【硝子の翼】まとわりつく黒き影の跡を追え
|
■ショートシナリオ
担当:天音
対応レベル:8〜14lv
難易度:やや難
成功報酬:5 G 47 C
参加人数:5人
サポート参加人数:-人
冒険期間:01月23日〜01月29日
リプレイ公開日:2009年01月31日
|
●オープニング
●疑問
侯爵家へ戻ろうとしたイーリスは、なぜか現地待機を命じられていた。すなわちデオ砦勤務である。報告は随時書面にてシフール便を使えというのが侯爵からの指示だった。今までは何があろうときちんと目通りし、そして報告をして指示を貰っていたのにこれはどういうことだろうか?
「(何か侯爵様の気に触るような事をしてしまったのか?)」
イーリスは考える。だが心当たりはない。自分は侯爵の忠実な僕だったと自負している。かつて己が騎士として役に立たなくなった時、侯爵は見捨てずにイーリスにできる任務を与えてくれた。その恩を彼女は一生忘れないだろう。
「(ご病気だという噂はまことなのか?)」
僻地ではそれほど情報は集まらない。だがこっそり子息セーファスに手紙を書いたところ、そのようなことが書かれていた。
だとすれば自分は下された命を遂行するのみ。だが、やはり侯爵が自分を遠ざける意味が分からない。
イーリスは石の中の蝶のはめられた手を、もう片方の手で強く握り締めた。
●調査のまとめ
前回の調査で、おぼろげながらこの砦付近の町や村で起こっている騒動の概要が見えてきた。どうやら何かが暗躍しているだけでなく、低級のカオスの魔物までがぱらぱらと姿を見せる始末である。
☆村1
・「いじめっ子が突然死した」
まるで眠っているかのようにベッドの上で死んでいた。布団が乱雑に散らばっていたり子供の足跡が沢山あるのはいつものこと。
村の子供たちがみんなして風邪にかかっているようだ。倦怠感を訴えているが赤き愛の石の効果はなく、地球人医師が見たところ風邪の症状はない。子供たちは何かに怯えるようであり、時折『綺麗な人が怖い』と意味不明の事を言ってうなされるようだ。
・「男に貢ぐだけ貢がせてぽいっと捨てちまう酒場の女が、死体になって川に浮いてた」
男は母親と娘を亡くしてしまってからノイローゼの様な状態で、まともに話が聞けそうになかった。ただ「俺が悪かった。俺が悪かったんだ!」と泣き叫んで家の中の物を引っ掻き回すような音だけがよく聞こえた。
☆村2
・「地主が死んだ」
地主さんはかなりの高額で土地を貸して、人々は泣く泣くその言い値で土地を借りていた。土地を継いだ息子も値を変えるつもりはなく、村人は『精霊様のお怒りに触れたんだ』といっていた。地主は村はずれの池に夜落ちて亡くなっていた。
・「村の金持ち爺さんとその子供たちが死んだ」
生き残った娘曰く、父は馬車に繋いでた馬が暴走して事故にあっただけ。兄弟は運悪く火事に巻き込まれただけ。子供達は病気が悪化しただけ。娘は悲しんだ様子はなく、笑顔だった。
☆東の町
・「死んだ悪徳商人」
商人に話を聞いたところどうやら悪徳商人は夜中、お金を数えている最中に背中を鋭利な刃物で何度も刺されて死んでいたという。砦から騎士が派遣されてきて事件の調査は進められたのだが、悪徳商人によい印象を持っていない人達は、皆協力的ではないのだという。商人の犯してきた悪徳故に買った恨みも多く、犯人を絞り込めないとのことだった。
●騒動
「‥‥‥死んだ?」
砦の兵士の報告にイーリスは眉をしかめた。最近訓練を頑張って、ゴーレムの操縦も上達してきたある兵士が死んだというのだ。それも、見張り塔から飛び降りて。
「自殺するような理由が思い当たらない」
それは報告に来た兵士も同じだった。以前冒険者達に訓練してもらったおかげで、漸くゴーレムに乗ることが楽しくなってきて、まめに訓練をしているという若者だったはずだ。
「‥‥事故か?」
だが、何か引っかかるのも事実。歪んだ状態でものを見てはいけないと分かっているのだが――。
●リプレイ本文
●
「以前より皆やる気が出てきたようで何よりだ」
「そうだな、訓練の賜物という事だろう」
