【聖夜祭】調香師の会場確保計画

■ショートシナリオ


担当:天音

対応レベル:8〜14lv

難易度:やや易

成功報酬:1 G 99 C

参加人数:4人

サポート参加人数:-人

冒険期間:12月03日〜12月06日

リプレイ公開日:2008年12月12日

●オープニング

「何だよ、クリスマス商戦に乗っかろうと思ったら、この世界はクリスマスが無いって言うじゃないか」
 ぶつくさ呟くのは、先日冒険者達のおかげでめでたくリンデン侯爵領お抱え調香師となった地球人、石月蓮。ちなみに捻くれ者でツンデレっぽくて弄られ系だ。腕は確かなんだが性格に難有り、ということ。
「香水はクリスマスやホワイトデーに男性から女性へのプレゼントという形で売り出すのもいいのに、クリスマスが無いんじゃ‥‥」
 呟きながら覚えたてのアプト語を綴る彼。聞いた話によればクリスマスという行事は根付いてはいないが、天界人から伝わってきている上にジ・アースから来た者達からは聖夜祭という催しとして伝わってもいるという。ただ、アトランティスの祭りとしてはしっかり根付いているわけじゃないというだけ。
「だったらクリスマスパーティでも開けばいいじゃん。とりあえず会場を何とかしないと」
 そこで蓮が思い立ったのは、ずうずうしくもリンデン侯爵に場所を借りるというもの。ただし、自分が交渉ごとに長けていないのは彼自身が一番良く知っている。ならば――また冒険者の力を借りればよいのだ。
「支倉、だったかな‥‥確か去年クリスマスパーティやったって話だし」
 慣れない手つきで書き上げた手紙に目を通し、よし、と一人納得。後はこれをメイディアの冒険者ギルドに張り出してもらうだけだ。

 数日後、冒険者ギルドには交渉の依頼が並ぶことになる。
 リンデン侯爵にパーティ会場を借りる交渉をすること。
 第一候補は海辺にある別荘だとか。

●今回の参加者

 ea3475 キース・レッド(37歳・♂・レンジャー・人間・イギリス王国)
 ec0844 雀尾 煉淡(39歳・♂・僧侶・人間・ジャパン)
 ec5880 クレア・リルス(10歳・♂・ウィザード・エルフ・アトランティス)
 ec5881 日野 由衣(25歳・♀・天界人・人間・天界(地球))

●リプレイ本文

●打ち合わせ
 今回メインターゲットと定められたのは、侯爵夫人ティアレアだった。以前石月蓮の香水を売り込みに行った時の反応が上々だったからこうなったのだろうが‥‥
「お久しぶりです、石月さん。『はろうぃん』ではお世話になりました」
 雀尾煉淡(ec0844)の言葉にこめかみをピクリとさせる蓮。あの時女装させられた事は忘れたい思い出だ。
「さて、今回はデタラメというわけには行かないぞ、石月君」
 腕を組んでニヤリと笑うのはキース・レッド(ea3475)。
「別にこの間もデタラメを教えたつもりはないけどね?」
 確かにハロウィンの事を聞かれて蓮が言った事は間違っていない。ただアバウトすぎてあらぬ方向へ解釈されただけだ。
「ところでさ、夫人を落とすつもりだって聞いたけど」
「ああ、そうだ。将を射んと欲するなら、まずは馬を射よ‥‥たしかジャパンの格言だったかな」
「夫人は香水を売り込んだときも良い反応を見せてくれましたし。あのときのようにすれば成功するでしょう」
 キースと煉淡は勝利を確信している。だが。
「でもアレは香水だったからあの反応だったんじゃないの? 男二人より女が興味を示すのは当然じゃん?」
 そういわれればその通りで。少々不安になってきた男性二人だったが。
「あの、私はディアス君と遊びながら自分の世界のクリスマスを教えようと思います」
 意を決して口を開いたのは蓮と同じく地球から来落した少女、日野由衣(ec5881)。
「ディアス君に楽しさを教えて、お母さんにおねだりさせようと思うのです」
「なるほど、それはいい考えだ」
 キースに微笑まれて、よかったと胸をなでおろす由衣。初めての依頼だから何をしたら良いのかと迷ったが、自分の知識が力に成るとなれば頑張ろうという気になる。
「それでは練習をしてみましょうか」
 煉淡がファンタズムのスクロールを広げて念じる。彼はジ・アースのイギリスにいた頃体験した聖夜祭のパーティの風景を幻影にして見せた。
「もう少し派手でもいいかもしれない」
「カラフルな折り紙でつくった輪飾りとか、手作り感が出てよいと思うのですが」
「残念。この世界って紙はすごく貴重らしいよ?」
 キースが細かい部分を指摘し、会場に花を飾る事を提案する。由衣の口に出した輪飾りは、蓮には通じたのだがあいにくとこの国では普通の紙は高価すぎる。
「じゃあ、やっぱりツリーは必要ですよね」
「ツリーを囲んで皆で楽しそうに食事をしている風景などでしょうか」
 煉淡が色々な意見を取り込んで再び幻影を作り出す。
「後はプレゼント交換かな。ああ、そうだ。プレゼントといえば‥‥『さんたくろーす』?」
「そうです! 良い子の所にはサンタさんがきてプレゼントをくれるんですよ」
「サンタクロースですか‥‥どんな格好でしょう?」
 キースに由衣、煉淡の会議は着々と進んでいく。蓮はそれを椅子に座ってえらそうに見つつ、所々で口を挟んでいた。


