きせきと呼ばれる花

■ショートシナリオ&プロモート


担当:葵桜

対応レベル:1〜3lv

難易度:やや易

成功報酬:1 G 1 C

参加人数:7人

サポート参加人数:-人

冒険期間:12月10日〜12月18日

リプレイ公開日:2004年12月20日

●オープニング

 冒険者ギルドに小さな子供の兄妹が冒険者に依頼をする為に遠くから遥遥やって来た。


「もうすぐパパとママの誕生日なんだ! 実は二人共、誕生日が同じ日なんだよ‥‥」
 慣れない冒険者ギルドで冒険者達に囲まれて、少し恥かしそうにしながら兄のハルラートが話し始める。
「二人の誕生日に、北地方の幾つかの村に伝わる「きせきの花」をプレゼントしたいんだ」
 きせきの花を手にした恋人や夫婦は永遠の愛を手にする事が出来るロマンチックな花だと言う。
 花には二人の辿った「軌跡」の思い出を優しく大切に包み込んでくれる事から「軌跡の花」と呼ばれている。
 しかし一方で花を手に入れる事が困難で「奇跡の花」とも言われている。



「ハルお兄ちゃんや私だけだと手に入れる事が難しいみたい‥‥。だからお花を手に入れるお手伝いをして欲しいの」
 最近、西にある丘に「きせきの花」をほんの僅か数輪、発見した者がいる。
 金儲けには絶好だと、悪行を働く商人は「きせきの花」を手に入れようとしたのだが、数匹のホークが空を迂回している為、手に入れることが出来なかったという噂を妹のカナンは耳にしていた。
 何にしてもホークは「きせきの花」を守る役目も果たしていているので無闇に殺したくはない。
 それに子供達だけでは到底ホークに勝つ事はできない。
 しかし、ハルラートとカナンは両親の為に何とかして「きせきの花」を手に入れたいと思い、冒険者達に助けを求めにきた。


「ボク達と一緒に「きせきの花」を手に入れるお手伝いをしてほしいんだ‥‥」
 二人は言葉の後に、花は一輪だけ根元から抜いて、庭に埋めたいと話を付け加えた。

●今回の参加者

 ea1258 グリフィール・リクニス(32歳・♀・ファイター・人間・ノルマン王国)
 ea1798 ゼタル・マグスレード(28歳・♂・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 ea5913 リデト・ユリースト(48歳・♂・クレリック・シフール・イギリス王国)
 ea7528 セオフィラス・ディラック(34歳・♂・神聖騎士・人間・イギリス王国)
 ea9263 レイン・カシューイン(22歳・♀・クレリック・ハーフエルフ・ノルマン王国)
 ea9272 風御 飛沫(29歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 ea9374 ディモス・ハリス(46歳・♂・レンジャー・人間・イギリス王国)

●リプレイ本文

●きせきの花を求める子供達
「永遠の愛、かぁ‥。きせきの花の意味合いも素敵だけど、両親の為に花を取って来ようと思うなんて、二人の両親は幸せ者だね‥‥」
「私も一緒にきせきの花が見られたら幸せなんである〜!」
 きせきの花の意味合いを聞いたレイン・カシューイン(ea9263)は花がどの様な形をしているのか想像を膨らませる。
 リデト・ユリースト(ea5913)は、自分自身もきせきの花を見て一緒に幸せになる事が出来ればいいな、っと思いテンションが高まる。

「兄妹仲が良いのが一番だよ。プレゼントをお父さんとお母さんが喜んでくれたら良いね」
「うん‥。ハルお兄ちゃんと‥それからお兄さん達と一緒に頑張るよ!」
 西の丘へ向かう道中は比較的安全で、和やかなムードで風御飛沫(ea9272)は子供達の頭を優しく撫で上げる。
 頭を撫でられたカナンは少し照れくさそうに飛沫を見上げて、人懐っこく微笑み返す。

「2人共あんなにも小さくて可愛いのに、お父さんとお母さんを大事にしているのね‥‥」
 グリフィール・リクニス(ea1258)は花を摘みにいける事が出来て嬉しそうに歩く子供達の姿を見て微笑ましく思いながら言葉を漏らす。
「そうだな。両親の幸せを願い、祝福する健気な想いを尊重してあげたい。そのささやかな願いを叶える為、力を尽くそう‥」
 言葉以上に内心ではゼタル・マグスレード(ea1798)は誰よりも子供達の願いを叶えてやりたいという気持ちを持っている。

