自称・美少女は囚わる!
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■ショートシナリオ
担当:天音
対応レベル:8〜14lv
難易度:やや難
成功報酬:3 G 32 C
参加人数:8人
サポート参加人数:1人
冒険期間:06月18日〜06月22日
リプレイ公開日:2007年06月21日
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●オープニング
●倉庫へ運ばれるモノ
「ねぇねぇそこのお嬢ちゃん」
「え? 私のこと?」
ミレイアが茶色の髪をなびかせて振り返ると、そこには見覚えのない男性が立っていた。
「キミ、凄く可愛いね。キミみたいな可愛い子を探していたんだけど、よかったら一緒に来てくれないかな?」
「可愛いって‥‥私のこと!?」
喜色満面。声をかけてきた男性に笑顔でついていくミレイア。可愛いという言葉に壊滅的に弱い10歳。
知らない人についていってはいけません――親にそう教わらなかった?
(「‥‥あれ、ミレイア?」)
先ほど買い求めた食材を抱えたリューンは意外なところで意外な人物を見つけ、首を傾げる
(「あっちは確か倉庫街じゃ‥‥それに一緒にいる男性は誰だろう」)
見間違いかな、そう思いその日は真っ直ぐ帰宅したリューン。だがその翌日の夜。
(「‥‥あれ? 昨日の男‥‥」)
街の入り口から倉庫街へ向かって走る小さな幌馬車。その御者台に座る男達のうち片方が、昨日ミレイアと歩いていた男に似ている。似ているな、と思っている間に馬車は遠のいてゆく。
『‥‥たす‥‥けて‥‥』
そんな声が聞こえたのは気のせいだろうか。リューンがはっとして馬車の後姿に目を向けたとき、下ろされた幌の影からちらっと小さな白い手が何本か見えた――気がした。
嫌な胸騒ぎを押さえ切れなくなったリューンは馬車を追跡後、ミレイアの家である酒場に駆け込んだ。そして知ることになる。
――彼女が昨日から行方不明であることを。
●依頼詳細
・リューンの追跡により、とある倉庫1つに馬車は到着、数人の少女が倉庫内に連れ込まれていることが判明
・倉庫の持ち主を調べている暇はなかったので、未だ不明
・ただし見張りや御者台にいた男達は品が良いようには見えず、どちらかといえばならずもの系。倉庫の持ち主には見えない
・倉庫内の敵の数は正確には不明。見張り以外にもいる可能性は高い
・現在捕まっている少女達は全部で10人+ミレイア。2階に軟禁されている
・見張りが倉庫外の入り口に立つのは夜間のみ
・昼間は男達は倉庫内に籠っている者が多いものの、倉庫付近は一般人の人通りが多く、昼間の襲撃は不向き
【目的】ミレイア及び他の少女達の救出
1階簡易見取り図
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┃∴■∴∴■階∴●●∴∴∴∴●┃
┃隣■∴∴■∴∴∴∴∴●∴∴●┃
┃の■∴∴■∴∴∴∴●●∴∴●┃
┃倉■∴∴■∴∴∴∴∴∴∴∴●┃
┃庫■∴∴■∴●●∴∴∴●●●┃
┃∴■∴∴■∴∴∴●∴∴∴∴●┃
┃∴■∴∴■∴∴∴●∴●∴∴●┃
┃∴■∴∴■∴∴●●∴●●∴●┃
┃∴■∴∴■∴∴●●∴●●∴●┃
┃■■∴∴■■■■■▲■■■■┃
┃∴∴∴∴∴∴∴∴見∴見∴∴∴┃
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■‥壁
見‥見張り
階‥階段
●‥木箱
2階簡易見取り図
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┃■■■■■■■■■■■■■■┃
┃■階∴∴∴●∴∴∴∴∴∴∴■┃
┃■∴∴∴∴●∴∴∴∴∴∴∴■┃
┃■∴∴∴∴●∴∴∴∴∴∴∴■┃
┃■∴∴∴見∴∴∴∴∴∴∴∴■┃
┃■∴∴∴∴∴∴∴少女達∴∴■┃
┃■∴∴∴見∴∴∴∴∴∴∴∴■┃
┃■∴∴∴∴●∴∴∴∴∴∴∴■┃
┃■∴∴∴∴●∴∴∴∴∴∴∴■┃