デオ砦にて、砦内の空気が変わっていることを肌で感じたのだろう、布津香哉(eb8378)が感心すれば、イーリスもまた頷いて。
「イーリスさん、これ、この間ダンスを教えてくれたお礼に」
香哉が取り出したのは獅子のマント留めとツヤのない荘厳な雰囲気の純白の皮の外套、ホワイトクラウドだ。
「戦いにおいて怪我のないように多少だけれど魔力を込めて強化しておいたから、良かったら使ってください」
「あれくらい礼には及ばない。まあ‥‥ありがたく受け取らせてもらう」
「俺からもこれを」
クロスシールドと聖法衣を取り出したのは風烈(ea1587)だ。シールドにはレミエラがついている。
「いや‥‥いいのか?」
確認のように彼を見上げるイーリスに烈は笑んで答える。
「俺はあまり使わないしな。それに、姿を見慣れているというのもあるが、白い武具はイーリスさんに似合うと思うしな」
似合うといわれれば悪い気はしない。イーリスは二人から武具を受け取り、頭を下げた。
ミィナ・コヅツミ(ea9128)は一人、アイリスの侯爵邸へと向かう事になっていた。それは少し前、侯爵邸でカオスの魔物の気配を察知したからである。
「侯爵周辺の魔物の反応も気がかりですが、領内の調査も必要ですから、こちらは私達が手遅れにならないよう尽力します」
「よろしくお願いします」
土御門焔(ec4427)の言葉にミィナは頷く。門前払いされないようにとイーリスからセーファスにあてての親書もしっかり持ったことを確認して。
「面会謝絶やイーリスさんへの手紙の内容などから、病気は魔物の仕業で、侯爵の近くで暗躍している魔物が侯爵の名を騙って指示を出している可能性もあると思う」
危険だけれど、と烈は心配そうに呟くが、ミィナはそれでも行くつもりだ。これ以上時間をかけては、何か手遅れになりそうな気がするから。
「それでは行って来ますね」
一同は砦を出て行く彼女と、そして侯爵の安全を願いながらその後姿を見守った。
デオ砦での飛び降り事件は9日ほど前の事だという。このため焔のパーストは使用できなかったが、その分ルイス・マリスカル(ea3063)がイーリスと共に調査に当たる。
「ああ、あまりお気になさらず‥‥と言っても無駄でしょうか。大丈夫です。自殺の原因が判らぬ為の事務的な確認です。バやカオスニアンの間者、カオスの魔物といった外部の者による暗殺ではないかという疑いもありましてね。あくまで疑いですが」
冒険者と侯爵家から派遣されてきている騎士が調査を始めたとなれば、砦詰めの兵士達が気にするのも当然。ルイスがそんな風に誤魔化すも、やはり同僚の不審な死は兵士達の心に動揺を与えているのだろう、「カオスニアンの仕業だってよ!」「カオスの魔物の仕業だと!」など早合点し始めた者達にはイーリスの喝が飛んだ。
「どうだ?」
「今のところ反応はありませんね」
ルイスは不思議な水瓶と石の中の蝶を見比べながら砦内を歩く。石の中の蝶の探査範囲も不思議な水瓶の探査範囲も広いといえば広い。狭いといってしまえば狭い。
「争った形跡も‥‥特にはありませんか」
「もしも他殺だとしたら、気を許した相手だったとかか」
「それか、争う間もなく突き落とされたか、ですね」
ルイスはつ、と縁から乗り出して下を見る――高い。どう落ちたのかは分からないが、即死するかどうかは微妙な高さだ。もしかしたら落ちてから暫くの間苦しんだのかもしれない。そう思うとなんだか胸が締め付けられる。
「もう少し砦内を歩き回って――」
――キンッ
見張り塔から出たその時、ルイスの手にしていた不思議な水瓶が甲高い音を上げた。二人がはじかれたように顔を上げると同時に、ざざざざっと茂みを砦の建物方向へと駆け抜ける音がした。
「これを頼みます」
ルイスは水瓶をイーリスに押し付けるようにし、物音を追った。だが。
「逃げられてしまいました。砦の中で兵士に紛れられてしまえば、特定は難しいですね」
「水瓶が音を立ててたという事は、こちらに害意を持っている者がいたということだな?」
「ええ。恐らく事件を調べられては困る者が様子を伺っていたのではないかと思いますが」
やはり人の手による殺人なのか?
