自称・美少女は見た!
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■ショートシナリオ&プロモート
担当:天音
対応レベル:8〜14lv
難易度:普通
成功報酬:4 G 15 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:05月05日〜05月10日
リプレイ公開日:2007年05月10日
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●オープニング
●見た!
占い――様々な手法で人の心の内や運勢、未来などについて判断する方法。しかしそれによって導き出される『未来』は回避不能なわけではない。
占いは未来を決定するものではなく、未来について示唆するもの。または注意を喚起するもの。悪い結果など、当たらぬ方がいいのだ‥‥と彼は思っていた。
「おら、今日の分出せよ」
「‥‥一体いつまでこんなことを続ければ‥‥」
メイディアの下町、路地裏でパラの占い師は男に威圧されるままにいつものように皮袋を差し出す。
「あー? 俺達のおかげでお前も『良く当たる占い師』って有名になれたんじゃねーか」
もう一人の男が「今更やめるなんていわねぇよな?」とそのいかつい顔を近づけてきた。少年はびくりと身体を震わせたが勇気を振り絞って口を開く。
「‥‥で、でも‥‥嘘の占いをするなんて‥‥僕、もう‥‥」
「あぁん? 嘘じゃねーだろ、俺達が当たるようにしてやってるんだからよー」
男達はにまにまといやらしい笑みを浮かべ、金の入った皮袋を掌の上で弄んでいる。
「まぁ、今日も頑張って稼いでくれな、ぼうず」
下品な笑い声を発しながら、男達は少年を置いて路地の向こう側へと消えていった。
路地の反対側から小さな二つの瞳がその光景を目撃していたことに気づかずに。
●話した!
「助けて欲しいんだけど」
肩までの茶色い髪の少女が、ギルドのカウンターに身を乗り出していた。偉そうな口ぶりだが、年は10歳前後だろう。
「‥‥あなたが、ですか?」
ギルド職員は思わず少女の顔をまじまじと見つめた。だって何処かで見たような気がしたんだもん。
「んー、私を、じゃなくてうちの店に来ている占い師さん」
(「店? 占い師がいるということは酒場?」)
「‥‥まぁ、話を聞きましょう。まずはあなたのお名前からお願いします」
職員は書類制作の準備をしつつ尋ねる。
「私はミレイアよ。助けて欲しい占い師さんはリューンっていうパラの男の子」
「あ」
「‥‥何?」
少女名前に思わず反応を示してしまう職員。何処かで見たことあるような気がしたのも当然だ。先日彼女の父親の依頼を聞いたのも彼だったのだから。
「な、何でも有りません、続きをどうぞ」
職員の態度に若干不審を抱きながらも、ミレイアは事情を語り始めた。
数日前、リューンというパラの占い師が彼女の父の店に来て、店舗の一角を借りたいと申し出た。彼女の父は快く店の一角を貸し出したという。
彼は『近々起こり得る些細なこと』に占い内容を限定し、その代わり相場より二割程度安い値段で沢山のお客を占っていった。
失せ物に注意、と彼が忠告すれば洗濯物が盗まれた。
水に注意、と彼が忠告すれば水撒き中の水を被った。
無くしたものが見つかります、と彼が示せばいつの間にかなくした財布を、見知らぬ男が親切に拾って届けてくれた。
その他、些細なこと色々。
彼の水晶占いがことごとく当たるものだから、日に日に彼の評判は上がっていった。
ミレイアは最初こそ占いに興味があって彼と話す機会を探していたのだが、評判が上がるごとに何故か怯えた様子を見せる彼が気になり、ある日店で商売を始める前の彼に会いに行って、その光景を見たのだ。
そこで彼女が見たものは――リューンと同時期に店に姿を見せるようになった柄の悪い男二人組に脅される彼の姿。
男達が金を持って出かけている隙に、ミレイアはどうして言いなりになっているのかとリューンに尋ねた。
彼は涙ぐみながら、それまで誰にも話せなかった胸のうちを語ったという。
「リューンはね、王都の近くまで来たけど空腹の為に倒れちゃったんですって。そこを運悪くその二人の男に助けられて、それを恩に着せられてやらせの片棒を担がされているの!」
