【色彩救道】緑青の地に巣食う獣
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■ショートシナリオ
担当:天音
対応レベル:8〜14lv
難易度:やや難
成功報酬:4 G 98 C
参加人数:9人
サポート参加人数:-人
冒険期間:01月05日〜01月10日
リプレイ公開日:2008年01月11日
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●オープニング
絵画に使用される顔料には一般的に手に入りやすい色から、なかなか手に入りづらく高級な高級色までが存在する。高級色には緑青、パールホワイト、群青などが上げられるのだが。
実は今、宮廷絵師たちの間で緑青の原料となる孔雀石、パールホワイトの原料となる白雲母、群青の原料となる瑠璃、これら高級顔料の在庫が不足してしまっている。当然、鉱山に採掘状況の確認をしたのだが、その3つの鉱山はカオス戦争の余波を受けて暫くの間採掘を中止していたのだという。そしてその間に――困った出来事が起こった。現在3つの鉱山ともそれぞれの理由で採掘再開がままならぬ状況にある。
今回冒険者達に依頼されるのは、緑青の原料となる孔雀石の取れる鉱山だ。そして足として5型輸送艦が貸与される。そう、つまりそういうことなのだ。
鉱夫たちの話によれば採掘場の広場に大きな恐獣が2体。他に小さな恐獣が数体。小さな恐獣の方は採掘用の穴に入り込んでいるモノも数体いると思われるらしい。
――多少は土嚢や採掘道具や荷台が置かれているものの、採掘が中断されている事で広場となっている場所でアロサウルス2体が遊んでいて、中にはヴェロキラプトルも数体見受けられる、と。
指揮しているカオスニアンは見当たらないので、恐らく戦争に使用されたものの置いていかれた恐獣達なのだろうが。
広場の障害物は多少の土嚢や採掘道具であり、ゴーレムであればさほど障害にはならない。逆にゴーレムに搭乗しない者であれば遮蔽物として身を隠すのに使用できるかもしれない。ただ問題がある。採掘用の穴に入り込んでいると思われるヴェロキラプトルがいると先述したが、ゴーレムの体躯ではその穴に入ることは出来ないのだ。穴の高さは大体2メートル半。横幅もそう広くはない。ヴェロキラプトルでも大きな動きをすれば窮屈だろう。穴の中に入ってしまった理由は想像するしか出来ないが――もしかしたら穴の中が外より暖かいからかもしれない。
採掘用の穴は3つ。大きさからいって1つの穴に2体以上入っていることはないと思われる。もし2体以上入っていたとすれば――筒の中に、その筒より一回り小さい球を2つ入れたところを想像するといい。一番最後に入った一体が邪魔で、その奥にいる一体は身動きとりづらい。一番最後に入った一体とて機敏に動けない。攻撃に出るとしたらあちらがかなり不利になる。ゴーレムに騎乗していない人間が穴に入って攻撃を加えれば、相手の機敏性を利用される事なく倒せるかもしれない。
「相手が恐獣ということで大変かもしれませんが‥‥このままですと鉱夫さん達もお仕事が出来ず困ってしまいますし、私達の他にも孔雀石を必要とする人が困るでしょう。どうかお気をつけて」
宮廷絵師を代表してファルテ・スーフィードが頭を下げた。
●貸与ゴーレム
・5型輸送艦×1隻
・モルナコス×最大5騎
※モルナコスは最大数まで使用しなくても構いません。
※モルナコスに乗り手がつかなかった場合はNPC鎧騎士が派遣され、作戦にしたがって行動します。
※最大数使用しない場合は何騎まで、と明記してもらえると助かります。
●リプレイ本文
●緑青の地へ
現場である鉱山から少し離れた所で5型輸送艦は停泊し、冒険者達とモルナコス5騎を下ろす。その場所からは鉱山を臨む事が出来た。
「アロサウルスが見えるのう」
御多々良岩鉄斎(eb4598)はゴーレムから一度降りてきた乗り手三人――エルシード・カペアドール(eb4395)、シャノン・マルパス(eb8162)、アルトリア・ペンドラゴン(ec4205)に順に達人レベルのオーラエリベイションを付与しながら呟く。
「相変わらず乗り心地は最悪ね――武装はロングスピアと大盾、隊列はどうしましょうか? あたしとしては横一列の隊列を推したいのだけれど」
「装備に関しては異論ない。が、横一列に5騎並べる幅が確保できるとは限らない。アロサウルスが2体確認されている事から2:3に分かれて戦うことを推す。ゴーレム操縦にあまり慣れてないアルトリアと私が3に入り、私が正面に立ち敵を引き受けようと思う」