「両親が同じ誕生日なんて運命的だよね。所でハル君達のお父さんとお母さんは、どんな両親なの? 二人の両親なんだから、きっととっても優しい人達なんだろうな‥」
「うーん‥二人共何時でも凄く仲良しかな」
 冒険者ギルドで子供達の話を聞いた時点で素敵な両親だろうと予想していたレインだが、まだ出会って間もないものの、実際に二人を目の前にして益々その思いは高まっていた。

「既に親の無い身のあたしには、大事に出来る親がいるのは少し羨ましいわ‥」
 ハルラートの嬉しそうに話す姿をみてグリフィールは少しばかり切ない気持ちになってしまった。



●下調べ
 西の丘の近くまで来た一行は少し離れた草叢から丘周辺の状況を窺い見る
 丘には人気はなく、木が一本も生えておらず野原が一面に広がっている。
 昼過ぎに子供達と待ち合わせをした為、丘付近に到着した頃にはすでに夕暮れ時になっていた。
 夕暮れ時を選んだのは皆との相談のうえで、夕暮は鳥目が効き難くなるという特質を利用しようと考えたからである。

「ホークは何匹いるのだろうか‥。本当に隠れる場所は全然ないようだな‥‥」
「悪行商人の噂の詳細を知っている村人の話によると、ホークの数は大体4・5匹って所かな」
 セオフィラス・ディラック(ea7528)は子供達を守りながらホークを出来る限り傷つけないという難しい条件に加えて、隠れる場所がない丘の地形を見て深刻な表情を見せる。
 カインは空を見上げて、確認できるホークに加えて何処かに後数匹はいるだろうと予測する。
「でも、まぁ‥はるばる遠くから遣って来た幼い兄妹を放り出すことは出来ないだろう‥‥」
「幾つになっても誕生日は特別な日なんである。そんな日を子供達に祝ってもらえるなんて幸せなご両親なんである。子供達の為にも頑張るんである!」
 無愛想にセオフィラスは言葉を発するが子供達の事を心配して、二人を無傷で両親の元に送り届けるまで責任を持って子供達を守ろうと決意する。
 鷹の餌に使おうと思い先程道中で捕まえた自分よりも少し小さめの兎を辛うじて逃さないようにしがみ付きながら、リデトは自分に気合を入れる。
「リデトさん、子供達の目の前で兎を放つのはちょっと残酷かと‥俺が買ってきた肉があるから此方を使おう‥‥」
 しがみ付くリデトを見て苦笑しながらディモス・ハリス(ea9374)は予め買ってきたホークが好みそうな肉を取り出す。
「まず、俺が肉を設置してくるよ」
「あたしも一緒に行くわ‥。罠を設置している間にホークがどの辺りにいるのかを探ってみるわね」
 ディモスは肉を手にして、ホークにばれぬように丘から少し離れた場所に罠を設置する。
 その間にグリフィールはホークの位置確認をすると共にばれない様に気を配りながらディモスと共に皆の元へと戻ってきた。
 位置関係から出来る限りホークの死角になるルートを決め、さっそく実行に移す。



●ホークと応戦
「危険を伴うが、覚悟はいいな?」
 真剣な表情で尋ねるゼタルにハルラートは不安そうな表情を見せる。
「そんなに不安そうな顔をするな。キミ達が無事に花を持ち帰れるよう、僕達も全力を尽くすから‥‥」
 ゼタルの付け足して言う言葉を聞いて安心したハルラートは少し緊張しながらあどけない笑顔を見せた。


 まず皆で子供達の周りを囲み、どの角度からホークに襲われても護衛出来る様に円陣を組む。
「ホークから見れば我々は花盗人だろう‥。少しの間、キミ達の領域にお邪魔させてもらうよ」
 ゼタルは縄張りに足を踏み入れる前にこれから縄張りで少なからず暴れてしまう事を詫びて、空を舞うホークを見上げてぼそりと言葉を発した。
 それから出来る限りホークにばれない様に気を配り少しずつ前へと進み近づいていく。
 だが、集団行動だということもあり、ホークにあっという間にばれてしまった。