そう、全てやらせなのだという。
リューンの占いの内容と占った相手の顔を酒場で見た後、その二人が占いが当たるように工作するのだ。占われた相手には、まるでその占いが当たったように見える、という寸法。だから占う内容は『近々起こり得る些細なこと』限定。財布の時は一人が掏ってもう一人が届けるという念の入りよう。
「彼は人々を騙すなんてできないと何度も男達に言ったらしいのよね。でもそのたびに暴力を振るわれて、恐怖の為に逃げ出すことも出来ないのよ」
男達は朝方に人気のない路地裏で彼から前日の収益を取り上げた後、その金を使うために街へ繰り出すという。
「なるほど、イカサマ占い師ですか‥‥」
「違うってば! リューンはきちんと占い出来るのよ。だからこそ偽の占いを続けることに罪悪感を感じているんじゃない!」
どうしてそんなことも解らないの、とミレイアは溜息をついた。
「‥‥えと、で報酬は?」
10歳の子供に言われてしまい返す言葉もなく、職員は次の質問に移る。
「この私の、美少女の笑顔でどう?」
「‥‥報酬なしで引き受けてくれる冒険者がいるかどうかが問題ですね」
自信満々のミレイアの言葉を今度は上手く受け流した職員。
「困っている人を助けてあげるのも、いい女になるための第一歩だと思うのよ。仕方ないわね、リューンから預かってきたお金もつけてあげる」
「‥‥‥‥‥‥‥‥」
それって普通逆じゃないか?
肝心なところで突っ込めない弱気な職員だった。
●書類
ミレイアから聞き出した情報を纏めるとこうである。
・早朝、男二人は人気のない路地裏でリューンから前日の売り上げを巻き上げる。
・その後昼過ぎ頃まで何処かで遊ぶか、前日の占いを当てるための行動を取る。
・昼過ぎから夕方頃までリューンは店で占いを開始。男二人も店内で他人の振りを装いながらそれを見ている。
・リューンが店じまいをすると時間差で二人も店を出て行く(その時間はまちまち)
・その後、リューンの占いを当てるための行動を取る
彼らの予定は以降、ほぼ繰り返し。
ちなみに説得は十中八九通じないような者達だ。逆にすぐに武器を持ち出すような輩らしい。戦闘は避けられないだろう。
彼らは店に来る中でも格段に人相の悪い二人連れだからすぐにわかるだろう。
ただし、店内でだけは揉め事を起こさないように。他のお客さんを驚かせてはいけません。
出来ることなら店の客達に、脅されていたとはいえリューンが嘘の占いをしていたということは知られないようにして欲しい。
●リプレイ本文
●囮作戦!
そこはいつもの酒場のはずなのだが、今日は一部に少しだけ緊張が走っている。特に評判の占い師リューンはいつもよりおどおどしていた。事前にミレイアと数人の冒険者を通して打ち合わせは済ませていたが、上手く出来るだろうか、男二人にばれないだろうかという心配が心の中で渦巻いている。
普通の客を装い離れた席から彼を見ているオルステッド・ブライオン(ea2449)は少し心配になったが、ここは彼と囮役の女性二人と、そして打ち合わせをした仲間達を信じるしかあるまい。彼は自然な動作で店内を見回す。例の二人組は人相の悪さも手伝ってすぐにわかった。リューンと客の両方の顔が見え、かつ話も聞こえる丁度良い位置に座っている。酒は頼んでいるもののそれほど手をつけてはいない。酩酊による記憶の低下を防ぐ為なのか、主に口にしているのは食べ物のみだ。
(「それなりに頭を使ってはいるのか。悪事には頭が働くタイプといったところか」)
「やっとあたし達の番ね。噂を聞いてきたんだけど見てもらえる?」
オルステッドはその声を耳に止めて視線をリューンへと戻した。彼の前の椅子に腰を掛けたのはサーシャ・クライン(ea5021)とリアレス・アルシェル(eb9700)の二人。女性の方が警戒されにくいだろうと、囮という重要な役目を引き受けたのだった。
そう、今回は予め打ち合わせられた偽占いを利用して、男二人を罠にかける作戦だ。
「私も楽しみにしてたんだ。評判の占い師だものね」
リアレスは軽くウィンクをしてリューンに合図を送る。
「は、はじめます‥‥」
彼は水晶の上に手を翳し、精神を集中させるように瞳を閉じた。だが、水晶玉の上に翳された手は明らかに震えている。
