声を失った舞姫
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■ショートシナリオ
担当:葵桜
対応レベル:1〜3lv
難易度:普通
成功報酬:1 G 1 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:01月04日〜01月12日
リプレイ公開日:2005年01月13日
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●オープニング
比較的モンスターの数が少なく安全とされる北に位置する多くの村々では、最近ある話題で持ち切りだ。
冒険者ギルドにもすぐに依頼が舞い込んできた。
何人かの冒険者達が張り出された依頼書を取り囲みながら話をしている。
「なんでも、北の小さな村に美しい舞姫がいるんだってさ‥」
「まだ、12歳のルカと言う少女らしいな‥‥」
あどけなさが残る顔立ちをしているが、舞を踊ると少女の姿は大人顔負けなほどしなやかで美しい舞を踊ると言う。
彼女自身、大人びた性格をしている。
だがルカは生きて行く為に必要な最低賃金だけを貰い、言わば村人達を元気付ける為に北の村々を行き来しながら舞を踊っている。
宿谷や食事を提供してくれる村からは金を受け取らない。
だが、ルカが村を移動している最中に事件は起こった。
「オークに狙われてから声が出なくなってしまったようだ‥」
いつもは用で移動する村人と共に近村に向かうのだが、その日は偶々一人で近村に向かった。
何故なら、ルカの恋人のユウリがいる村へと一刻も早く向かいたかったからだ。
道中で突然オークに狙われたものの、なんとか逃げ切ることが出来た。
その日を境に恐怖で声を失って以来、舞を踊らなくなってしまった。
ルカの舞で元気付けられていた多くの村人達は、協力して今はルカの生活を支えている。
だが一向に笑顔さえも見せる事はなく、恐怖からあまり外に出ようとはしない。
そこで北の村々では金を出しあって、冒険者にオーク退治を依頼する事にしたのだ。
少しでもルカが安心して外に出られるようになればと村人達は刹那に願う。
オークを退治したところでルカが元気になるとは限らないが、可能性を信じて村人達は冒険者にオーク退治を依頼してきた。
それからもう一つ、ルカを安全に恋人の下へと送り届けて欲しいという。
もしかすると身寄りのないルカが心を開いてくれるかもしれない唯一の人かもしれないと、村人達は思ったようだ。
●リプレイ本文
●雪の中でのオーク退治
「雪の上は歩きにくそうな場所故、準備は怠れぬでござる‥。村人達のようにロープを靴に巻きつけると雪の上でも滑りにくくなるでござる‥」
防寒着をばっちりと着込んだ山岡忠信(ea9436)が自己の知恵を生かして皆に指導する。
一方、防寒服を持っていないチリーン・リン(ea8547)は長時間の寒さを堪えしのぐ為に村人達から防寒服を借りて身体を暖かくする。
「さすがに雪道での長時間の散策は避けたいさかい、村人達の中に額に傷を持つオークを見かけ者が数名いたから出没ポイントと、この辺りの地形からオークの居場所を絞り込んでみたんや」
雪で体力を消耗してしまわないようにと皆が必要最低限の物以外の荷物を村に預けている間に周防凰牙(ea9435)は村人達から聞き込み調査と雪上での土地感を活かしてオークの居場所をある程度絞り込んでいた。
幸いな事に雪は止んでいたのでオークを探索するのには絶好のチャンスかもしれない。
だが、あまりの積雪量に馬を連れて歩くと、徒歩の速度もかなり落ちてしまい探索の範囲も狭まってしまう可能性があるので馬を連れて歩くのは断念して村に預ける。
「そろそろ出発するんである‥」
「僕も囮になってオークを誘き出すね! オークが出てきたら僕が壁になって守るから任せておいて!!」