5型輸送艦『評判』の乗り心地について呟いた後、エルシードは改めて作戦の吟味に入る。シャノンもそれに対して自らの意見を述べた。
「そうね。実際に行って見ないと広さも敵や障害物の位置も分からないし、それで構わないわ。ある程度は臨機応変にということで。じゃあ貴方、私と組みましょう。宜しくね」
互いに良いところを取り合って意見を納め、エルシードは一人の鎧騎士に声をかけた。彼は「は、はいっ」と緊張した声で頷いてみせる。
「ではあなたは私達と一緒ですね、宜しくお願いします」
もう一人の鎧騎士にアルトリアが声をかけると、彼も「よろしく」と声をかけてきた。
「(恐獣にも悪意があるわけじゃないとは思うんだけど、困ってる人達を放っておくわけにはいかないもんね)」
レフェツィア・セヴェナ(ea0356)は達人レベルのグッドラックを残りの五人――岩鉄斎、イリア・アドミナル(ea2564)、クライフ・デニーロ(ea2606)、月下部有里(eb4494)、エル・カルデア(eb8542)にかけながら考える。仕事が出来ないのも顔料が取れないのも大変な事だ。恐獣が邪魔になっているならば危険もあるし取り除かねばならない。
「この様な所まで、第三次カオス戦争の影響が‥‥この戦いは何時まで続くのでしょうか」
レフェツィアのグッドラックを受けながらイリアは呟く。出来ることなら一刻も早く終らせたいものだと。
一方、全く別のことを考えている者もいる。エルは宮廷絵師であるファルテからの依頼という事で気合が入っていた。
「(此処でカッコ良い姿を見せれば絵を描いて貰えるかも知れないな。恥ずかしい姿を見せないように頑張るぜ)」
実際に描いてもらえるかどうかは別として、依頼達成の原動力となっているのは良いことなのだろう。
「今回は孔雀石マラカイト――私のいたところでは『危険な愛情』を意味するのよね。ファルテさんは笑顔の方が可愛いものね、彼女の為にも頑張りましょう」
なんだか意味深な発言をするのは有里。異性より同性を好む彼女の発言だ。どこまでが本心なのだろう――どこまでも本心かもしれない。
「採掘場所に大きな損傷を与えない形で恐獣を駆逐したいな」
目視できるアロサウルスの二つの頭、それを見てクライフが呟く。それは全員の総意でもあった。
●巨躯との対峙
「思ったよりも広いですね‥‥予定通り最初に最高レベルのアイスブリザードを使います。範囲に入ってしまうといけないので、ゴーレムは魔法発動後に前に出てもらってもいいですか?」
『了解』
採掘場は思ったより広く、器具も殆どが一時閉鎖前に片付けられていたのだろう、多少土嚢が落ちてはいるが既に恐獣によって蹴り飛ばされたりしているため、魔法で傷つけても問題あるまい。
『直ぐに前に出るようにはするが、気をつけてほしい』
「わかりました」
シャノンの言葉に彼女は頷く。イリアの最高レベルのアイスブリザードは範囲が広い。下手に壁としてイリアの前に出ればその発動に巻き込まれる恐れがある。故に彼女は魔法発動まで壁なしで耐える必要があった。イリアの後ろには直ぐに前に出られるようにゴーレム5騎が待機し、その後ろには歩兵部隊が控えている。恐獣達と乱戦になる前に採掘場の入り口側から魔法を放つ以上、この位置取りしかなかったのだ。
「水の精霊よ、我が声に応えよ」
レフェツィアのグッドラック、自身のフレイムエリベイション、そしてアイテムで精度を高められたアイスブリザードが発動する。イリアの手から扇状に吹雪が吹き荒れた。それが収まるや否やゴーレム部隊が即座にアロサウルス2体へ向かって進み、イリアの前には彼女を守る壁として岩鉄斎が立った。
「さすがじゃ。ヴェロキがばったり倒れておる。じゃが有利と過信は禁物じゃのう」
「はい」
イリアは岩鉄斎の言葉に新たに緊張しなおし、アロサウルスと対面しているモルナコスへと目を向けた。
『今のうちに横から攻撃を!』
魔法でダメージを負ったため動きの鈍くなったアロサウルスの噛みつきを大盾で防ぎ、シャノンが叫ぶ。それに応じてシャノンの機体の横合いからアルトリアとB機が槍を繰り出し、巨躯の脇腹を抉る。
「シギャァアァァァァァァァァ!!」
アロサウルスが痛みに叫び、首をもたげた隙を狙ってシャノンも槍を繰り出した。再びアルトリアも槍を繰り出すが、何とか皮膚を掠ったにとどまる。
