Wedding bellが聞こえる

■ショートシナリオ


担当:天音

対応レベル:フリーlv

難易度:普通

成功報酬:5

参加人数:4人

サポート参加人数:2人

冒険期間:07月01日〜07月06日

リプレイ公開日:2009年07月14日

●オープニング

 ある日地球人調香師・石月蓮の元を訪れたのは、ルイス・マリスカル(ea3063)だった。意外な人物の来訪に、蓮はちょっとだけ目を丸くしてから、彼に座るようにと手で示した。
「わざわざ僕を訪ねてくるなんて、どうしたの?」
「ブライダルフェアを行った蓮さんならば、きっと商売になるであろう結婚式にまで目をつけていると思いまして」
 クリスマスにバレンタインにジューンブライド。ちょっと良く見ていればこの男が、自分の作り出した香水を売る機会を逃すはずはないということがわかるだろう。
「まあ‥‥ね。この間の意見を元に、新しい香水も二種類完成したし、お披露目の機会がほしいところだね」
「ご存知だとは思いますが、私達冒険者は地獄で戦いをしています。その戦いでは祈りや愛、祝福の儀式が力になり‥‥」
「うん? 僕に地獄での戦いの手助けをしろと?」
「いえ、そういうわけではありませんが‥‥」
 察しの悪い蓮に対して、ルイスは一瞬口ごもり。そして。
「結婚式のコーディネートをしていただけませんでしょうか?」
 言った。
「‥‥結婚、するんだ?」
「いや、式を挙げていないというだけですが」
「ふぅ〜ん」
 とたん、蓮の表情がニヤニヤと薄笑いを浮かべたいやらしいものになる。
「へぇ〜。いい人がいたんだ?」
「‥‥‥」
 意外に、彼は人の事を見ていないらしい。気づいてないのか。
「まあ、そういうことで。他にも結婚式を挙げたい方々、祝福をしたい方々、式をコーディネートしたい方々を集めて結婚式を取り扱ったら、蓮さんも儲けこそすれ損はしないのではないかと思うのです」
「まあ、悪くない提案だね」
 蓮はまんざらでもないようだ。
 その後の相談で決まったのは、カップルは複数集まっても式はそれぞれ別個にきちんと行うこと。他カップルへの祝福の気持ちも忘れない事。式は宗教的からみのない人前式形式で行うことなどだ。
「僕は場所と衣装の提供と、式を仕切ればいいのかな。ああ‥‥折角だし、指輪くらいは用意させてもらうよ」
 あとは新商品の香水をお披露目して‥‥など蓮はぶつぶつと呟いている。
「とりあえず式は請け負った。けどやっぱりどんな式にしたいのかは当人達の意思が大事だから、きちんと固めて来てほしいな。結婚式なんてそう何回もやるものではないし、やっぱりこだわっておきたいものでしょう?」
 衣装の好みや誓いの言葉、他にも式でしたいことがあればしっかり決めておくのがよいだろう。しっかり決めておかないと、蓮の知識と趣味で仕切られることになる。
 それはそれで偏ったものになりそうなので‥‥やっぱりしっかり意思を示したほうがいいだろう。
 ちなみに人前で見せられないような、大人の行為はもちろん禁止だ。

●今回の参加者

 ea1587 風 烈(31歳・♂・武道家・人間・華仙教大国)
 ea1842 アマツ・オオトリ(31歳・♀・ナイト・人間・ビザンチン帝国)
 ea3063 ルイス・マリスカル(39歳・♂・ファイター・人間・イスパニア王国)
 ea3625 利賀桐 真琴(30歳・♀・鎧騎士・人間・ジャパン)