┃■∴∴∴∴●∴∴∴∴∴∴∴■┃
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■‥壁
見‥見張り
階‥階段
●‥木箱
●リプレイ本文
●突入
普段ならしん、と静まり返っている夜の倉庫街。だが今日ばかりは少し違った。いくつもの人の気配が一つの倉庫に集中している。
「あの‥‥調べがつきました‥‥けど」
リューンが問題の倉庫へ到着した時には既に突入が始まった後であり、戦闘馬と共に倉庫の入り口を固めるルイス・マリスカル(ea3063)が彼を認めて声を掛けてきた。
「ああ、リューンさん丁度良かった。そこの2人をロープで縛るお手伝いをお願いできませんか?」
荒事には向かぬ性格のリューン。だがミレイアを助けたいという彼の気持ちを無駄にするのも気が引ける。その為彼らはまずこの倉庫の持ち主の調査を彼に頼み、次にルメリア・アドミナル(ea8594)のサイレンスで音を遮断された上、ヴェガ・キュアノス(ea7463)のコアギュレイトで動けなくなった敵を縛るという「大切な」役目を彼に任せる事にしたのだ。
「は、はいっ‥‥!」
いそいそと与えられた役目に取り掛かるリューンを横目で見つつ、ルイスは視線を倉庫内へと移した。入り口から中の様子が覗けないようにと狙ったように配置された木箱の山は、今は既に崩されている。
進路が十分に確保された1階内ではカロ・カイリ・コートン(eb8962)が階段前で敵と対峙していた。御多々良岩鉄斎(eb4598)によるオーラエリベイションで冴え渡った拘束魔法の使い手達の前に、殆どの敵は動きを封じられていたが、まだ何人かは動ける状態にあった。突入班を二階へ送ったからには残りの敵を追わせるわけにはいかない。
「思い切り暴れさせてもらうぜよ! 覚悟せい!」
カロの剣が奔った。
●確保
「ねー、飲み物頂戴よー、喉渇いた!」
「ちっ‥‥うるせえガキだな、文句ばかりつけやがって!」
ミレイアの要求に渋々コップに水を注いで差し出す男。
「ちくしょう、何でこんなガキの要求にほいほい従わなけりゃならねぇんだよ」
「仕方ないだろう、『オフィーリア』の為の大切な商品だっていうんだから」
愚痴をこぼす男の肩を別の男が叩く。いくら「大切な商品」だと言われていても、攫って来た子供にいいように使われるのは気に食わない気持ちはわかる。
「今‥‥何か下で音が‥‥」
と、部屋の隅のほうで怯えている(普通はこうだろう、ミレイアが特殊なのだ)少女のうち一人が呟いた。「え?」とミレイアが聞き返す前にその音源は判明する。
「ミレイア、そこにおるかぇ?」
ヴェガの呼びかけと共に、階段を上がってまず飛び込んできたのはレインフォルス・フォルナード(ea7641)とカルル・ディスガスティン(eb0605)の2人。2人は素早く武器を構え、見張りの他の敵の数を確認する。
「(4人‥‥か)」
男達は見張りを含めて4人。突然の事に狼狽を隠せない男達。それは訓練された兵でない証でもある。
「お、お前達は何だ‥‥い、いや、下にいた奴らはっ‥‥」
「人心売買とは、商いをする者に風上にも置けません」
「下にいたお仲間達は、お休みの時間みたいだよ」
ルメリアに続いて姿を見せたサーシャ・クライン(ea5021)が横目で少女達の姿を確認しつつ、男達の注意を引く。その隙にヴェガが部屋の奥に入り込み、少女達をその隅に集めた。何が起こったのかわからず怯える少女達を優しく慰めつつ、これから起こるであろう戦闘に備え、ホーリーフィールドを張って護る。
「よし、今のうちにこの私が‥‥!」
「囚われの美少女はじっと助けを待つものじゃぞ」
男達の隙に飛び出して活躍を、とでも思ったのだろう、今にも飛び出そうとするミレイアをヴェガはにっこりと笑顔で制す。案の定彼女はその言葉でぐ、と思いと留まった。確かに物語などの囚われのお姫様はじっと助けを待つのが王道だ。
「誘拐か‥‥。気に入らんな、お仕置きの時間だ」
レインフォルスが動く。カルルも少女達に血が見えぬように位置取りに気をつけながら男達を往なす。