『無理に倒そうとするな! 仲間達との連携がある分此方が有利だ! 確実に削って行け!』
『はい!』
B機が突き出した槍に重ねるようにして、シャノンもこれで終れとばかりに槍を振るう。かくしてアロサウルスの巨躯はどすんと砂埃を上げて広場に倒れこんだ。
一方、エルシードとA機は手数の上でシャノンたちより不利ではあった。だがその分後衛からの魔法の援護を受けている。
エルシードが近づかれる前に、と槍を繰り出すのに合わせてA機も巨躯に槍を突き刺す。エルのアグラベイションが効いているおかげでモルナコスの方が先に攻撃を仕掛けることが出来た。その隙にクライフがストーンのスクロールを開いて念じる。するとアロサウルスの足元がだんだんと石化し始めた。追い立てるようにして有里のライトニングサンダーボルトも巨躯を打ち抜く。
『今のうちに攻めきりましょう!』
エルシードの指揮に合わせてA機が槍を振るう。一気に勝負をつけるとばかりに差し出されたエルシードのスピアはアロサウルスの喉元に刺さり、魔法で思うように動けないでいる恐獣の息の根を止めた。
●穴倉に
「穴は三つあるって話だけれど‥‥反応があるのは二つだけね。いずれも1匹ずつよ」
「では二手に分かれるかのぅ」
有里のブレスセンサーの結果、冒険者達は前衛と魔法使いとで大体二つに分かれ、穴内のヴェロキラプトル退治に挑む。
「さっさと片をつけてあったかい物にでもありつきたいものじゃがのう」
岩鉄斎の言葉に大半の者は同感だろう。穴の中は多少は暖かいとはいえ、大分気温も下がっている。やはりヴェロキラプトルが穴の中にいるのは寒さをしのぐためなのだろうか。それは本人(?)達にしか分からない事だが。
有里がライトニングサンダーボルトを飛ばす。その間にレフェツィアがホーリーの詠唱を開始する。
「グギャアァァ!!」
背中を向けていたヴェロキラプトルの後足が激しく暴れる。洞窟の幅が狭いせいで中々方向転換できないのかもしれない。
「ぐっ‥‥」
前衛で魔法使い達を守りながらラージハンマーで一撃を加えた岩鉄斎が、後足を避けきれずに思い切り打ち付けられる。
「大丈夫かな?」
一瞬遅れて完成したクライフのストーンがヴェロキラプトルの動きを止めた。
「ああ、一応大丈夫じゃ」
何とか立ち上がる岩鉄斎。直後、詠唱の完成したレフェツィアのホーリーが固まっている恐獣に命中した。
「後でリカバーで治療するからもう少し待っててね」
有里とクライフのライトニングサンダーボルトが同時にバリバリと音を立てて、石化した恐獣に命中する。狭い洞窟内で暴れられては崩落の恐れやまだ掘り出されていない資源に影響がでる。だが固まっているうちに退治できればその心配もないだろう。
「やはり中には1体ですね」
もう1つの穴の前。バイブレーションセンサーを使用したエルが仲間に通達する。
「では急いで倒してしまいましょう」
ゴーレムから降りたエルシードを前衛とし、暫く奥へ進むと程なく恐獣の背中が見えた。
「まずはアグラベイションを」
エルが高速詠唱アグラベイションでヴェロキラプトルの素早い行動を抑制する。その間にイリアは高速詠唱でウォーターボムを唱えた。だが洞窟内に影響を及ぼす事を危惧して弱められたその威力では倒すまでには至らず、恐獣は痛みに叫び声を上げる。その声は耳が痛いほどに洞窟内に反響していった。
「直接攻撃するわ」
エルシードとシャノンが前に出、ヴェロキラプトルに斬りかかる。すると恐獣は半ば上半身を後ろに向けてシャノンに噛み付こうとしたが、彼女はそれを何とか避ける。第二派が来る前には再びエルが高速詠唱アグラベイションを使用し、イリアが高速詠唱でアイスコフィンを唱えると、反撃を気にする必要はなくなった。ヴェロキラプトルは氷の棺に閉じ込められたのである。
「運ぶのに、別の班から魔法使いに来て貰おう」
シャノンの言葉にこちらの班の一同も頷く。
●残りの二箇所?
傷の治療を済ませ、恐獣たちを殲滅し、一同は人心地つく。エルはモンスター研究家らしく恐獣達の遺骸を調べたりしていた。
「三箇所ある採掘場のうちの一箇所という事はまだトラブルがあるのよね」
「私も、それが気になっていました」
ぽつりと漏らした有里の言葉にアルトリアも同意を示す。
「全部が全部、こんなやっかいなものでないといいですね」
女性に対しては丁寧口調になったクライフも、恐獣達の遺骸の処理を考えながら同意を示した。
何はともあれこれで孔雀石鉱山の安全は確保されたわけである。採掘が再開される日も近いだろう。