●サポート参加者

巴 渓(ea0167)/ クリシュナ・パラハ(ea1850

●リプレイ本文


 ルイス・マリスカル(ea3063)とミレイア・ブラーシュの結婚式は新郎の希望により新婦の実家である酒場にて行われる事になった。勿論新婦側の両親の許可は得てあるが長らく営業を停止するわけには行かないので、その準備は当日の早朝から始まった。
 手伝いにと駆けつけた巴渓が祝儀代わりにと提供したお金でクリシュナ・パラハと共に市場へ走る。食材だけでなく生花や布、化粧品や絵の具などを市場を回って手に入れてきてくれる手はずになっている。
 一方会場となる酒場では、主催の石月蓮を初めとして、友人の結婚式の祝いにと駆けつけた風烈(ea1587)、利賀桐真琴(ea3625)が手を休める暇もなく動き回っていた。
「テーブルはこんな感じでいいかな?」
 力仕事を請け負った烈が蓮の書いた配置図を見て一人ごちる。
「ねぇ、頼まれていた礼服持ってきたんだけど」
「ああ石月さん。ありがとう」
 椅子の配置をしていた烈に近寄ったのは蓮だ。事前に烈に頼まれて礼服を手配していたのだが‥‥。
「ちょっと問題があって。多分‥‥」
 といいつつ蓮は礼服を烈にあててみる。そして。
「ああやっぱり。ちょっとだけ裾が短いんだ」
「それは困るな」
「でも彼女なら直せると思うんだよね」
 つ、と真琴を指した。
「だが忙しそうだな」
「まあ、ものはためし。頼んでみよう」
 蓮が真琴に歩み寄り声をかける。すると彼女はにっこり笑顔で請け負ってくれた。
「お安い御用でやす。他にも参列者の衣装のサイズあわせをいたしやすので、一緒に烈の旦那のも請け負いやすよ」
「それはよかった」
 どうやらズボンが短くて恥をかくという事態は免れそうだ。だが、
「あ」
 ぽん、と掌に手を打ちつけて、蓮が声を発した。何事かと二人は彼を見つめて。
「そういえば新婦のドレス、ちょっと裾が長くて引きずっちゃうから直してほしいって言われてた」
「!? そういうことは早く言ってくだせぇっ! 一番の重要事項じゃないっすか!!」
 涼しい顔で言う蓮に対して真琴は大慌てで。裁縫道具を纏めてミレイアがドレスの試着をしていた彼女の部屋へと上がって行った。



 一方、会場設営や料理の準備を全て他の者に任せたアマツ・オオトリ(ea1842)はユズリハの館に来ていた。この館は12歳までの孤児を集めた孤児院である。主催のお館様が冒険者ということで、冒険者達に縁があった。
「‥‥というわけで、子供達にはルイス殿とミレイアの結婚式、そしてもう一組の結婚式にて祝いの歌を歌ってほしい。なに、前にここで結婚式を行ったときに歌った歌と同じだ。急な話だが多少の練習で子供達も思い出してくれるだろう」
「ミレイアさんが結婚、ですか」
 お館様が目を細め、微笑む。彼女は12歳。7月に13歳になるというが、お館様から見れば館を卒業したばかりの子供というイメージがあるのだろう。だが彼女は幼い頃から家業の手伝いで大人と接してきたというだけあって、しっかりものだ。
「勿論子供達の引率もしっかり行わせていただく。7歳以上の子供らを連れて行きたい。だがそうすると残った子供の世話役がいなくて困るか?」
 ふむ、と考え込むアマツに、お館様は柔らかい笑みを浮かべたままで答えた。
「大丈夫ですよ、一日中というわけではないですし‥‥レディアさんにも手伝いにきてもらいますから、数時間ならば」
「かたじけない」
 お館様の部屋を出たアマツは階下に降り、ホールで子供達に事の次第の説明を始めた。


