を手にしている。
「おい、こんなのあったがお前の好みとはちと違うか?」
そんな時に渓が手にしてやってきたのはバニーコート。身体にぴったり張り付くような衣装で、お尻にうさぎの尻尾の様な飾りがついている。
「まぁ、何て愛らしいことでしょう!」
「これを全部纏めて買うからよ、このくらいでどうだ?」
渓がちょっぴりかじった商人知識を生かして指を立ててみせる。
「そうですねー水着4着にバニーコートのお買い上げですかー。これくらいならー」
商人の立てた指の数はまだ多い。渓は負けじと交渉を続ける。
間。
結果、競り勝ったのは渓だ。粘り勝ちとも言うべきか。
「うーん、眼鏡に似合う服って難しいですねー」
ソフィアは溜息をつきながら、商品を見て回っていた。自身の着ているケンブリッジの制服の様な服があればよかったのだが、生憎と見当たらない。
「む、これなら‥‥!」
彼女が手にしたのはホワイト・プリンセスと呼ばれるドレス。ふんだんにレースが施され可愛らしく仕上げられた、白を貴重としたワンピースドレスで、地球人のアイデアが取り入れられているのだという。これを来て髪をおさげに結って眼鏡をかけたら――可愛いかもしれない。
よし、正面からぶつかろう。
水着を買う面子を相手にしている女商人とは別の、若い男性の所に品物を持っていくソフィア。
「このデザイン、質感、何よりサイズがあつらえたかのようにぴったり! きっとこの服も私に見つけてくれるのを待ってたに違いないですよね!」
お兄さんに値段を聞いたソフィア。一応予算内だ。でも安く買えるに越したことはないわけで。
「はうっ、お高い‥‥。ステキでダンディなお店のお兄さん!! もうちょっとまけてくれると嬉しいなぁ〜♪」
そとて瞳を潤ませ、両手を組んで口元に持ってきて上目遣いでお兄さんを見上げるソフィア。
「だからお願いします、売ってください!」
カーン。
どこかで試合終了の鐘が鳴った気がした。お兄さん、ソフィアの仕草にノックダウン。まけてくれただけでなく、おまけまでつけてくれた。
「さてと‥‥」
友人の買い物が終ったのを確認すると、渓は食品や玩具を扱っている界隈を覗いた。孤児院にいる子供達、そして落ち込んでいる酒場の娘ミレイア。彼らに何か買って行って上げようと。自分にとっては子供達の笑顔の方が価値がある。
「こんだけ纏めて買うからよ、まけてくれや」
食品を扱っている場所で渓がどさっと選んだ荷物を置いた。缶ジュースに缶詰、ホットケーキミックスに粉末ジュース、風船ガムに宇宙食。
「あ、これ包装がふやけてるから、別のにしたほうがいいとおもうよ」
同じくお菓子を買うべく、風船ガムと宇宙食を手にしていたルシールが後ろから指摘する。
「ここはこんな不良品をおいてるのか? 気がついたから良かったものの危なかったぜ。あんなものを売りつけようとしたくらいだから、まけてくれるよな?」
ちょっぴり脅迫めいているが商人には商人としてのプライドがある。不良品を売りつける商人なんてレッテルを貼られるのはゴメン被りたい所。大人しく値引き要求を呑む。
「よーし、後はオモチャか」
ビーチボールにサッカーボール、ゴム風船に紙製のトランプ。こんなところだろうか。
「あいつら喜んでくれるといいが」
食品売り場で値引きさせた事で予算には余裕があったが、やっぱり値切りに値切る。ギリギリまで粘る。
「‥‥‥負けました」
最後にはがっくりとうなだれた商人。今回まけた分は、他の裕福な好事家からでも吸い取ってもらえれば。
「あー、楽しかった」
それぞれがそれぞれの方法で、そして仲間の助けも借りながらの買い物合戦。実際予算的に希望品の購入が難しいと思われていた者も何名かいたのだが、そこは値切りでなんとか手に入れることが出来ていた。値切られまくった商人のほうはたまったものじゃないと思うが。
今回欲しいものがこの市場になかった者も、一応それなりの代替品を手に入れることは出来ていた。代替品で満足できるかはその人次第だが‥‥。
またいつか、このような買い物ツアーができると楽しいかもしれない。値切られる商人のほうは‥‥‥ご愁傷様としか言いようがないが。