キミを攫いたい〜次のターゲットはキミ〜

■ショートシナリオ


担当:葵桜

対応レベル:1〜3lv

難易度:普通

成功報酬:1 G 1 C

参加人数:5人

サポート参加人数:-人

冒険期間:11月17日〜11月25日

リプレイ公開日:2004年11月25日

●オープニング

「ねぇ〜、そこの君‥ボクと一緒に遊ばない? 友達になってよ‥」

 少年に声を掛けられた子供達が次々と姿をけしている事件が度々発生している。
 ターゲットは常に森へ木の実を拾いに来る子供達だ。
 もうすでに六人もの子供達が姿をけしている。

 辛うじて逃れた子供達の話によると、青い目をした優しそうな男の子に誘われて一緒に遊んだそうだ。
 少年と隠れん坊をしていた子供達はホブゴブリンに攫われそうになったと言う。
 姿をけした子供たちは恐らくホブゴブリンに攫われたと見られている。

「厄介なのが、少年はレビテーションが使えるという事だ‥‥」
 村の大人達が捕まえようとしたのだが、少年は木から木へと飛び渡れる程身軽でなかなか捕まえる事が出来ない。
 それに加えてレビテーションを使用され、後一歩の所で空中へと逃げられてしまう。


「‥‥と、まぁ‥そういう訳なんだ‥」
 冒険者ギルドに依頼をもってきた村の男は少し疲れた様子で苦労話をしみじみと語る。

「少年の背後には一匹のホブゴブリンが関わっているようなんだ‥。少年がホブゴブリンに攫わせるように仕向けているのかもしれない‥」
 村人の予想では少年は体力があまりない為、子供達を攫う事が困難なのでホブゴブリンを利用して攫わさせたのだと思われる。
 隠れん坊だという事もあって、子供たちは一目のつかない草むらに身を潜める。
 その為、大人達の目が届かずホブゴブリンは安全に子供達を攫う事が可能になるのだ。
 計画的な犯行から、ホブゴブリンの知識は少し高めだと見られている。
 危険な事を嫌う事から自分から姿を現すことは恐らくないだろうが、油断は禁物だ。

「何よりも子供達の安否が最優先だが、子供達を攫う理由が分からなければ被害は減らないはずだ‥‥」
 男性は攫われた子供たちの事を思い、深刻な面持ちで額に手を当てて悩みながらため息をつく。

「子供達を救い出し、モンスター退治を依頼したい‥。それから少年を捕まえて理由を聞き出して欲しい‥‥」
 村の意志としては少年を懲らしめる気はないらしく、ホブゴブリン退治をして子供達を助け出し、少年が子供を攫う理由を聞き出してなんとか解決してほしいと言う。

●今回の参加者

 ea2788 ビルジニー・ダルク(22歳・♀・ジプシー・エルフ・ノルマン王国)
 ea6900 フェザー・フォーリング(26歳・♂・ウィザード・シフール・イギリス王国)
 ea6902 レイニー・フォーリング(26歳・♂・ウィザード・シフール・イギリス王国)
 ea7197 緋芽 佐祐李(33歳・♀・忍者・ジャイアント・ジャパン)
 ea7651 クリスチーナ・スチール(36歳・♀・神聖騎士・人間・イギリス王国)

●リプレイ本文

●困難を極める捜索
「村の人達の話によると少年はこの辺りによく出没するそうです‥‥」
「時間帯はお昼前の確率が高いみたいよ」
 依頼主の話から詳しい時間帯と場所までは特定出来ていなかったので、フェザー・フォーリング(ea6900)とクリスチーナ・スチール(ea7651)は森に入る前に予め村人達から情報を得ていた。

「おびき出せるか分からないけれど、もしも見つけたらお菓子で気を惹いてみましょう‥‥」
 集まった冒険者達の中に幼い子供がいなく、おびき寄せるのは少々困難なようだ。
 そこで緋芽佐祐李(ea7197)は少年が子供だという事もあり、お菓子で心を掴もうと考えていた。
 けれども少年を探し出す為の良い策がなく、少年をなかなか発見する事が出来ずに困難を極めていた。
 ただ村人達から得た情報を頼りに巨大な森の中で少年にばれぬ様に気をつけながら諦めずに手分けをして根気強く探す。



