自称・美少女の祝日!
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■ショートシナリオ
担当:天音
対応レベル:8〜14lv
難易度:普通
成功報酬:4 G 15 C
参加人数:7人
サポート参加人数:1人
冒険期間:07月20日〜07月25日
リプレイ公開日:2007年08月02日
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●オープニング
●とくべつな日
誕生日。
生まれてきてくれて有難うと感謝する日。
生んでくれて有難うと感謝する日。
無事、一年生きられた事を感謝する日。
そんな、特別な日。
だから、親しい人の特別な日には何かしてあげたいと思わないだろうか。
パラの青年、リューンも同じ気持ちだった。
小さな友達がまもなく誕生日を迎えると知って、何かしてあげようと思ったのだ。
ささやかなパーティと心の籠ったプレゼント。
きっと喜んでくれる、そう思ったはいいものの彼は重大な問題に気がついた。
彼の現在の主な収入源は占い。それも彼女の家である酒場に間借りしての、である。
なんとなく、彼女の家で稼いだお金で彼女にプレゼントを上げるのはよくないことの様な気がして。
そこで彼は暫くの間河岸を変える事にした。そう、別の酒場で占いをすることにしたのだ。
だがこれが逆にまずかった。
「なんで急にうちの店に来なくなったの?」
そう問われた時に都合のいい言い訳が出来ればよかったのだが、臨機応変という言葉に縁遠い彼にそれが出来るはずも無く。勿論彼女の誕生日の為だなんて口が滑っても言えない。
「なんで何にもいわないのよっ! もう、リューンなんて絶交だからね!」
そういって彼女は怒ったまま帰ってしまった。
そう、なんだかんだいって彼女はまだ10歳の子供なのだ。
●企画倒れ?
「はぁ‥‥というわけで、ミレイアを怒らせてしまって‥‥しかも、お金は溜まったはいいけど‥‥何をプレゼントしたらいいのか全く見当がつかなくて‥‥」
リューンははぁ‥‥ともう一度深く溜息をつく。同年代の友達ならばなんとなく何をプレゼント喜ばれるか見当もつくが、相手は今度11歳になる少女だ。
「‥‥彼女の両親に誕生日パーティの許可はもらいましたが‥‥良く考えたら彼女が家にいるのに内緒でパーティの準備なんて、できないし‥‥僕だけじゃ、手も足りないし‥‥」
要するに、企画倒れ寸前のぐたぐだ状態なのだ。
それでも先日誘拐という怖い目にあった少女に、出来るだけ楽しい思いをさせてあげたい。
「あ、誰か‥‥今月誕生日の人、いませんか? いたら当日は一緒にお祝いさせてください‥‥!」
リューンはにこりと笑う。だが肝心のパーティが企画倒れ寸前だということを忘れてはならない。
●追記
ミレイアは友達のリューンが黙って突然店に来なくなったこと、自分に隠し事をしたことに対して腹を立てています。ちなみに恋心はないです。彼女をうまく家から連れ出さないと、パーティ会場の準備が出来ません。
パーティ準備は飾りつけ、料理準備などが含まれます。材料は特に珍しいもの、高価なものでなければ揃っています。必要であれば彼女の両親の手を借りることもできます。
リューンと共にミレイアへのプレゼントを手に入れる。ミレイアと鉢合わせしないようにして、プレゼントを手に入れてください。犯罪にならなければ買う、作る、獲る等、入手手段は問いません。
パーティ当日、精一杯祝ってあげて、誘拐されたという心の傷なんて忘れさせてあげてください。
●リプレイ本文
●何を探そう?
