【第三次カオス戦争】奇襲部隊を撃破せよ

■ショートシナリオ


担当:天音

対応レベル:8〜14lv

難易度:やや難

成功報酬:5 G 47 C

参加人数:10人

サポート参加人数:1人

冒険期間:11月04日〜11月10日

リプレイ公開日:2007年11月09日

●オープニング

 森を背にするようにしてカオスニアンの軍勢と戦っている軍がある。
 その森はある程度の広さがある割には木々もさほど高くなく、道幅も広くはないため殆どのゴーレムは勿論、大型恐獣の通過が難しい。無理に木々をなぎ倒しながら通過をすることは出来なくもないが、森の木々より背の高い大型恐獣やゴーレムが森を通過しようとすれば頭がでてしまう事になり、その接近を察知するのはたやすい。無理を押して森の木々をなぎ倒して背面を突く理はないのだ。
 だがもしも、その部隊が森の木々に隠れる、そして森を通行できる大きさの騎乗恐獣とカオスニアンで構成された少人数の奇襲部隊だとしたらどうだろうか。
 戦線の後方に位置するのは大体が補給部隊や救護部隊などの後方支援部隊だ。中には怪我人もいる。
 たとえ後方支援部隊の戦力で奇襲部隊を無事に退治できたとしても、被害を0に押さえる事はまず難しい。
 奇襲部隊としては後方支援部隊に被害を与え、攪乱できればその任は十分に果たしたといえる。前線を支える後方支援部隊の混乱は、前線の戦力に影響するからだ。

 ここに一つの情報が届いた。
 その森を通過し、軍の後方支援部隊に奇襲をかける目的で集められた敵部隊があると。
 騎乗恐獣数体とカオスニアン十数人で構成された少数部隊であるが、奇襲が成功すれば後方支援部隊を攪乱する事が出来る、そのための消耗部隊だ。

 冒険者達に与えられた任務は『敵の奇襲部隊を撃破する』こと。
 敵に森を通過させてはならない。
 敵を味方部隊後方へ到達させてはならないのだ。
 この作戦には地形の関係上、小型であるウッドゴーレム『ユニコーン』が貸与される。過日永久凍結処分となった騎体だが、その凍結処分が解除された。それだけ手段を選んでいられない状況だということだ。
 戦地が森の中という限られた場所であることから、ゴーレム戦力とその他の戦力との連携が求められる。


<貸与戦力>
・ゴーレム…ウッドゴーレム『ユニコーン』2騎
・フロートシップ…アルテース級1騎(輸送にのみ利用)


・森簡易マップ
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◎奇襲部隊入り口
◇冒険者達入り口
∴道

・普通に行けば泉付近が戦場となるでしょう。
・敵部隊は騎乗恐獣を連れているため、2マス分の幅の道しか通れません。
・真っ直ぐ進めば冒険者達の方が少し早く泉に到着できますが、あまり凝った罠などを設置する時間はありません。
・敵部隊に出口に到達されてしまうと失敗となります。
・泉の深さは人間の膝丈くらいまでとなります。
・フロートシップは森の中には入れません。ゴーレム輸送の為の足と考えてください。
・ゴーレムに乗り手がつかなかった場合は、鎧騎士が派遣されますのでご安心ください。

●今回の参加者

 ea0827 シャルグ・ザーン(52歳・♂・ナイト・ジャイアント・イギリス王国)
 ea6109 ティファル・ゲフェーリッヒ(30歳・♀・ウィザード・人間・フランク王国)
 eb1182 フルーレ・フルフラット(30歳・♀・ナイト・人間・イギリス王国)
 eb3446 久遠院 透夜(35歳・♀・鎧騎士・人間・ジャパン)
 eb4099 レネウス・ロートリンゲン(33歳・♂・鎧騎士・人間・アトランティス)
 eb4257 龍堂 光太(28歳・♂・天界人・人間・天界(地球))
 eb8306 カーラ・アショーリカ(37歳・♀・鎧騎士・人間・メイの国)
 eb8962 カロ・カイリ・コートン(34歳・♀・鎧騎士・人間・メイの国)
 ec0844 雀尾 煉淡(39歳・♂・僧侶・人間・ジャパン)
 ec0993 アンドレア・サイフォス(29歳・♀・ファイター・人間・メイの国)