だが、これだけでは魔物が唆したという線も捨てきれないのである。
●
「こんにちは」
烈が室内へ入ると、少女はあからさまに怯えた表情を見せた。冒険者がまた何しに来たのだろう、そう思っているのだろう。お喋り好きな母親は、同行した香哉が相手を引き受けた。
石の中の蝶で魔物の有無を確認する烈。香哉も龍晶球の様子を見ているが、今のところ反応はない。
「あまり警戒されると傷つくな。そんなに怖いか?」
時間をかけて安心させて心を開こうと、烈はベッドサイドに座って苦笑してみせる。少女は布団の中に顔半分を埋めて、瞳だけで伺うように烈を覗き見た。
「何か悩みがあるなら力を貸そう。話してはくれないか?」
烈は真摯に問う。だが少女はなにか話そうと口を開いては閉じてを布団の中で繰り返しているようで。やはり一歩踏み出すのがためらわれるようで。
「前に同じ様に倦怠感を訴えた人がいてな。その人は魔物と取引をしたために生気を奪われていたんだ」
「!?」
ぽつりと烈が呟いた言葉、それに少女は大きく反応して。
「‥‥ないもん」
「ん?」
「魔物じゃ‥‥ないもん。‥‥綺麗な人、だもん」
小さな震える声で、少女は訴えた。その綺麗な人を怖がっているというのに、魔物であるとは認めたくないらしい。
「その綺麗な人はどんな外見をしていたか教えてくれるか?」
「‥‥‥長い金の髪、碧の目の、綺麗な男の人‥‥」
その男は黒衣の復讐者だろうか?
残念ながら断定する事はまだ出来ない。
「女を殺す代償に、母親と娘を失ったのか?」
酒場の女に貢いでいたという男を何とか落ち着かせ、そして烈は問う。落ち着かせるのに手間取ったが、男はあっさりと首肯した。
「‥‥まさか母ちゃんと娘を取られるとは思わなかったんだ‥‥。勿論ただで済むと思ってたわけじゃないけど‥‥代償は俺自身だけに降りかかってくるのかと‥‥」
カラカラに乾いた喉から搾り出すように男は頭を抱えて語る。涙はもう枯れ果てたのだろう、家の中も荒らしつくしたのか、一度力が抜けてしまえば再び動き出す気力などないようだった。
「俺なら幾らでも良かったんだ‥‥殺すなら俺にしてくれれば‥‥」
「魔物が望むのは悲しみと混沌。あんた自身を殺すよりも、あんたの大切な人を殺した方が効果があると判断したんだろう」
烈は言葉を切って。
「魔物と契約したんだな?」
男は弱々しく頷いた。今思えば人ではない不思議な存在だったと。とても美しく、そして冷たく。気がついたら言葉に乗せられていて、気がついたらその姿が消えていたのだと。
●
「ルゥ、パッドルワード頼めるか?」
「わかりました」
焔が先に到着しているはずの別の村に着いた香哉は、地主が死んでいたという池の前にいた。彼の隣には、水の精霊のルゥチェーイがいる。隣を歩くその姿はぱっと見は普通の少女となんら代わりがないように見えた。
「最近ここに落ちた人は生きていましたか?」
『最近落ちたのは、村の地主だよ。落ちた時には生きていたよ』
ルゥチェーイはそれを香哉に伝え、再び魔法を唱える。
「その地主さんは意識はありましたか? 何か叫んでいましたか?」
『意識はなかったよ。何も叫んでないよ』
殺されてから池に落とされたのなら死因は水死ではない。生きて意識があるまま落ちたのだとしたら、助けを呼ぶだろう。そうすれば幾ら村外れとはいえ誰かが物音に気がつくはずだ。だが意識を失ったまま落とされたのだとしたら――物音は立ったとしても1回。ゆっくりと身体を沈めたのなら、大きな音が立たない可能性もある。地主が意識を取り戻したとしても、既にその時は真っ暗な水の中というわけだ。