「昨日までちょっとミレイアさんの様子を窺ってましたが、どうやら貴方に隠し事をされたのがショックだったみたいです」
数日間酒場に通ってさり気なく彼女に探りを入れたイェーガー・ラタイン(ea6382)の言葉に、リューンは「やっぱり」と肩を落とした。
「相手は子供だからのう。些細な事で機嫌を悪くしたと思えば、ころっと機嫌がよくなることもある」
フィーノ・ホークアイ(ec1370)の言葉にティス・カマーラ(eb7898)も頷く。
「それに小さくても女の子だしね! パーティでちゃんと事情を話して、プレゼントを渡せば仲直りできると思うよ」
その為に僕達が協力するんですから、と言うイェーガーの言葉にリューンは「宜しくお願いします」と深く頭を下げた。
「さてと、何がよいかのう。後々から眺められる物が望ましい故、花や菓子でなく‥‥小物類が妥当か」
「女の子の喜びそうなもので、値段はそんなに高くないものって何だろう?」
店先には様々なものが並んでいる。その中から「これだ」と思える1つのものを見つけるのは至難かもしれない。
相手は変わり者だが女の子には違いないので可愛いものや綺麗なものならそう外さないだろうと、所狭しと並べられた小物に見入るフィーノ。ティスはリューンの手を引き、子供に間違えられそうな外見を利用してあちらこちらの店を覗いては無邪気に店員に意見を求める。
「ち、ちょっと皆さんはぐれないようにしてくださいね!?」
イェーガーは三人がはぐれないようにと気を配るので精一杯。まるで保護者のようだ。
「だが、ただの小物では誰が送っても同じであろうなぁ」
「フィーノさん、聞いてます!? ああ、そっちのお二人もあまり遠くには行かないで下さい!」
後から見てすぐにリューンの顔を思い出すようなプレゼントがいいだろう、そう考え店から店を渡るフィーノの耳にはイェーガーの言葉は届いていない。勿論、少し離れた店で店員の話に耳を傾けているティスとリューンの耳にも。
「ああ、もう‥‥」
イェーガーは額に手を当てて溜息をつき、ポケットに忍ばせたトランプを握り締める。プレゼントが見つかっても見つからなくても、友人から教わったトランプを使った簡単な占い方法を後でリューンに教えるつもりだ。
「あ」
「お」
その時、1件の店の前でティスとフィーノの声が重なった。
「「これだ!」」
二人が指したものは、偶然にも同じものだった。
●参考人確保
「うん、確かこの辺で声を掛けられて〜」
茶色い髪を揺らしながらミレイアはある一角で足を止めて、傍らのルイス・マリスカル(ea3063)を見上げる。先日の誘拐事件の参考人として聞きたい事がある、という口実で彼女を連れ出したルイス。
「(いくら冒険好きな彼女とはいえ、誘拐事件では怖い思いをされた事でしょう――)」
それを思い出させるのは心苦しかったが、一番自然な口実なのは確かだ。存外元気そうな彼女の様子を見て、ルイスは少し安心する。
「朝から色々と連れまわしてすいません。疲れたでしょう?」
買い求めた飲み物を広場のベンチに腰掛けたミレイアに手渡しつつ、ルイスは優しく問う。「ありがとう!」と元気に言った彼女は思い切りかぶりを振った。
「大丈夫、実はちょっと楽しかったよ!」
不謹慎かな、と呟く彼女にルイスは心の傷を抉るような真似にならなかった事を安堵しつつ微笑みかける。
「もう二度とあのような怖い思いをさせないように、背後にある悪は必ず突き止めると約束しましょう」
ミレイアはにこり、と笑顔を見せた。
●準備は順調
「なんだか良い匂いがしますね」
午後、一人酒場に戻ったルイスは半ば準備の整った会場を見回した。
「ワタシ朝カラ頑張ッテルアルヨー」
厨房から操群雷(ea7553)の声が届く。彼は朝買出しをしてからずっと、宴席料理の制作にいそしんでいた。故郷の華仙教大国で供される料理を作る予定だったが、中にはメイでは手に入らない材料もあった。しかしそこは腕の見せ所。彼は代用できる材料を見つけて問題なく調理をしていた。
メインは「春餅」。彼の故郷では、本来は冬に食べて春を呼ぶ料理だという。だがそれをこのパーティの料理に選んだのには理由があった。ミレイアの心にも春を運んでくるように、そんな願いが込められているのだ。
大量の料理と甘味までを用意するのは手が掛かる。だが料理を作ることが、それを食べてもらう事が好きな彼にはそれを苦と感じることはなかった。