「手、震えているけど大丈夫?」
サーシャが心配して声をかけると、リューンはびくりと体を震わせて何度も頷いた。
――どうみても不審だが、小心者の彼にはこれが精一杯なのだろう。
「あ、はい‥‥二人とも結果が全く同じなので驚いてしまって‥‥」
彼にしては上出来なフォロー。「同じ?」と首を傾げる(勿論演技だ)二人に、リューンは頷いてその内容を告げる。
「二人とも、柄の悪い男に絡まれるという不吉な未来が見えました‥‥危険ですから念の為、一人では行動せずに二人一緒に行動なさった方がいいかと」
「え、怖いっ!」
リアレスは事前に聞いていた内容とそれが同じであることをを確認した上で、初耳だとばかりに怯えてみせた。
「それは怖いわね。なるべく二人で行動しようか」
「リューンの占いは良く当たるんだから、本当に気をつけた方がいいよ!」
ありがとね、と告げて代金を払った二人に、トレイを胸に抱いたミレイアが近づいてきて、追い討ちを掛ける。これも演技。
「そうだね、気をつけることにするよ」
あたかも占いを信じた振りをして話に花を咲かせる女性三人。
オルステッドはその間も件の二人をしっかり見張っていた。二人とも女二人相手は楽だとたかを括ったのか、にやにやといやらしい笑みを浮かべている。これならば囮に掛かるのは間違いないだろう。彼は一足先に店を出、他の仲間達に連絡をとることにした。
●尾行!
「占いとは、迷いの中の小さな光、無数の選択肢の中のひとつ。信じるも信じないも、心ひとつであるものを、八百長で私腹を肥やすなど以ての外。魂に輝きがないな」
店の外で目立たぬように待機していたゼタル・マグスレード(ea1798)が誰にともなく呟く。だがそれに答える声があった。
「そうだね。僕も同じパラとして助けてあげたいな」
ゼタルと同じ様に男二人が出てくるのを待っていたティス・カマーラ(eb7898)だ。事前にリューンと話をした彼は、リューンが同種族であり尚且つ自分とほぼ同い年であることで彼を助けたいという思いを強固にしていた。
「リューンさん安心して。僕達が助けてあげるから」
そう言った時の彼のほっとした表情が脳裏に浮かぶ。
「酷い話もあったものだ。偽の占いに、無理やり占い実行とは、な」
治安を預かる騎士としては放っておけない、とジャスティン・ディアブローニ(eb8297)も呟いた。
「勘違いした粗忽者には、相応の灸を据えてやらねば、な?」
チラ、と移されたゼタルの視線を追うと、男二人が酒場から出てくるところだった。その数十メートル先をサーシャとリアレスが連れ立って歩いている。行き先はあらかじめ決めておいた人気の無い空き地の方向だ。
「じゃ、僕は空から屋根伝いに尾行するね。現地で合流しよう」
ティスの身体が緑色の淡い光に包まれたかと思うと、そのままふわふわと浮いてゆく。
「では、私達も尾行を開始しようか」
ジャスティンの言葉にゼタルも頷き返した。遠目に動向を観察しつつ、尾行開始。酒場から出てきたオルステッドを加えた三人が地上から、ティスが屋根伝いに上空から追う。
男二人は誘導されているとも知らず、尾行されているのにも気づかず、更には待ち伏せされているなど思いもしないだろう。若い女の二人連れなんて楽勝だとばかりに軽い足取りで、女性二人に誘導されていった。
●交戦!
「おいねーちゃん達、俺達といいとこで遊ばねーか?」
サーシャとリアレスが人気の無い空き地に着いた途端、男達二人は待ってましたとばかりに二人に急接近した。
「‥‥もっと気の利いた台詞をいえないものでしょうか」
空き地に隠れて待機していたルイス・マリスカル(ea3063)が思わずもらす。二人組みの台詞はそれほどまでに使い古されたものだった。
「まぁ、所詮その程度の輩に過ぎぬのだろう」
同じく空き地の物陰で待機していた御多々良岩鉄斎(eb4598)も呆れた。
「貴方達、な、なに‥‥?」
一瞬男達のありきたりな台詞に絶句しかけたリアレスだが、気を取り直して怯えた振りをしてみせる。
「可愛い嬢ちゃん達と一緒に飯食ったりよー、楽しいことしたいと思ってなぁ」
一人の男の手がサーシャの肩に置かれ、もう一人の男の手がリアレスの肩に伸びる。
「やめてよ!」
サーシャの叫びと共に、岩鉄斎が飛び出した!