打ち合わせどおり囮役を引き受けた紅孔雀(ea9043)が雪上での土地感を持つシャフルナーズ・ザグルール(ea7864)とチリーン、凰牙の3人と共に先行する。
チリーンはルカの為にもオーク退治を成功させようと気合を入れる。
〜本隊〜
残りの者達はオークが臆病だという性質を利用して、団体行動にならぬ様に周りに気を配りながら隠れて追跡を試みる。
「雪道は歩きにくいでござる‥。っと、先行班を見失わないように気をつけないと・・」
隠れながら見失わないように距離を保つ事は忠信にとっては難しい行動で本隊からも逸れてしまわないように皆に着いて行く。
「足元には十分気をつけるんだ‥。雪の深底に嵌らないように‥」
唯一本隊の中で雪での土地勘がある秋静蕾(ea9982)は皆を先導する。
静蕾は自分がハーフエルだと分からないように頭にバンダナは巻いて耳を隠しているが、バンダナは耳元を暖める役目も果たしていた。
〜先行、囮班〜
「本隊が俺たちに合わせて距離をあけて追いかけてくれているとはいえ、俺たちもはぐれない様に気をつけるである・・」
孔雀は先行する自分たちと本隊との離隔距離を十分に保ちながら所々にある大きな岩に味方が身を隠せるようにと土地勘がある者達に土地柄を活かした道を尋ねならが歩く。
「防寒着を着ていても冬の寒さは身にしみるね‥」
防寒着にマントつけて人一倍暖かくしているシャフルナーズだが、予想以上の寒さに手を懐に入れてなるべく体が冷えないように気をつける。
雪道と寒さに体力を奪われつつも懸命にオークの姿を探し出す。
「本当にこの周辺にいるのか?」
「おかしいな‥。でも、村人達が示した場所はこの辺で間違いないさかい、もう少し探してみてくれや‥」
辺り一面変わらぬ雪景色に孔雀はため息をつきながらも凰牙の説得に応じて再び辺りを見渡す。
「「ぶひっっっ!!!!」」
「きゃぁっっ!」
諦めていたその時、岩に身を隠して不意打ちをしかけてきたオークの攻撃をシャフルナーズは咄嗟によける。
「シャフルナーズ、大丈夫? 誰か助けて〜!!!」
チリーンはオークから少し距離をあける為にガターで軽く威嚇をしながら大声をあげた。
そして、急いで岩陰に2人は身を隠した。
「この叫び声はチリーン様の声!」
合図に気がついたルイーゼ・ハイデヴァルト(ea7235)は、合図共にオークに向かって走り出した静蕾の援護をする為に後を追う。
「よっし、俺の方も‥‥」
一方アルヴィン・アトウッド(ea5541)は目印に雪を軽く掘って穴をあけてからバキュームフィールドを数箇所に仕掛ける。
「おまえの相手は私だ! 覚悟しろ!」
両利きである静蕾はナイフとタガーの二刀流で器用にナイフで受け流してタガーで攻撃をする。
「もう一匹何処かにいるはずだ! 気をつけろ!!」
オークの額に傷がある事から、ルカを襲ったオークである可能性が高いのでアルヴィンは連れのもう一頭を警戒して注意を促す。
「「ぶひぶひっっ!」」
「わぁ! な、なんや、不意打ちかい!」
アルヴィンが注意を促した後すぐに身を隠していたもう一匹のオークが現れて凰牙に攻撃を仕掛けてきた。
凰牙は慌てて攻撃を避け、日本刀を鞘から抜いて反撃に出る。
目線をずらすと、アルヴィンは指差す場所にオークを呼び寄せるようにと合図をおくっている。
不思議に思いつつも凰牙は言われたとおりにオークを圧倒しながら少しずつ指定された場所へと相手を追いやっていく。
アルヴィンはウインドスラッシュで援護して手助けを試みる。
「「ぶひぃぃ!!」」
「止めだ! 空の牙!!」
目印である雪を掘った場所付近にオークが足を踏み入れた瞬間、アルヴィンの予め仕掛けていたバキュームフィールドが発動してオークにダメージを与える。ここぞとばかりにアルヴィンは独自で編み出した名を発しながらウインドスラッシュで止めを刺した。