「めでてぇ席の話だ、お値段は可能な限り勉強しやすから、皆で楽しい時をお過ごし下せぇ」
「おお、こんな服普段は着ねぇから汚してしまわねぇか心配だよ!」
 式の参列者は冒険者達だけでなく、店の常連客も含まれていた。店の常連客は小さな頃からミレイアを見ている、いわば育ての親でもあるからだ。真琴と蓮の用意した衣装に身を包んだ常連のおじさんが、冗談めかして笑う。同じような人のよい笑いが各所で響いた。
「さすがに皆笑顔だな」
 ルイスとミレイアが作ったソールのムニエル、パーチの白ワイン蒸しに加えて烈が用意した華国の料理、そして新婦の母が作ったメイディアの料理。刺繍の施されたテーブルクロスの上にそれらが所狭しと並ぶ。
 真ん中のテーブルには三段重ねのケーキがメインとして鎮座していた。市場に行った渓やクリシュナが安く材料を仕入れてきてくれたおかげで、砂糖が貴重なこの世界でもこれだけ大きなケーキを作ることが出来た。蓮のこだわりなのか、大きな台座、その一回り小さな台座、また一回り小さな台座と重ねられたケーキは、白いクリームで覆われていた。どうやら「生クリーム」というものらしく、料理の香りに混じって甘い香りが漂う。
 クリームの上には季節のフルーツがちりばめられていた。人形がなくても三段重ねというだけで十分迫力がある。
「ところで式は、皆の前で誓い合って終わり、じゃないんだろう?」
 烈の言葉に蓮は勿論、と頷いて。
「ルイスが、ミレイアが地球的セレモニーを期待しているっていうから、結婚式と披露宴とを合わせた形でね、色々やらせてもらおうと思っているよ」
 でも蓮自身はあくまでコーディネーターに徹するという事で、司会はアマツに、音楽はミレイアと旧知の仲のリューンに任せるらしい。
「ううっ‥‥うっ、うっ」
「「!?」」
 次々と埋まっていく席を眺めながら二人がそんな話をしていたところ、突然背後からすすり泣く声が聞こえて、二人は慌てて振り向いた。そこには礼服に身を包んだ酒場のおじさん――すなわち花嫁の父が立っていた。
「親父さん、泣くのはまだ早いと思うな」
「だ、だがな‥‥」
 烈に肩をぽんぽんと叩かれて、ずずっと鼻をすする花嫁の父。
「あなたっ! 情けない顔をしていないでこちらへいらっしゃいな!」
「ふぁ、はい‥‥」
 着飾った新婦の母に一喝され、親父さんはすごすごと席へと歩いていく。
「花嫁の父って皆あんな感じなのかな?」
「随分と早い事嫁に出す事になっちまったせいもあるんでやしょう」
 不思議そうに呟いた烈に、招待客達の衣装を整え終わったのだろう真琴が近づいてきて苦笑した。
「その花嫁と花婿は?」
「だいぶ前に支度を終えておりやすから、呼べば降りてくるかと」
 アマツの問いに真琴は天井を指す。二階には花婿が着替えに使った部屋とミレイアの部屋があった。



 軽くノックをすると、部屋の中から小さく「はい」と返事が聞こえた。ルイスはゆっくりと扉を押し、そして室内へと視線を投げかける。そう広いとはいえぬ部屋のベッドの上に、白い衣装に包まれた彼女が腰をかけていた。
「ミレイア」
 ルイスの呼びかけに応じてヴェールを靡かせてゆっくりと振り返った彼女は、いつもと違って何処か不安げな顔をしていた。
「ルイス‥‥」
「‥‥とても、綺麗ですよ。どうかしましたか?」
 ルイスはベッドサイドに膝をつき、ミレイアと視線を合わせるようにして問うた。まだ幼さの残る彼女だったが、化粧のせいか結婚するという自覚が出たのか、いつもより大人びて見えた。
「本当にいいのかな?」
「何がですか?」
「その‥‥私、で」
 遠慮がちに呟かれた言葉はルイスからすれば今更何をと笑い飛ばしてしまえるものだったが、彼女は彼女なりに不安を抱いていたのかもしれない。蓮がここにいたら「マリッジブルーじゃない?」とかなんとか言ってのけただろう。
 思えば年明けに酒場で、多少の駆け引きから始まったプロポーズ。その本気を疑ったわけではない。だが、彼女自身自分がまだ背伸びをしようとしている「子供と大人の中間」という自覚があるのだろう。20歳半の年の差に怯えていたのかもしれない。
「ミレイア『が』いいんです」
 だが二人の間には初めて出会った時から培ってきた絆がある。初めは恋に恋する子供だったミレイアも、2年経った今では立派に成長していた。誰よりも彼女を見守り続けていたルイスは、それを一番良く知っている。だからこそ。
「‥‥ルイスのお嫁さんにしてくれる?」
「あの時剣に誓った通り、私の妻はあなただけですよ」
「‥‥うん!」
 優しい声で告げたルイスの言葉に安心したのか、ミレイアは彼の首に抱きついて。ルイスはそのまま彼女を抱き上げた。ふわり‥‥長いドレスの裾が舞い、甘い花の香りが漂った。
「皆さんお待ちです。そろそろ行きましょうか」
 お姫様抱っこのまま、二人は喧騒の聞こえる階下へと歩み始めた。