「やはり‥ばれてしまいましたね」
「俺は囮になろう‥逃げ回るのは得意な方なんでな!」
 獲物を捕らえる態勢にはいっているホークを見上げ、苦笑しながら飛沫は自分達の身の危険を感じる。
 全員で固まっていては危ないと思ったディモスはダガーでホークを威嚇して視線を自分へと向けさせて出来る限り円陣から遠ざかるように努める。

 当然、異常に気がつかない筈もなく、自分達の縄張りに獲物がいる事に気がついた別のホークも次々と襲い掛かってくる。
「行くよ!! 忍法、大がまの術!!」
 急いで円陣から離れた飛沫はホークの気を引きつける為に、大ガマの術で派手に蛙を呼び出す。
 体長3mもある蛙は当然目立ち、ホーク達の目に嫌でも留まる。
 驚いたホークはその場から逃げ出そうとしたが、すぐに怯む事無く攻撃を仕掛けてきた。
 図体の大きな蛙だけで全部のホークを対応しきれるはずもなく、飛沫は対応しきれないホークは盾で攻撃を受けてなんとか応戦する。

「皆が鷹の気をひきつけているうちに急ぐんである!」
 リデトは子供達を連れて丘の天辺を目指す。



●きせきの花
「お〜い! 美味しいお肉が此処にあるよ〜」
 子供達を狙おうとする残りのホークをおびき寄せる為にディモスが少し離れた所に仕掛けた罠の周りをレインはグルグルと回り、肉の存在をアピールする。
 更に、夕方の薄暗さのせいで肉の存在を明確に確認できないホークの為に松セを振って、完全にホークの注目を罠の肉へと向けさせる。
 レインはタイミングを見計らってギリギリの所で肉の設置場所から離れた。

「これで、残り1匹だ‥。だが、子供達もいるし身動きがあまりとれない‥」
 ホークの数からいうと断然有利なのだが、セオフィラスは子供達を守る為にホークの攻撃をよける訳にもいかず苦戦する。
 唯一の応戦方法として使用しているシールドには、ホークを傷つけないように毛布を巻いているので、ホークへのダメージは殆どない。
 グリフィールもロングソードを鞘に納めた状態で応戦をし、オフシフトでホークの攻撃を避ける。

「私が子供達を守るんである!」
 リデトは子供達にその場を絶対に動かないように念入りに指示してからパラのマントで子供達を包んで姿を見えなくする。


「セオフィラスさん、そのまま動かないで」
 シールドに突撃するホークにレインはコアギュレイトを発して動きを束縛する。
「此処は私に任せて。後は頼んだよ‥‥」
「ああ、此処は任せた‥」
 レインは子供達の安否と花を無事に手に入れる事が出来るように願う。
 ホークの事はレインに任せて、セオフィラス達はきせきの花を探す。
「あれじゃないだろうか?」
 夕日の明かりで、ゼタルは遠くで光を帯びている部分がある事にすぐに気がついた。
 近づいて見ると丘のうえで日を諸にうけて、夕日の力で花が仄かに黄色い光を帯びて、一瞬時を忘れてしまいそうなほど美しい姿を見せていた。
「少し急いだ方がいい‥」
 われに返ったセオフィラスはハルラートとカナンをしゃがませてから、ホークが突然襲ってきてもいいように後ろで中腰になって見守る。

「危ない! その場を動くなよ」
 突然襲ってきたホークにゼタルは咄嗟にウインドスラッシュを放ち、子供達を守ってなんとか時間稼ぎをする。

「希少な花らしいが子供達の純粋な願いに免じて一本だけ見逃してくれ‥」
 子供達が花を採取し終えた事を確認したセオフィラスはホークをこれ以上傷つけない為にも子供達を連れて急いで丘を降った。



●ホークの安否は?
「取りあえず、傷つけてしまったホークは治療できる人達と協力して出来る限りの治療はした」
 ディモスは自分の持つモンスター知識の技能を活かして、治療できるもの達と共に可能な限りの治療を施した。
「今から戻ると夜になりますし、これから皆で酒場に集まって成功を祝して騒ぎませんか?」
「そうだな‥。まずは、二人を無事に両親の元に送り届けるよう‥」
「時間も時間ですし、二人の事をあまり叱らない様に両親を説得しなくては‥。二人は両親の為に命がけできせきの花を手に入れたんですもの‥」
 飛沫の提案にセオフィラスとグリフィールは子供達を送り届けた後に、改めて成功をお祝いする事を提案した。