「なかなかの腕前でござるな‥」
忠信は攻撃を仕掛けずにひたすら受け流すことだけに没頭して相手に隙が出来るように試みる。
技量は確実に此方側が勝っているはずなのだが、この辺りの土地に明るいオークの方が動きが少しばかり速くて苦戦する。
ルイーゼはホーリーを使用して遠距離から攻撃をしかける。
「皆、オークの傍から離れろ!」
オークから皆が離れた後に孔雀は火遁の術を使ってオークに攻撃をする。
寒い気温の中で炎の温度が多少下がるもののオークを攻撃するのに十分な熱さの炎を孔雀は手から発する。
止めに静蕾が奥義である蛇毒手を使用して弱ったオークを素手で殴り跳ばす。
孔雀の攻撃で傷を負っていたオークの傷口に毒が入り込み、見る見るうちに行動が鈍くなっていく。
「最後の止めは拙者に任せるでござる!」
最後の止めに忠信は日本刀でオークに止めを刺した。
●舞姫と呼ばれる少女
雪の中でのオーク退治に体力を消耗しながらも休むことなく村へと再び戻ってきた。
さっそくルカを恋人の下へと送り届ける為に、ルカの家へと向かう。
「ここがルカの家屋だな‥」
村人に教えられたルカの家屋の前で孔雀は足を止める。
そこは決していい生活をしているとはいえない少し小さめの家屋であった。
「誰かいるか?」
静蕾が入り口のドアを叩くと中から中年男性が姿を現し一行をゆっくりと見渡す。
「オーク退治をしてきたよ。これでルカさんが少しでも安心して過ごせるといいんだけど‥」
チリーンの言葉を聞いた男性は冒険者達を快く中へと招き入れる。
中には冒険者の帰りを待っていた数人の村人達がいた。
「ルカ、初めまして。あなたの舞いで何時も元気付けられていた皆が、ルカを元気付ける為にあたし達に依頼をしたんだよ‥」
元気がなく笑顔を見せないルカにシャフルナーズが優しく声をかける。
「その歳で独りで生計たてられるとは‥‥ルカ様は偉いですね」
真顔で頭を撫でるルイーゼだが、ルカを撫でる手はとても優しい。
「オーク退治は無事に終わったから、後はルカを伴侶の元へ連れて行くだけである!」
予想以上にルカの深刻な状況を身を持って知った忠信はルカにオーク退治の知らせをする。
「そうだよ! あたし達がオーク達をやっつけちゃったからね! だから外に出てみない?」
退治したもののルカの笑顔と声を奪ったオークに腹を立てながら言葉を発するシャフルナーズの質問にルカは首を横に数回振る。
「村人達がルカの為に心を尽くしてくれたんだから、今度はルカがそれに応える番だよ? だから‥‥勇気を出してユウリ君に逢いに行こう?」
シャフルナーズの口からでた恋人の名に反応を示したルカは、複雑な表情を見せながらも傍にいる村人達を見て首をゆっくりと縦に振った。
「ルカ様の舞いが、再び人々の‥そして貴女自身の心の糧になりますように‥」
ルイーゼは願いを込めてルカの小さな手を包み込んで言った。
●忙しい一日
「ルカ様、私の馬に乗ってください。足元には十分気をつけてくださいね‥‥」
久しぶりの外に太陽を見上げて眩しそうな表情を見せるルカの手をルイーゼは優しく手を差し伸べて馬の上へと乗っける。
雪の上を馬に乗って走る事は出来ないのが、子供のルカが歩くには厳しい条件だと考えてルイーゼは馬にをゆっくりと引いて歩く事にした。
「うーむ。ここは一つ、村に着いたら仕事と妻のどちらが大事なのかとユウリに質問するでござる!」
「それじゃー、まるで結婚した夫婦への質問のようだな‥‥」
まさか忠信が既婚と完全に勘違いしているとは思わず、アルヴィンが不思議に思いながら言葉を返す。
「村に着いたら、ユウリ様はお店が忙しくて時間がないと伺っていますからお店の手伝いを私達でしましょう‥」
ルイーゼの提案に反対するわけにも行かず、一行の一日はまだ終わりそうもないようだ。