「われぇ! わしらの仲間になにしよんじゃあ!」
その勢いと大音声に押されて男達が動きを止めた所に、サーシャの手から渦巻く風が発せられ、男達を吹き飛ばす。男達が何が起こったのか理解して態勢を整える前に、追いついた尾行組がその退路を塞いだ。
「な、なんだてめぇらは!」
漸く態勢を立て直した男達は剣を抜き、構える。だがその厳つい顔には明らかに焦りが浮かんでいる。
「当たりすぎる占いの調査をしていました」
優雅に出てきたルイスは眉を顰めるようにして男達を見据えた。
「貴方達の行動が怪しいと当りをつけていたのですが‥‥どうやら女性への迷惑行為でも懲らしめる必要が有りそうですね」
「お前達に尋ねたい」
ジャスティンが剣の柄に手を掛け、静かに問う。
「人々は占いに希望を託してやってくる。その人々を裏切って罪の意識は無いのか?」
「はっ‥‥罪の意識だと? 占いが当たったと喜んでいる奴らから感謝されてもいいくらいだ。そんなものあるわけねぇだろ!」
「‥‥そうか」
怯んでいるものの全く反省している様子の無い男達の答えを聞き、これならば遠慮なく剣を振るえる、とジャスティンは頷いた。
「へっ、お前ら全員痛い目を見たくなかったら‥‥」
『ねぇ、僕はいつまでこんな事を続けたらいいの?』
「なっ!? リューン、いつの間に!?」
突然響いてきたその声に男達は凄むのも忘れ、きょろきょろ辺りを見回す。しかし勿論どこにもリューンの姿は無く‥‥男達のその行動は冒険者達にとってはさぞ滑稽に映っただろう。声の主はリューンの声を真似てヴェントリラキュイを使用したティスなのだから。
「僕も一つ、君達を占ってやろうか。今日の風は随分と荒いようだ。突風に気をつけたまえ‥‥足元をすくわれないようにな」
男達が声の主を探している間にゼタルが高速詠唱で起こした突風が二人を転倒させて吹き飛ばす。吹き飛んだ男達をすかさず岩鉄斎とルイスが押さえ込んだ。
「ああ!? 最近のジャリはやってええことと悪いことの区別もようつかんのかいのう」
がたいのいい岩鉄斎が男の一人に馬乗りになり、ドスを利かせた声で告げる。ちょっとどちらが悪人だかわからなくなってきた。
「まったく‥‥困った人達ですね。いい加減反省しませんか?」
もう一人を押さえ込んだルイスに問われたが、男達が首を縦に振る気配は無い。
「じゃあ、反省したくなるようにするしかないかな?」
ティスはにっこりと笑った。この後この可愛らしい笑顔から想像出来ない仕打ちに、男達は「もっと早く反省しておけばよかった」と思うことになったのは言うまでもない。
「さて、十分反省したか?」
オルステッドに問われ、奇襲とお仕置きでぐったりとした二人は弱々しく頷く。
「もしもまたやったら‥‥今度はこの程度じゃすまないよ? フロストウルフをけし掛けるから、血を見たくなければ‥‥」
普段はとても可愛いのだが、脅しをかけているサーシャは怖い。目が本気だ。男達はその恐ろしさに、首がもげそうな勢いで頷いた。
「今まで占った人に与えた夢を壊さぬよう、このまま反省するなら不問に付しましょう」
ルイスの言葉は柔らかだが、言外に「そうでなければ‥‥」という脅しが含まれている。
「天界の言葉に『因果応報』とある。良い事も悪い事も自分がした事は我が身に返って来るという意味だ。正にそうだと思わないか?」
ジャスティンに説教され、男達は小さくなるばかり。案外小物なのかもしれない。
「もう占いを悪用したりしないよね? 僕達はずっと見張っているよ?」
ティスの可愛い顔ににっこりと浮かんだ笑顔。そこに隠されたものを彼らはもう学んだはずだ。
「もし仕事が無くて仕方なく悪さを働いておったんじゃったら、仕事を紹介してやってもよいぞ? ただし二度と悪さをしようと思わんように、お前ら以上に強面の集団の所にな」
岩鉄斎の止めの一言に大きくかぶりを振り、男達は「もうしませーん」とエコーを利かせつつ逃げていった。もう二度と悪さをしようなんて思わないだろう。
だって怖いもん、冒険者達。
●打ち上げ!