「ルメリアさんの引いてくれた飾り付けの図面があるから、こっちも順調よ」
綺麗なクロスの引かれたテーブルに花を飾るフェリーナ・フェタ(ea5066)。喋りつつも手は止めない。
「あ、ティスさん、それはもう少し右に‥‥」
イェーガーは、レインボーリボンを手にリトルフライで天井付近の飾り付けを担当するティスに指示を出す。
「何かお手伝いする事はありますか?」
「じゃあ、イェーガーさんの持って来てくれたアロマキャンドルの飾り付けをお願いしてもいいですか?」
手伝いを申し出たルイスにフェリーナは指示し、自らはフィーノによって書かれたメモを手に市場へと向かう準備をする。そのメモには甘味代わりになりそうな果物について書かれていた。
「(果汁のジュースでも作ってみようかな?)」
メモに目を走らせながら、フェリーナは店を出た。
●おまじない
「ミレイアさんの願いは本当でこれでよろしいのです?」
午後、事情聴取への協力のお礼として川辺へミレイアを連れ出したルメリア・アドミナル(ea8594)は、今彼女の口から発せられた言葉に顔をほころばせつつ問い返した。
天界にある7月の催し。逢いたいと思う人、親しい人との絆を強めるおまじないとして星に願いをかける「七夕」という催しがあると告げると、彼女は興味深そうに目を輝かせて食いついてきた。
川の近くに願いを書いた品を結びつけて祈りを捧げる、と教えたルメリアだったがミレイアは「文字が書けない」という。ルメリアもアプト語には明るくないがそこは天界のおまじないという事で、天界の言葉で代筆をすることにした。
彼女の口から飛び出した願い事は
『リューンと仲直りしたい』
それならばきっともうすぐ叶うだろう、そう思いつつルメリアはその願い事をしたためた。
●生に感謝する日
「「お誕生日おめでとう!」」
ルメリアに送られたミレイアを出迎えたのは素敵な装飾を施された店内と、豪華な料理と、笑顔の冒険者達と――リューン。
「え、何?」
突然の事に戸惑う彼女の前に、ティスに背中を押されたリューンが進み出る。
「‥‥ミレイア、この間はごめん‥‥。お誕生日、おめでとう‥‥」
彼の手から差し出されたのは小さな水晶玉のついたペンダント。それを見ればいつでも贈り主の事を思い出せるものがいい、とフィーノとティスが選んだものだ。そう、リューンは水晶を使って占いをする。
「え‥‥ううん、私の方こそごめん! あ、ありがとう!」
きらきらと輝くペンダントとリューンの顔を見比べるミレイアを見て「これで願いは叶いましたね」とルメリアは囁く。
「このティアラの似合う、立派なレディになってね」
フェリーナはミレイアの頭に真珠のティアラを載せる。今でも可愛いけれど、内面もしっかりと磨いた素敵な大人になってね、と願いを込めて。
「ミレイアさん、お誕生日おめでとうございます」
ルイスはシフールのぬいぐるみを手渡す。
「わぁ、ありがとう!」
彼女の顔に、笑顔の花が咲く。
「料理が冷めナイウチニ、ドンドン食ベルアルネ!」
「呑むぞー! モルトを持てぃー!」
作り手である群雷からの許可(?)に、既に席に陣取ったフィーノが叫ぶ。
「わぁ、おいしそうな料理だね!」
料理の載ったテーブルに駆け寄ったミレイアは目を輝かせている。
「僕も今月で30歳かぁ。年を取ったって感じるなぁ」
「ティスさんもお誕生日おめでとうございます」
11歳になるミレイアと自分を比べて思わず呟いたティスに、隣にいたイェーガーは笑顔で祝辞を述べた。
「え、ティスも誕生日? おめでとう! じゃあこっちこっち! これ、美味しい、こっちは甘いよ! はやくっ!」
それを聞きつけたミレイアが中心へとティスを引っ張り出す。既にいくつかつまんだのか、その口の端にはソースらしきものがくっついていた。
「料理褒メテ貰ウ、幸セアルネ!」
「私達もいただきましょう」
ルイスの言葉にルメリアやイェーガーも頷く。
「すでにフィーノさんはもう飲んで食べているみたい」
フェリーナの言う通り、フィーノは充電とばかりに飲み食いを始めていた。
「食事が一段落ついたら、皆さんでゲームでもして遊びましょう」
「やったー!」
イェーガーの提案に盛り上がる場。
生に感謝するそのパーティは、まだまだ始まったばかりだ。