●サポート参加者

アルベル・ルルゥ(ea4131

●リプレイ本文

●決意
 その日の空は雲ひとつなく晴れ渡り、陽精霊の輝きに満ちていた。
「雨雲、来るとええなぁ」
 ウェザーコントロールのスクロールをしまいながらティファル・ゲフェーリッヒ(ea6109)が呟く。スクロールを使用してみたものの近くに雨雲がないのか、すぐに目に見える成果は現れなかった。これは戦闘終了までに雨雲が近づいてくれるのを祈るより他ない。
「カロ。ユニコーンの具合はどうですか? この間のヴァルキュリアと比べて」
『悪くないさね』
 屹立するウッドゴーレム・ユニコーンの側で戦闘馬に跨って問いかけるのはアンドレア・サイフォス(ec0993)。対するカロ・カイリ・コートン(eb8962)の声には余裕が感じられる。カロはウッドゴーレムという機体に特に恐怖心は抱いていなかった。生物素材の期待は封印、それ故凍結されたと聞いていたが彼女としてはむしろ軽量機体は望むところ、らしい。
「敵さんが接近してきたで!」
「‥‥よし、行くッスよ、ギルガメッシュ!」
 ブレスセンサーの探査結果によりティファルが声を上げる。オーラエリベイションで精神統一を済ませたフルーレ・フルフラット(eb1182)はグリフォンのギルガメッシュに跨り高度を上げていく。

 今回冒険者達は出口に通じる道に雀尾 煉淡(ec0844)を中心として造った、プラントコントロールで操作して絡ませた木々の柵、ライトニングトラップのスクロールで作った雷の罠を背にして出口を塞ぐ。残念ながら土嚢による壁を作る時間はなかったが、それらの罠の前に煉淡とティファルの魔術師二人、それを守るようにして歩兵のカーラ・アショーリカ(eb8306)、久遠院 透夜(eb3446)、レネウス・ロートリンゲン(eb4099)が陣を敷き、最前衛にはユニコーンに搭乗したカロと龍堂 光太(eb4257)。そしてその後ろでそれをサポートする騎兵戦力としてアンドレア、フルーレ、シャルグ・ザーン(ea0827)が立つ。

 今回は何としてもここで敵を全滅させねばならない。
「敵はみんな泉へ向かって来てるッス。違う道を通る敵はいないようッス!」
 上空からのフルーレの報告に、一同武器を再び握り締める。
 敵はもう近くまで着ている。目ざとくフルーレの乗ったグリフォンを見つけた者がいたのだろう、にわかに敵部隊が騒がしくなり、多数の足音が接近を実感させた。
 敵も妨害者がいることを悟ったのだろう。だが彼らが彼らの任務を果たすためには万難排除して森の出口に辿り着かなければならない。彼らには引き返すことは許されない。
 故に敵は、勢い良く泉のある広場へと走り出てきた。


●会敵
『そう簡単には当たらないよ』
 光太の搭乗したユニコーンがひらりと騎乗恐獣の牙を回避し、その首筋へと攻撃を叩き込む。
 通路が広くはないこの森にまさかゴーレムがいるとは思わなかったのだろう敵の、僅かな動揺を利用しながら冒険者達は攻撃を繰り返していく。広くはない戦場故に敵も固まらざるを得ない。直接ゴーレムに攻撃する事の出来る位置にいない恐獣の乗り手が焦れたように弓に矢を番えるのを、上空からフルーレが素早く捕えた。
「そうはさせないッス!」
 グリフォンを急降下させ、スマッシュを絡めたチャージングの一撃を弓を手にした騎兵へ浴びせる。その強烈な一撃を喰らった敵兵は手綱を弓へと持ち変えていたこともあり、ドスンと音を立てて地面へ落下した。
『ほらほらほら、当ててみよ!』
 カロもユニコーンを華麗に操り、騎乗恐獣と敵兵の攻撃をかわす。当たれば装甲の弱さが問題となるが、裏を返せば当たらなければ良いのだ。素早く動き回るカロのユニコーンに翻弄されるように騎乗恐獣はあっちにこっちにと忙しなく首を向けさせられている。
 これでは埒が明かないと思ったのだろう、ユニコーンを相手取る味方同士の間を突破するように突進してきた騎乗恐獣がいた。その後ろには何人かのカオスニアンが続いている。だがユニコーンを突破する敵が出るのはこちらも十分予想していたこと。
「お前達の相手は我輩がつとめよう!」
 オーラ系統の施術で高められたシャルグのランスが、突破してきた恐獣の横っ腹に突き刺さる。その反対側からほぼ同時にアンドレアのランスによるチャージングとスマッシュの一撃が恐獣を襲う。
「シギャアァァァァァァァ!」
 痛みに叫び声を上げてのた打ち回る恐獣から振り落とされた乗り手は、再び騎乗することを諦めてシャルグへと刃を向けた。だが彼の左腕に作られたオーラシールドがその攻撃を受け流す。
「抜けてきましたね‥‥足止めします!」
 ユニコーンを、そして騎兵達を抜けてきた数人のカオスニアンを見て、煉淡はまず弓を持っている敵にアグラベイションのスクロールを使用しその動きを鈍らせる。
「敵が纏まってくれているのはありがたい話や!」
 ティファルがスクロールで発生させた竜巻が、出口へ向かって殺到してきたカオスニアン数名を巻き上げ、落下させる。
「ここを通すわけには参りませんからね」
 レネウスが動きの鈍った弓を持つカオスニアンに近づき、その手と足をサンソードで斬り付ける。手足から血を垂れ流し、痛みに呻きながらその男は弓矢を取り落とし、膝を着いた。
「(確実に攻撃を当てて、少しずつでも削っていくのら)」
 フェイントアタックで確実に敵にダメージを与えていくのはカーラ。今回の敵は壊滅させないといけない、だからこそ確実にダメージを与えて行きたいと思う。
 透夜が動いた。スタッキングで敵の懐に入り、その上スタックポイントアタックで皮膚の薄い首筋を狙う。
「ここは通行止めだ、他を当たれ‥‥冥土への道をな!」
「なっ‥‥」
 その素早い動きに驚いたのか、その男が目を見開いた瞬間その首筋から鮮血が噴き出した。膝を付く男。予定通り大ダメージを与えて行動力を奪った。が、敵はまだいる。多少返り血を浴びても気にしている暇などない。