「それでは、新郎新婦の入場だ」
 アマツの声にあわせてリューンが明るくも荘厳な曲を奏でる。どうやら地球では一般的な結婚式の音楽だという。ルイスがミレイアをお姫様抱っこのまま登場すると、招待客から拍手が巻き起こった。一部嗚咽が混ざっているが‥‥構うときりがないのでそのままにしておく。
「まず初めに二人に結婚の宣誓をしてもらう。ルイス殿、ミレイア、今日の良き日を迎えられた事を、まずは精霊に感謝を」
 ルイスがミレイアをおろして席の前に立ったことを確認して、アマツが続ける。
「二人が精霊の庇護を受け、めでたく結ばれる事を、この場に集まった皆に許しを請い、そして証人として祝福を受けると良い」
「いかなるときも彼女と共にあることをここに誓います」
「いかなるときも、彼を支える事をここに誓います」
 ルイスとミレイアがゆっくりと宣誓すると、アマツの進行を待たずに会場からは拍手が巻き起こる。
「ここに集った皆が二人の婚姻の証人となるだろう。一同、盛大な拍手を!」
 促され、更に拍手の音が高まる中、ルイスはミレイアのヴェールをそっと避け、そしてその唇に自分の唇をそっと重ねる。
 拍手が歓声に変わる。蓮がリングピローに乗った指輪を二人の前に差し出した。彼が用意した二人へのプレゼント。特別に作られた、月がダイヤモンドを抱く意匠の指輪。
 ルイスがミレイアの指に、ミレイアがルイスの指にゆっくりと指輪をはめる。
 タイミングを見計らってアマツが手を振ると、ユズリハの館の子供達が歌を歌い始めた。それは祝福の歌。以前館で行われた結婚式の際にも使われた曲。
「この良き日こそ、新たな門出。ルイス殿もミレイアも、共に苦難を分かち合い、共に喜びを分け合うのだぞ。我らも共に、この日を心から祝おう!」
 はにかむようにして見詰め合った後椅子に座った新郎新婦に、次々と祝いの声がかかった。
「僭越ながら、あたいもお二人の門出を祝福しに参りやした。ルイスの旦那とミレイアの嬢ちゃん、おめでとうございやす」
「ありがとうございます」
「真琴さん、色々有難う!」
 真琴が差し出したのは、様々な花の刺繍の入ったテーブルクロス。その刺繍は鮮やかで丁寧で、二人の食卓を明るく彩ってくれる事間違いなしだ。
「二人とも、おめでとう」
 烈の祝辞はシンプルだ。だがだからといって気持ちがこもっていないというわけではなく、むしろ逆だ。万の言葉を尽くしても祝い足りないということはないが大切な事を気軽に何度も言うと重みがなくなり、軽くなってしまうような気がするので言葉を飾らずに簡潔に自分の思いを伝える。
「うわぁ、ありがとう!」
 彼が差し出したのは鉄人のナイフと鉄人の大包丁、鉄人の鍋、それに今日彼が作った料理のレシピだ。二人に喜んでもらえたらという思いが強く強くこめられている。
「ミレイアさんが酒場を継いだら、ルイスさんは楽師になり客寄せの演奏をやるのかな?」
「それも楽しそうですね」
 その時は顔を出して昔を懐かしむのもいいかもしれない、と烈は笑った。