「何にせよ意識を失ったまま落ちたって事は、何らかの原因で意識を失ったって訳で。となると、意識を失わせた原因がどこかにあるはずなんだよな」
香哉は考え込むようにしながら、池から離れて村の中へと向かった。
「ご家族のことはご愁傷様でした。死亡した方々について調べろとの依頼を受けて参りました陰陽師の土御門焔と申します。よろしければ少しお話を聞かせては頂けないでしょうか?」
「おんみょうじ? なんだか分からないけど、うさんくさいわね」
焔は家族が次々と亡くなって財産が手に入ってきた女性を訪ねていた。もちろんこうやって邪険にあしらわれる事は想定済みだ。
「亡くなったご家族について、何でもいいので気がかりな事があれば教えていただけませんでしょうか?」
「うるさいわねー。特にないわよ。家族を一度に亡くして可愛そうだって思うなら、さっさと帰ってくれないー? それとも何、あんたも私が殺したなんて疑っているわけ?」
いっそ潔いほど高圧的な態度だ。どこをどう探っても自分が殺したという証拠は出てこない、そう思っているのだろう。それは本当に偶然の死だからか、それとも――。
「そんなことはありません。何もないならこれで失礼いたします」
「あっそ。じゃあね」
バシンッ!
派手な音を立てて扉が閉められる直前、焔は高速詠唱でリシーブメモリーを唱えた。そして拾えた記憶は。
『あいつ、絶対にばれないって言ったのに』
第三者の介入を示唆するものだった。
香哉と焔は合流し、お互いの情報を交換し合う。
「地主のご子息は地主さんの死に関与しているようには見えなかったですね。中々犯人が見つからないと憤っていました。一応リシーブメモリーを試しましたが、怪しい記憶は見つかりませんでした」
魔法に引っかからなかっただけならまだ分からないが、逆に家族を立て続けに失った女の方は第三者の介入が確認できたのだ。もし魔物と契約していたのならばそれは非常に印象に残る記憶になるだろう。だとすればリシーブメモリーで拾える可能性が高い。
「地主の件は他殺っぽいんだけどなー。息子が犯人じゃないとすれば‥‥」
香哉は村内をぐるりと見回した。
●
アイリス。リンデン侯爵家に到着したミィナはセーファスへの親書を「どうしても直接渡すようにと言われている」と粘り、無事にセーファスに会うことが出来た。彼に会えれば後は話が早い。邸内を自由に歩き回る許可を得、様々な角度からデティクトアンデットをかけて回る。勿論誰よりも最初にセーファスが魔物とすりかわっていないかを確かめた。彼は大丈夫のようだった。他にも夫人やディアス、警備の兵士や医師等を確かめたが、反応はなかった。
「やっぱりここが気になります」
残るは病で臥せっていて、面会の叶わない侯爵のみ。聞いたところによれば、やはりセーファスも前の依頼の時と同じく面会を断られているという。ミィナは侯爵の私室付近でデティクトアンデットを使う。やはり10M程の所に大人サイズの反応がある。
「――」
この状況からみるに、どうしても侯爵の私室の中が反応源なのではないかと疑ってしまう。ミィナはじっと扉を見つめた。だがこの魔法は正確な位置まではわからない。一回で断定してしまうのは危険だ。移動を重ねる事でどこが発生源なのかを辿る。