『そろそろ遊びも終わりにするぜよ』
 カロのユニコーンの動きに攪乱され続け、その上ダメージを蓄積した騎乗恐獣の動きは鈍い。カロはこれで止めをとばかりに水晶球に乗せた手に力をこめる――。
『そうだね、キミ達の相手ばかりしてもいられなしね』
 同じく華麗に動きつつ、そしてユニコーンの能力を最大限利用して敵の攻撃を回避し続けてきた光太も目の前の騎乗恐獣目掛けて剣を振り下ろした。
 ユニコーンを突破した一体の騎乗恐獣を退治したシャルグとアンドレア、そして上空からのフルーレの援護を受けていたユニコーン。目の前の恐獣二体はその素早い攻撃で沈黙した。乗っていたカオスニアン達は素早く恐獣を放棄したが、状況は明らかに多勢に無勢だ。シャルグが、アンドレアが、フルーレが素早く乗り手達を追撃する。前衛での決着はそろそろつきそうだった。

「一体後何人だ!?」
「あと三人です! それより透夜さん、傷は大丈夫ですか!?」
 透夜の叫びに、後方から状況を冷静に見つめていた煉淡が叫び返す。返り血と混ざって解りにくいが、透夜は先ほど敵の刃をその身体で受けていた。
「こんなのたいした事ない。まだ十分戦える!」
 だが傷は思ったほど深くはなかったようで、彼女は次の敵を見定めるとスタッキングでその懐へと入る。
「雲が来うへんのなら仕方あらへん」
 ティファルは一瞬空を見上げたが、やはり雨雲は近くになかったのか蒼かった空には薄く白い雲が浮かんだだけで、ヘブンリィライトニングを使えそうな雨雲はまだ来ていなかった。仕方なく、高速詠唱で編み出したライトニングサンダーボルトの雷で敵を狙う。
「あと少し、ですね」
 ティファルの雷撃を喰らった相手にレネウスが肉薄する。彼もまた敵の刃を受けていたが、傷自体はそれほど深くないものだ。素早く相手を剣で斬り下ろす。
「手伝うのら!」
 カオスニアンを一体倒したカーラがレネウスに加勢する。二人の剣撃を受けてそのカオスニアンは膝を着いた。
 後衛での戦いも、決着がつきそうだった。


●結果
 現れた奇襲部隊は騎乗恐獣が四体、カオスニアンが十三体だった。
 こちらには他にも傷を負った者がいたが、幸いなことにいずれも傷は浅く、深刻な被害はなかった。ユニコーンも重大な被害を受けることはなかった。
 何より味方後方援護部隊への奇襲攻撃を未然に防げたのは大きい。冒険者達それぞれがそれぞれの役割を熟知し、それに努めた故の結果だろう。
 まだ前線での戦いは続いている。
 だが前線で戦う者達、それをサポートする後方の者達はこれで安心して己の役割に専念できるだろう。