 子供達の歌が終わると、次の段階に移る。
「二人の馴れ初めは、暴走した花嫁を止める依頼で――」
 薄板にクリシュナが描いた絵にあわせ、二人の馴れ初めが語られていく。
「結婚か、羨ましくないといえば嘘になるか。幸せの青い鳥を探してみるのも悪くはないか」
 烈が席からそれを見ながらぽそり、呟いた。
「だがあれはちょっと恥ずかしいな」
「ふむ‥‥結婚に憧れる、か。ところであれはなんだ?」
 と、丁度烈と真琴の間辺りの背後から声がかかり、二人は慌てて振り返る。そこには薄いピンクのドレスを纏った貴婦人が立っていた。この人は誰だ? 一瞬二人は考える。だが暫くして。
「イーリスさん?」
「イーリスのお嬢!」
 そう、リンデン付きの騎士、イーリス・オークレールだった。花嫁に遠慮してか白い服は避けたようだが、祝いの席なのだからとドレスを着させられたと事。
「世話になっているから祝いをと思ってきたのだが‥‥まあ後一応うち預かりの調香師の様子を見に、な。だがあれはなんだ?」
 二人の馴れ初めから始まって、結婚するまでの様子が纏められ、何枚かの絵と共に語られている。
「ああ、あれは地球の結婚式である『すらいどしょー』とか言うのを真似たらしいでやす」
「調香師の発想か」
「あの真ん中のでかいケーキも、だな」
 真琴と烈の言葉にイーリスはなるほどと頷いて。なかなか見れぬ式だと近くの椅子に腰を下ろした。
「ところで、二人は親子ほどの年齢差があるが、その辺りに抵抗は?」
 アマツに尋ねられたルイスは、涼しい顔で。
「ミレイアは立派なレディですよ。守りたい、そばにいてほしいと思わせる女性です」
 その言葉に隅っこで蓮が何か突っ込みを入れようとしたのを、誰かが口を塞いだらしい。
「では問題なければプロポーズの言葉を聞かせてもらえぬか」
 プロポーズの言葉。それは二人にとって忘れられぬもの。二人の関係が、変わったその瞬間。
「『私の剣が折れる日が来るまで。妻として、私と生を共にしていただけますか』ですね」
 その言葉に場内から歓声が。ヒューっと口を鳴らす者もいる。まあこういう場では冷やかされるのが新郎新婦の仕事。
「冒険者の妻になるのはある種覚悟が必要だと思うが、それについてミレイアはどう思っておる?」
「私は‥‥昔から酒場に来る冒険者を見ていて、いつか冒険者のお嫁さんになりたいと思ってた。危険な依頼に赴く冒険者達に私がして上げられる事は少なくて、でもその帰りを信じて待っていてあげること、帰る場所を守ることが私に出来る大切な仕事だと思う」
 しっかりと前を見て言うミレイア。彼女は続けて。
「でも冒険者だったら誰でもいいってワケじゃなくて。確かに、そう思っていた時期もあったけど‥‥いつからか、ルイスの帰る場所になれればいいなって思ってましたっ」
 言い切った彼女はにっこり笑って。そしてルイスと見詰め合って。
 その甘い雰囲気に、周囲の祝福の声は高まっていくのだった。


 この後「はじめての共同作業」として三段重ねのケーキにナイフが入れられ、キャンドルサービスとしてテーブルごとに新郎新婦が蝋燭に火を灯して行ったりと、地球風の催しが続けられた。
 引き出物としてラブ・スプーンと蓮の作った新作香水が配られ、そして二人きりにと早々に退場させられた新郎新婦を抜いて、夜が更けても祝宴は続けられたのだった。