「やっぱり‥‥」
どう考えても侯爵の私室辺りが怪しい。できる事なら無理矢理部屋に入ってでも調べたい。だがさすがに侯爵相手にそんな無体な行動を取るわけにも行かない。セーファスが一緒でも、本当に部屋の中に魔物がいたとしたら、確実に倒せる自信はない。
「まずはセーファス様に報告を」
ミィナは急ぎ、セーファスがいるという執務室を訪ねることにした。彼は主である侯爵が臥せっているのでそこで仕事をしているという。イーリスの亡き夫が纏めたというカオスの魔物に関する報告書、それを探してもらっていた。
「セーファス様、失礼します」
「ミィナさん。どうでしたか?」
「やはり、侯爵様のお部屋からカオスの魔物の気配がしました。急ぎ、対処をされたほうがいいと思います」
「!」
薄々は予感していただろうが、あらためてそう言われてセーファスの表情が硬くなった。ミィナはそれでも続ける。
「相手が何者か分からない以上、私達だけで乗り込むのは危険です。ですが、対処は早くしたほうが良いです」
「父上はもう、カオスの魔物と取って代わられているという可能性は‥‥?」
「‥‥」
残念だがミィナにはそれを否定することは出来なかった。可能性がないとは言い切れない。
セーファスや家族を遠ざけた理由が、取って代わっている事を見ぬかれない為だとしたら?
イーリスを遠ざけている理由が、彼女が石の中の蝶を所持しているからだとしたら?
「ところでイーリスさんの旦那さんの残した資料は見つかりましたか?」
「それが‥‥見つからなくて。私の知らない所に父上が隠したのか、それとも――」
――侯爵に成り代わった魔物が既に処分したのか。
●
「エリヴィラさん、アナイン・シーさん、お久しぶりです」
侯爵邸を出て、ミィナはアイリスにあるリンデン幻想楽団の宿舎を訪れていた。幻想楽団医療班の肩書きを持つ彼女なら、特にとがめられることなく宿舎に入る事が出来る。建物に入る前から伸びやかな歌声が聞こえてきて、それがエリヴィラのものである事はすぐに分かった。
「あ‥‥ミィナさん」
歌が終わるのをまってかけられた声にエリヴィラは嬉しそうに微笑み、彼女を招き入れた。
「今日はお聞きしたい事があって」
勧められた椅子に腰をかけ、単刀直入に尋ねる。
「アナイン・シーさん、カオスの八王とは、7つの大罪という大悪魔と悪の皇帝の別の名ですか?」
「そんな事を聞きに来たの?」
ミィナの言葉に窓枠に腰をかけたアナイン・シーは魅惑的に笑って。
「あなたの推測は、カオス八王=デビルと呼ばれる者達のトップ集団ということよね? だとしたら前提が間違っているわ。その式では答えは出ないわよ」
「どういう意味ですか?」
「だって、カオスの魔物はデビルとは別物だもの」
確か、地獄で戦った者達の報告書の中にもそんな記述があった気がしたが、それは一般の魔物達だけのことかもしれないと思っていた。だから念のために聞いたのだ。
「だからカオス八王とそのデビルのトップ集団とは別物よ? カオスの魔物は地獄じゃなくて、カオス界にいるのだもの」
それは天国や地獄という概念のないこの世界の人が作り出した、地獄の別名ではないのだろうか――?
だがアナイン・シーによれば、地獄とカオス界とはまったくの別物らしく。
「‥‥少し混乱してきました」
理解するには時間がかかりそうだ――ミィナは小さく溜息をついた。