●説得
 侯爵家応接間。蓮の願いによって集まったのは侯爵と夫人とディアス。蓮とキースは礼服に着替えて居住まいを正した。
「侯爵閣下には日頃多大なる後恩恵を賜り、大変感謝しております。この度は冒険者達を招いたクリスマスパーティを開かせていただきたく、場所を提供していただけないかと思いお願いに上がりました」
 蓮の猫かぶり。初めて見る由衣は瞳を丸くしている。
「ふむ、そもそもクリスマスパーティとは?」
「それはわれわれからご説明を」
 キースが煉淡に目配せをすると、煉淡はスクロールを広げ、打ち合わせしたとおりの光景を出現させる。
「元はジ・アースの宗教に根付いた聖夜祭というお祭りでした。それが石月さんやこちらの由衣さんのいらっしゃった地球では、もっと広義なものになり、クリスマスパーティとなったといいます」
「わぁ‥‥普通のパーティと違う! なんかおっきな木と、沢山の飾りと、プレゼントみたいなのが!」
 煉淡の出した映像に一番に食いついてきたのはもちろんディアスだ。由衣はディアスと視線を合わせ、優しく言葉をつむぐ。
「クリスマスパーティは家族やお友達と一緒に食事をしたり、ダンスをしたり、ゲームをしたり‥‥プレゼント交換をしたりするのですよ。この大きな木はクリスマスツリーといって、これを飾り付けるのも準備の楽しみの一つなのですよ」
「もしもみの木がなければ、何か代用できそうな観葉植物でも良いと思います」
 キースの進行に合わせて、煉淡が幻影を変える。今度は赤と白の服に身を包み、口に髭を蓄えた老人の姿だ。肩に大きな袋をしょっている。
「これはサンタクロースといって、一年間良い子にしていた子供には寝ているうちに枕元にプレゼントをおいていってくれるのです」
「えっ、本当? ねぇ、僕のところにもサンタクロース、来るかな?」
 ディアスは瞳をきらきらと輝かせて由衣の腕を引っ張る。
「きっと、ディアス君の所にも来ますよ」
 にっこりと微笑む由衣。ディアスの意識がそちらに向いている間に、キースが侯爵に耳打ちをする。本当は子供が寝ているうちに親がそっと枕元にプレゼントを忍ばせるのだという事を。
「普段出席しなれておられるだろうパーティとは一味違った和気藹々としたものになると思います。石月さんによれば、資金や材料は冒険者達と集めるので、提供していただくのは会場のみでよいとか。当日の料理も全て冒険者達で賄う予定です」
「ふむ‥‥」
 煉淡の言葉に侯爵は顎に手を当てて考えるような姿勢をとる。夫人はうれしそうにはしゃぐディアスを、温かい目で見守っていた。
「カオスの暗躍、ディアーナ君の失踪。そして噂に飛び交う世界の終末。先のコンサート同様、ここで領民の不安を払拭するイベントが必要です」
「まず」
 キースの言葉に侯爵は素早く切り返す。彼の言葉には穴があった。
「カオスの暗躍はともかくディアーナの失踪は‥‥いや、彼女の存在自体公にしてはいない。カオスの魔物と結んだ者の存在など公にできると思うか? そなたも口には気を付けよ。そして、このクリスマスパーティとやらはあくまで冒険者達で行うものなのだろう? コンサートのように領民を無差別に参加させるものではあるまい?」
「く‥‥それはそうなのですが」
「民ばかりでなく」
 そこに口を挟んだのは煉淡。
「侯爵家の皆さんやイーリスさんなどにも息を抜く機会が必要かと思います。これから、カオスの魔物との戦いが熾烈になると予想されるからこそ」
 彼のうまいフォローに、侯爵は口をつぐんだ。ディアスはもうすっかりクリスマスのとりこで、母親の元に戻ってその膝に手を付いて。
「母上、僕冒険者達とクリスマスパーティがしたいよ! お願いっ!」
「まあ、ディアスはプレゼントが欲しいだけではなくて?」
 くす、微笑む夫人にぷーっとディアスはほっぺたを膨らませて。
「違うもん!! お世話になった冒険者達に楽しんでもらえるようなパーティにする事、それも侯爵家の者の役目だと思うんだ!」
「まぁ‥‥」
 ディアスの言葉に目を丸くする夫人。さすがに侯爵もこれには驚いたようで。
「ディアスも侯爵家の子息という自覚が芽生えてきたか」
 応接間に入って初めて笑みを見せた侯爵。
「パーティがうまくいくように、微力ながら私もお手伝いしますから、お願いします」
 由衣が頭を下げる。キースや煉淡、蓮もそれに倣った。
「アイリスからあまり離れていない場所が良いな?」
「「「!?」」」
 振ってきた言葉にはじかれるように身を起こすと、侯爵がこちらを向いている。
「はい。近いに越した事はありません」
 キースの言葉に侯爵は頷いて。
「それならば以前貸し出した海辺の別荘を貸そう。人数によってはホールだけでは狭いかもしれないが、隣のサロンや庭を使えばかなりの人数を収容できるだろう。客室だけなら4〜50名は泊まれる」
 その言葉に一同は顔を見合わせて。
 思わず笑みがこぼれる。

「「「ありがとうございます!」」」

 これで無事、クリスマスパーティの会場の確保はできた。後は当日までに色々と準備を進めるだけである。
 はてさて、どんなクリスマスパーティになるのやら‥‥。