男達を十分に反省させた一行は酒場へ戻り、リューンとミレイアに報告した。そこで「今回の報酬で食べに行こう」と岩鉄斎が切り出したのだったがミレイアが「それならうちの売り上げに貢献して!」とちゃっかり申し出たため、岩鉄斎の奢りで店を貸切にしてちょっとした打ち上げパーティとなった。
「あ、ありがとうございます‥‥」
リューンは出された食事に手をつけず、ぺこぺこ頭を下げるばかりだ。
「いい? たとえ恩人でも悪いものは悪いんだし、例え怖くってもそれで怯えて何もしなかったらその怖い事がずっと続くんだよ?」
リアレスはコップ片手にリューンに言い聞かせる。今回の件は彼が悪いとは言わないけれど、原因の一端はあるわけで。
「いくら脅されていたとはいえ人を騙していたのは事実だしね。やらせでなくなる以上、これからの的中率は下がるだろうし、覚悟はした方がいいよ」
料理を口に含んだティスも指摘する。彼を責めたいわけではないが、事実を認識してしっかりと今後の身の振り方を考えてもらわねば。
「真実を教えてくれたミレイアには感謝を。君の勇気は見事リューンを救った」
ジャスティンに褒められたミレイアは「いい女に一歩近づけたかしら?」と得意気に胸を張る。
「‥‥あの様子ならば、もう悪事を働こうなんて気は起こさないだろうしな‥‥」
「そうですね。彼らも十分すぎるほど反省したでしょう。いえ、そうでなければ困ります」
ほうほうの体で逃げ出した男二人を思い浮かべ、ゼタルとルイスは満足気に頷いた。
「今度からは問題が起こったら、ちゃんと冒険者ギルドに来るようにね?」
リアレスに念を押され、リューンは力強く首肯。次など無い方がいいのだが、もしあったら勇気を出して冒険者ギルドに行くと約束する。
「これで一安心だね、リューン。これからもお友達でいてくれるよね? 同じ年頃の友達ってあんまりいなくて」
「えと‥‥それはいい、けど‥‥」
無邪気に向けられるミレイアの笑顔に、彼女の認識違いを訂正できぬリューン。そこへすかさずオルステッドが突っ込みを入れた。
「‥‥リューンはミレイアより年上だと思うぞ?」
「ええっ!?」
驚愕して皆を見渡すミレイアに頷き返す一同。パラの外見は人間の子供の様に見えるので実年齢がわかりにくい。だから見た目=実年齢でないことが多いのだが、彼女はそれを知らなかったようだ。
「そういえばリューンは本物の占い師さんなんだよね?」
サーシャが興味深そうに彼の手元の水晶玉を見つめる。
「信じる信じないは別にして、占いで気が休まる者も助かる者もおろう。精進してもっと腕を上げればええのう」
「じゃあ、試しにあたし、占ってもらおうかな?」
豪快に食い、酒を煽る岩鉄斎。そして今にもリューンの近くに座って占ってもらおうとしているサーシャにジャスティンが一つの提案を口にする。
「まずはミレイアを占ってもらわないか?」
「私!?」
彼のその言葉に驚いたのは名を上げられた当人。
「そうだね、いいよ。あたしはその次ね!」
サーシャは快くその提案を受け入れ、ミレイアを半ば強引に椅子に座らせた。
「内容は‥‥ミレイアが大きくなったらいい女になれるかどうか、で」
「それは面白いですね」
ジャスティンの注文に、ルイスがくす、と笑みを浮かべる。リューンは頷いて水晶玉の上に手を翳して瞑目した。待つこと数秒。
「あ」
沈黙を破った彼の声に、全員が手を止めて注目する。
「‥‥まだまだ要努力、だそうです」
申し訳なさそうに告げるリューンに、「その水晶玉、失礼ね!」と不満そうな顔を浮かべるミレイア。
平和を取り戻した店内は大きな笑いに包まれた。