「外道商売を行う者は、その命を奪われる覚悟もございましょう。 此処で貴方方を終わらせて差し上げます」
ルメリアの手から一直線に伸びた高速詠唱の雷光が男に命中し、膝をつかせる。
「ちっ‥‥こんな所でバレるわけには‥‥」
「ならず者にかける情けはない。命が惜しければ降伏しろ」
狭い室内での攻防に関わらず男の攻撃をひらりとかわしたレインフォルスはそのまま男を押さえ込み、勧告する。
男達には色々と聞きたいことがある。サーシャとルメリアの高速詠唱アイスコフィンで残りの男達が拘束されている隙に、カルルは先ほどルメリアの雷を受けてぐったりしている男を縛り上げた。
●情報
「いたいけな少女達を誘拐して監禁しておるとは‥‥許せぬのぅ」
ヴェガは戦闘が収束したのを見て、少女達一人一人に怪我はないかと診る。
「動けない者はおらんか? 歩くのが辛ければわしが担いでやろう」
岩鉄斎は率先して少女の搬送を引き受ける。だが彼とて男達へ怒りの心がないわけではない。溶鉱炉で溶かした鉄を脚から掛けてやりたいところだ。
「お、終わったようじゃのう」
子供達をつれて降りてきた岩鉄斎とヴェガを認めて、カロは多少流血してぐったりしている男達の身体を木箱の陰に蹴り飛ばした。これ以上少女達にトラウマになるような思いはさせたくない、それは皆同じ思いだ。
「しっかしミレイア、ぬしはよくよくギルドに縁ある娘っこだにゃあ‥‥やれやれ」
以前もカロに迷惑をかけたことのあるミレイアは「えへへ」と笑って誤魔化そうとした。
「逃げ出そうとした男達も生かしたまま捕えましたよ」
入り口の封鎖に当たっていたルイスが少女達を出口へと誘導する。倉庫を出た先にはロープで縛られて観念した様に頭を垂れる男達の姿があった。
「あ、ルイスも助けに来てくれたんだ♪」
すっかり顔なじみになった青年に嬉しそうに近寄るミレイア。その姿に彼は深く溜息をついた。
「ミレイアさん、悪漢に攫われるのは冒険物語のヒロインの定番ではありますが‥‥」
「私だってただ大人しく捕まっていただけじゃないんだよ!」
呆れられてる!? そう思ったミレイアは身体全体を使って抗議する。
「この男達言ってたもん、私達は『オフィーリア』の為に集められたんだって! ‥‥何のことかわからないけど」
「‥‥『おふぃーりあ』じゃと? 何の事かのぅ」
首を傾げる岩鉄斎。側にいる男達に特に反応は見られない。こいつらは何も知らされていない下っ端なのだろう。
「あの‥‥頼まれていた調べ物、ですが‥‥」
ミレイアの無事に安心していたリューンがおずおずと口を挟む。彼はこの倉庫の持ち主を調べる任を負っていた。
「この倉庫‥‥ハリオット伯爵家の持ち物だそうです‥‥。貿易を手がけている‥‥ただ今は使用されていないはずだ、という話ですが‥‥」
「ハリオット伯爵家ですか‥‥」
どこかで聞いたことがあるような、とルイスが首を傾げた時、二階からサーシャの叫び声が聞こえた。
●結末
「あーっ!!」
「‥‥やられたな」
サーシャは目の前で起こった出来事に思わず叫び声を上げた。カルルがぼそりと呟く。
少女達を脱出させたところで捕えた四人から情報を聞き出そうとしていたサーシャ達だったが、あろう事か男達は次々と事切れてしまったのだ。
「っ‥‥油断しましたわね」
ルメリアが悔しそうに表情を歪める。何かあったときの為にどこかに毒薬でも隠し持たされていたのかもしれない。
「だが‥‥こいつらが何か重要な情報を持っていた、という事は確かだ」
レインフォルスの言う事は正しい。知られては困る情報を持っているからこそ、万が一の時に命を賭して沈黙を守ることを約束させられていた、そういうことだろう。
解った事、解らなかった事、それぞれあるが、少女達10人とミレイアは無事に救出された。少女達は順次家へと帰れるだろう。生け捕られた男達は官憲に引き渡され、取調べを受ける。だがたいした情報は出てこないと思われる。
冒険者達の活躍により、この事件は「貴族の空き倉庫を無断利用し、営利目的で少女誘拐を行っていたならず者達」という結論に落ち着くことになる。