●少年との接触
「う〜ん‥‥良い香り。お姉さん、そのお菓子をボクに頂戴?」
 突然、佐祐李の背後から声が聞こえて振り向いたが、誰の姿もなく不思議に感じながら辺りを慎重に見渡す。
「上だよ、上。ねぇ、そのお菓子ボクにくれない? ボクのご主人様にあげたいんだ」
 手分けをして探しているうちに、佐祐李はいつの間にか半ば単独行動に近いかたちになっていたので、少年は警戒心を持つことなく身軽に木から下りてきた。
 外見といい、体の身軽さといい、依頼主が説明していた少年に間違いないだろう。
「ええ、宜しければどうぞ‥。林檎を使った保存食なんです‥‥」
 嬉しそうにお菓子を食べる少年は普通の子供達と変わらないあどけなさと、なにより悪さをするようには見えない。


「見つけたわよ!!」
「わぁ。な、何するんだよ! 離せってば!!」
 背後に回っていたビルジニー・ダルク(ea2788)が少年の油断している隙を狙って、ここぞとばかりに飛びかかり取り押さえようとする。
 得意技のレビテーションを使い空に逃げようとした少年の足にしがみついたものの後一歩の所で空中へと逃げられてしまった。

「なら、ライトニングサンダーボルトで‥‥」
「待って! 村としては懲らしめる意思はないのよ。それに空中だし、落下して大怪我でもしたら大変よ‥‥」
 手から稲妻を発しようとしたレイニー・フォーリング(ea6902)をクリスチーナが止めに入る。
 少年は木の上へと着地した後、木から木へと飛び移り、あっという間に行方を晦ませてしまった。

「取り逃がしてしまったけれど、少年が居たという事はホブゴブリンが近くにいると思います‥‥」
 フェザーは少年を発見した際に、ブレスセンサーで捕らえられる範囲に一匹のホブゴブリン程度の大きさの物体の呼吸に気がついていた。
 大体の場所は特定出来たフェザーはブレスセンサーの範囲内からホブゴブリンが外れた時の事を考えて、焦らずに自分の持つ森林地帯での土地感を頼りにホブゴブリンの行動を推測して絞り込む。
「中途半端に頭が良いと、逆に策に嵌めやすい‥。むしろ闇雲に逃げられる方が対処し難いですから‥‥」
 頭の良いホブゴブリンが戦いという能率の悪いことは避け、自分達からも少年からも遠ざかるだろうとフェザーは推測し、逆方向へ逃げた可能性が高いと考えて先回りのルートを考え出す。

「でも出来る限り、取り逃がさないように追いかけないと‥‥」
「それにしても何故、普通の子供達と変わらない少年が同じ年頃の子供を攫うのでしょうか?」
 あまりゆっくり考えていては本当に取り逃がしてしまうので、ビルジニー達は急いでホブゴブリンの追跡を開始する。
 近くで少年に接触した佐祐李は首を傾げ、追跡をしながら真剣な表情で考える。
 とにかく今は少年の問題を解決する前にフェザーの推理を信じてホブゴブリンを探しだすのが優先だ。



●ホブゴブリン退治
「居た! なんとか追いついたみたいね!!」
 優良視力に優れているビルジニーはいち早くホブゴブリンの姿を捕らえた。
「向こうは気がついていないようね。私が回り込んで前に出ます、何方か援護していただけませんか?」
「俺が魔法で援護する‥」
 慎重に回り込み、タイミングを測り正面攻撃を避けて切りこむクリスチーナの援護をレイニーがする。


「「ぬぅ!!」」


 気配を感じて辛うじてよけたホブゴブリンだが、驚いて思わず変な声を出す。

「私はフェザーだ、それから此方が妹のレイニーだ」
「俺はレイニー‥って、俺は男だ!! それに自己紹介をしている場合じゃない」
 レイニーの突っ込みが炸裂し、ホブゴブリンは呆気に取られる。
「弟に女装させる性格破綻外道変人な兄ではあるが、戦略や他人を嵌める事だけは有能だから大丈夫だ!」
 『だけ』という言葉の部分をしっかり強調してレイニーはフェザーを褒めているようでしっかり貶す。兄弟息のそろった漫才はここまでにして、ホブゴブリン退治に専念するとしよう。
 今度はしっかり狙ってクリスチーナはホブゴブリンに向かって切り込むが、ホブゴブリンは避けて逃げ回る事だけに専念していて戦いを仕掛けては来ない。

「ライトニングサンダーボルト!」
 レイニーの技が見事にホブゴブリンに命中し、ホブゴブリンの動きが格段と鈍くなる。
「止めです!!」
 出来る限り気配を消し、佐祐李は疾走の術を使って後ろから日本刀で最後の止めを刺す。
 見事に佐祐李の攻撃は命中してホブゴブリンはその場に倒れこむ。


「わぁ!! あ〜もう、離せってば!!」
「駄目! 今度こそ離さないわ!!」
 突然、草むらの中から聞き覚えのある子供の声とビルジニーの声が森中に響き渡る。
 ホブゴブリンとの戦闘の最中に少年が観戦していた事に気がついたビルジニーは油断している隙に今度はしっかりと少年を捕まえて確保した。
「そのまま手を離さないでくださいね」
 思わぬ所で少年を捕まえる事が出来て、フェザーはほっとしたため息と、疲れ混じりため息をつく。



●少年の想いと解決策
 不本意ではあるが少年が逃げないように念の為、頭上にライトニングトラップをフェザーは設置した。

「どうしてホブゴブリンを使ってまで子供達を攫ったのかしら?」
「この森の木の実は高い所にあるから、木の実を取る代わりに攫ってもらったんだ‥」
 少し頭上を気にしながらビルジニーの質問に少年は不機嫌そうに答える。


「そうだわ、お菓子でも食べない??」
「お姐さん達と一緒にお話をしましょうよ、ねっ?」
 クリスチーナはクリエイトハンドを使って、美味しそうなお菓子を少年の目の前に作り出すと、ビルジニーは優しく微笑んでお菓子を差し出し少年の警戒心をなんとか解こうと努める。
 しかし少年は一つ目の質問以来なにも答えてくれない。

「子供達が何処にいるのか教えてくれませんか?」
「皆、ちゃんと無事だよ‥傷一つつけてない‥‥」
 虐待でもしているのではないかと心配していた佐祐李は子供達が無事だという言葉を聞いてほっとした様子を見せる。

「でも、どうして子供達を攫ったの?」
 子供達を集めている理由を探るためにビルジニーは事前調査をしたのだが、結局理由が分からず直接少年に尋ねる事にした。
「友達が‥‥欲しかったんだ」
「えっ? 友達が‥欲しかったの?」
 ビルジニーは意外な理由に復唱して尋ね返すと、少し照れた様子を見せながら少年は軽く首を立てに振る。
「友達が欲しいのでしたら村に来れば良いですよ。村の人達と話をした所、貴方を受け入れる意志があるそうですから‥」
「えっ? ‥でも‥‥」
 佐祐李の言葉に嬉しいような躊躇するような、複雑な顔をする少年をビルジニーはほっておく事が出来ず、優しく少年の頭を撫でてあげた。

「さぁー、お菓子をどうぞ。今はいらないかしら?」
 苦笑しながら尋ねるクリスチーナから、今度はお菓子を素直に受け取り、一口だけ口に含ませる。
 焦らずに説得する為にすぐに話を進めないで、間をじゅうぶん間を取ってからクリスチーナは本題へと戻る。
「子供たちの居場所を教えてください‥‥」
「近くにホブゴブリンの塒があって、その近くに‥‥」
 少年は案内すると言って立ち上がる。
「では、子供達のお迎えに行きましょう。それから村に行って皆でティータイムをしましょう? 林檎を使った保存食ならまだ残っていますから‥」
 お菓子を取り出して、少年が村に行きやすいように佐祐李は誘いを入れた。



 こうしてホブゴブリン退治は成功を収めた。結局ホブゴブリンの塒は頭の良いホブゴブリンらしくすぐには見つけにくい場所にあった。

 子供達に怪我はなく、寧ろ元気な様子を見せ自分達が攫われていた事に気がつかないほど少年と楽しく遊んでいたようだ。
 村に子供達を連れて帰ると子供達は両親の元へと帰り、嬉しそうに少年との事を語ったと言う。


 後々、風の噂で聞いたことだが、一行が少年の悩みを解決してくれたお陰で再び子供達を攫ったりする事は無く村で皆と楽しく暮らしているそうだ。